平成27年度 第二種電気工事士 下期 筆記試験 解答と解説
本問題の計算で $\sqrt{2}$,$\sqrt{3}$ 及び円周率 $\pi$ を使用する場合の数値は次によること。$\sqrt{2}=1.41$,$\sqrt{3}=1.73$,$\pi=3.14$
No.1 オームの法則

図のような回路で,スイッチ S を閉じたとき,a-b 端子間の電圧 [V]は。
- 30
- 40
- 50
- 60
スイッチ S を閉じると,電源電圧120 V と,50 Ωの抵抗2つの閉回路ができる。その閉回路を流れる電流は1.2 A となる。a-b 端子間の電圧は,1.2 Aの電流が流れる50 Ωの抵抗に発生する電圧で,1.2 × 50 = 60 V となる。
よって,答えはニ.である。
No.2 コイルによるインピーダンス
コイルに100 V,50 Hzの交流電圧を加えたら6 Aの電流が流れた。このコイルに100 V,60 Hzの交流電圧を加えたときに流れる電流 [A]は。
ただし,コイルの抵抗は無視できるものとする。
- 4
- 5
- 6
- 7
コイルによるインピーダンスは,周波数が50 Hz から60 Hz になると 60/50 = 1.2 倍になる。60 Hzの交流電圧を加えたとき流れる電流は,50 Hzの交流電圧を加えたとき流れる電流の1/1.2 倍となり,5 Aとなる。
よって,答えはロ.である。
No.3 電線の抵抗
抵抗率 ρ [Ω·m],直径 D [mm],長さ L [m]の導線の電気抵抗 [Ω] を表す式は。
- $\frac{4\rho L}{\pi D^2}\times10^6$
- $\frac{\rho L^2}{\pi D^2}\times10^6$
- $\frac{4\rho L}{\pi D}\times10^6$
- $\frac{4\rho L^2}{\pi D}\times10^6$
電線の抵抗は,長さに比例し,断面積に反比例する。
よって,答えはイ.である。
No.4 熱量
電熱器により,60 kg の水の温度を20 K 上昇させるのに必要な電力量 [kW·h] は。
ただし,水の比熱は 4.2 kJ/(kg·K) とし,熱効率は 100 % とする。
- 1.0
- 1.2
- 1.4
- 1.6
60 kg の水の温度を20 K 上昇させるのに必要な熱量は,4.2 × 60 × 20 = 5,040 kJである。これを電力量に換算すると,5,040/3,600 = 1.4 kW·h となる。
よって,答えはハ.である。
No.5 三相3線式回路に流れる電流

図のような三相3線式回路に流れる電流 I [A]は。
- 8.3
- 11.6
- 14.3
- 20.0
線電流は,200/1.73/10 = 11.6 A となる。
よって,答えはロ.である。
No.6 電圧降下

図のような単相2線式回路で,c-c' 間の電圧が99 Vのとき,a-a' 間の電圧 [V] は。
ただし, r は電線の抵抗 [Ω] とする。
- 102
- 103
- 104
- 105
b-b' 間の電圧は,99 + (0.1 + 0.1) × 10 = 101 V である。
a-a' 間の電圧は,101 + (0.1 + 0.1) × (10 + 10) = 105 V である。
よって,答えはニ.である。
No.7 電線路の電圧降下

図のような単相3線式回路で,電線1線当たりの抵抗が0.1 Ω,抵抗負荷に流れる電流がともに20 Aのとき,この電線路の電力損失 [W]は。
- 40
- 69
- 80
- 120
図の単相3線式回路の中性線の電流は0 A である。電線路の電力損失は,2 × 0.1 × 20² = 80 W となる。
よって,答えはハ.である。
No.8 金属管による低圧屋内配線工事
金属管による低圧屋内配線工事で,管内に直径2.0 mm の600 V ビニル絶縁電線(軟銅線)5本を収めて施設した場合,電線 1 本あたりの許容電流 [A] は。
ただし,周囲温度は30 °C以下,電流減少係数は0.56とする。
- 15
- 19
- 27
- 35
直径2.0 mm の600 V ビニル絶縁電線(軟銅線)の許容電流は35 A である。これに電流減少係数を乗ずると,35 × 0.56 = 19 A となる。
よって,答えはロ.である。
No.9 分岐回路の施設

図のように定格電圧60 Aの過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐して,10 mの位置に過電流遮断器を施設するとき,a-b 間の電線の許容電流の最小値 [A] は。
- 15
- 21
- 27
- 33
a-b 間の電線の許容電流の最小値は,0.55 × 60 = 33 A である。
よって,答えはニ.である。
No.10 分岐回路の施設
低圧屋内配線の分岐回路の設計で,配線用遮断器,分岐回路の電線の太さ及びコンセントの組合せとして,適切なものは。
ただし,分岐点から配線用遮断器までは3 m ,配線用遮断器からコンセントまでは8 m とし,電線の数値は分岐回路の電線(軟銅線)の太さを示す。
また,コンセントは兼用コンセントではないものとする。

イ.は分岐回路の種類が30 Aであるため,コンセントは20 A以上30 A以下でなければならない。ハ.は分岐回路の種類が30 Aであるため,電線の太さは2.6 mm以上でなければならない。二.は分岐回路の種類が20 Aであるため,コンセントは20 A以下でなければならない。
よって,答えはロ.である。
No.11 配線用遮断器
低圧電路に使用する定格電流が 20 A の配線用遮断器に 25 A の電流が継続して流れたとき,この配線用遮断器が自動的に動作しなければならない時間 [分] の限度(最大時間)は。
- 20
- 30
- 60
- 120
配線用遮断器の動作時間は下表の通り。
定格電流 | 定格電流の1.25 倍 | 定格電流の2 倍 |
---|---|---|
30 A以下 | 60 分 | 2 分 |
30 Aを超え50 A以下 | 60 分 | 4 分 |
よって,答えはハ.である。
No.12 ノックアウトパンチャ
ノックアウトパンチャの用途で,適切なものは。
- 太い電線管を曲げるのに用いる。
- 金属製キャビネットに穴を開けるのに用いる。
- コンクリート壁に穴を開けるのに用いる。
- 太い電線を圧着接続する場合に用いる。
ノックアウトパンチャは,金属製キャビネットに穴を開けるのに用いる。
よって,答えはロ.である。
No.13 三相かご形誘導電動機
定格周波数 60 Hz,極数4 の低圧三相かご形誘導電動機における回転磁界の同期速度 [min-1] は。
- 1 200
- 1 500
- 1 800
- 3 000
周波数 f ,極数 p とすると,同期速度 Ns は次式で表される。
\[ N_s=\frac{120f}{p}=\frac{120\times60}{4}=1800 \]よって,答えはハ.である。
No.14 蛍光灯と白熱電灯
蛍光灯を,同じ消費電力の白熱電灯と比べた場合,正しいものは。
- 力率が良い。
- 雑音(電磁雑音)が少ない。
- 寿命が短い。
- 発光効率が高い(同じ明るさでは消費電力が少ない)。
白熱電灯は,電気を通すフィラメント,電球を覆うバルブ(ガラス管),口金(ソケット)により構成される。蛍光灯よりも,力率が良い,雑音が少ない,寿命が短いという特徴がある。
答えはニ.である。
No.15 力率の良い電気機械器具
力率の最も良い電気機械器具は。
- 電気トースター
- 電気洗濯機
- 電気冷蔵庫
- 電球形LEDランプ(制御装置内蔵形)
電気トースターは,負荷が抵抗分だけであるので,力率は 100 % である。
答えはイ.である。
No.16 測定器の識別

写真に示す測定器の用途は。
- 接地抵抗の測定に用いる。
- 絶縁抵抗の測定に用いる。
- 電気回路の電圧の測定に用いる。
- 周波数の測定に用いる。
接地抵抗計であり,補助接地棒2本とリード線がついている。
答えはイ.である。
No.17 工具の識別

写真に示す工具の用途は。
- 太い電線を曲げてくせをつけるのに用いる。
- 施工時の電線管の回転等すべり止めに用いる。
- 電線の支線として用いる。
- 架空線のたるみを調整するのに用いる。
写真に示す工具の名称は「張線器」である。電線やメッセンジャワイヤのたるみを取るのに用いる。
答えはニ.である。
No.18 電気工事用材料の識別

写真に示す材料の名称は。
なお,材料の表面には「タイシガイセン EM 600V EEF/F 1.6mm JIS JET <PS>E __社 タイネン 2014」が記されている。
- 無機絶縁ケーブル
- 600V ビニル絶縁ビニルシースケーブル平形
- 600V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル
- 600V ポリエチレン絶縁耐燃性ポリエチレンシースケーブル平形
「タイネン」とは耐燃性のことである。
答えはニ.である。
No.19 低圧屋内配線工事
600V ビニル絶縁ビニルシースケーブル平形 1.6 mm を使用した低圧屋内配線工事で,絶縁電線相互の終端接続部分の絶縁処理として,不適切なものは。
ただし,ビニルテープはJISに定める厚さ約 0.2 mm の絶縁テープとする。
- リングスリーブ(E 形)により接続し,接続部分をビニルテープで半幅以上重ねて3 回(6 層)巻いた。
- リングスリーブ(E 形)により接続し,接続部分を黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープ(厚さ約 0.5 mm)で半幅以上重ねて3 回(6 層)巻いた。
- リングスリーブ(E 形)により接続し,接続部分を自己融着性絶縁テープ(厚さ約 0.5 mm)で半幅以上重ねて1 回(2 層)巻いた。
- 差込形コネクタにより接続し,接続部分をビニルテープで巻かなかった。
自己融着性絶縁テープを使用する場合は,黒色粘着性ポリエチレン絶縁テープを用いる場合と同様にテープを巻き,かつ,その上に保護テープを半幅以上重ねて 1 回以上巻くことが必要となる。
答えはハ.である。
No.20 屋内配線工事
木造住宅の単相3線式 100/200 V 屋内配線工事で,不適切な工事方法は。
ただし,使用する電線は600 V ビニル絶縁電線,直径 1.6 mm(軟銅線)とする。
- 同じ径の硬質ビニル電線管(VE)2 本をTSカップリングで接続した。
- 合成樹脂製可とう電線管(PF管)内に通線し,支持点間の距離を1.0 mで造営材に固定した。
- 金属管を点検できない隠ぺい場所で使用した。
- 合成樹脂製可とう電線管(CD管)を木造の床下や壁の内部及び天井裏に配管した。
合成樹脂管工事により,合成樹脂製可とう電線管(CD管)は,次のいずれかにより施設する。
- 直接コンクリートに埋め込んで施設すること。
- 専用の不燃性又は自然性のある難燃性の管又はダクトに収めて施設すること。
よって,木造の床下や壁の内部及び天井裏に配管することはできない。
答えはロ.である。
No.21 特殊場所に施工する低圧屋内配線工事
特殊場所とその場所に施工する低圧屋内配線工事の組合せで,不適切なものは。
- プロパンガスを他の小さな容器に小分けする可燃性ガスのある場所
厚鋼電線管で保護した600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブルを用いたケーブル工事 - 小麦粉をふるい分けする可燃性粉じんのある場所
硬質塩化ビニル電線管 VE28 を使用した合成樹脂管工事 - 石油を貯蔵する危険物の存在する場所
金属線ぴ工事 - 自動車修理工場の吹き付け塗装作業を行う可燃性ガスのある場所
厚鋼電線管を使用した金属管工事
特殊な場所の工事の種類は下表のとおり。
特殊場所の種類 | 工事の種類 |
---|---|
爆燃性粉じんの存在する場所 | 金属管工事(薄鋼電線管以上の強度を有するもの) ケーブル工事(キャブタイヤケーブルを除く) |
可燃性ガスの存在する場所 (プロパンガス等) |
|
可燃性粉じんの存在する場所 | 金属管工事(薄鋼電線管以上の強度を有するもの) ケーブル工事 合成樹脂管工事(厚さ2mm未満の合成樹脂管,CD管を除く) |
危険物等の存在する場所 (石油等) |
よって,答えはハ.である。
No.22 D種接地工事の省略
D種接地工事を省略できないものは。
ただし,電路には定格感度電流 15 mA,動作時間0.1 秒以下の電流動作型の漏電遮断器が取り付けられているものとする。
- 乾燥した場所に施設する三相 200 V(対地電圧 200 V )動力配線の電線を収めた長さ 3 m の金属管
- 水気のある場所のコンクリートの床に施設する三相 200 V (対地電圧 200 V )誘導電動機の鉄台
- 乾燥した木製の床の上で取り扱うように施設する三相 200 V (対地電圧 200 V )空気圧縮機の金属製外箱部分
- 乾燥した場所に施設する単相3線式 100/200 V(対地電圧 100 V )配線の電線を収めた長さ 7 m の金属管
水気のある場所では,D種接地工事を省略することができない。
答えはロ.である。
No.23 低圧屋内配線
100 V の低圧屋内配線に,ビニル平形コード(断面積 0.75 mm²)2 心を絶縁性のある造営材に適当な留め具で取り付けて,施設することができる場所又は箇所は。
- 乾燥した場所に施設し,かつ,内部を乾燥状態で使用するショウウインドー内の外部から見えやすい箇所
- 木造住宅の人の触れるおそれのない点検できる押し入れの壁面
- 木造住宅の和室の壁面
- 乾燥状態で使用する台所の床下収納庫
特殊な配線等の施設によると,ショウウィンドウーは,乾燥した場所に施設し,内部を乾燥した状態で使用するものであれば,外部から見やすい箇所に限り,コードを造営材に接触して施設することができる。
答えはイ.である。
No.24 電圧計,電流計,電力計の結線方法
単相交流電源から負荷に至る回路において,電圧計,電流計,電力計の結線方法として,正しいものは。

電流計は直列に接続するので,ロ.とハ.は不適切。電力計の接続で正しいのはイ.であり,ニ.は電力計の接続が誤っている(負荷の電流が測定できない)。
よって,答えはイ.である。
No.25 直読式接地抵抗計を用いた接地抵抗の測定
直読式接地抵抗計を用いて,接地抵抗を測定する場合,被測定接地極 E に対する,2 つの補助接地極 P (電圧用)及び C (電流用)の配置として,最も適切なものは。


接地抵抗計(Grounding Resistance Meter)には,接地極(E),補助接地極(電圧極P),補助接地極(電流極C)の 3 つの端子がある。接地抵抗を測定する場合は,右図のように被測定接地極を端とし,一直線上に 2 箇所の補助接地極を順次 10 m 程度離して配置する。
イ.は 3 つの極の配置が正三角形となっており不適である。
ロ.とニ.は,極の配置が間違っているため不適である。
答えはハ.である。
No.26 回路計(テスタ)
回路計(テスタ)に関する記述として,正しいものは。
- ディジタル式は電池を内蔵しているが,アナログ式は電池を必要としない。
- 電路と大地間の抵抗測定を行った。その測定値は電路の絶縁抵抗値として使用してよい。
- 交流又は直流電圧を測定する場合は,あらかじめ想定される値の直近上位のレンジを選定して使用する。
- 抵抗を測定する場合の回路計の端子における出力電圧は,交流電圧である。
絶縁抵抗は絶縁抵抗計(メガー)にて測定する。
よって,答えはハ.である。
No.27 一般用電気工作物の検査
一般用電気工作物の低圧屋内配線工事が完了したときの検査で,一般的に行われている検査項目の組合せとして,正しいものは。
- 目視点検,絶縁抵抗測定,接地抵抗測定,温度上昇試験
- 目視点検,導通試験,絶縁抵抗測定,接地抵抗測定
- 目視点検,導通試験,絶縁耐力試験,温度上昇試験
- 目視点検,導通試験,絶縁抵抗測定,絶縁耐力試験
一般用電気工作物の低圧屋内配線工事が完了したときの検査では,温度上昇試験や絶縁耐力試験は行わない。
よって,答えはロ.である。
No.28 電気工事士法
電気工事士法において,一般用電気工作物の工事又は作業で電気工事士でなければ従事できないものは。
- 電圧 600 V 以下で使用する電動機の端子にキャブタイヤケーブルをねじ止めする。
- 火災感知器に使用する小型変圧器(二次電圧が 36 V 以下)二次側の配線をする。
- 電線を支持する柱を設置する。
- 配電盤を造営材に取り付ける。
イ.,ロ.,ハ.は,電気工事士でなくてもできる軽微な工事である。
答えはニ.である。
No.29 特定電気用品
電気用品安全法の適用を受ける次の配線器具のうち,特定電気用品の組合せとして,正しいものは。
ただし,定格電圧,定格電流,極数等から全てが「電気用品安全法」に定める電気用品であるとする。
- タンブラースイッチ,カバー付ナイフスイッチ
- 電磁開閉器,フロートスイッチ
- ライティングダクト,差込み接続器
- タイムスイッチ,配線用遮断器
カバー付ナイフスイッチは,特定電気用品以外の電気用品である。
電磁開閉器は,特定電気用品以外の電気用品である。
ライティングダクトは,特定電気用品以外の電気用品である。
答えはニ.である。
No.30 一般用電気工作物
一般用電気工作物に関する記述として,正しいものは。
ただし,発電設備は電圧 600 V 以下とする。
- 低圧で受電するものは,小出力発電設備を同一構内に施設しても,一般用電気工作物となる。
- 低圧で受電するものは,出力55 kW の太陽電池発電設備を同一構内に施設しても,一般用電気工作物となる。
- 高圧で受電するものは,受電電力の容量,需要場所の業種にかかわらず,すべて一般用電気工作物となる。
- 高圧で受電するものであっても,需要場所の業種によっては,一般用電気工作物になる場所がある。
ロ.は,太陽電池発電設備の出力が 55 kW であり,小出力発電設備の条件である 20 kW を満たさない。
ハ.とニ.は,高圧で受電しており,不適である。
答えはイ.である。