平成28年度 第二種電気工事士 下期 筆記試験 解答と解説
本問題の計算で $\sqrt{2}$,$\sqrt{3}$ 及び円周率 $\pi$ を使用する場合の数値は次によること。$\sqrt{2}=1.41$,$\sqrt{3}=1.73$,$\pi=3.14$
No.1 電圧計の指示値

図のような回路で,電流計 の値が 1 A を示した。このときの電圧計
の指示値 [V] は。
- 16
- 32
- 40
- 48
電流計が設置されている並列回路の電圧は 8 Ω × 1 A = 8 V である。
並列回路の電流合計は,1 A + 1 A + 2 A = 4 A となり,電圧計が設置されている 4 Ω の抵抗には 4 A の電流が流れる。電圧計の指示値は,4 Ω × 4 A = 16 V となる。
よって,答えはイ.である。
No.2 合成抵抗

図のような回路で,スイッチ S1 を閉じ,スイッチ S2 を開いたときの,端子 a-b 間の合成抵抗 [Ω] は。
- 45
- 60
- 75
- 120
スイッチ S1 を閉じ,スイッチ S2 を開いたとき,端子 a-b 間は 30 Ωの抵抗の直列回路となり,合成抵抗は 30 Ω + 30 Ω = 60 Ω となる。
よって,答えはロ.である。
No.3 電線の抵抗
直径 2.6 mm ,長さ 10 m の銅導線と抵抗値が最も近い銅材質の銅導線は。
- 直径 1.6 mm ,長さ 20 m
- 断面積 5.5 mm² ,長さ 10 m
- 直径 3.2 mm ,長さ 5 m
- 断面積 8 mm² ,長さ 10 m
電線の抵抗 R [Ω]は抵抗率 ρ [Ω・mm²/m],電線の長さ l [m],電線の断面積 A [mm²](電線の直径 D [mm])を用いて次式で表される。
\[ R=\rho\frac{l}{A}=\rho\frac{4l}{\pi D^2} \]直径 2.6 mm ,長さ 10 m の銅導線と抵抗値は 1.88ρ [Ω] ,イ.は 9.95ρ [Ω] ,ロ.は 1.81ρ [Ω] ,ハ.は 0.62ρ [Ω] ,ニ.は 1.25ρ [Ω] となる。
よって,答えはロ.である。
No.4 負荷の力率

図のような交流回路で,電源電圧 102 V ,抵抗の両端の電圧が 90 V ,リアクタンスの両端の電圧が 48 V であるとき,負荷の力率 [%] は。
- 47
- 69
- 88
- 96
回路の力率は次式で表される。
\[ \cos\theta=\frac{V_R}{\sqrt{V_R^2+V_L^2}}=\frac{90}{\sqrt{90^2+48^2}}=0.88 \]よって,答えはハ.である。
No.5 線間電圧

図のような三相負荷に三相交流電圧を加えたとき,各線に 20 A の電流が流れた。線間電圧 E [V] は。
- 120
- 173
- 208
- 240
相電圧は,6 Ω × 20 A = 120 V となる。線間電圧は 相電圧を 1.73 倍して 208 V となる。
よって,答えはハ.である。
No.6 電圧降下

図のような単相 3 線式回路において,電線1線当たりの抵抗が 0.1 Ω のとき, a-b 間の電圧 [V] は。
- 99
- 100
- 101
- 102
a-b 間の電圧は,103 V - 0.1 Ω × 20 A - 0.1 Ω × 10 A = 100 V となる。
よって,答えはロ.である。
No.7 金属管による低圧屋内配線工事
金属管による低圧屋内配線工事で,管内に直径 2.0 mm の 600 V ビニル絶縁電線(軟銅線) 4 本を収めて施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は。
ただし,周囲温度は 30 °C 以下,電流減少係数は 0.63 とする。
- 17
- 22
- 30
- 35
絶縁電線の周囲温度30 °Cにおける許容電流(allowable current)は,単線(solid wire)に銅線または軟硬銅線を用いる場合,次表のようになる。
単線 [mm] | 許容電流 [A] |
---|---|
1.6 | 27 |
2.0 | 35 |
2.6 | 48 |
2.0 [mm]の単線の許容電流 35 A に電流減少係数 0.63 を乗じると,22 A となる。
よって,答えはロ.である。
No.8 電線路の電力損失

図のような三相 3 線式回路で,電線 1 線当たりの抵抗値が 0.15 Ω ,線電流が 10 A のとき,この電線路の電力損失 [W] は。
- 2.6
- 15
- 26
- 45
この電線路の電力損失 [W] は次式で表される。
\[ 3rI^2=3\times0.15\times10^2=45 \]よって,答えはニ.である。
No.9 分岐回路の施設
低圧屋内配線の分岐回路の設計で,配線用遮断器,分岐回路の電線の太さ及びコンセントの組合せとして,適切なものは。
ただし,分岐回路から配線用遮断器までは 3 m,配線用遮断器からコンセントまでは 8 m とし,電線の数値は分岐回路の電線(軟銅線)の太さを示す。
また,コンセントは兼用コンセントではないものとする。

分岐回路の種類と電線の太い,コンセントの対応は次表となる。
分岐回路の種類 | 電線の太さ | コンセント |
---|---|---|
20 A 配線用遮断器 | 1.6 mm 以上 | 20 A 以下 |
30 A 配線用遮断器 | 2.6 mm (5.5 mm²)以上 |
20 A 以上30 A 以下 |
ロ.は電線の太さ,ハ.はコンセント,二.はコンセントが不適切である。
よって,答えはイ.である。
No.10 分岐回路の施設

図のように定格電流 60 A の過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐して,10 m の位置に過電流遮断器を施設するとき,a-b 間の電線の許容電流の最小値 [A] は。
- 15
- 21
- 27
- 33
a-b 間の電線の許容電流の最小値 [A] は,0.55 × 60 A = 33 A となる。
よって,答えは二.である。
No.11 漏電遮断器
漏電遮断器に関する記述として,誤っているものは。
- 高速形漏電遮断器は,定格感度電流における動作時間が 0.1 秒以下である。
- 高感度形漏電遮断器は,定格感度電流が 1,000 mA 以下である。
- 漏電遮断器は,零相変流器によって地絡電流を検出する。
- 漏電遮断器には,漏電電流を模擬したテスト装置がある。
高感度形漏電遮断器は,定格感度電流が 30 mA 以下の漏電遮断器である。
よって,答えはロ.である。
No.12 ねじなしボックスコネクタ
金属管工事に使用される「ねじなしボックスコネクタ」に関する記述として,誤っているものは。
- ねじなし電線管と金属製アウトレットボックスを接続するのに用いる。
- ボンド線を接続するための接地用の端子がある。
- 絶縁ブッシングを取り付けて使用する。
- ねじなし電線管との接続は止めネジを回して,ネジの頭部をねじ切らないように締め付ける。
「ねじなしボックスコネクタ」は,ねじなし電線管と金属製アウトレットを接続するのに用いる。「ねじなしボックスコネクタと金属製アウトレットボックスは,ボンド線で接続する。それぞれに,接地用の端子がある。また,電線の被覆を傷つけないように,絶縁ブッシングを取り付けて,使用する。
答えはニ.である。
No.13 組み合わせて使用する機器
組み合わせて使用する機器で,その組合せが明らかに誤っているものは。
- ネオン変圧器と高圧水銀灯
- 光電式自動点滅器と庭園灯
- 零相変流器と漏電遮断器
- スターデルタ始動器と一般用低圧三相かご形誘導電動機
ネオン放電灯は,電気の放電を利用して点灯するので,高電圧を使う。そのため,低電圧を高電圧に昇圧するのに,ネオン変圧器を使う。
答えはイ.である。
No.14 移動電線
使用電圧が 300 V 以下の屋内に施設する器具であって,付属する移動電線にビニルコードが使用できるものは。
- 電気トースター
- 電気こたつ
- 電気扇風機
- 電気こんろ
ビニルコードは,熱に弱いため,電気トースター,電気こたつ,電気こんろでは,付属する移動電線にビニルコードを使用することができない。
答えはハ.である。
No.15 金属管工事の切断及び曲げ作業
金属管(鋼製電線管)工事で切断及び曲げ作業に使用する工具の組合せとして,適切なものは。
- リーマ,金切りのこ,パイプベンダ
- やすり,パイプレンチ,トーチランプ
- やすり,金切りのこ,トーチランプ
- リーマ,パイプレンチ,パイプベンダ
金属管の切断には金切りのこ,リーマを用い,曲げ作業にはパイプベンダを用いる。
よって,答えはイ.である。
No.16 材料の識別

写真に示す材料が使用される工事は。
- 金属線ぴ工事
- 金属ダクト工事
- 金属可とう電線管工事
- 金属管工事
モールは金属製で,幅が 25 mmであるため,1 種金属線ぴ(幅が 40 mm未満)に該当し,写真に示す材料の名称は「メタルモール」である。金属線ぴ工事は金属製の線ぴを使う工事で,その金属製の線ぴ(メタルモール)の中に電線を通して配線する工事である。
答えはイ.である。
No.17 材料の識別

写真に示す材料の用途は。
- フロアダクトが交差する箇所に用いる。
- 多数の遮断器を集合して設置するために用いる。
- 多数の金属管が集合する箇所に用いる。
- 住宅でスイッチやコンセントを取り付けるのに用いる。
写真に示す材料の名称は「スイッチボックス」であり,住宅でスイッチやコンセントを取り付けるのに用いる。
答えはニ.である。
No.18 工具の識別

写真に示す工具の用途は。
- VVR ケーブルの外装や絶縁被覆をはぎ取るのに用いる。
- CV ケーブル(低圧用)の外装や絶縁被覆をはぎ取るのに用いる。
- VVF ケーブルの外装や絶縁被覆をはぎ取るのに用いる。
- VFF コード(ビニル平形コード)の絶縁被覆をはぎ取るのに用いる。
写真に示す工具の左側は「ワイヤストリッパ」,右側は「ケーブルストリッパ」である。ワイヤストリッパは,電線の絶縁被覆のはぎ取りに用いる。ケーブルストリッパは,VVFケーブルの外装や心線の絶縁被覆のはぎ取りに用いる。
答えはハ.である。
No.19 金属可とう電線管工事
使用電圧 200 V の電動機を接続する部分の金属可とう電線管工事として,不適切なものは。
ただし,管は 2 種金属製可とう電線管を使用する。
- 管とボックスとの接続にストレートボックスコネクタを使用した。
- 管の長さが 6 m であるので,電線管の D 種接地工事を省略した。
- 管の内側の曲げ半径を管の内径の 6 倍以上とした。
- 管と金属管(鋼製電線管)との接続にコンビネーションカップリングを使用した。
金属可とう電線管工事において,低圧屋内配線の使用電圧が 300 V 以下の場合は,電線管には,D 種接地工事を施さなければならない。ただし,管の長さが 4 m 以下のものを施設する場合は,この限りでない。
答えはロ.である。
No.20 住宅用分電盤の工事
単相 3 線式 100/200 V 屋内配線の住宅用分電盤の工事を施工した。不適切なものは。
- 電灯専用(単相 100 V )の分岐回路に 2 極 1 素子の配線用遮断器を用い,素子のない極に中性線を結線した。
- 電熱器(単相 100 V )の分岐回路に 2 極 2 素子の配線用遮断器を取り付けた。
- 主開閉器の中性極の銅バーを取り付けた。
- ルームエアコン(単相 200 V )の分岐回路に 2 極 1 素子の配線用遮断器を取り付けた。
単相 3 線式 200 V 分岐回路の配線用遮断器は,2 極 2 素子でなければならない。
答えはニ.である。
No.21 電磁的不平衡
電磁的不平衡を生じないように,電線金属管に挿入する方法として,適切なものは。

ハ.の挿入方法だけが,電磁的不平衡を生じない。
答えはハ.である。
No.22 低圧屋内配線の図記号
低圧屋内配線の図記号と,それに対する施工方法の組合せとして,正しいものは。

イ.は「ねじなし電線管の露出配線」,ロ.は「合成樹脂製可とう電線管の天井隠ぺい配線」,ハ.は「薄鋼電線管の天井隠ぺい線」である。
答えはニ.である。
No.23 壁を貫通する低圧屋内配線工事
木造住宅の金属板張り(金属系サイディング)の壁を貫通する部分の低圧屋内配線工事として,適切なものは。
ただし,金属管工事,金属可とう電線管工事に使用する電線は,600 V ビニル絶縁電線とする。
- 金属管工事とし,壁の金属板張りと電気的に完全に接続された金属管に D 種接地工事を施し,貫通施工した。
- 金属管工事とし,壁に小径の穴を開け,金属板張りと金属管とを接触させ金属管を貫通施工した。
- 金属可とう電線管工事とし,壁の金属板張りを十分に切り開き,金属製可とう電線管を壁と電気的に接続し,貫通施工した。
- ケーブル工事とし,壁の金属板張りを十分に切り開き,600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブルを合成樹脂管に収めて電気的に絶縁し,貫通施工した。
メタルラス張り等の木造造営物における施設によると,金属管工事,又は金属可とう電線管工事により施設する電線は,金属板張りの造営材を貫通する場合は,その部分の金属板を十分に切り開き,かつ,その部分の金属管,又は金属可とう電線管に,耐久性のある絶縁管をはめる,又は耐久性のある絶縁テープを巻くことにより,金属板と電気的に接触しないように施設しなければならない。
答えはニ.である。
No.24 導通試験
導通試験の目的として,誤っているものは。
- 器具への結線の未接続を発見する。
- 電路の充電の有無を確認する。
- 回路の接続の正誤を判別する。
- 電線の断線を発見する。
電路の充電の有無を確認するのは,検電である。
よって,答えはロ.である。
No.25 絶縁抵抗
単相 3 線式 100/200 V の屋内配線において,開閉器又は過電流遮断器で区切ることができる電路ごとの絶縁抵抗の最小値として,「電気設備に関する技術基準を定める省令」に規定されている値 [MΩ] の組合せで,正しいものは。
- 電路と大地間 0.1 ,電線相互間 0.1
- 電路と大地間 0.1 ,電線相互間 0.2
- 電路と大地間 0.2 ,電線相互間 0.2
- 電路と大地間 0.2 ,電線相互間 0.4
低圧電路の絶縁性能は次表となる。電路と大地間は 100 V なので,電路と大地間,電線相互間は 0.1 MΩ以上であればよい。
電路の使用電圧の区分 | 絶縁抵抗値 | |
---|---|---|
300 V 以下 | 対地電圧が 150 V 以下の場合 | 0.1 MΩ 以上 |
その他の場合 | 0.2 MΩ 以上 | |
300 V を超えるもの | 0.4 MΩ 以上 |
答えはイ.である。
No.26 ネオン式検電器
ネオン式検電器を使用する目的は。
- ネオン放電灯の照度を測定する。
- ネオン管灯回路の導通を調べる。
- 電路の漏れ電流を測定する。
- 電路の充電の有無を確認する。
低圧検電器には,「ネオン式」と「音響発光式」がある。いずれも,低圧電気回路の充電の有無を調べるのに用いる。
答えはニ.である。
No.27 単相負荷の力率を求めるのに必要な測定器
低圧屋内電路に接続されている単相負荷の力率を求める場合,必要な測定器の組合せとして,正しいものは。
- 周波数計,電圧計,電力計
- 周波数計,電圧計,電流計
- 電圧計,電流計,電力計
- 周波数計,電流計,電力計
電圧計は測定する負荷と並列に,電流計は負荷と直列に接続する。電力計は電圧コイルを負荷と並列に,電流コイルを負荷と直列に接続する。電力計で測定した電力を,電圧計で測定した電圧と電流計で測定した電流の積で除したものが力率である。
答えはハ.である。
No.28 電気工事士法
電気工事士法において,第二種電気工事士免状の交付を受けている者であっても従事できない電気工事の作業は。
- 自家用電気工作物(最大電力 500 kW 未満の需要設備)の地中電線用の管を設置する作業
- 自家用電気工作物(最大電力 500 kW 未満の需要設備)の低圧部分の電線相互を接続する作業
- 一般用電気工作物の接地工事の作業
- 一般用電気工作物のネオン工事の作業
第二種電気工事士の作業範囲は,一般用電気工作物に限られる。地中電線用の管を設置する作業は,電気工事士でなくてもできる軽微な作業なので,従事することができる。
答えはロ.である。
No.29 電気用品安全法
電気用品安全法の適用を受ける電気用品に関する記述として,誤っているものは。
の記号は,電気用品のうち「特定電気用品以外の電気用品」を示す。
の記号は,電気用品のうち「特定電気用品」を示す。
- <PS>Eの記号は,電気用品のうち輸入した「特定電気用品以外の電気用品」を示す。
- 電気工事士は,電気用品安全法に定められた所定の表示が付されているものでなければ,電気用品を電気工作物の設置又は変更の工事に使用してはならない。
<PS>Eは「特定電気用品」,(PS)Eは「特定電気用品以外の電気用品」の表示である。
答えはハ.である。
No.30 一般用電気工作物
一般用電気工作物の適用を受けるものは。
ただし,発電設備は電圧 600 V 以下で,1 構内に設置するものとする。
- 高圧受電で,受電電力の容量が 55 kW の機械工場
- 低圧受電で,受電電力の容量が 40 kW,出力 15 kW の非常用内燃力発電設備を備えた映画館
- 高圧受電で,受電電力の容量が 55 kW のコンビニエンスストア
- 低圧受電で,受電電力の容量が 40 kW,出力 15 kW の太陽電池発電設備を備えた幼稚園
太陽電池発電設備は 20 kW 未満であれば,小出力発電設備(600 V 以下)に該当する。
答えは二.である。