平成29年度 第二種電気工事士 下期 筆記試験 解答と解説
本問題の計算で $\sqrt{2}$,$\sqrt{3}$ 及び円周率 $\pi$ を使用する場合の数値は次によること。$\sqrt{2}=1.41$,$\sqrt{3}=1.73$,$\pi=3.14$
No.1 直流回路の電圧

図のような直流回路で,a-b 間の電圧 [V] は。
- 20
- 30
- 40
- 50
40 Ω と 60 Ω の抵抗に流れる電流は,(100 V + 100 V)/(40 Ω + 60 Ω) = 2 A である。40 Ω の抵抗での電圧降下は,40 Ω × 2 A = 80 V となる。よって,a-b 間の電圧は,100 V - 80 V = 20 V で,答えはイ.20となる。
No.2 交流回路の電圧

図のような交流回路で,抵抗 8 Ω の両端の電圧 V [V] は。
- 43
- 57
- 60
- 80
交流回路を流れる電流は,次式のとおり 10 A である。
\[ \frac{100}{\sqrt{8^2+6^2}}=10 \]よって,抵抗 8 Ω の両端の電圧は,8 Ω × 10 A = 80 V で,答えはニ.80となる。
No.3 銅線の電気抵抗
抵抗率 ρ [Ω·m] ,直径 D [mm] ,長さ L [m] の導線の電気抵抗 [Ω] を表す式は。
- $\frac{\rho L^2}{\pi D^2}\times10^6$
- $\frac{4\rho L}{\pi D^2}\times10^6$
- $\frac{4\rho L}{\pi D}\times10^6$
- $\frac{4\rho L^2}{\pi D^2}\times10^6$
電線の抵抗は抵抗率,電線の長さに比例し,電線の断面積に反比例する。よって,答えはロ.である。
No.4 発熱量
消費電力が 400 W の電熱器を,1 時間 20 分使用したときの発熱量 [kJ] は。
- 960
- 1 920
- 2 400
- 2 700
発熱量は,400 W × (60+20)/60 × 3600 ÷ 1000 = 1 920 [kJ] で,答えはロ.である。
No.5 三相 3 線式 200 V 回路

図のような三相 3 線式の回路の全消費電力 [kW] は。
- 2.4
- 4.8
- 7.2
- 9.6
相電流の大きさは,次式のとおり 20 A である。
\[ \frac{200}{\sqrt{6^2+8^2}}=20 \]回路の全消費電力 [kW] は,3 × 6 × 20² ÷ 1000 = 7.2 [kW] で,答えはハ.である。
No.6 配線における電圧降下

図のように,電線のこう長 L [m] の配線により,抵抗負荷に電力を供給した結果,負荷電流が 10 A であった。配線における電圧降下 V1 - V2 [V] を表す式として,正しいものは。
ただし,電線の電気抵抗は長さ 1 m 当たり r [Ω] とする。
- rL
- 2rL
- 10rL
- 20rL
L [m] の電線の抵抗は,rL [Ω] である。電圧降下は,2 × rL × 10[A] = 20 rL [V] で,答えはニ.である。
No.7 金属管による低圧屋内配線工事
金属管による低圧屋内配線工事で,管内に直径 1.6 mm の 600 V ビニル絶縁電線(軟銅線) 6 本を収めて施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は。
ただし,周囲温度は 30 °C 以下,電流減少係数は 0.56 とする。
- 15
- 19
- 20
- 27
導体の直径が1.6 [mm] 以上 2.0 [mm] 未満の単線の許容電流は,27 A である。これに電流減少係数 0.56 を乗じて,求める許容電流は 27 × 0.56 = 15.12 [A] で,答えはイ.である。
No.8 低圧屋内幹線

図のように,三相の電動機と電熱器が低圧屋内幹線に接続されている場合,幹線の太さを決める根拠となる電流の最小値 [A] は。
ただし,需要率は 100 % とする。
- 45
- 50
- 55
- 60
電動機の定格電流の合計 10 A よりも,電熱器の定格電流の合計 35 A が大きい。このとき,幹線の太さを決める根拠となる電流の最小値は,電動機の定格電流の合計と電熱の定格電流の合計を足し合わせたものとなり,45 [A] で,答えはイ.である。
No.9 低圧屋内配線の分岐回路の設計
低圧屋内配線の分岐回路の設計で,配線用遮断器,分岐回路の電線の太さ及びコンセントの組合せとして,適切なものは。
ただし,分岐点から配線用遮断器までは 3 m ,配線用遮断器からコンセントまでは 8 m とし,電線の数値は分岐回路の電線(軟銅線)の太さを示す。
また,コンセントは兼用コンセントではないものとする。

イ.は,定格電流 20 A の配線用遮断器を用いているので,電線の太さは 2 mm でなければならないし,コンセントの定格電流は 20 A のものでなければならない。
ロ.は,定格電流 30 A の配線用遮断器を用いているので,電線の太さは 2.6 mm でなければならない。
ニ.は,定格電流 30 A の配線用遮断器を用いているので,コンセントの定格電流は 20 A 以上 30 A 以下のものでなければならない。
よって,答えはハ.である。
分岐回路を保護する過電流遮断器の種類 | 軟銅線の太さ | コンセント |
---|---|---|
定格電流が 15 A 以下のもの | 直径 1.6 mm |
定格電流が 15 A 以下のもの |
定格電流が 15 A を超え 20 A 以下の配線用遮断器 | 定格電流が 20 A 以下のもの | |
定格電流が 15 A を超え 20 A 以下のもの(配線用遮断器を除く。) | 直径 2 mm |
定格電流が 20 A のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。) |
定格電流が 20 A を超え 30 A 以下のもの | 直径 2.6 mm |
定格電流が 20 A 以上 30 A 以下のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。) |
定格電流が 30 A を超え 40 A 以下のもの | 断面積 8 mm² |
定格電流が 30 A 以上 40 A 以下のもの |
定格電流が 40 A を超え 50 A 以下のもの | 断面積 14 mm² |
定格電流が 40 A 以上 50 A 以下のもの |
No.10 低圧屋内幹線の分岐

図のように定格電流 100 A の配線用遮断器で保護された低圧屋内幹線から VVR ケーブル太さ 5.5 mm² (許容電流 34 A )で低圧屋内電路を分岐する場合,a-b 間の長さの最大値 [m] は。
ただし,低圧屋内幹線に接続される負荷は,電灯負荷とする。
- 3
- 5
- 8
- 制限なし
電線VVR 5.5 の許容電流(34 A)が,その電線に接続する低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流(100 A)の 34 % である。この場合,原則どおり,低圧幹線との分岐から電線の長さが 3 m 以下の箇所に,過電流遮断器を施設しなければならない。よって,答えはイ.である。
No.11 アウトレットボックスの使用方法
アウトレットボックス(金属製)の使用方法として,不適切なものは。
- 金属管工事で電線の引き入れを容易にするのに用いる。
- 配線用遮断器を集合して設置するのに用いる。
- 金属管工事で電線相互を接続する部分に用いる。
- 照明器具などを取り付ける部分で電線を引き出す場合に用いる。
アウトレットボックスは,金属管工事で電線を接続したり,電灯やコンセントを取り付けるのに用いる。よって,答えはロ.である。
No.12 組み合わせて使用する機器
組み合わせて使用する機器で,その組合せとして,明らかに誤っているものは。
- 光電式自動点滅器 と 庭園灯
- 零相変流器 と 漏電警報器
- ネオン変圧器 と 高圧水銀灯
- スターデルタ始動器 と 一般用低圧三相かご形誘導電動機
ネオン変圧器は,ネオン放電灯を点灯するのに用いる。よって,答えはハ.である。
No.13 三相誘導電動機
三相誘導電動機が周波数 50 Hz の電源で無負荷運転されている。この電動機を周波数 60 Hz の電源で無負荷運転した場合の回転の状態は。
- 回転速度は変化しない。
- 回転しない。
- 回転速度が減少する。
- 回転速度が増加する。
三相誘導電動機の同期速度は,周波数に比例する。よって,周波数を 50 Hz から 60 Hz にしたとき,回転速度は増加し,答えはニ.である。
No.14 電気工事の種類と工具
電気工事の種類と,その工事で使用する工具の組合せとして,適切なものは。
- 金属管工事 と リーマ
- 合成樹脂管工事 と パイプベンダ
- 金属線ぴ工事 と ボルトクリッパ
- バスダクト工事 と ガストーチランプ
リーマは,クリックボールに取り付けて,金属管の内側にバリを取って滑らかにする。よって,答えはイ.である。
なお,その他の工具の用途は次の通り。パイプベンダは,金属管を曲げるのに用いる。ボルトクリッパは,メッセンジャワイヤ,電線等の切断に使用する。ガストーチランプは,硬質塩化ビニル電線管を加熱して曲げるのに用いる。
No.15 電球形 LED ランプの特徴
白熱電球と比較して,電球形 LED ランプ(制御装置内蔵形)の特徴として,正しいものは。
- 寿命が短い。
- 発光効率が高い(同じ明るさでは消費電力が少ない)。
- 価格が安い。
- 力率が高い。
白熱電球と比較して,電球形 LED ランプ(制御装置内蔵形)の特徴は,寿命が長い,発光効率が高い,価格がやや高い,である。力率については,そもそも白熱電球の力率は 100 % であり,力率が高いは正しくない。よって,答えはロ.である。
No.16 工具の識別

写真に示す工具の用途は。
- 金属管切り口の面取りに使用する。
- 木柱の穴あけに使用する。
- 鉄板,各種合金板の穴あけに使用する。
- コンクリート壁の穴あけに使用する。
工具の名称は「ホルソ」で,鉄板,各種合金板の穴あけに使用する。よって,答えはハ.である。
No.17 器具の識別

写真に示す器具の○で囲まれた部分の名称は。
- 漏電遮断器
- 電磁接触器
- 熱動継電器
- 漏電警報器
器具の名称は,サーマルリレーである。モータの過負荷,拘束などにより過電流が流れ続けた時,モータが焼損する前にサーマルリレーで検出し,電磁接触器やブレーカなどで回路を遮断し,モータの焼損を保護する。○で囲まれた部分は,電磁接触器であり,答えはロ.である。
No.18 材料の用途

写真に示す材料の用途は。
- PF 管を支持するのに用いる。
- 照明器具を固定するのに用いる。
- ケーブルを束線するのに用いる。
- 金属線ぴを支持するのに用いる。
材料の名称は,PF 管用サドルで,PF 管を露出配管する場合の固定に使用する。よって,答えはイ.である。
No.19 低圧屋内配線の図記号
低圧屋内配線の図記号と,それに対する施工方法の組合せとして,誤っているものは。

ロ.に記載されるE19は,ねじなし電線管の図記号である。よって,答えはロ.である。
No.20 絶縁電線相互の接続
単相 100 V の屋内配線工事における絶縁電線相互の接続で,不適切なものは。
- 絶縁電線の絶縁物と同等以上の絶縁効力のあるもので十分被覆した。
- 電線の引張強さが 15 % 減少した。
- 差込形コネクタによる終端接続で,ビニルテープによる絶縁は行わなかった。
- 電線の電気抵抗が 5 % 増加した。
電線の接続において,電線の電気抵抗を増加させてはならない。よって,答えはニ.である。
No.21 三相電動機回路の施工方法
使用電圧 200 V の三相電動機回路の施工方法で,不適切なものは。
- 金属管工事に 600 V ビニル絶縁電線を使用した。
- 湿気の多い場所に 1 種金属製可とう電線管を用いた金属可とう電線管工事を行った。
- 乾燥した場所の金属管工事で,管の長さが 3 m なので金属管の D 種接地工事を省略した。
- 造営材に沿って取り付けた 600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブルの支持点間の距離を 2 m 以下とした。
1 種金属製可とう電線管は,展開した場所,点検できる隠ぺい場所で乾燥しているときでなければ,使用することができない。よって,答えはロ.である。
No.22 低圧屋内配線
低圧屋内配線の金属可とう電線管工事として,不適切なものは。
ただし,管は 2 種金属製可とう電線管を使用するものとする。
- 管と金属管(鋼製電線管)との接続に TS カップリングを使用した。
- 管相互及び管とボックスとは,堅ろうに,かつ,電気的に完全に接続した。
- 管内に 600 V ビニル絶縁電線を収めた。
- 管とボックスとの接続にストレートボックスコネクタを使用した。
TS カップリングは,硬質塩化ビニル電線管相互を接続するのに用いる。よって,答えはイ.である。
No.23 ネオン放電灯工事
屋内の管灯回路の使用電圧が 1 000 V を超えるネオン放電灯工事として,不適切なものは。
ただし,接触防護措置が施してあるものとする。
- ネオン変圧器への 100 V 電源回路は,専用回路とし,20 A 配線用遮断器を設置した。
- ネオン変圧器の二次回路(管灯回路)の配線を,点検できる隠ぺい場所に施設した。
- ネオン変圧器の二次回路(管灯回路)の配線を,ネオン電線を使用し,がいし引き工事により施設し,電線の支持点間の距離を 2 m とした。
- ネオン変圧器の金属製外箱に D 種接地工事を施した。
電線の支持点間の距離は 1 m でなければならない。よって,答えはハ.である。
No.24 低圧電路で使用する測定器とその用途
低圧回路で使用する測定器とその用途の組合せとして,正しいものは。
- 回路計(テスタ)と絶縁抵抗の測定
- 回転計と三相回路の相順(相回転)の確認
- 検電器と電路の充電の有無の確認
- 電力計と消費電力量の測定
検電器を用いて,電路の充電の有無の確認を行う。よって,答えはハ.である。
絶縁抵抗の測定には,絶縁抵抗計を用いる。三相回路の相順(相回転)の確認には,検相器を用いる。消費電力の測定には,電力量計を用いる。
No.25 絶縁抵抗
低圧屋内配線の電路と大地間の絶縁抵抗を測定した。「電気設備に関する技術基準を定める省令」に適合していないものは。
- 三相 3 線式の使用電圧 200 V (対地電圧 200 V)電動機回路の絶縁抵抗を測定したところ 0.18 MΩ であった。
- 単相 3 線式 100/200 V の使用電圧 200 V 空調回路の絶縁抵抗を測定したところ 0.16 MΩであった。
- 単相 2 線式の使用電圧 100 V 屋外庭園灯回路の絶縁抵抗を測定したところ 0.12 MΩであった。
- 単相 2 線式の使用電圧 100 V 屋内配線の絶縁抵抗を,分電盤で各回路を一括して測定したところ,1.5 MΩであったので個別分岐回路の測定を省略した。
対地電圧 150 V 以上の絶縁抵抗値は 0.2 MΩ以上でなければならない。よって,答えはイ.である。
No.26 接地抵抗値および接地線の太さ
三相 200 V ,2.2 kW の電動機の鉄台に施設した接地工事の接地抵抗値を測定し,接地線(軟銅線)の太さを検査した。接地抵抗値及び接地線の太さ(直径)の組合せで,適切なものは。
ただし,電路には漏電遮断器が施設されてないものとする。
- 50 Ω 1.2 mm
- 70 Ω 2.0 mm
- 150 Ω 1.6 mm
- 200 Ω 2.6 mm
D 種接地工事であるので,接地抵抗は 100 Ω 以下でなければならない。また,接地線は,引張強さ 0.39 kN 以上の容易に腐食し難い金属線又は直径 1.6 mm 以上の軟銅線でなければならない。
No.27 クランプ形漏れ電流計
単相 3 線式回路の漏れ電流を,クランプ形漏れ電流計を用いて測定する場合の測定方法として,正しいものは。
ただし, は中性線を示す。

漏れ電流の測定では,3 線をクランプ形漏れ電流計に通す。よって,答えはハ.である。
No.28 電気工事士法
電気工事士法において,一般用電気工作物に係る工事の作業で電気工事士でなければ従事できないものは。
- 定格電圧 100 V の電力計を取り付ける。
- 火災報知機に使用する小型変圧器(二次電圧が 36 V 以下)の二次側の配線をする。
- 定格電圧 250 V のソケットにコードを接続する。
- 電線管に電線を収める。
電線管に電線を収める作業は,電気工事士でなければできない作業である。よって,答えはニ.である。
No.29 一般用電気工作物
一般用電気工作物の適用を受けないものは。
ただし,発電設備は電圧 600 V 以下で,1 構内に設置するものとする。
- 低圧受電で,受電電力の容量が 35 kW ,出力 15 kW の太陽電池発電設備を備えた幼稚園
- 低圧受電で,受電電力の容量が 35 kW ,出力 10 kW の太陽電池発電設備と電気的に接続した出力 5 kW の風力発電設備を備えた農園
- 低圧受電で,受電電力の容量が 45 kW ,出力 5 kW の燃料電池発電設備を備えたコンビニエンスストア
- 低圧受電で,受電電力の容量が 35 kW ,出力 15 kW の非常用内燃力発電設備を備えた映画館
内燃力発電設備 10 kW 未満以外のものを設置している映画館は,自家用電気工作物に該当する。よって,答えはニ.である。
No.30 特定電気用品
「電気設備に関する技術基準を定める省令」における電圧の低圧区分の組合せで,正しいものは。
- 直流 600 V 以下,交流 750 V 以下
- 直流 600 V 以下,交流 600 V 以下
- 直流 750 V 以下,交流 600 V 以下
- 直流 750 V 以下,交流 300 V 以下
低圧の条件は,直流にあっては 750 V 以下,交流にあっては 600 V 以下である。よって,答えはハ.である。