平成30年度 第二種電気工事士 上期 筆記試験 解答と解説
本問題の計算で $\sqrt{2}$,$\sqrt{3}$ 及び円周率 $\pi$ を使用する場合の数値は次によること。$\sqrt{2}=1.41$,$\sqrt{3}=1.73$,$\pi=3.14$
No. 1 合成抵抗

図のような回路で,スイッチ S を閉じたとき,a - b 端子間の電圧 [V] は。
- 30
- 40
- 50
- 60
スイッチを閉じたとき,回路は 30 Ωと 30 Ωの抵抗直列回路となる。a - b 端子間には,100 [V] × 30 [Ω] / (30 [Ω] + 30 [Ω]) = 50 [V] が発生する。よって,答えはハ.である。
No. 2 コイルに流れる電流
コイルに 100 V,50 Hz の交流電圧を加えたら 6 A の電流が流れた。このコイルに 100 V,60 Hz の交流電圧を加えたときに流れる電流 [A] は。
ただし,コイルの抵抗は無視できるものとする。
- 4
- 5
- 6
- 7
コイルに流れる電流は,交流電圧の周波数に反比例する。100 V,60 Hz の交流電圧を加えたとき,6 [A] × 50 [Hz] / 60 [Hz] = 5 [A] の電流が流れる。よって,答えはロ.である。
No. 3 電線の抵抗と許容電流
ビニル絶縁電線(単心)の導体の直径を D,長さを L とするとき,この電線の抵抗と許容電流に関する記述として,誤っているものは。
- 許容電流は,周囲の温度が上昇すると,大きくなる。
- 許容電流は,D が大きくなると,大きくなる。
- 電線の抵抗は,L に比例する。
- 電線の抵抗は,D2 に反比例する。
周囲温度が上がると,導体の温度が上昇するので,導体許容最高温度に到達しやすくなるため,許容電流は小さくなる。よって,答えはイ.である。
No. 4 電線の接触不良により発生する熱量
電線の接触不良により,接続点の接触抵抗が 0.2 Ω となった。この電線に 15 A の電流が流れると,接続点から 1 時間に発生する熱量 [kJ] は。
ただし,接触抵抗の値は変化しないものとする。
- 11
- 45
- 72
- 162
1 時間に発生する熱量は,0.2 [Ω] × 15 [A] × 15 [A] × 60 [min] × 60 [sec] = 162 000 [J] = 162 [kJ] となる。よって,答えはニ.である。
No. 5 三相負荷(Y 結線)の線間電圧

図のような三相負荷に三相交流電圧を加えたとき,各線に 20 A の電流が流れた。線間電圧 E [V] は。
- 120
- 173
- 208
- 240
三相負荷の相電圧は,6 [Ω] × 20 [A] = 120 [V] となり,線間電圧 E = 120 [V] × 1.73 = 207.6 [V] ≒ 208 [V] となる。答えはハ.である。
No. 6 単相 2 線式回路の電圧降下

図のように,電線のこう長 16 m の配線により,消費電力 2 000 W の抵抗負荷に電力を供給した結果,負荷の両端の電圧は 100 V であった。配線における電圧降下 [V] は。
ただし,電線の電気抵抗は長さ 1 000 m 当たり 3.2 Ω とする。
- 1
- 2
- 3
- 4
こう長 16 m の電線の抵抗 r は,r = 3.2 [Ω] × 16 [m] / 1 000 [m] = 0.0512 [Ω] 。また,配線に流れる電流 Iは,I = 2 000 [W] / 100 [V] = 20 [A] 。よって,配線による電圧降下 2rIは,2rI = 2 × 0.0512 [Ω] × 20 [A] = 2.048 [V] ≒ 2 [V] となり,答えはロ.である。
No. 7 単相 3 線式回路

図のような単相 3 線式回路において,電線 1 線当たりの抵抗が 0.2 Ω のとき,a - b 間の電圧 [V] は。
- 96
- 100
- 102
- 106
配線による電圧降下は,0.2 [Ω] × 10 [A] = 2 [V] である。よって,a - b 間の電圧は,104 [V] - 2 [V] = 102 [V] であり,答えはハ.である。
No. 8 電線の許容電流
金属管による低圧屋内配線工事で,管内に直径 2.0 mm の 600 V ビニル絶縁電線(軟銅線) 4 本を収めて施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は。
ただし,周囲温度は 30 °C 以下,電流減少係数は 0.63 とする。
- 17
- 22
- 30
- 35
直径 2.0 mm 単線の許容電流は,35 [A] であり,金属管に 4 本を収めて施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は,これに電流減少係数を乗じ,35 [A] × 0.63 = 22.05 [A] ≒ = 22 [A] となる。よって,答えはロ.である。
No. 9 過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐回路

図のように定格電流 100 A の過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐して,6 m の位置に過電流遮断器を施設するとき,a - b 間の電線の許容電流の最小値 [A] は。
- 25
- 35
- 45
- 55
電線の長さが 8 m 以下であり,かつ,電線の許容電流がその電線に接続する低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の 35 % 以上であればよい。よって,100 [A] × 35 [%] / 100 = 35 [A] となり,答えはロ.である。
No. 10 低圧屋内配線の分岐回路の設計
低圧屋内配線の分岐回路の設計で,配線用遮断器の定格電流とコンセントの組み合わせとして,不適切なものは。

二.は,定格電流が 30 [A] の配線用遮断器がついており,コンセントは定格電流が 20 [A] 以上 30 [A] 以下のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。)としなければならないので,不適切である。答えはニ.である。
No. 11 配線用遮断器の動作時間
低圧電路に使用する電流が 20 A の配線用遮断器に 25 A の電流が継続して流れたとき,この配線用遮断器が自動的に動作しなければならない時間 [分] の限度(最大の時間)は。
- 20
- 30
- 60
- 120
定格電流 30 [A] の配線用遮断器に定格電流の 1.25 倍 の電流を乗じた場合,60 分以内に自動的に動作しなければならない。答えはハ.である。
No. 12 絶縁電線の最高許容温度
低圧屋内配線として使用する 600 V ビニル絶縁電線(IV)の絶縁物の最高許容温度 [°C] は。
- 30
- 45
- 60
- 75
JIS C 3307 : 2000「600 V ビニル絶縁電線(IV)」 で最高許容温度は 60 [°C] と定められており,答えはハ.である。なお,600 V 二種ビニル絶縁電線(HIV)の最高許容温度は 75 [°C] である。
No. 13 低圧三相かご形誘導電動機
定格周波数 60 Hz,極数 4 の低圧三相かご形誘導電動機における回転磁界の同期速度 [min-1] は。
- 1 200
- 1 500
- 1 800
- 3 000
同期速度 NS = 120 f / p = 120 × 60 [Hz] / 4 = 1 800 [min-1] となり,答えはハ.である。
No. 14 金属管の切断及び曲げ作業に使用する工具
金属管(鋼製電線管)の切断及び曲げ作業に使用する工具の組合せとして,適切なものは。
- リーマ,パイプレンチ,トーチランプ
- やすり,金切りのこ,パイプベンダ
- リーマ,金切りのこ,トーチランプ
- やすり,パイプレンチ,パイプベンダ
金属管の切断は,金切りのこで行い,切断面にはやすりをかけ,切断時に生じたバリを除去する。曲げ作業はパイプベンダで行い,答えはロ.である。
No. 15 電球形 LED ランプの特徴
白熱電球と比較して,電球形 LED ランプ(制御装置内蔵形)の特徴として,誤っているものは。
- 力率が低い。
- 発光効率が高い。
- 価格が高い。
- 寿命が短い。
白熱電球と比較して,電球形 LED ランプ(制御装置内蔵形)の寿命は長い。よって,答えは二.である。
No. 16 工具の識別

写真に示す工具の用途は。
- リーマと組み合わせて,金属管の面取りに用いる。
- 面取器と組み合わせて,ダクトのバリを取るのに用いる。
- 羽根ぎりと組み合わせて,鉄板に穴を開けるのに用いる。
- ホルソと組み合わせて,コンクリートに穴を開けるのに用いる。
工具の名称は,クリックボールで,リーマを取り付けて回転させることができる。答えはイ.である。
No. 17 材料の識別

写真に示す材料の用途は。
- 金属管と硬質塩化ビニル電線管とを接続するのに用いる。
- 合成樹脂製可とう電線管相互を接続するのに用いる。
- 合成樹脂製可とう電線管と CD 管とを接続するのに用いる。
- 硬質塩化ビニル電線管相互を接続するのに用いる。
材料の名称は,TS カップリングといい,硬質塩化ビニル電線管相互を接続するのに用いる。答えは二.である。
No. 18 機器の識別

写真に示す機器の名称は。
- 水銀灯用安定器
- 変流器
- ネオン変圧器
- 低圧進相コンデンサ
機器の名称は,低圧進相コンデンサ(容量 50 μF)で,力率を改善するのに使用する。答えは二.である。
No. 19 リングスリーブの種類と圧着マーク(刻印)の組合せ
低圧屋内配線工事で,600 V ビニル絶縁電線(軟銅線)をリングスリーブ用圧着工具とリングスリーブ(E 形)を用いて接続を行った。接続する電線に適合するリングスリーブの種類と圧着マーク(刻印)の組合せで,適切なものは。
- 直径 1.6 mm 1 本と直径 2.0 mm 1 本の接続に,小スリーブを使用して圧着マークを 小 にした。
- 直径 2.0 mm 2 本の接続に,小スリーブを使用して圧着マークを ○ とした。
- 直径 1.6 mm 4 本の接続に,中スリーブを使用して圧着マークを 中 とした。
- 直径 1.6 mm 2 本と直径 2.0 mm 1 本の接続に,中スリーブを使用して圧着マークを 中 にした。
電線の太さ・本数とリングスリーブ・圧着ペンチの組み合わせより,答えはイ.である。
接続する電線の太さ・本数 | リングスリーブ | 圧着ペンチ | ||
---|---|---|---|---|
ダイス | 刻印 | |||
1.6 mm | 2 本 | 小 | 1.6×2,小 | ○ |
3~4 本 | 小 | 小 | ||
2.0 mm | 2 本 | |||
2.0 mm×1本+1.6 mm×(1~2)本 | ||||
2.0 mm×1本+1.6 mm×(3~4)本 | 中 | 中 | 中 |
No. 20 乾燥した点検できない隠ぺい場所の低圧屋内配線工事
乾燥した点検できない隠ぺい場所の低圧屋内配線工事の種類で,適切なものは。
- 合成樹脂管工事
- バスダクト工事
- 金属ダクト工事
- がいし引き工事
乾燥した点検できない隠ぺい場所の低圧屋内配線工事は,金属管工事,合成樹脂管工事(CD 管を除く),ケーブル工事,二種金属製可とう電線管工事でなければならない。答えはイ.である。
No. 21 使用電圧 200 V の三相電動機回路の施工方法
使用電圧 200 V の三相電動機回路の施工方法で,不適切なものは。
- 湿気の多い場所に 1 種金属製可とう電線管を用いた金属可とう電線管工事を行った。
- 乾燥した場所の金属管工事で,管の長さが 3 m なので金属管の D 種接地工事を省略した。
- 造営材に沿って取り付けた 600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブルの支持点間の距離を 2 m 以下とした。
- 金属管工事に 600 V ビニル絶縁電線を使用した。
1 種金属可とう電線管を使用できるのは,次に適合する場合。
- 展開した場所又は点検できる隠ぺい場所であって,乾燥した場所であること。
- 屋内配線の使用電圧が 300 V を超える場合は,電動機に接続する部分で可とう性を必要とする部分であること。
- 管の厚さは,0.8 mm 以上であること。
よって,答えはイ.である。
No. 22 D 種接地工事の省略
D 種接地工事を省略できないものは。。
ただし,電路には定格感度電流 30 mA,動作時間が 0.1 秒以下の電流動作型の漏電遮断器が取り付けられているものとする。
- 乾燥したコンクリートの床に施設する三相 200 V(対地電圧 200 V)誘導電動機の鉄台
- 乾燥した木製の床の上で取り扱うように施設する三相 200 V(対地電圧 200 V)空気圧縮機の金属製外箱部分
- 乾燥した場所に施設する単相 3 線式 100/200 V(対地電圧 100 V)配線の電線を収めた長さ 7 m の金属管
- 乾燥した場所に施設する三相 200 V(対地電圧 200 V)動力配線の電線を収めた長さ 3 m の金属管
機械器具の金属製外箱等の接地を省略できる条件として,以下のいずれかに該当する必要がある。
- 交流の対地電圧が 150 V 以下又は直流の使用電圧が 300 V 以下の機械器具を,乾燥した場所に施設する場合
- 低圧用の機械器具を乾燥した木製の床その他これに類する絶縁性のものの上で取り扱うように施設する場合
低圧屋内配線の使用電圧が 300 V 以下の場合,金属管の D 種接地工事を省略できる条件として,以下のいずれかに該当する必要がある。
- 管の長さが 4 m 以下のものを乾燥した場所に施設する場合
- 屋内配線の使用電圧が直流 300 V 又は交流対地電圧 150 V 以下の場合において,その電線を収める管の長さがのものに簡易接触防護措置を施すとき又は乾燥した場所に施設するとき
よって,答えはイ.である。
No. 23 合成樹脂管の支持点間の距離
低圧屋内配線の合成樹脂管工事で,合成樹脂管(合成樹脂製可とう電線管及び CD 管を除く)を造営材の面に沿って取り付ける場合,管の支持点間の距離の最大値 [m] は。
- 1
- 1.5
- 2
- 2.5
管の支持点間の距離は 1.5 m 以下とし,かつ,その支持点は,管端,管とボックスとの接続点及び管相互の接続点のそれぞれの近くの箇所に設けること。よって,答えはロ.である。
No. 24 回路計(テスタ)で測定できないもの
一般に使用される回路計(テスタ)によって測定できないものは。
- 直流電圧
- 交流電圧
- 回路抵抗
- 漏れ電流
漏れ電流はクランプメータで測定する。答えは二.である。
No. 25 アナログ形絶縁抵抗計(電池内蔵)を用いた絶縁抵抗測定
アナログ形絶縁抵抗計(電池内蔵)を用いた絶縁抵抗測定に関する記述として,誤っているものは。
- 絶縁抵抗測定の前には,絶縁抵抗計の電池容量が正常であることを確認する。
- 絶縁抵抗測定の前には,絶縁抵抗測定のレンジに切り替え,測定モードにし,接地端子(E:アース)と線路端子(L:ライン)を短絡し零点を指示することを確認する。
- 被測定回路に電源電圧が加わっている状態で測定する。
- 電子機器が接続された回路の絶縁測定を行う場合は,機器等を損傷させない適正な定格測定電圧を選定する。
絶縁抵抗測定は,被測定回路に電源電圧が加わっていない状態で測定する。答えはハ.である。
No. 26 低圧電路に関する技術基準
使用電圧 100 V の低圧電路に,地絡が生じた場合 0.1 秒で自動的に電路を遮断する装置が施してある。この電路の屋外に D 種接地工事が必要な自動販売機がある。その接地抵抗値 a [Ω] と電路の絶縁抵抗値 b [MΩ] の組合せとして,「電気設備に関する技術基準を定める省令」及び「電気設備の技術基準の解釈」に適合していないものは。
- a = 600,b = 2.0
- a = 500,b = 1.0
- a = 100,b = 0.2
- a = 10,b = 0.1
D 種設置工事は,低圧電路において,当該電路に地絡を生じた場合に0.5 秒以内に自動的に電路を遮断する装置を施設するとき,接地抵抗値は 500 Ω である。答えはイ.である。
No. 27 電気計器の目盛板

電気計器の目盛板に図のような記号があった。記号の意味として正しいものは。
- 可動コイル形で目盛板を水平に置いて使用する。
- 可動コイル形で目盛板を鉛直に立てて使用する。
- 誘導形で目盛板を水平に置いて使用する。
- 可動鉄片形で目盛板を鉛直に立てて使用する。
左図は可動鉄片形,右図は目盛板を垂直に立てて使用することを意味する。答えは二.である。
No. 28 電気工事士等の作業範囲
電気工事士法において,第二種電気工事士免状の交付を受けている者であっても従事できない電気工事の作業は。
- 自家用電気工作物(最大電力 500 kW 未満の需要設備)の低圧部分の電線相互を接続する作業
- 自家用電気工作物(最大電力 500 kW 未満の需要設備)の地中電線用の管を設置する作業
- 一般用電気工作物の接地工事の作業
- 一般用電気工作物のネオン工事の作業
第二種電気工事士は,自家用電気工作物の「電気工事士でなければできない作業」には従事できない。地中電線用の管を設置する作業は,電気工事士でなくてもできる軽微な工事である。答えはイ.である。
No. 29 電気用品安全法における特定電気用品
電気用品安全法における特定電気用品に関する記述として,誤っているものは。
- 電気用品の製造の事業を行うものは,一定の要件を満たせば製造した特定電気用品に
の表示を付すことができる。
- 電線,ヒューズ,配線器具等の部分材料であって構造上表示スペースを確保することが困難な特定電気用品にあっては,特定電気用品に表示する記号に代えて<PS>Eとすることができる。
- 電気用品の輸入の事業を行う者は,一定の要件を満たせば輸入した特定電気用品に
の表示を付すことができる。
- 電気用品の販売の事業を行う者は,経済産業大臣の承認を受けた場合等を除き,法令に定める表示のない特定電気用品を販売してはならない。
の表示は,特定電気用品以外の電気用品に付すものである。答えはハ.である。
No. 30 一般用電気工作物
一般用電気工作物に関する記述として,誤っているものは。
- 低圧で受電するものであっても,出力 60 kW の太陽電池発電設備を同一構内に施設した場合,一般用電気工作物とならない。
- 低圧で受電するものは,小出力発電設備を同一構内に施設しても一般用電気工作物となる。
- 低圧で受電するものであっても,火薬類を製造する事業場など,設置する場所によっては一般用電気工作物とならない。
- 高圧で受電するものは,受電電力の容量,需要場所の業種にかかわらず,すべて一般用電気工作物となる。
一般用電気工作物は,600 V以下の電圧で受電し,受電の場所と同一の構内で使用する電気工作物で,小出力発電設備を設置しているものも含まれる。高圧で受電するものは,一般用電気工作物とならない。答えは二.である。