配線図
内容は,「配線図の表示事項及び表示方法」である。
配線図記号とは
配線図とは,照明や電動機,コンセントなどがどこに設置され,それらがどう配線されているかを示す電気工事の設計図のことである。配線図は配線図記号という,電気や電気機器それぞれに定められた記号によって図示される。試験問題では。住宅などの配線図が示され,その中の図記号に関する問題が出題される。
構内電気設備の配線用図記号
JIS C 0303 : 2000「構内電気設備の配線用図記号」"Graphical symbols of wiring diagram for architectural plans" に基づく,配線図について説明する。
適用範囲
この規格は,構内電気設備の電灯,動力,通信・情報,防災・防犯,避雷設備,屋外設備などの配線,機器及びそれらの取付位置,取付方法を示す図面に使用する図記号について規定する。
配線
一般配線の図記号
一般配線の図記号を示す。
名称 | 図記号 |
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天井隠ぺい線 |
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床隠ぺい線 |
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露出配線 |
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地中埋設配線 |
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立上り |
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引下げ |
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素通し |
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プルボックス |
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ジョイントボックス |
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接地極 |
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電線やケーブルの記号
電線の図記号には,電線やケーブルの種類,電線の本数(条数),電線の太さ(直径または断面積)が書き加えられる。
電線の表し方
例えば,太さ 1.6 mm の IV 線 3 本を使って配線(天井隠ぺい線)する場合の図記号は,下図となる。

ケーブルの表し方
例えば,心線の太さ 1.6 mm の 2 本の VVF 線を使って配線(天井隠ぺい線)する場合の図記号は,下図となる。

電線の種類
配線の図記号に電線の種類を示す必要のある場合は,下表の記号を記入する。
記号 | 電線の種類 |
---|---|
IV | 600 V ビニル絶縁電線 |
HIV | 600 V 二種ビニル絶縁電線 |
IC | 600 V 架橋ポリエチレン絶縁電線 |
OW | 屋外用ビニル絶縁電線 |
OC | 屋外用架橋ポリエチレン絶縁電線 |
OE | 屋外用ポリエチレン絶縁電線 |
DV | 引込用ビニル絶縁電線 |
CV | 600 V 又は高圧架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル |
VVF | 600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブル(平形) |
VVR | 600 V ビニル絶縁ビニルシースケーブル(丸形) |
CVV | 制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル |
CVV-S | 制御用ビニル絶縁ビニルシースケーブル(銅テープ遮へい付き) |
EM-IE | 600 V 耐燃性ポリエチレン絶縁電線 |
EM-EEF | 600 V ポリエチレン絶縁耐燃性ポリエチレンシースケーブル平形 |
電線管を通す配線管の表し方
配線をするとき,電線を電線管に収容する場合がある。その場合には,電線管の種類(下図では E)と太さ(下図では 19)などをカッコに入れて追記する。金属電線管(厚鋼電線管以外)の太さは,外径に近い奇数で表し,合成樹脂電線管の太さは内径に近い偶数で表す。

管類の種類を示す必要のある場合は,次表の記号を記入する。
記号 | 配管の記号 |
---|---|
E | 鋼製電線管(ねじなし電線管) |
PF | 合成樹脂製可とう電線管(PF 管) |
CD | 合成樹脂製可とう電線管(CD 管) |
F2 | 2 種金属製可とう電線管 |
F | フロアダクト |
FC | フロアダクト(コンベックス形) |
MM1 | 1 種金属線ぴ |
MM2 | 2 種金属線ぴ |
SGP | 配管用炭素鋼鋼管 |
STPG | 圧力配管用炭素鋼鋼管 |
STK | 一般構造用炭素鋼鋼管 |
PEG | ケーブル保護用合成樹脂被覆鋼管 |
PLP | ポリエチレン被覆鋼管 |
BST | 黄銅管 |
VE | 硬質塩化ビニル電線管 |
VP | 硬質塩化ビニル管 |
HIVE | 耐衝撃性硬質塩化ビニル電線管 |
HIVP | 耐衝撃性硬質塩化ビニル管 |
FEP | 波付硬質合成樹脂管 |
演習問題 令和4年度 上期 午前 第二種電気工事士 筆記試験 問21
低圧屋内配線の図記号と,それに対する施工方法の組合せとして,正しいものは。

正しいものは,「ニ.2 種金属可とう電線管で露出配線」である。
バスダクト
バスダクトの図記号を下図に示す。

バスダクトの種類を示す場合は,次による。
バスダクトの種類 | 記号 |
---|---|
フィーダバスダクト | FBD |
低圧絶縁形耐火バスダクト | FPBD |
プラグインバスダクト | PBD |
トロリーバスダクト | TPD |
合成樹脂線ぴ
合成樹脂線ぴの図記号を下図に示す。

増設
同一図面で増設・既設を表す場合には,増設は太線,既設は細線又は点線とする。なお,増設,既設は色別してもよい。
撤去
撤去の場合は,× をつける。
機器
機器の図記号を下表に示す。
名称 | 図記号 | 摘要 |
---|---|---|
電動機 | ![]() |
必要に応じ,電気方式,電圧,容量などを示す。文字記号に対応する英語は Motor である。 |
コンデンサ | ![]() |
電動機の摘要を準用する。 |
電熱器 | ![]() |
電動機の摘要を準用する。文字記号に対応する英語は Heater である。 |
電磁弁 | ![]() |
必要に応じ,電気方式,電圧などを傍記する。 |
電動弁 | ![]() |
必要に応じ,電気方式,電圧などを傍記する。 |
発電機 | ![]() |
必要に応じ,発電機は,電気方式,電圧,容量及び原動機は,種類,出力などを傍記する。文字記号に対応する英語は Generator である。 |
電灯・動力
照明器具
照明器具は,大きく分けて白熱電灯器具と蛍光灯器具がある。また,特殊なものにはグラウンドなどで利用されている水銀灯や高電圧放電ランプ(HID ランプ),高速道路などに利用されている低圧ナトリウムランプやキセノンランプがある。
名称 | 図記号 | 摘要 |
---|---|---|
一般用照明(白熱灯,HID 灯) | ![]() |
HID の種類を示す場合において,容量の前に次の記号を傍記してもよい。水銀灯 H,メタルハライド灯 M,ナトリウム灯 N |
ペンダント | ![]() |
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シーリング(天井直付) | ![]() |
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シャンデリヤ | ![]() |
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埋込器具 | ![]() |
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一般用照明(蛍光灯) | ![]() |
パイロットランプの接続方法
パイロットランプは,次のように接続する。
- 同時点灯回路は,照明器具とパイロットランプを並列に接続する。
- 異時点灯回路は,照明スイッチとパイロットランプを並列に接続する。(照明スイッチを「入」にすると,パイロットランプ両端の電圧は 0 になり,パイロットランプは消灯する。)
- 常時点灯回路は,パイロットランプを電源に直接接続する。
点滅器
点滅器の図記号を下表に示す。
名称 | 図記号 | 摘要 |
---|---|---|
点滅器(一般形) | ![]() |
定格を示す場合は,次による。 15 A は,傍記せず,15 A 以外は,定格電流を傍記する。 極数を示す場合は,次による。 単極は,傍記せず,3 路,4 路又は 2 極は,それぞれ 3,4 又は 2P を傍記する。 |
点滅器(ワイドハンドル形) | ![]() |
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調光器(一般形) | ![]() |
定格を示す場合は,定格(例えば,800 W)を傍記する。 |
調光器(ワイド形) | ![]() |
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リモコンスイッチ | ![]() |
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リモコンリレー | ![]() |
開閉器・計器
開閉器・計器の図記号を下表に示す。
名称 | 図記号 | 摘要 |
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開閉器 | ![]() |
極数,定格電流,ヒューズ定格電流などを傍記する。 |
配線用遮断器 | ![]() |
極数,フレームの大きさ,定格電流などを傍記する。 |
配線用遮断器(モータブレーカ) | ![]() |
配線用遮断器の図記号に「M」を傍記してもよい。 |
漏電遮断器 | ![]() |
過負荷保護付は,極数,フレームの大きさ,定格電流,定格感度電流など,過負荷保護なしは,極数,定格電流,定格感度電流などを傍記する。 |
タイムスイッチ | ![]() |
文字記号に対応する英語は Time Switch である。 |
電力量計 | ![]() |
必要に応じ,電気方式,電圧,電流などを傍記する。 |
電力量計(箱入り又はフード付) | ![]() |
電力量計の摘要を準用する。 |
変流器(箱入り) | ![]() |
必要に応じ,電流を傍記する。文字記号に 対応する英語は Current Transformer である。 |
電流制限器 | ![]() |
必要に応じ,電流を傍記する。 |
地震感知器 | ![]() |
必要に応じ,種類を傍記する。 |
配電盤・分電盤
配電盤・分電盤の図記号を下表に示す。
名称 | 図記号 | 摘要 |
---|---|---|
配電盤 | ![]() |
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分電盤 | ![]() |
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制御盤 | ![]() |
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OA 盤 | ![]() |
技能試験で重視するポイント
第二種電気工事士の技能試験の目的は,「一般電気工作物の保安に関して必要な技能について能力を問う」ことである。技能試験で重視する 3 つの能力は,以下の通り。
- 回路を的確に構成する能力
- 配線図や施工条件を理解し遵守する能力
- 接続等の作業を的確に行う能力
上記 1. と 2. の能力について,配線図を理解しておくことが求められる。
「回路を的確に構成する」とは?
配線図に記載されている通りに器具を配置し,回路を完成させる。また,回路は,電気的に誤らないように,接続や結線を行う。
「配線図や施工条件を理解する」とは?
電気工事は,設計図(配線図),もしくは施工図をよく理解し,図面に忠実に工事を進めなければならない。また,電気設備の使用目的に沿って,施工条件を守って,工事上のミスを起こさないようにしなければならない。
本稿の参考文献
- 一般財団法人 電気技術者試験センター,『技能試験の概要と注意すべきポイント』,令和3年3月
- 稲見 辰夫,稲見 昌彦,『図解で分かる 電気回路のしくみ』,日本実業出版社,2005年1月20日