令和元年度 上期 第二種電気工事士 筆記試験 解答と解説
【注】本問題の計算で $\sqrt{2}$,$\sqrt{3}$ 及び円周率 $\pi$ を使用する場合の数値は次によること。$\sqrt{2}=1.41$,$\sqrt{3}=1.73$,$\pi=3.14$
次の各問いは4通りの答え(イ,ロ,ハ,二)が書いてある。それぞれの問いに対して答えを1つ選びなさい。
なお,選択肢が数値の場合は最も近い値を選びなさい。
受験者 | 合格者 | 合格率 |
---|---|---|
75,066 名 | 53,026 名 | 70.6 % |
No. 1 回路の電圧
図のような回路で,スイッチ S を閉じたとき,a - b 端子間の電圧 [V] は。

- 30
- 40
- 50
- 60
スイッチ S を閉じたときの等価回路を下図に示す。

a - b 端子間の電圧は,50 Ω の抵抗の両端の電圧に等しいので,次式で求められる。
\[ 120\text{ [V]} \times \frac{50\text{ [Ω]}}{50\text{ [Ω]} + 50\text{ [Ω]}} = 60 \text{ [V]} \]No. 2 電線の抵抗と許容電流
ビニル絶縁電線(単心)の導体の直径を $D$,長さを $L$ とするとき,この電線の抵抗と許容電流に関する記述として,誤っているものは。
- 許容電流は,周囲の温度が上昇すると,大きくなる。
- 電線の抵抗は,$D^2$ に反比例する。
- 電線の抵抗は,$L$ に比例する。
- 許容電流は,$D$ が大きくなると,大きくなる。
電線の許容電流は,電流が流れたときの電線の温度上昇がある値以下となるように決められる。よって,周囲の温度が上昇すると,電流が流れたときに温度上昇できる範囲が小さくなるため,許容電流は小さくなる。
No. 3 水の温度上昇に必要な電力量
電熱器により,60 kg の水の温度を 20 K 上昇させるのに必要な電力量 [kW·h] は。
ただし,水の比熱は 4.2 kJ/(kg·K)とし,熱効率は 100 % とする。
- 1.0
- 1.2
- 1.4
- 1.6
電熱器により,60 kg の水の温度を 20 K 上昇させるのに必要な電力量 [kW·h] は,次式で求められる。
\[ \frac{4.2 \text{ [kJ/(kg·K)]} \times 60 \text{ [kg]} \times 20 \text{ [K]}}{3600 \text{ [kJ/kW·h]}} = 1.4 \text{ [kW·h]} \]No. 4 RL 直列回路
図のような交流回路において,抵抗 8 Ω の両端の電圧 $V$ [V] は。

- 43
- 57
- 60
- 80
図のような交流回路において,抵抗 8 Ω の両端の電圧 $V$ [V] は,次式で求められる。
\[ V = 100 \times \frac{8}{\sqrt{8^2 + 6^2}} = 80 \text{ [V]} \]No. 5 Δ 回路の消費電力
図のような三相 3 線式回路の全消費電力 [kW] は。

- 2.4
- 4.8
- 9.6
- 19.2
図のような交流回路において,抵抗 8 Ω の両端の電圧 $V$ [V] は,次式で求められる。
\[ V = 200 \times \frac{8}{\sqrt{8^2 + 6^2}} = 160 \text{ [V]} \]よって,三相 3 線式回路の全消費電力 $P$ [kW] は,次式で求められる。
\[ P = 3 \times \frac{160^2}{8} \times \frac{1}{1000} = 9.6 \text{ [kW]} \]No. 6 単相 2 線式回路の電圧降下
図のような単相 2 線式回路において,c - c' 間の電圧が 100 V のとき,a - a' 間の電圧 [V] は。
ただし,$r$ は電線の電気抵抗 [Ω] とする。

- 102
- 103
- 104
- 105
a - b 及び a' - b' 間の電圧降下 は,$2 \times 0.1 \times (5 + 10) = 3$ [V],b - c 及び b' - c' 間の電圧降下は,$2 \times 0.1 \times 10 = 2$ [V] となる。
よって,a - a' 間の電圧は,100 + 3 + 2 = 105 [V] である。
No. 7 単相 3 線式回路の電圧降下
図のような単相 3 線式回路において,電線 1 線当たりの抵抗が $r$ [Ω],負荷電流が $I$ [A],中性線に流れる電流が 0 A のとき,電圧降下 $(V_s - V_r)$ [V] を示す式は。

- $2rI$
- $3rI$
- $rI$
- $\sqrt{3}rI$
$V_s$ と $V_r$ には,次式の関係が成り立つ。
\[ V_s = V_r + rI \]No. 8 金属管による低圧屋内配線工事
金属管による低圧屋内配線工事で,管内に直径 2.0 mm の 600 V ビニル絶縁電線(軟銅線) 5 本を収めて施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は。
ただし,周囲温度は 30 °C 以下,電流減少係数は 0.56 とする。
- 10
- 15
- 19
- 27
直径 2.0 mm 単線の許容電流は,35 [A] であり,金属管に 5 本を収めて施設した場合,電線 1 本当たりの許容電流 [A] は,これに電流減少係数を乗じ,35 [A] × 0.56 = 19.6 [A] となる。
No. 9 過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐回路
図のように定格電流 100 A の過電流遮断器で保護された低圧屋内幹線から分岐して,6 m の位置に過電流遮断器を施設するとき,a - b 間の電線の許容電流の最小値 [A] は。

- 25
- 35
- 45
- 55
電線の長さが 8 m 以下であり,かつ,電線の許容電流がその電線に接続する低圧幹線を保護する過電流遮断器の定格電流の 35 % 以上であればよい。よって,100 [A] × 35 [%] / 100 = 35 [A] となる。
No. 10 低圧屋内配線の分岐回路の設計
低圧屋内配線の分岐回路の設計で,配線用遮断器の定格電流とコンセントの組み合わせとして,不適切なものは。

配線用遮断器の定格電流が 30 A のとき,使用できるコンセントは,「定格電流が 20 A 以上 30 A 以下のもの(定格電流が 20 A 未満の差込みプラグが接続できるものを除く。)」である。よって,定格電流 15 A のコンセントを使用しており,不適切である。
No. 11 アウトレットボックス(金属製)
アウトレットボックス(金属製)の使用方法として,不適切なものは。
- 金属管工事で電線の引き入れを容易にするのに用いる。
- 金属管工事で電線相互を接続する部分に用いる。
- 配線用遮断器を集合して設置するのに用いる。
- 照明器具などを取り付ける部分で電線を引き出す場合に用いる。
配線用遮断器を集合して設置するのに用いるのは,分電盤である。
No. 12 移動電線
使用電圧が 300 V 以下の屋内に施設する器具であって,付属する移動電線にビニルコードが使用できるものは。
- 電気扇風機
- 電気こたつ
- 電気こんろ
- 電気トースター
ビニルコードは,原則として電熱機器(電気こたつ,電気こんろ,電気トースター等)には使用できない。
No. 13 金属管(鋼製電線管)工事
金属管(鋼製電線管)工事で切断及び曲げ作業に使用する工具の組合せとして,適切なものは。
- やすり,パイプレンチ,トーチランプ
- リーマ,金切りのこ,パイプベンダ
- やすり,金切りのこ,トーチランプ
- リーマ,パイプレンチ,パイプベンダ
金属管(鋼製電線管)工事で切断及び曲げ作業には,以下の工具を使用する。
- リーマは,クリックボールに取り付けて,金属管の内側にバリを取って滑らかにする。
- 金切りのこは,金属管や太い電線等の切断に用いる。
- パイプベンダは,金属管を曲げるのに用いる。
No. 14 三相かご形誘導電動機の回転速度
極数 6 の三相かご形誘導電動機を周波数 50 Hz で使用するとき,最も近い回転速度 [min-1] は。
- 500
- 1 000
- 1 500
- 3 000
三相かご形誘導電動機の周波数 f ,極数 p とすると,同期速度 Ns は次式で表される。
\[ N_s = \frac{120f}{p} = \frac{120 \times 50}{6} = 1000 \]No. 15 系統連系型の小出力太陽光発電設備
系統連系型の小出力太陽光発電設備において,使用される機器は。
- 調光器
- 低圧進相コンデンサ
- 自動点滅器
- パワーコンディショナ
パワーコンディショナは,直流の電気を交流に変換する装置で,系統連系型の小出力太陽光発電設備に使用される。
No. 16 材料の識別
写真に示す材料の用途は。

- 住宅でスイッチやコンセントを取り付けるのに用いる。
- 多数の金属管が集合する箇所に用いる。
- フロアダクトが交差する箇所に用いる。
- 多数の遮断器を集合して設置するために用いる。
材料の名称は,スイッチボックスで,住宅でスイッチやコンセントを取り付けるのに用いる。
No. 17 器具の識別
写真に示す器具の用途は。

- リモコン配線の操作電源変圧器として用いる。
- リモコン配線のリレーとして用いる。
- リモコンリレー操作用のセレクタスイッチとして用いる。
- リモコン用調光スイッチとして用いる。
器具の名称はリモコンリレーで,リモコン配線のリレーとして使用する。
No. 18 工具の用途
写真に示す工具の名称は。

- 硬質塩化ビニル電線管の曲げ加工に用いる。
- 合成樹脂製可とう電線管の接続加工に用いる。
- ライティングダクトの曲げ加工に用いる。
- 金属管(鋼製電線管)の曲げ加工に用いる。
工具の名称はガストーチランプで,硬質塩化ビニル電線管を加熱して曲げるのに用いる。
No. 19 絶縁電線相互の接続
単相 100 V の屋内配線工事における絶縁電線相互の接続で,不適切なものは。
- 絶縁電線の絶縁物と同等以上の絶縁効力のあるもので十分被覆した。
- 電線の引張強さが 15 % 減少した。
- 電線相互を指で強くねじり,その部分を絶縁テープで十分に被覆した。
- 接続部の電気抵抗が増加しないように接続した。
絶縁電線相互の接続は,以下のように行わなければならない。
- 電線の電気抵抗を増加させない。
- 電線の引張強さを 20 %以上減少させない。
- 接続部分には,接続管その他の器具を使用するか,ろう付けする。
- コード相互,キャブタイヤケーブル相互,コードとキャブタイヤケーブルを接続する場合は,コード接続器,接続箱等を使用する(8 mm2以上のキャブタイヤケーブル相互を接続する場合は除く)。
よって,「電線相互を指で強くねじり,その部分を絶縁テープで十分に被覆した。」は,不適切である。
No. 20 100 V の低圧屋内配線工事
100 V の低圧屋内配線工事で,不適切なもの。
- フロアダクト工事で,ダクトの長さが短いので D 種接地工事を省略した。
- ケーブル工事で,ビニル外装ケーブルと弱電流電線が接触しないように施設した。
- 金属管工事で,ワイヤラス張りの貫通箇所のワイヤラスを十分に切り開き,貫通部分の金属管を合成樹脂管に収めた。
- 合成樹脂管工事で,その管の支持点間の距離を 1.5 m とした。
低圧屋内配線の使用電圧が 300 V 以下の場合は,ダクトには,D 種接地工事を施すこととされている。よって,「フロアダクト工事で,ダクトの長さが短いので D 種接地工事を省略した。」は不適切である。
No. 21 ルームエアコンに電気を供給する電路の工事方法
店舗付き住宅の屋内に三相 3 線式 200 V,定格消費電力 2.5 kW のルームエアコンを施設した。このルームエアコンに電気を供給する電路の工事方法として,適切なものは。
ただし,配線は接触防護措置を施し,ルームエアコン外箱等の人が触れるおそれがある部分は絶縁性のある材料で堅ろうに作られているものとする。
- 専用の過電流遮断器を施設し,合成樹脂管工事で配線し,コンセントを使用してルームエアコンと接続した。
- 専用の漏電遮断器(過負荷保護付)を施設し,ケーブル工事で配線し,ルームエアコンと直接接続した。
- 専用の配線用遮断器を施設し,金属管工事で配線し,コンセントを使用してルームエアコンと接続した。
- 専用の開閉器のみを施設し,金属管工事で配線し,ルームエアコンと直接接続した。
イ.とハ.は「コンセントを使用して」が不適,ニ.は「専用の開閉器のみを施設」が不適である。
No. 22 接地工事
床に固定した定格電圧 200 V,定格出力 2.2 kW の三相誘導電動機の鉄台に接地工事をする場合,接地線(軟銅線)の太さと接地抵抗値の組合せで,不適切なものは。
ただし,漏電遮断器を設置しないものとする。
- 直径 1.6 mm,10 Ω
- 直径 2.0 mm,50 Ω
- 公称断面積 0.75 mm2,5 Ω
- 直径 2.6 mm,75 Ω
低圧 300 V 以下であり,D 種接地工事が必要である。D 種接地工事には,「引張強さ 0.39 kN 以上の容易に腐食し難い金属線又は直径 1.6 mm 以上の軟銅線であること。」が求められる。よって,公称断面積 0.75 mm2 は不適。
No. 23 金属管工事の末端
図に示す雨線外に施設する金属管工事の末端 A 又は B 部分に使用するものとして,不適切なものは。

- A 部分にエントランスキャップを使用した。
- B 部分にターミナルキャップを使用した。
- B 部分にエントランスキャップを使用した。
- A 部分にターミナルキャップを使用した。
エントランスキャップは,屋外の金属管の端に取り付けて,雨水の浸入を防ぐ。ターミナルキャップは,金属管の端に取り付けて,電動機などの機器に電線を接続する。
No. 24 単相 3 線式回路における断線
図のような単相 3 線式回路で,開閉器を閉じて機器 A の両端の電圧を測定したところ 150 V を示した。この原因として,考えられるものは。

- 機器 A の内部で断線している。
- a 線が断線している。
- b 線が断線している。
- 中性線が断線している。
「機器 A の内部で断線」や「a 線が断線」では,機器 A の両端の電圧は 0 V となる。「b 線が断線」では,機器 A の両端の電圧は 100 V 相当の電圧のままである。
No. 25 低圧電路の絶縁性能
使用電圧が低圧の電路において,絶縁抵抗測定が困難であったため,使用電圧が加わった状態で漏えい電流により絶縁性能を確認した。「電気設備の技術基準の解釈」に定める,絶縁性能を有していると判断できる漏えい電流の最大値 [mA] は。
- 0.1
- 0.2
- 1
- 2
絶縁抵抗測定が困難な場合においては,当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が,1 mA 以下であること。
No. 26 対地電圧 200 V の三相誘導電動機
工場の 200 V 三相誘導電動機(対地電圧 200 V)への配線の絶縁抵抗値 [MΩ] 及びこの電動機の鉄台の接地抵抗値 [Ω] を測定した。電気設備技術基準等に適合する測定値の組合せとして,適切なものは。
ただし,200 V 電路に施設された漏電遮断器の動作時間は 0.1 秒とする。
- 0.2 MΩ,300 Ω
- 0.4 MΩ,600 Ω
- 0.1 MΩ,200 Ω
- 0.1 MΩ,50 Ω
絶縁抵抗値は 0.2 MΩ 以下,接地抵抗値は 500 Ω 以下でなければならない。
No. 27 クランプ形漏れ電流計
単相 3 線式回路の漏れ電流の有無をクランプ形漏れ電流計を用いて測定する場合の測定方法として,正しいものは。
ただし, は中性線を示す。

漏れ電流を測定したい電線複数本をクランプメータでかませる。
No. 28 電気工事士の義務又は制限
電気工事士の義務又は制限に関する記述として,誤っているものは。
- 電気工事士は,都道府県知事から電気工事の義務に関して報告するよう求められた場合には,報告しなければならない。
- 電気工事士は,電気工事士法で定められた電気工事の作業に従事するときは,電気工事士免状を携帯しなければならない。
- 電気工事士は,電気工事士法で定められた電気工事の作業に従事するときは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」に適合するよう作業を行わなければならない。
- 電気工事士は,住所を変更したときは,免状を交付した都道府県知事に申請して免状の書換えをしてもらわなければならない。
電気工事士の免状には,住所は記載されていないため,住所に変更が生じても,免状の書換えは不要である。
No. 29 電気用品安全法における電気用品
電気用品安全法における電気用品に関する記述として,誤っているものは。
- 電気用品の製造又は輸入の事業を行う者は,電気用品安全法に規定する義務を履行したときに,経済産業省令で定める方法による表示を付すことができる。
- 特定電気用品には
または (PS)E の表示が付されている。
- 電気用品の販売の事業を行う者は,経済産業大臣の承認を受けた場合等を除き,法令に定める表示のない電気用品を販売してはならない。
- 電気工事士は,電気用品安全法に規定する表示の付されていない電気用品を電気工作物の設置又は変更の工事に使用してはならない。
特定電気用品の適合表示マークは下図,適合表示は「<PS>E」である。

No. 30 一般用電気工作物
一般用電気工作物に関する記述として,誤っているものは。
- 低圧で受電するもので,出力 60 kW の太陽電池発電設備を同一構内に施設するものは,一般用電気工作物となる。
- 低圧で受電するものは,小出力発電設備を同一構内に施設しても一般用電気工作物となる。
- 低圧で受電するものであっても,火薬類を製造する事業場など,設置する場所によっては一般用電気工作物とならない。
- 高圧で受電するものは,受電電力の容量,需要場所の業種にかかわらず,一般用電気工作物とならない。
小出力発電設備(600 V)以下に該当する太陽電池発電設備の出力は 50 kW 未満 である。よって,イ.は自家用工作物となる。