単純支持はり・片持ちはりのたわみ計算 導入編

2020年7月23日作成,2024年1月4日更新

目次

材料力学

機械や構造物が外力を受けると,各部材は伸び,縮み,ねじりあるいは曲げなどの変形を生じる。しかも変形が過大になり,部材内部に生ずる抵抗力がある限度を超えると,部材は使用に耐えられなくなり,ついには破壊に至る。したがって,機械や構造物を設計する場合には,部材が破壊しないように十分な強さ(strength)を持ち,過大な変形を起こさないように軽量で適切な剛性(stiffness)を備え,また常に形態の安定性(stability)を保持できるように,部材の寸法や形状を経済的・合理的・機能的に決定することが大切である。

このため,機械や構造物に作用する種々の外力に対し各部材の強さ,剛性および安定性がどのようになっているか,理論と実験の両面から明らかにしておく必要がある。このような学問を材料力学(strength of materials)という。

基礎仮定

機械や構造物を構成する部材は一般に種々の形状をしていて,これに作用する外力も多様であるため,こられを忠実に考慮すると問題の取扱いが複雑になって解析が困難となる。そこで材料力学では,妥当と思われる次のような諸過程を設け,問題を簡素化して解析を行う。

  1. 材料は連続した固体であり,内部に欠陥や空洞がなく,すべての部分が同じ性質を持つ均質体(homogeneous body)である。
  2. 材料はその性質が方向によって変化しない等方体(isotropic body)である。ただし,場合によっては力学的性質が方向によって異なる木材や竹のような異方性材料(anisotropic material)を扱うことがある。
  3. 材料に外力が作用すると,材料内部には外力に抵抗する力,すなわち内力(internal force)が発生する。
  4. 外力による材料の変形は外力の大きさに比例し,かつ外力を取り去ると変形はなくなる。材料の微小な変形においてみられるこのような性質を弾性(elasticity)といい,材料力学では主として材料が弾性変形する場合を取り扱う。なお,外力を取り去っても材料が元の形に戻らない性質を塑性(plasticity)という。
  5. 外力による材料の変形はその寸法に比べて極めて小さく,外力の作用状態は変形前と変わらない。ただし,説明をわかりやすくするために変形は誇張して描く。
  6. 材料に多くの外力が同時に作用して生ずる変形は,それらの外力が単独に作用したときに生ずる変形を単純に加え合わせたものに等しい。これを重ね合せの原理(principle of superposition)という。
  7. 材料に作用する外力が合力とモーメントの値に等しければ,外力の作用点から十分離れた所の変形および応力状態は,外力の作用形式による影響をほとんど受けない。これをサン・ブナンの原理(Saint Venant's principle)という。

荷重の種類

工学的には,物体に作用する外力のことを荷重(load)といい,その作用形式は次のように分類できる。

作用による分類

引張荷重(tensile load)
材料を荷重方向に伸ばすように作用する力
引張荷重(tensile load)
図 引張荷重
Fig. tensile load
圧縮荷重(compressive load)
材料を荷重方向に縮めるように作用する力
圧縮荷重(compressive load)
図 圧縮荷重
Fig. compressive load
せん断力(shearing load)
2 層平板のリベット継手において,リベットの断面に平行に作用する力
ねじり荷重(torsional load)
棒の断面を軸のまわりにねじるように作用する荷重
曲げ荷重(bending load)
支持されたはりを曲げるように作用する荷重

分布様式による分類

集中荷重(concentrated load)
1 点に集中して作用する荷重。
分布荷重(distributed load)
ある領域に分布して作用する荷重。荷重が一様に分布している場合には等分布荷重(uniformly distributed load)という。

荷重速度による分類

静荷重(static load)
静止している大きさ一定の荷重,あるいは極めて静かに変化する荷重。
動荷重(dynamic load)
時間と共に変動する荷重。これには荷重が急激に作用する衝撃荷重(impact load)および周期的に変化する繰り返し荷重(repeated load)がある。なお,荷重が常に 0 から正または負の一方向のみで変化する繰り返し荷重を片振り荷重(pulsating load)といい,0 を中心に正負に等振幅で変化する繰り返し荷重を両振り荷重(alternating load)という。

応力とひずみ

垂直応力

図に示すように断面の一様な棒が引張荷重 $P$ を受けると,荷重方向に垂直な任意の横断面 m-m の左側の部分 Ⅰ と右側の部分 Ⅱ において,断面 m-m には荷重 $P$ とつり合う内力 $Q$ が生じて棒はつり合う。しかも,サン・ブナンの原理より,荷重作用点から十分に離れている m-m 面の内力は一様に分布していると考えられる。この単位面積当たりに生ずる内力を応力(stress)という。棒の横断面積を $A$ とすれば,応力 $\sigma$ は次式で与えられる。

\[ \sigma=\frac{Q}{A}=\frac{P}{A} \]
荷重と応力
図 荷重と応力
Fig. Load and Stress

外力 $P$ が引張荷重のときの応力は引張応力(tensile stress)といい,正の符号をつけ,圧縮荷重のときの応力は圧縮応力(compressive stress)といい,負の符号をつけて区別する。これらの応力は共に断面に垂直に働くから,垂直応力という。

ひずみ

材料は荷重が加わると変形する。この変形量を元の長さで割った値をひずみ(strain)といい,無次元量で表される。ひずみは変形の状態によって,縦ひずみ,横ひずみ,せん断ひずみ,体積ひずみのように大別される。

縦ひずみと横ひずみ

下図に示すように,一様な断面を持つ長さ $l_0$,直径 $d_0$ の棒が軸方向に引張荷重 $P$ を受け,長さが $l_0 + \lambda$ に伸び,直径が $d_0 - \delta$ に縮んだとする。

引張ひずみ
図 引張ひずみ
Fig. tensile strain

このとき,荷重方向の棒のひずみ $\epsilon$ は縦ひずみ(longitudinal strain)といい,次式で表される。

\[ \epsilon=\frac{(l_0+\lambda)-l_0}{l_0}=\frac{\lambda}{l_0} \]

一方,荷重方向に直角な方向のひずみ $\epsilon'$ は横ひずみ(lateral strain)といい,次式で表される。

\[ \epsilon'=\frac{(d_0-\delta)-d_0}{d_0}=-\frac{\delta}{d_0} \]

横ひずみと縦ひずみの絶対的な比 $\nu$ はポアソン比(Poisson's ratio)といい,変形が小さければ材料によって一定の値をとる。また,その逆数をポアソン数(Poisson's number)といい,$m$ で表す。

\[ \nu =\frac{|\epsilon'|}{|\epsilon|}=\frac{1}{m} \]

なお,縦ひずみには引張荷重による引張ひずみ(tensile strain)と,圧縮荷重による圧縮ひずみ(compressive strain)がある。

いま下図に示すように,横断面積 $A_0$,長さ $l_0$ の棒が軸方向に引張荷重 $P$ を受けたとき,$\sigma=P/A_0$,$\epsilon=\lambda/l$ より,縦弾性係数 $E$ は次式となる。

\[ E=\frac{\sigma}{\epsilon}=\frac{Pl_0}{A_0 \lambda} \]

上式より,棒の伸び $\lambda$ は次式で表される。

\[ \lambda=\frac{Pl_0}{A_0 E} \]
引張ひずみ
図 引張ひずみ
Fig. tensile strain

フックの法則と弾性係数

フックの法則

英国のロバート・フック(Robert Hooke, 1963 - 1703)は,1678 年にコイルばねの伸びと荷重に関する実験から「弾性範囲内では応力とひずみは正比例する」ことをはじめて示した。この関係を発見者の名にちなんでフックの法則という。

比例定数 = 応力 / ひずみ

上式の比例定数を弾性係数(modulus of elasticity)といい,材料固有の値であり,その単位は Pa で表す。材料力学においては,機械や構造物の部材を主として弾性体として強度設計するので,フックの法則は極めて重要な基本則である。

ロバート・フック
写真 ロバート・フック
(出典)フリー百科事典『ウィキペディア』

弾性係数

縦弾性係数

垂直応力 $\sigma$ とその方向の縦ひずみ $\epsilon$ との比例定数 $E$ を縦弾性係数(modulus of longitudinal elasticity),または $E$ の値を最初に測定したイギリスの物理学者トーマス・ヤング(Thomas Young,1773 - 1829年)の名にちなんでヤング係数(Young's modulus)という。

\[ E=\frac{\sigma}{\epsilon} \]
トーマス・ヤング
写真 トーマス・ヤング
(出典)フリー百科事典『ウィキペディア』
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