三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのたわみ

2023年6月17日更新

はじめに

三角形状分布荷重を受ける単純支持はりせん断力曲げモーメントおよびたわみをわかりやすく,そして詳細に計算する。

三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのたわみ
三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのたわみ

目次

検討モデル

三角形状に分布する荷重(以下,三角形状分布荷重。線形分布荷重ともいう。)を受ける単純支持はり(simply supported beam)のせん断力(shearing force),曲げモーメント(bending moment)およびたわみ(deflection)を検討するモデルを図 1 に示す。

三角形状分布荷重を受ける単純支持はり
図 1 三角形状分布荷重を受ける単純支持はり

単純支持はりの支点 A(単純支持はりの左端)は回転はできるが移動できない回転支点(hinged support),支点 B(単純支持はりの右端)は回転と共に一方に移動できる移動支点(movable support)とした。

単純支持はりの支点 A を $xy$ 座標の原点とし,原点より支点 B 方向を $x$ の正,原点より鉛直下向きを $y$ の正とする。また,はりの長さ(支点 A と支点 B との間の距離)は $l$ とする。

想定する荷重 $w(x)$ は,三角形状に分布する荷重とし,$w(0) = 0$,$w(l) = w_0$ とすれば,任意の $x$ の位置における荷重の大きさ $w(x)$ は,次式の一次関数で表わされる。

\[ w(x) = \frac{w_0}{l}x \]

用語の説明

曲げ荷重(bending load)
支持されたはりを曲げるように作用する荷重
分布荷重(distributed load)
ある領域に分布して作用する力
たわみ(deflection)
部材が外力などの作用によってわん曲したとき,荷重を受ける前の材軸線と直角方向の変位量

反力(reaction force)と全荷重のつり合い

単純支持はりの支点 A の反力 $R_A$ と支点 B の反力 $R_B$ の和は,三角形状に分布する全荷重 $\displaystyle \int^l_0 w(x) dx$ とつり合うので次式が成り立つ。

\[ R_A + R_B = \int^l_0 w(x) dx = \int^l_0 \frac{w_0}{l}x dx = [ \frac{w_0}{2l}x^2 ]^l_0= \frac{w_0 l}{2} \]

一方,支点を A 点としたときの B 点でのモーメントのつり合いは次式で表される。

\[ R_B l - \int^l_0 \frac{w_0}{l}x^2 dx = 0 \]

上式を $R_B$ で整理する。

\[ R_B = \frac{w_0 l}{3} \]

単純支持はりの支点 A の反力 $R_A$ は,反力と荷重のつり合いの式より,次のように求められる。

\[ R_A = \frac{w_0 l}{2} - R_B = \frac{w_0 l}{2} - \frac{w_0 l}{3} = \frac{w_0 l}{6} \]

単純支持はりの支点 B の反力 $R_B$ は,支点 A の反力 $R_A$ の 2 倍の大きさである。

せん断力(shearing force)

図 2 に示すように三角形状分布荷重を受ける単純支持はりを $x$ の位置で切断して考えると,その断面にはせん断力 $Q$ と曲げモーメント $M$ は,内力として作用する。

三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのせん断力と曲げモーメント
図 2 三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのせん断力と曲げモーメント

単純支持はりの支点 A から 距離 $x$ におけるせん断力 $Q(x)$ は次式で表される。

\[ Q(x) = R_A - \int^x_0 w_0 \frac{\xi}{l} d\xi = \frac{w_0 l}{6} - \frac{w_0 x^2}{2l} \]

せん断力 $Q(x)$ を $x$ で微分すると,次式となる。

\[ \frac{\text{d}Q(x)}{\text{d}x} = -\frac{w_0}{2l}x \]

ここで,$x$ の取り得る範囲は,$0 \le x \le l$ であるから,$\text{d}Q/\text{d}x \le 0$ となり,せん断力 $Q(x)$ は,単純減少する。したがって,$x = 0$ でせん断力は最大,$x = l$ でせん断力は最小となり,最大値を $Q_{\text{max}}$,最小値を $Q_{\text{min}}$ とおくと,それぞれ次式で求めることができる。

\[ Q_{\text{max}} = Q(0) = \frac{w_0 l}{6} \] \[ Q_{\text{min}} = Q(l) = \frac{w_0 l}{6} - \frac{w_0 l}{2} = -\frac{w_0 l}{3} \]

また,せん断力の大きさが 0 となるときの $x$ は次式で求められる。

\[ Q(x) = \frac{w_0 l}{6} - \frac{w_0 x^2}{2l} = 0 \] \[ x = \frac{l}{\sqrt{3}} \]

せん断力図(SFD)

$w_0$ = 1 [N/mm],$l$ = 1,000 [mm] としたときのせん断力図(SFD:Shearing Force Diagram)を図 3 に示す。三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのせん断力は,単純減少する二次関数で表される。$x = l/\sqrt{3}$ = 577 [mm] において,せん断力は 0 [N] となる。また,せん断力の最大値と最小値は,次式で求められる。

\[ Q_{\text{max}} = Q(0) = \frac{w_0 l}{6} = 167 \text{ [N]} \] \[ Q_{\text{min}} = Q(l) = \frac{w_0 l}{6} - \frac{w_0 l}{2} = -\frac{w_0 l}{3} = -333 \text{ [N]} \]
三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのせん断力図(SFD)
図 3 三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのせん断力図(SFD)

曲げモーメント(bending moment)

単純支持はりの支点 A から 距離 $x$ における曲げモーメント $M(x)$ は,次式で表される。

\[ M(x) = R_A x - \int^x_0 w_0 \frac{\xi}{l}(x - \xi)d\xi = \frac{w_0 l}{6}x - \frac{w_0}{6l}x^3 \]

曲げモーメント $M(x)$ を $x$ で微分すると,次式となる。

\[ \frac{\text{d}M(x)}{\text{d}x} = \frac{w_0 l}{6} - \frac{w_0}{2l}x^2 \]

ここで,曲げモーメント $M(x)$ が最大となるときを求める。$M(0) = 0$,$\text{d}M(0)/\text{d}x \gt 0$,$M(l) = 0$,$\text{d}M(l)/\text{d}x \lt 0$ であり,曲げモーメントは上に凸の三次関数で表されることから,$\text{d}M(x)/\text{d}x = 0$ となる位置 $x_\text{M}$で,曲げモーメントは最大となる。よって,曲げモーメント $M$ が最大となる $x_\text{M}$ は次式で求められる。

\[ \frac{\text{d}M(x_\text{M})}{\text{d}x} = \frac{w_0 l}{6} - \frac{w_0 x_\text{M}^2}{2l} = 0 \] \[ x_\text{M} = \frac{l}{\sqrt{3}} \]

よって,曲げモーメントの最大値 $M_{\text{max}}$ は次式で求められる。

\[ M_{\text{max}} = M(x_\text{M}) = \frac{w_0 l}{6}x_\text{M} - \frac{w_0}{6l}x_\text{M}^3 = \frac{w_0 l}{6}\frac{l}{\sqrt{3}} - \frac{w_0}{6 l}\frac{l^3}{3\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}}{27} w_0 l^2 \]

曲げモーメント図(BMD)

$w_0$ = 1 [N/mm],$l$ = 1,000 [mm] としたときの,曲げモーメント図(BMD:Bending Moment Diagram)を図 4 に示す。三角形状分布荷重を受ける単純支持はりの曲げモーメントは,上に凸の三次関数で表される。$x_\text{M} = l/\sqrt{3} = 577$ [mm] において,曲げモーメントは最大となり,その大きさは 64,150 [N·mm] である。

\[ M_{\text{max}} = M(x_\text{M}) = \frac{\sqrt{3}}{27} w_0 l^2 = 64,150 \text{ [N·mm]} \]
三角形状分布荷重を受ける単純支持はりの曲げモーメント図(BMD)
図 4 三角形状分布荷重を受ける単純支持はりの曲げモーメント図(BMD)

たわみ(deflection)

単純支持はりの支点 A から 距離 $x$ におけるたわみ $y(x)$ に関する微分方程式は,次式で与えられる。この式は,弾性曲線方程式(elastic curve equation)である。

\[ \frac{\text{d}^2 y(x)}{\text{d}x^2} = -\frac{M}{EI_z} = \frac{w_0}{6EI_z l}(x^3-l^2 x) \]

ここで,$E$ は縦弾性係数(modulus of longitudinal elasticity)またはヤング率(Young's modulus),$I_z$ ははりの横断面の $z$ 軸に関する断面二次モーメント(moment of inertia of area)である。すなわち,この微分方程式は,「たわみの 2 階微分が曲げモーメントを剛性($EI_z$)で割ったものを負にしたものに等しい」ことを意味する。

単純支持はりの場合,はりを固定する支点は変位しないと考えるため,弾性曲線はたわみ曲線(deflection curve equation)と一致する。

たわみ曲線の微分方程式を順次 $x$(断面の位置)で積分し,たわみ $y$ を求める。

\[ \frac{\text{d}y(x)}{\text{d}x} = \frac{w_0}{6EI_z l}(\frac{1}{4}x^4 - \frac{l^2}{2}x^2 + C_1) \] \[ y(x) = \frac{w_0}{6EI_z l}(\frac{1}{20}x^5 - \frac{l^2}{6}x^3 + C_1 x + C_2) \]

ここで,$C_1$,$C_2$ は積分定数であり,はりの境界条件(boundary condition)から決定される。まず,$x = 0$ において,$y = 0$ の境界条件より $C_2$ を求める。

\[ y(0) = \frac{w_0}{6EI_z l}C_2 = 0 \] \[ C_2 = 0 \]

さらに,$x = l$ において,$y = 0$ の境界条件より $C_1$ を求める。

\[ y(l) = \frac{w_0}{6EI_z l}(\frac{1}{20}l^5 - \frac{1}{6}l^5 + C_1 l) = 0 \] \[ C_1 = \frac{7}{60}l^4 \]

したがって,支点 A から 距離 $x$ におけるたわみ $y(x)$は次式となる。

\[ y(x) = \frac{w_0}{360EI_z l}(3x^5 - 10 l^2x^3 + 7l^4x) \]

このようにしてはりのたわみを求める方法を重複積分法(double-integration method)という。

たわみ曲線(deflection curve)

$w_0$ = 1 [N/mm],$l$ = 1,000 [mm],$E$ = 200,000 [N/mm²],$I_z$ = 3,000 [mm4] としたときの,たわみ曲線を図 5 に示す。三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのたわみ曲線は,上に凸の五次関数で表される。

与えられた条件では,$x$ が 518 [mm] において,たわみは最も大きくなり,その大きさは 10.87 [mm] である。

三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのたわみ
図 5 三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのたわみ

(補足)SFD,BMD,たわみ曲線のグラフ化

本ページに掲載しているせん断力図(SFD),曲げモーメント図(BMD),たわみ曲線は,Octave により描画した。

Octave で,三角形状分布荷重を受ける単純支持はりのせん断力,曲げモーメント,たわみを計算し,SFD,BMD,たわみ曲線をグラフ化するプログラムは,以下のページで紹介している。

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