平成9年度 第1種 電力

2022年8月14日更新

目次

  1. 水力発電所の発電機の耐熱クラス F
  2. 電力系統に発生する過電圧
  3. 送電線の最近の保護継電器
  4. 樹枝状高圧配電線のループ切換
  5. 汽力発電所の主要機器の緊急停止
  6. SF6 ガス絶縁変圧器

問1 水力発電所の発電機の耐熱クラス F

近年の水車発電機には,最高許容温度 155 [°C] に十分耐える材料で構成された耐熱クラス F が採用されつつある。これにより,巻線の許容温度を上げることで電流密度を上げ,導体面積を小さくできる。また,鉄心寸法を小さくできることにより,発電機の軽量化・縮小化を図っている。

発電機効率は,抵抗値の増加により全負荷の効率は低下するが,無負荷損の減少で部分負荷の効率は向上する。

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耐熱クラスは,日本工業規格(JIS)において,絶縁体を耐熱温度別に分類したものである。

耐熱クラス
耐熱クラス 最高許容温度[°C]
Y 90
A 105
E 120
B 130
F 155
H 180
N 200
R 220
250 250

(1)

正解は(ロ)155 である。

(2)

正解は(ヘ)電流密度である。

(3)

正解は(チ)鉄心寸法である。

(4)

正解は(ヌ)抵抗値である。

(5)

正解は(カ)無負荷損である。

参考文献

問2 電力系統に発生する過電圧

電力系統に発生する過電圧は,持続時間の観点から分類すると,

  1. 雷による衝撃性の過電圧
  2. 開閉サージや間欠アーク地絡に伴い過渡的に発生する過電圧などの過渡的内部過電圧
  3. 持続性の内部過電圧

の三つに分類される。

雷のうち,直撃雷に対しては,変電所内部又は近傍送電線に架空地線を設置すると共に,その接地抵抗を極力低減することにより,侵入防止を図っている。

また,変電所の近傍の鉄塔で逆フラッシオーバが発生すると,波高値・波頭しゅん度が高いサージが変電所に侵入するが,これを近傍雷という。近傍雷の場合,変電所に侵入する雷サージは,鉄塔電位上昇値に比例して大きくなる。

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架空地線によって送電線路の電線が直撃雷から保護されると,雷撃はほとんど架空地線か鉄塔に落ち,架空地線,鉄塔,塔脚接地抵抗を経て大地に流入する。ここで,塔脚接地抵抗が高いと架空地線や鉄塔電位が上昇し,架空地線と電線,あるいは鉄塔と電線の間の電位差が大きくなり,その間の絶縁耐力以上になると架空地線や鉄塔から電線にフラッシオーバする。これを径間逆フラッシオーバあるいは鉄塔逆フラッシオーバという。ほとんどは間隔が狭い鉄塔逆フラッシオーバが問題になる。

(1)

正解は(ヘ)開閉サージである。

(2)

正解は(ホ)架空地線である。

(3)

正解は(チ)接地抵抗である。

(4)

正解は(ト)逆フラッシオーバである。

(5)

正解は(ニ)鉄塔電位上昇値である。

参考文献

問3 送電線の最近の保護継電器

電力用通信システムのディジタル化や光ファイバー伝送路の拡充により,基幹系統を中心にPCM電流差動継電器が大幅に普及した。従来の方向比較方式や回線選択方式では,保護が難しい多端子等の複雑な系統に対しても PCM 電流差動継電器が適用されるようになった。また,後備保護の主体である距離継電器においても,系統事故時に発生する過渡高調波の含有率の増加と低次化などに起因する検出感度の低下を解決するため,ディジタル化の特長を活かして,演算形距離継電器や逆相距離継電器が開発,実用化されている。

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(1)

正解は(ト)ディジタル化である。

(2)

正解は(ヌ)PCM 電流差動継電器である。

(3)

正解は(ハ)方向比較方式や回転選択方式である。

(4)

正解は(ル)距離継電器である。

(5)

正解は(ホ)演算形距離継電器や逆相距離継電器である。

参考文献

問4 樹枝状高圧配電線のループ切換

樹枝状高圧配電線でループ切換をするのは,無停電で系統を切り換えるためである。連系用開閉器を投入してループにした場合,連系点両側の配電線の電圧や位相に差があると,過大な横流により,変電所の過電流継電器が動作して配電線用遮断器がトリップする場合がある。このため,ループ切換を行う場合は,必要により軽負荷の時間帯に行うなどの配慮が必要である。

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(1)

正解は(ホ)無停電である。

(2)

正解は(ヌ)位相である。

(3)

正解は(リ)横流である。

(4)

正解は(ニ)過電流継電器である。

(5)

正解は(ル)軽負荷である。

参考文献

問5 汽力発電所の主要機器の緊急停止

汽力発電所の主要機器の緊急停止時の相互関係のうち,次の場合の機器のトリップの必要性とその理由について簡単に記入しなさい。

ボイラ側事故時のタービン

貫流ボイラの場合,MFT(燃料トリップ)により燃料が遮断されて消火したときに残圧によるタービン負荷運転を継続すると,保有熱量が小さいので蒸気圧力および温度が低下してタービンに湿り蒸気が流入して損傷のおそれがある。このため,MFT 後ただちにタービンをトリップする。ドラムボイラの場合は,保有熱量が大きいのである程度の時間であればそのままタービンを運転継続するが,復旧に長時間を要する事故の場合はタービントリップする。

タービン側事故時の発電機

復水器真空度低下,排気室温度高,推力軸受損傷等のタービン事故でタービンの流入蒸気が遮断(タービントリップ)されると,発電機は原動機入力がなくなるので系統側と同期したまま電動機(モータリング)となって逆にタービンを駆動するようになる。このため,タービン低圧車室排気部近傍の羽根などが摩擦熱によって過熱し,焼損の原因となるので,タービントリップと同時または短時間以内で発電機をトリップする。

発電機側事故時のタービン

発電機の内部故障または過電流で保護継電器が動作しトリップすると,タービンは無負荷となって急速に加速した後に調速機動作で速度調定率に応じた速度に落ち着くが,発電機事故は短時間で復旧する可能性は少なく,事故復旧のためには原動機であるタービンを停止しなければならないため,発電機の故障拡大防止の観点から,発電機トリップと同時にタービンの蒸気弁を全閉して,タービントリップにする。

参考文献

問6 SF6 ガス絶縁変圧器

SF6 ガス絶縁変圧器の特長は,不燃性であり,地下や屋内変電所に適用した場合,消火設備や防火区画の合理化ができる。

また,油入変圧器に必要なコンサベータ放圧管が不要なため,変圧器室の高さが低減できる。

最近,GIS(SF6 ガス絶縁開閉装置)が普及しており,これらの技術蓄積をもとに,SF6 ガス絶縁変圧器は,GIS との合理的な配置設計による建物建設コストの低減や長期信頼性が期待できる他,保守の省力化も可能である。

一方,SF6 ガスは,絶縁油に比べて,熱伝達率(冷却能力)が小さいため,大容量になるほど内部温度上昇に対する対策が必要になる。

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(1)

正解は不燃性である。

(2)

正解はコンサベータである。

(3)

正解は放圧管(または放圧装置)である。

(4)

正解は保守(またはメンテナンス)である。

(5)

正解は熱伝導率(または熱伝達係数,冷却能力,熱容量)である。

(6)

正解は温度上昇(または過熱,冷却)である。

参考文献

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