平成10年度 第1種 電力
目次
問1 水車の無拘束速度及び負荷遮断試験
水車の無拘束速度とは,ある有効落差,あるガイドベーン開度及びある吸出し高さにおいて,水車が無負荷で回転する速度をいい,これらのうち起こり得る最大のものを最大無拘束速度という。水車,発電機及び付属装置は,この最大無拘束速度において,2分間安全に運転することができるものでなければならないことになっている。
一方,水車の負荷遮断試験は,発電運転中に電力系統事故などにより,負荷が遮断された場合,水車の回転速度,発電機電圧及び水路内水圧などの変動値が保証値を超えることなく,水車,発電機を安全に,無負荷運転に移行し得ることを確認する目的で実施する。なお,高落差ポンプ水車で水圧変動が大きい場合には負荷遮断時の過渡最大回転速度が,最大無拘束速度より大きくなる場合があるので,注意を要する。
(1)
正解は(ロ)有効落差である。
(2)
正解は(ホ)無負荷である。
(3)
正解は(チ)発電機電圧である。
(4)
正解は(ル)水圧変動である。
(5)
正解は(ヨ)負荷遮断である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「水車の無拘束速度」
問2 電力系統安定化装置(PSS)
電力系統安定化装置(PSS)は,発電機に付加するフィルタと位相補償回路からなる系統動揺安定化装置で,発電機出力変化・軸回転速度変化・周波数変化のいずれかを入力信号とし,出力信号を自動電圧調整装置に加えて,発電機の制動トルクを増加させる効果がある。
(1)
正解は(ヌ)位相である。
(2)
正解は(ト)周波数である。
(3)
正解は(ホ)自動電圧調整である。
(4)
正解は(ロ)制動である。
(5)
正解は(ワ)増加である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電力系統安定化装置(PSS)」
問3 接地開閉器の動作責務
接地開閉器は,無電圧の線路や母線などの主回路の接地を主目的としているが,実際の運用においては,線路併設状態において両端接地の停止回線の場合,隣接回線の通電による電磁誘導電流の開閉や線路の残留電荷の放電などの責務が必要となる。
近年,送電容量や併架回線の増大に伴い,接地開閉器の責務は一層厳しくなっており,電流開閉性能に関して言えば,SF6 ガス機器の場合,次のような配慮が必要となる。
- パッファ方式の採用などによる消弧能力強化
- 耐アーク材適用による接点部の強化
- 開極速度増大による遮断能力の強化
他の責務として,巻線形計器用変圧器も放電コイルも接続されていない地中送電線路を接地開閉器で直接接地する場合,残留電荷の急激な移動により,ケーブル防食層で絶縁破壊するおそれがある。このため,サージ抑制用として,投入抵抗付き接地開閉器が採用される場合がある。この場合,ケーブルの静電容量などの条件に対し,充電電圧及び放電回数を考慮した熱容量の設定が必要となる。現在では巻線形計器用変圧器による残留電荷の放電が有効であり,標準的に適用されている場合が多い。
(1)
正解は(ニ)電磁誘導電流である。
(2)
正解は(ヨ)パッファ式である。
(3)
正解は(ル)巻線形計器用変圧器である。
(4)
正解は(チ)投入抵抗付きである。
(5)
正解は(ワ)熱容量である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「変電所に設置する断路器及び接地開閉器」
問4 高圧架空配電線(三相非接地系統)の地絡保護
配電用変電所では,多回線の高圧配電線路の地絡保護のために,地絡方向継電器及び地絡過電圧継電器を組み合わせた方式が一般に採用されている。
高圧配電線路に単相線路部分が多く,対地静電容量が不平衡である場合,地絡過電圧継電器は不要動作することがある。これを防止するためには,単相線路の相振替えや接地コンデンサの配電線路への取付けを行い,健全時の零相電圧を低減させる必要がある。
地絡方向継電器は位相特性をもっており,充電電流と接地形計器用変圧器(GPT)の中性線電流との合成電流で動作するように調整されている。地絡事故時に地絡方向継電器の動作に貢献するのは健全フィーダの充電電流であるが,この充電電流は,対地静電容量の大きいフィーダに一線地絡事故が発生した場合には,対地静電容量の小さいフィーダに地絡事故が発生した場合に比べて小さい。
(1)
正解は(ヘ)地絡過電圧である。
(2)
正解は(カ)不平衡であるである。
(3)
正解は(ヌ)相振替えである。
(4)
正解は(リ)健全フィーダである。
(5)
正解は(ロ)小さいである。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「配電線の高低圧混触」
問5 ボイラの損失
未燃分損失
燃料の燃えかすのなかにごく少量残る,未燃分(主に炭素分)による損失熱量である。石炭燃料のほうが重油燃料,天然ガス燃料より多いが,いずれも 1 [%] 未満で,大容量ボイラではほぼ零である。
不完全燃焼による損失
燃料の不完全燃料による熱量損失であり,煙道ガス中に残る水素ガス(H&sub2;),一酸化炭素ガス(CO),炭化水素ガス(CH)がある。これらのうち,最も生じやすくて,損失が大きいのは一酸化炭素ガスである。
排ガス損失
煙道ガスの保有する熱量であり,乾き排ガス損失とも呼ばれる。排ガスの量,比熱および外気との温度差に依存し,ボイラ損失中で最も大きい。排ガス中にすすが含まれる場合は,その保有熱量もこの損失に加える。
排気中の水蒸気の蒸発熱による損失
排気中の水分を水蒸気として放出することによる損失である。燃焼用空気中の固有水分,燃料中の水分,燃料の燃焼により生成された水分の蒸発熱がある。石炭燃焼の場合は,ボイラ熱損失中で最も大きくなることもある。
放射伝熱損失
ボイラ熱などボイラ本体から外部(大気中)へ放射される熱損失である。保温効果のよいボイラでは非常に少なく,0.2 ~ 0.3 [%] 程度である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「ボイラの損失」
問6 我が国における原子燃料サイクル
使用済燃料から化学的な処理により,ウランやプルトニウムを核分裂生成物として分離し,回収することを再処理という。これによって得られるプルトニウムを発電用軽水炉に利用していくことをプルサーマル利用といい,これに用いるウランとプルトニウムを酸化物の形で混合した燃料を MOX 燃料と呼んでいる。
(1)
正解は化学的である。
(2)
正解は再処理である。
(3)
正解は発電用軽水炉(軽水炉,熱中性子炉)である。
(4)
正解は酸化物である。
(5)
正解はMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「原子燃料サイクル」