平成12年度 第1種 電力
目次
問1 ガスタービンの最大出力
ガスタービンは,圧縮機によって吸い込まれる空気の容積流量が一定であるため,空気の温度が低下すると,密度が高くなり重量流量が増加する。すなわち燃焼空気流量が増加するため,燃料流量を増加させることが可能となり,その結果,出力は増加できる。このようにガスタービンの最大出力は,吸い込まれる空気の温度によって変化する特徴を有する。
(1)
正解は(ホ)圧縮機である。
(2)
正解は(ハ)容積流量である。
(3)
正解は(カ)密度である。
(4)
正解は(ヲ)燃焼空気流量である。
(5)
正解は(ヘ)燃料流量である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「ガスタービン発電」
問2 原子力発電安全設計の考え方
原子力発電に伴い,放射能を持つ多量の核分裂生成物が発生する。発電用原子炉には,万一の事故や故障が発生した際にも,この核分裂生成物を外部環境に放出させないよう 5 重の障壁が設けられている。
第 1 の壁は,燃料のペレットである。これは,二酸化ウランを高温で陶器のように焼き固めたもので,核分裂生成物はこの中で生じるが,あまり移動せず大部分はこの中に留まる。
第 2 の壁は,燃料の被覆管である。これは,第 1 の壁を更に機械的に丈夫なジルコニウム合金製のもので覆ったものである。このようにして核分裂生成物は,本来燃料棒自体の内部に閉じ込められる。
第 3 の壁は,冷却材圧力バウンダリーである。これは燃料を収納する厚いステンレス製の原子炉圧力容器及び原子炉冷却材の配管等であり,燃料棒から核分裂生成物が漏れても,それを含む原子炉冷却材が外部に漏えいしないようにしている。
第 4 の壁は,原子炉等主要な機器を収納する鋼鉄製の原子炉格納容器であり,最後の第 5 の壁は,厚いコンクリートで造られた外部遮へい壁あるいは原子炉建屋である。これらによって,万一,第 3 の壁から漏えいがあっても外部環境には出て行かないようにしている。
(1)
正解は(イ)ペレットである。
(2)
正解は(ヘ)被覆管である。
(3)
正解は(ワ)冷却材である。
(4)
正解は(ル)格納容器である。
(5)
正解は(ホ)遮へい壁である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「原子力発電安全設計の考え方」
問3 直流送電
直流送電は,交流送電に比べて,一般に送電線路の建設費が安く,長距離送電に適している。特に直流ケーブルによる長距離送電は,充電電流の補償が不要で,絶縁の面でも有利である。
また,交流系統のような同期安定性の問題がなく,送電線の熱的限界まで送電電力を増加させることが可能である。二つの交流系統を非同期で連系でき,周波数変換設備として使用することもできる。
直流送電の両端には,送電電力を交流から直流あるいは直流から交流に変換する交直変換器が必要となる。交直変換器としては,交流系統の電圧で転流動作を行う他励式変換器が主として用いられている。他励式変換器は,運転に応じて交流系統から無効電力をとるため,進相コンデンサ等の調相設備が必要となる。
一方,GTO 等の自己消弧形バルブデバイスを用いた自励式変換器の直流送電への適用が検討されている。自励式変換器による直流送電システムは,有効電力と無効電力を独立に制御できるため,調相設備が不要で,短絡容量の小さい交流系統との連系や離島送電に適している。
(1)
正解は(ヲ)長距離送電である。
(2)
正解は(ホ)充電電流である。
(3)
正解は(イ)熱的限界である。
(4)
正解は(ワ)転流動作である。
(5)
正解は(ハ)自励式変換器である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「直流送電方式の利点と課題」
問4 超高圧以上の送電線に多く用いられる多導体
多導体(複導体)は,スペーサを取り付けるなど構造が複雑となり,また,風圧や氷雪荷重が増加し,鉄塔部材が大きくなり,建設費が増加するなど欠点があるが,単導体に比べて次のような利点がある。
- 単導体と合計断面積が等しい多導体は,表皮効果が小さいので,電流容量を大きくとることができて送電容量が増加する。
- 電線のインダクタンスが減少し,また静電容量が増加する。
- 電線表面の電位傾度を減少できるので,コロナ開始電圧が高くなり,コロナ損失,雑音障害を防止できる。
- 送電線のインダクタンスが小さくなるので,系統安定度が向上する。
(1)
正解は(ニ)表皮効果である。
(2)
正解は(カ)インダクタンスである。
(3)
正解は(チ)増加である。
(4)
正解は(ヌ)電位傾度である。
(5)
正解は(ヘ)高くである。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「送電線の送電容量」
問5 有水試験時の発電機三相短絡試験
- 発電機電機子の線路側全端子を母線回路側から完全に切り離し,電機子の線路側全端子を短絡する。
- 発電機の励磁系が自励式の場合は,他励回路に変更する。
- 比率差動継電器が動作しないようにロックするとともに,過電流継電器の設定値を最高試験電流を考慮したうえで適正な値に合わせる。
- 発電機を定格速度で運転し,界磁巻線に直流電流を流して電機子電流と界磁電流の関係を測定する。測定は発電機定格電流の 100 [%] 程度まで行う。
- 無負荷飽和特性と三相短絡特性から短絡比及び同期インピーダンスを算出する。
(1)
正解は短絡である。
(2)
正解は自励である。
(3)
正解は他励である。
(4)
正解は過電流である。
(5)
正解は界磁電流である。
(6)
正解は無負荷飽和である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「有水試験」
問6 電力用コンデンサに接続する直列リアクトル
電力用コンデンサは主として力率改善と電圧調整のために用いられるが,使用によって電圧波形にひずみが生じることがある。これは一般に,電力用コンデンサ設置点からみた系統側の高周波インピーダンスが誘導性のとき,電力用コンデンサのみを回路に投入すると,電力用コンデンサにかかる高周波による電圧が大きくなって波形がひずむからである。これを防ぐためには,通常,電力用コンデンサに直列にリアクトルが接続される。
一般に,三相回路の高調波は,第 5 調波が主で,以下第 7,第 11,第 13 ・・・などの高周波がある。この発生原因の主なものは,変圧器など鉄心を有する誘導機器の整流負荷によるものである。原理的に第 5 調波に対して同調するのは,直列リアクトルのリアクタンスが電力用コンデンサのリアクタンスの 4 [%] のときであるが,実際には経済性や周波数の低下などに対する安全率を考え,直列リアクトルのリアクタンスを高めの値に選定するのが一般的である。
第 5 調波より高次の高調波に対しては,例えば第 7 調波では 2.1 [%] 以上の直列リアクトルを挿入すればよいが,すでに第 5 調波用に直列リアクトルが挿入されているため,改めて考慮する必要はない。
また,直列リアクトルには,この他にも,電力用コンデンサ投入時の突入電流の抑制,電力用コンデンサ開閉時の過電圧抑制などの効果もある。
(1)
正解は(ヌ)電圧調整である。
(2)
正解は(ヲ)誘導性である。
(3)
正解は(カ)磁気飽和特性である。
(4)
正解は(ナ)整流負荷である。
(5)
正解は(リ)4 である。
(6)
正解は(ヘ)周波数である。
(7)
正解は(ル)2.1 である。
(8)
正解は(ハ)突入電流である。
(9)
正解は(ト)過電圧である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「変電所に設置される調相設備」