平成13年度 第1種 電力

2022年8月12日更新

目次

  1. タービン発電機のモータリング
  2. 可変速揚水発電システム
  3. 変圧器の移行電圧
  4. マイクロガスタービン発電
  5. 送電系統に適用される再閉路方式
  6. コンバインドサイクル発電

問1 タービン発電機のモータリング

タービン発電機が系統に並列して運転しているときに,何らかの異常によりタービンへの蒸気流量が,タービンの無負荷回転速度を保つのに必要な値以下になると,発電機は系統に接続したまま同期電動機として運転される。この状態をモータリング(電動機化)という。モータリングは発電機に対する制限はないが,タービンに対しては低圧タービン排気部の温度が過度に上昇することを防止するために時間制限が設けられる。

そのため,モータリングを自動的に検出する必要があり,その検出方法としては,

  1. 蒸気弁の開度により検出する方法
  2. 逆電力継電器

などがある。

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タービン発電機(turbine generation)

蒸気タービンまたはガスタービンにより駆動される発電機をいい,一般に横置型で高速回転するので,通常は円筒形回転界磁形同期発電機をいう。大容量クロスコンパウンド機の二次側,あるいは原子力発電では 4 極機が用いられることが多いが,その他のものはほとんど 2 極機である。

タービン発電機は冷却方式,励磁方式によって種々に分類できる。

冷却方式による分類

固定子の冷却方法としては,発電機内に水素を封入した,いわゆる普通(間接ともいう)水素冷却,固定子コイル内に通路を設けて水素を通す直接水素冷却,さらにその通路内に油または純水を通す直接液体得冷却がある。回転子の冷却方式にも普通水素冷却と直接水素冷却がある。

励磁方式による分類

励磁方式には大きく分けて直流励磁方式,交流励磁方式および静止形励磁方式の三つがある。

直接励磁方式

直接励磁方式は,励磁機の駆動方式により直結,直結減速,別置に分類される。

交流励磁方式

交流励磁方式は,直結交流励磁方式を別置の整流器で整流して発電機界磁に供給する別置整流器付励磁方式と,回転電機子形の直結交流励磁機出力を軸上の整流器で整流して供給する刷子なし励磁方式に分けられる。

静止形励磁方式

静止形励磁方式は回転励磁機を使用しない方式であり,自励式とサイリスタ励磁方式とがある。発電機容量は,材料や冷却方式の進歩等により 2 極機で 80 万 kW 程度,4 極機で 130 万 kW 程度の大容量のものが製作可能となった。発電機電圧は送配電電圧,受電電圧等で異なるが,3.3 ~ 25 kV 程度であり,定格力率は系統厚生,負荷状態で定められ,一般に 0.8 ~ 0.9 のものが多い。

(1)

正解は(ヲ)蒸気流量である。

(2)

正解は(カ)無負荷である。

(3)

正解は(イ)同期電動機である。

(4)

正解は(ホ)低圧タービン排気部である。

(5)

正解は(ハ)逆電力継電器である。

参考文献

問2 可変速揚水発電システム

揚水発電システムは,夜間の電力を利用してポンプで下部池から上部池へ水をくみ上げ,水の位置エネルギーとして貯蔵し,昼間のピーク負荷時に発電して電力消費の平準化を行うシステムである。

可変速揚水発電では,発電電動機として二重給電同期機が用いられる。一次巻線は交流電源に直接接続され,二次巻線はサイクロコンバータ等の交流励磁装置によって励磁され,二次励磁周波数(滑り周波数)を変えることによって発電電動機を可変速運転できるようにしている。

発電運転時には出力や落差に応じて水車の効率が最大になるような回転速度で運転ができ,揚水運転時にはポンプの回転速度を変えることによって電力系統の負荷電力を調整できる。また,電力動揺の抑制など系統の安定化を図ることができる。

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揚水式発電所(pumped storage hydro-power plant)

発電所の上部・下部に貯水池(調整池)をもち,豊水期あるいは深夜時の余剰電力で低所(下池)の水を高所(上池)に汲み上げて,この水を必要に応じて発電に利用する水力発電所をいう。揚水式発電所はエネルギーロスの不利な面もあるが,kW 当たりの建設費が安い等ピーク供給力として優れているため,電源構成上の必要性から開発が進められている。

(1)

正解は(ヌ)ピーク負荷である。

(2)

正解は(ニ)交流電源である。

(3)

正解は(ホ)サイクロコンバータである。

(4)

正解は(カ)効率である。

(5)

正解は(ヨ)電力動揺である。

参考文献

問3 変圧器の移行電圧

移行電圧とは,変圧器の高圧側巻線に侵入したサージ電圧が,巻線間の静電容量,又は結合リアクタンスを経て低圧側巻線に移行することをいい,前者を静電移行電圧,後者を電磁移行電圧という。

静電移行電圧に対しては低圧側巻線にコンデンサを設置するなどの対策が採用されている。一方,電磁移行電圧に対してはコンデンサの設置だけではそれほど低減されないことから,必要に応じて低圧側の相間絶縁を若干強化するか,あるいは低圧側各相対地間に避雷器を挿入するなどの対策が必要となる。

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(1)

正解は(カ)サージ電圧である。

(2)

正解は(ニ)結合リアクタンスである。

(3)

正解は(ロ)低圧側巻線である。

(4)

正解は(リ)相間絶縁である。

(5)

正解は(ル)避雷器である。

参考文献

問4 マイクロガスタービン発電

マイクロガスタービン発電は,7 万 ~ 10 万 [min-1] 程度の回転速度を持つ小形タービンに高周波発電機と電力変換装置を組み合わせたもので,出力は 50 [kW] 程度で,都市ガス・軽油などを燃料としている。ディーゼルエンジン発電などと比較した場合,コンパクトで冷却水が不要なうえ,窒素酸化物の排出量が少なく,運転・保守及び環境面で優れており,分散型電源としての普及が期待されている。

また,排ガス温度は 250 [°C] 以上であり,熱交換器で 80 [°C] 程度の温水を取り出せる。このため,コージェネレーションとして使用すれば総合熱効率を 70 ~ 80 [%] まで上げることができ,省エネルギー対策用として期待が高まっている。

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マイクロガスタービン(Micro Gas Turbine)

ガスタービンと呼ばれる原動機の中でも,発電出力が 300 万 kW 程度以下のものを総称して,マイクロガスタービンというが,特に空気軸受け等を採用して高速回転(数万 min-1 以上)を実現した小型ガスタービンをさす場合が一般的である。ガスタービンは,タービン,圧縮機,燃焼器,再生器等から構成され,最近では,発電機や温水ボイラ等と組み合わせて一体化した小型発電コージェネレーションシステムとして実用化されている。

(1)

正解は(ヲ)7 万 ~ 10 万である。

(2)

正解は(ハ)高調波である。

(3)

正解は(ル)窒素酸化物である。

(4)

正解は(ホ)分散型電源である。

(5)

正解は(ト)70 ~ 80 である。

参考文献

問5 送電系統に適用される再閉路方式

架空送電線には,事故が発生した回線や事故相をいったん停止してアークを消滅させ,適切な無電圧時間後,自動的に再閉路する方式が多く適用されている。

架空送電線に適用される自動再閉路方式には,大別して次の方式がある。

  1. 三相再閉路方式:平行二回線送電線の片回線側に事故が発生した場合,事故相に関係なく,事故回線を両端の変電所で遮断し,一定時間後再閉路する方式である。
  2. 単相再閉路方式:1 線地絡事故に限って,その事故相を遮断し,一定時間後再閉路する方式である。この場合,健全相は送電を継続したままである。
  3. 多相再閉路方式:平行二回線送電線のうち事故相を遮断し,一定時間後再閉路する方式であり,両回線同時の多重事故に対しても高速再閉路しようとするものである。二相以上の連系を条件としている。

架空送電線の再閉路成功率は 90 [%] 以上であり,自動再閉路方式は有効な事故復旧の自動化といえる。また,単相再閉路,多相再閉路を行うと事故中も系統の連系が保たれるので,系統の安定度が崩れる可能性が低くなる。なお,これらの方式の場合,遮断器は各相ごとに独立して開閉操作できることが必要である。

高速度再閉路方式の再閉路時間は,フラッシオーバ発生箇所の絶縁回復特性を考慮し,かつ,安定度向上に効果を出すよう,一般的に 1 秒程度に定められている。

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(1)

正解は(ニ)無電圧である。

(2)

正解は(ロ)両端である。

(3)

正解は(リ)1 線地絡である。

(4)

正解は(ヲ)二相以上である。

(5)

正解は(レ)連系である。

(6)

正解は(カ)各相である。

(7)

正解は(ル)1 である。

参考文献

問6 コンバインドサイクル発電

ガスタービン発電と蒸気タービン発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電は,高温域と低温域で作動する異なる熱サイクルを組み合わせたものである。

高温域の熱サイクルには燃料の燃焼熱を熱源とするブレイトンサイクルを使用し,低温域の熱サイクルには高温域の熱サイクルの排ガスを熱源とするランキンサイクルを用いて複合熱機関とし,熱効率の向上を図っている。

コンバインドサイクル発電の熱効率 $\eta_C$ は,ガスタービンの熱効率を $\eta_G$,蒸気タービンの熱効率を $\eta_S$とすると,

\[ \eta_{C}=\eta_{G} + (1-\eta_{G})\eta_{S} \]

と表される。この $\eta_C$ を向上させるためには,ガスタービンの入口ガスまたは燃焼温度を上昇させることが最も効果的である。

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コンバインドサイクル発電(combined cycle generation)

2 種類の発電システムを結合して高温域から低温域までエネルギーを利用し,高い効率を得ようとするもので,燃焼ガスがもっているエネルギーを,高温域はガスタービンで発電し,低温域はガスタービンの排気をボイラに導いて熱回収を行い,発生した蒸気を利用して蒸気タービンで発電するものである。また,この方式では比較的小容量の単位設備をいくつも組み合わせて大容量化することになるので,運用面においても,以下の優れた特性を有している。

  1. 起動時間が短く,起動停止が容易
  2. 負荷変化率が比較的大きく負荷追従性が良好
  3. 部分負荷時の熱効率が高い
  4. 最低負荷が低い

(1)

正解はブレイトンである。

(2)

正解は排ガスである。

(3)

正解はランキンである。

(4)

正解は $\eta_\text{G}+(1-\eta_\text{G})\cdot \eta_\text{S}$ である。

(5)

正解は入口ガスまたは燃焼である。

参考文献

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