平成14年度 第1種 電力

2022年8月14日更新

目次

  1. 中小水力発電設備の経済性
  2. 発電用蒸気タービン
  3. 変圧器保護
  4. 超高圧送電線の絶縁設計
  5. 加圧流動床複合発電方式(PFBC)の特徴
  6. 調相設備設置の目的とその開閉装置の特徴

問1 中小水力発電設備の経済性

近年,中小水力発電設備において,土木設備を含めた設備全体の経済性が追及されており,その一環として土木設備では,負荷遮断時の水圧上昇を小さく抑えることによって,水圧鉄管の肉厚を薄くして経済化を図っている。

このため,機械設備では,水車のガイドベーン閉鎖時間を 10 ~ 20 秒程度に長くしなければならないが,発電機のはずみ車効果($GD^2$)は発電機固有のままとし,負荷遮断時の回転速度を無拘束速度又はそれに近い速度まで許容する設計がなされている。これにより水車・発電機の発生応力は上がるが,ガイドベーンのサーボモータ容量を低減できること,あるいは発電機を小形化できることなどの経済的効果が生じる。

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(1)

正解は(ヌ)水圧上昇である。

(2)

正解は(ロ)水圧鉄管である。

(3)

正解は(カ)発電機固有である。

(4)

正解は(ハ)無拘束速度である。

水車発電において,急に負荷が遮断されたような場合,回転数は速度変動率に従って上昇する。この場合,調速機が万一不動作になると,回転数は水車によって決まるある値まで上昇して回転を続ける。この回転速度を無拘束速度といい,水車発電機の強度設計の基本となる。

(5)

正解は(ヘ)サーボモータ容量である。

参考文献

問2 発電用蒸気タービン

全負荷運転中の蒸気タービンが突然無負荷になったとき,速度上昇の整定値は,調速装置の特性である速度調定率によって決まるが,万一,調速装置が不具合の場合,回転速度の急上昇は大事故になるおそれがあるので,これを防止するため定格速度の 111 [%] 以下で作動し,タービンを停止させる非常調速装置が設けられている。

このようなタービン運転状態の異常による事故及び危険の未然防止のために取り付けられている装置を総称してタービン保安装置といい,非常調速装置のほかに,タービンの軸受油の圧力が規定値以下に下がったときにタービンを停止させる装置などがある。

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(1)

正解は(ホ)速度調定率である。

(2)

正解は(ヌ)111 である。

(3)

正解は(ニ)非常調速装置である。

(4)

正解は(カ)保安である。

(5)

正解は(ヨ)軸受油である。

参考文献

問3 変圧器保護

変圧器保護には,一般的に主保護として比率差動リレー方式が,後備保護として方向距離リレー方式又は過電流リレー方式が用いられる。

変圧器特有の現象としては,変圧器に電圧を印加したときに過渡的に流れる励磁突入電流が挙げられる。この電流には,第 2 調波成分が多く含まれるため,この値をフィルタで抽出して,これが基本波成分に対して一定値異常の場合に比率差動要素をロックする第 2 調波ロック方式が一般的に採用されている。

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(1)

正解は(ワ)比率差動である。

(2)

正解は(ヲ)過電流である。

(3)

正解は(ト)励磁突入である。

(4)

正解は(ロ)第 2 である。

(5)

正解は(ホ)フィルタである。

参考文献

問4 超高圧送電線の絶縁設計

架空送電線の絶縁設計では,常規商用周波電圧に耐えることはもちろん,線路の開閉時に生じる開閉サージ電圧及び負荷の急変あるいは線路故障時に発生する持続性異常電圧に対しても,絶縁破壊を起こさないような考え方が適用されている。

直接接地方式の超高圧送電線では,高速度再閉路における投入時と遮断時に高い開閉サージ電圧が発生する。特に,多相投入時の開閉サージが過酷であり,これを対象にして絶縁設計の基準となるがいしの絶縁強度及びクリアランスが決められている。

この開閉サージ電圧の大きさは交流常規対地電圧波高値の倍数で表され,187 ~ 275 [kV] の送電線の絶縁設計に採用される対地過電圧倍数は 2.8 倍であり,送電線の両端に高性能避雷器が設置された場合には,この値は低減される。

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(1)

正解は(リ)直接接地である。

(2)

正解は(ワ)多相投入である。

(3)

正解は(ヨ)クリアランスである。

(4)

正解は(チ)2.8 である。

(5)

正解は(ロ)高性能避雷器である。

参考文献

問5 加圧流動床複合発電方式(PFBC)の特徴

近年,石炭火力発電は地球環境問題と資源有効利用の観点から高効率化と高い環境特性が求められていることから,従来の微粉炭燃焼に代わる技術としてPFBC(Pressurized Fluidized Bed Combustion)の開発・導入が進められている。

この発電方式は,圧力容器内の加圧状態にあるボイラ内で,石炭,石灰石及び灰の混合物を燃焼させた流動層内において,発生した熱を高い熱伝達特性を持つ層内伝熱管により高温蒸気として回収し,蒸気タービン・発電機を駆動させるとともに,高温のボイラ排ガスを利用してガスタービン・発電機を駆動させる複合発電方式であり,次のような特徴がある。

a. 高効率化

複合発電方式による高効率化のほか,ボイラ内の酸素分圧が高く,燃焼ガスの滞留時間が長いため,燃焼効率が良く発電効率が高い。

b. 高効率化

  1. 流動材として使用している石灰石により炉内脱硫が可能である。
  2. 燃焼温度が低いことから窒素酸化物の発生が少ない。

c. コンパクト化

加圧下で燃焼させるためボイラが小形化できること。また,排煙脱硫装置が不要であることから,発電所をコンパクト化できる。

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(1)

正解は石灰石である。

(2)

正解は流動層(流動床)である。

(3)

正解はガスタービンである。

(4)

正解は窒素酸化物(NOxである。

(5)

正解は脱硫である。

参考文献

問6 調相設備設置の目的とその開閉装置の特徴

調相設備設置の目的は,送電線路の受電端側で無効電力を補償して送電線路損失を軽減し,これによって送電容量を確保し,また,系統電圧を適正に維持することである。さらに最近では,静止形無効電力補償装置の高速動作を利用して,系統の安定度を維持することも行われている。

調相設備開閉の特徴は,一般の負荷開閉に比べて開閉頻度が高いこと及び開動作時に開閉器極間に発生する過渡回復電圧の様相が一般の負荷遮断の場合と異なることである。

電力用コンデンサを開放するときには,コンデンサ回路の残留電圧と電源電圧との関係によって,最初の電流遮断後 1/2 サイクルの時点で,開閉器極間の定常対地電圧波高値の約 2 倍の過渡過電圧が現れる。このとき,再点弧を起こすと高いサージ電圧が発生する場合がある。また,コンデンサ投入時には,回路の定数で決まる固有周波数の突入電流が流れるので,これを抑制するために直列リアクトルが設置される。

分路リアクトルを開放するときには,リアクトル回路の遅れ小電流を電流遮断能力の高い遮断器で遮断すると,電流裁断により高い過渡回復電圧が発生する場合がある。

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(1)

正解は(ホ)無効電力である。

(2)

正解は(レ)系統電圧である。

(3)

正解は(ヘ)高速である。

(4)

正解は(ヤ)開閉頻度である。

(5)

正解は(ヲ)2 である。

(6)

正解は(チ)再点弧である。

(7)

正解は(ツ)突入である。

(8)

正解は(リ)電流裁断である。

参考文献

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