平成15年度 第1種 電力

2022年8月14日更新

目次

  1. 火力発電所の発電機主回路
  2. 沸騰水形軽水炉(BWR)の気水分離器と蒸気乾燥器
  3. 三相変圧器の比率差動保護回路
  4. 高圧配電線路の地絡故障検出
  5. 送電線の微風振動
  6. 電力用保護制御システムのサージ対策技術

問1 火力発電所の発電機主回路

火力発電所の発電機と主変圧器との間の電路には相分離母線(Isolated Phase Bus : IPB)が使用されている。

相分離母線は,各相の導体を接地した金属製外被で閉鎖して,各相を分離した構造の母線である。外被材料として軽量で導電率の高い材料を使用する。

三つの相の外被を両端で相互に短絡することで,各外被には導体電流によって生じる磁束により電流が誘導される。外被の誘導電流は導体電流と逆方向の電流となり,外部への漏れ磁束を少なくすることができる。これにより,外部の鉄構造物に発生する渦電流による誘導加熱を抑制するとともに,短絡時に各相導体間に働く電磁力を小さくすることができる。

また,外被の放熱面積が大きいので電流容量も大きく得られるうえ,閉鎖された外被内部を風冷式にすれば,さらに大電流に対応できる特徴がある。

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相分離母線(Isolated Phase Bus : IPB)

主として大容量火力発電所や原子力発電所における発電機と主変圧器を接続する主回路や,主回路から分岐して所内変圧器へ接続する所変回路などに使用されている。

基本的に電流を流す母線とその外被から構成されており,各相毎に分離されている。そして母線回路の両端および回路接続部で外被相間を短絡板で接続し,外被全体が閉回路を構成するようにしている。この構成により,外被に誘導される電流によって母線電流による磁界が打ち消され,外被外部への磁束が無視できるほど小さくなる。したがって,近接構造材への誘導加熱の影響がなくなり,異相母線間に電磁力が作用しなくなるなどの利点がある。

また,一線地絡事故が生じても,二相短絡,三相短絡へと発展しにくい構造である。

これらのことから,相分離母線は,信頼性,安全性が高く,大電流の通電に適している。

相分離母線の構造
図 相分離母線の構造

(1)

正解は(ロ)導電率である。

(2)

正解は(カ)逆方向である。

(3)

正解は(ト)渦電流である。

(4)

正解は(ヲ)電磁力である。

(5)

正解は(ワ)放熱面積である。

参考文献

問2 沸騰水形軽水炉(BWR)の気水分離器と蒸気乾燥器

沸騰水形軽水炉(BWR : Boiling Water Reactor)には,炉心から出てきた気水混合流を,タービンへ送る蒸気と再び炉心へ循環する水とに沸けるために,気水分離器と蒸気乾燥器が設けられている。

気水分離器はシュラウド・ヘッド上部にあり,そこへ炉心から入った蒸気は,入口ベーンを通過することにより回転運動が与えられ,チューブ内を渦巻きながら上向き移動していく間に,それに伴う遠心力効果によって水と蒸気とに分離される。

蒸気乾燥器に入った蒸気は,ステンレス鋼製の平行波形板を通る間に進行方向が何回も変わり,方向変換ごとに平行波形板の表面に当たって湿分が除かれた後,主蒸気ノズルからタービンへ導かれる。

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(1)

正解は(ホ)入口ベーンである。

(2)

正解は(ワ)回転である。

(3)

正解は(ニ)遠心力効果である。

(4)

正解は(ル)平行波形板である。

(5)

正解は(リ)湿分である。

参考文献

問3 三相変圧器の比率差動保護回路

準備中

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(1)

正解は(カ)Y 及び Δ である。

(2)

正解は(ハ)$\displaystyle N\frac{I_1}{n_2}$ である。

(3)

正解は(ロ)$\displaystyle \sqrt{3}N\frac{n_1}{n_2}$である。

(4)

正解は(チ)$i_1 \lt i_2$ である。

(5)

正解は(ヲ)大きくである。

参考文献

問4 高圧配電線路の地絡故障検出

高圧配電線路の地絡故障は,過電圧リレーによって零相電圧から検出することができるが,多回線の場合,故障回線の選択ができない。したがって,地絡保護は接地変圧器と零相変流器とから入力をとる地絡方向リレーによって行っている。

接地変圧器は,一次側は中性点直接接地の Y 結線,二次側は開放 Δ 結線とし,その開放端に抵抗を挿入,零相電圧を検出してリレーに供給している。なお,対地静電容量が大きい系統では,地絡故障時の零相電圧が小さくなり,リレーが動作しにくくなるおそれがある。その代表的な対策として接地保護母線リレー方式がある。この方式は地絡故障により零相電圧が発生したとき,これと位相の近似した他電源の電圧を地絡方向リレーへ零相電圧として供給するものである。

零相変流器は各配電線に設置され,零相電流をリレーに供給している。地絡故障が発生した回線の零相変流器に流れる零相電流は,健全回線のそれとは位相がとなる。これを利用して故障回線を選択遮断する。

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(1)

正解は(リ)地絡方向である。

(2)

正解は(イ)直接接地である。

(3)

正解は(ヌ)対地静電容量である。

(4)

正解は(ヨ)各配電線である。

(5)

正解は(チ)逆である。

参考文献

問5 送電線の微風振動

比較的緩やかで一様な風が送電線に直角に吹き付けると,電線の風下側にカルマン渦が生じ,電線に対して上下鉛直方向の圧力が与えられて振動することがある。この振動数が電線の固有振動数と一致すると,持続的な振動が発生する。これが微風振動であり,長径間であって,直径が大きい割に重量の軽い電線の場合や,電線の張力が大きい場合に発生しやすい。

電線は微風振動により上下方向の曲げ疲労を生じ,素線切れや断線に至る場合がある。対策としては,電線の支持点付近にアーマロッドを巻き付けて電線を補強したり,ダンパを取り付けて振動を吸収する方法がある。

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(1)

正解はカルマン渦(カルマン渦流)である。

(2)

正解は振動である。

(3)

正解は長径間である。

(4)

正解はアーマロッドである。

電線支持点を補強するため,アーマロッドを使用し,電線の保護と防振効果を利用する。

(5)

正解はダンパ(制動子)である。

トーションダンパ,ストックブリッジダンパなどを使用し,振動のエネルギーを吸収させて振動の減衰を早める。

参考文献

問6 電力用保護制御システムのサージ対策技術

最近,電力用保護制御システムやその設置環境は大きく変化しており,保護制御システムについては,電磁形からマイクロプロセッサを用いたディジタル形が主流となって,電子機器化が進んでいる。また,設置環境面ではガス絶縁開閉装置(GIS)の幅広い採用,機器の近傍への保護制御システムの設置などによって,サージの形態や考慮すべきサージ耐量が変化している。

低圧制御回路の絶縁設計上及び装置の信頼度設計上配慮すべき異常電圧はサージ性電圧であり,次のように分類される。

  1. 雷に起因するサージ性電圧
    1. 電気所の母線,接地線等に雷サージ電流が流れ,近傍する制御ケーブルに誘導するもの。
    2. 主回路に侵入した雷サージ電圧・電流が計器用変成器の二次回路に誘導するもの。
    3. 電気所の接地系に雷サージ電流が流入し,流入点の接地電位が上昇,近傍に設置された低圧制御回路に誘導するもの。
  2. 主回路の開閉に起因するサージ性電圧
    1. 遮断部や断路器の開閉で主回路に発生した開閉サージが計器用変成器の二次回路に誘導するもの。
    2. GIS 機器において発生した開閉サージが接地電位を上昇させ,近傍に設置された低圧制御回路に誘導するもの。
  3. 直流回路の開閉に起因するサージ性電圧
    1. 直流回路の容量性や誘導性の負荷を接点で開放するとき,近傍に設置された低圧制御回路に発生するもの。
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サージ対策としては,次のような事項が挙げられる。

  1. サージ発生源における対策
    • 金属シース付ケーブルを採用し,シースの両端を接地する。
    • 低圧制御ケーブルを高圧主回路の起誘導線から離す。
    • リレーコイルなどに並列にコンデンサやダイオードを接続して直流回路開閉時のサージ電圧を抑制する。
  2. 配電盤側における対策
    • 避雷器またはコンデンサなどのサージ吸収装置を盤側端子に接続し,盤内へのサージ侵入を阻止する。
    • 絶縁変圧器,中和コイルなどによって,盤側へのサージ侵入を阻止する。
  3. 遠隔制御所における対策
    • 制御所の接地抵抗は極力低減して接地極の浮動電圧を抑制する。
    • 制御ケーブルと装置間をサージ的に絶縁分離する適切な保安装置を設ける。
    • 直流回路や論理回路にはLCフィルタまたは組合せ形の保安器を使用する。
    • サージアブソーバーを取り付ける。

(1)

正解は(ム)ディジタル形である。

(2)

正解は(ホ)機器の近傍である。

(3)

正解は(ヨ)サージ耐量である。

(4)

正解は(タ)絶縁設計上である。

(5)

正解は(イ)制御ケーブルである。

(6)

正解は(ヘ)計器用変成器である。

(7)

正解は(ル)接地電位である。

参考文献

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