平成17年度 第1種 電力

2022年8月14日更新

目次

  1. 立軸水車発電機の軸受
  2. 軽水炉の出力制御
  3. 変電所等に設置される変流器の特性
  4. 電力系統の不安定現象とその対策
  5. 送電系統に用いられる距離リレー方式
  6. 高圧配電系統へ発電機を連系する際の電圧変動計算

問1 立軸水車発電機の軸受

発電機の主軸は大別して2種類の軸受によって支えられている。

一つは発電機の回転子及び水車の重量を軸方向に支える軸受で,スラスト軸受といわれる。この軸受の回転部と接触する部分を静止板といい,回転部との摩擦を小さくし磨耗を少なくするため,その表面には一般的にホワイトメタルを採用しているが,最近ではホワイトメタルの代わりにさらに摩擦係数の小さい樹脂を採用する場合がある。

他の一つは,主軸の軸振れを防止する軸受で,案内軸受といわれる。二つ割の円筒形軸受やセグメント軸受を用いる。

高・中速度の立軸の発電機の軸受には普通形と呼ばれる型式が広く採用されている。普通形では,スラスト軸受を回転子の上部に設け,案内軸受を回転子の上下双方に設けている。

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(1)

正解は(ワ)スラストである。

(2)

正解は(ト)摩擦である。

ホワイトメタルとは,スズと鉛の合金で,これにアンチモン,銅などの添加元素を加えた軸受用合金の総称。スズを主体とするものから,鉛を主体とするものまで種々の成分のものがある。

(3)

正解は(カ)樹脂である。

(4)

正解は(ヌ)案内である。

(5)

正解は(ハ)上下双方である。

参考文献

問2 軽水炉の出力制御

沸騰水型軽水炉(BWR)の原子炉出力制御方式としては,次の方法がある。

中性子吸収材を充てんした制御棒を炉心内に挿入又は炉心外へ引き抜くことにより出力を制御する。制御棒を引き抜くと原子炉出力は増加する。また,炉心流量による制御があり,炉心流量が増加することで,冷却材中のボイドの体積比率が低下し,中性子の減速降下が高くなるので原子炉出力は増加する。

加圧水型軽水炉(PWR)の原子炉出力制御方式としては,沸騰水型軽水炉と同様の制御棒による制御とほう素濃度による制御がある。

後者は,ほう素が中性子を吸収する性質を利用して出力を制御するものであり,一次冷却材にこれを注入し濃度を増すと原子炉出力は減少する。この制御は,制御棒による制御に比べ緩やかな出力調整に使用される。

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(1)

正解は(ハ)吸収である。

(2)

正解は(ワ)炉心流量である。

(3)

正解は(リ)減速である。

(4)

正解は(ホ)ほう素である。

(5)

正解は(チ)緩やかなである。

参考文献

問3 変電所等に設置される変流器の特性

系統事故などで電力回路に大電流が流れたとき,変流器が保護リレーにどのような二次電流を供給するかが問題になる。このような大電流域の特性を表すものとして過電流定数があり,比誤差が10[%]になるときの一次電流と定格一次電流の比をいう。一般に $n$ なる記号が使われるが,$n = 20$ といえば,定格負荷で定格一次電流の 20 倍の一次電流が流れると比誤差が 10 [%] となることを意味する。

変流器の誤差の主な原因は励磁電流であり,一定負担の下では鉄心が飽和しない範囲であれば,励磁電流は二次電流に比例する。現実には,大きさの限られた鉄心を使用し,負担の存在下では,一次電流が増えれば誘導電圧が大きくなり,やがては鉄心が飽和してくるので,励磁電流は著しく増える。

この変流器の特性を示すものとして,変流器の一次側を開放し,二次巻線に電圧を印加して電流を流し,印加電圧と電流の関係を示す変流器の二次励磁特性曲線がある。

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比誤差とは,公称変流比 $K_C$ がどれだけ真の変流比 $K$ より異なるかを示したもので,次式で表される。

\[ \varepsilon = \frac{K_{C}-K}{K} \times 100 \]

(1)

正解は(リ)過電流定数である。

(2)

正解は(イ)定格一次電流である。

(3)

正解は(ハ)二次電流である。

(4)

正解は(ヘ)誘導である。

(5)

正解は(ル)二次励磁特性である。

参考文献

問4 電力系統の不安定現象とその対策

電力系統において系統事故が発生すると,発電機の機械的入力と電気的出力のバランスが崩れ,発電機が同期運転を保つことができず不安定な状態となる。この現象は脱調現象と呼ばれ,電気系統の異常現象の一つである。

送電電力(単位法表記)が $\displaystyle \frac{V_{S}V_{R}}{X}\sin\delta$ と表現できることから明らかなように,同期発電機間の直列リアクタンス(単位法表記)低減は脱調現象を防止する対策の一つであり,具体的には次のようにして実現される。

  1. 送電線の多回線化,多導体化,太線化や放射状系統をループ系統化する等により直列リアクタンスの低減を図る。
  2. 送電線インピーダンス $Z$ [Ω] を単位法 [p.u.] に換算すると,$\displaystyle \frac{PZ}{10^{3}V^{2}}$ [p.u.](ここで,$P$:基準容量 [kV·A],$V$:この送電線で採用された線間電圧 [kV])と表すことができる。この式から上位電圧の採用によって等価的に送電線リアクタンス(単位法表記)が減少することがわかる。
  3. 送電線リアクタンスの一部を補償するための直列コンデンサを設置する。ただし,この対策は低周波軸ねじれ共振現象を引き起こす要因となることがある。
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(1)

正解は(ニ)脱調現象である。

(2)

正解は(ヘ)$\displaystyle \frac{PZ}{10^{3}V^{2}}$ である。

送電線インピーダンス $Z$ [Ω] を単位法 $Z_\text{p.u.}$ [p.u.] に換算する。

基準値として,線間電圧 $V$ [kV],三相電力 $P$ [kV·A] を採用したとき,基準相電流 $I'$ [A] およびインピーダンス $Z'$ [Ω] は次式で定義される。

\[ I'=\frac{P}{\sqrt{3}V} \text{ [A]} \] \[ Z'=\frac{V/\sqrt{3}}{I'}\times 10^3 = \frac{V/\sqrt{3}}{P/(\sqrt{3}V)}\times 10^3 = \frac{V^2}{P}\times 10^3 \text{ [Ω]} \]

この基準値を用いて送電線インピーダンス $Z$ [Ω] を単位法 $Z_\text{p.u.}$ [p.u.] に換算する。

\[ Z_\text{p.u.}=\frac{Z}{Z'}=\frac{Z}{V^2/P \times 10^3}=\frac{PZ}{V^2 \times 10^3} \]

(3)

正解は(ヌ)上位電圧の採用である。

(2) で求めた式より,上位電圧の採用により等価的に送電線リアクタンス(単位法表記)が減少することがわかる。

(4)

正解は(ホ)直列コンデンサである。

(5)

正解は(ワ)低周波軸ねじれ共振現象である。

各種安定化方策とその効果を次表に示す。

表 各種安定化方策とその効果
安定化対策 過渡安定度向上 定態安定度向上
流通設備の増強による対策 並列回線数の増加
中間開閉所の設置
高次電圧系統の導入
発電機の制御系の強化による対策 超速応励磁
PSS
タービン高速バルブ
特殊機器による対策 直列コンデンサ
静止形無効電力補償装置(SVC)
制動抵抗
リレー・システム 高速度遮断器の採用
脱調未然防止システム
その他 機器の仕様(インピーダンス低減,慣性定数増加)

参考文献

問5 送電系統に用いられる距離リレー方式

距離リレーはその設置箇所の電圧,電流の測定値を用いて事故点までの距離を測距し,事故点が保護区間の内か外かの判定をしている。主保護として即時遮断が可能な保護範囲は,本来は保護すべき区間の全長とするのが望ましいが,変成器の誤差リレー動作値の誤差,さらには送電線インピーダンス定数の誤差などによる事故点までの測距誤差を考慮し,一般に保護すべき区間の 80 [%] 程度としており,この範囲を第一段保護範囲と呼ぶ。距離リレー方式は,複数のリレー要素の組合せで実現されるのが一般的であり,事故点の方向を識別するのに適したモー形リレー要素や事故点抵抗の影響を受けにくいリアクタンス形リレー要素から構成される。

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(1)

正解は(リ)変成器の誤差である。

(2)

正解は(ト)リレー動作値の誤差である。

(3)

正解は(ニ)送電線インピーダンス定数の誤差である。

(4)

正解はモーである。

(5)

正解はリアクタンスである。

(6)

正解は$\displaystyle 1 + \frac{\dot{I}_\text{b}}{\dot{I}_\text{a}}$ である。

(7)

正解は$\displaystyle \frac{\dot{I}_\text{b}}{\dot{I}_\text{a}}\dot{Z}_\text{1b}$ である。

距離リレー

距離リレーの特性として,代表的なものにモー形,リアクタンス形,インピーダンス形がある。距離リレー方式はこれらの各種距離リレー要素の組み合わせで,3 段階限時距離リレー方式が構成されるのが一般的である。

参考文献

問6 高圧配電系統へ発電機を連系する際の電圧変動計算

準備中

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(1)

正解は275 である。

(2)

正解は109 である。

(3)

正解は6 である。

(4)

正解は125 である。

(5)

正解は22.8 である。

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