平成19年度 第1種 電力

2022年8月14日更新

目次

  1. 発電用軽水炉の原子炉圧力制御方式
  2. 変圧器の構造及び材料
  3. 水力発電所の設計手順
  4. 配電線路における電力損失
  5. 送電線ケーブルを構成する各部の機能
  6. 直列コンデンサによる送電能力の向上

問1 発電用軽水炉の原子炉圧力制御方式

加圧水型軽水炉(PWR : Pressurized Water Reactor)の原子炉出口一次冷却材温度は約 320 [°C] であり,一次冷却材が沸騰しないよう常に約 16 [MPa] の圧力に制御するため,加圧器が設けられている。例えば,平常運転中に圧力が若干低下した場合には,加圧器内部に設けられたヒーターを使って蒸気量を増やし,圧力を上げる。

沸騰水型軽水炉(BWR : Boiling Water Reactor)の原子炉出口蒸気圧力は約 7 [MPa],温度は約 285 [°C] であり,平常運転中は原子炉圧力が一定となるよう制御される。例えば,平常運転中に原子炉圧力が若干変動した場合には,自動的に原子炉再循環ポンプの流量や主蒸気加減弁の開度を調整して圧力を設定値まで引き戻す。

参考文献

問2 変圧器の構造及び材料

変圧器は一般に,高圧巻線と低圧巻線がそれぞれ単独に,必要な容量の巻線から構成される。単巻変圧器では低圧巻線を高圧巻線と共有することに特徴がある。この場合,一般の変圧器に比べ,変圧器の自己容量は低減する。高圧側電圧 500 [kV] と低圧側電圧 275 [kV] の場合には,別巻線とする場合に比べ,自己容量が 0.45 倍となる。

内鉄形変圧器は,一般には,鉄心を先に組み立てておき,これに巻線を挿入した後,上部ヨークを組み立てる構造である。

変圧器の鉄心材料は,透磁率が大きく,飽和磁束密度が大きく,鉄損が少ないけい素鋼板が用いられ,渦電流損を減少させるために成層構造になっている。

高圧側電圧 500 [kV] と低圧側電圧 275 [kV] の場合には,別巻線とする場合に比べて,

\[ \gamma=\frac{P_{S}}{P}=\frac{V_{H}-V_{L}}{V_{H}}=\frac{500-275}{500}=0.45 \]

となり,自己容量は 0.45 倍となる。

参考文献

問3 水力発電所の設計手順

  1. 計画地点の発電所の諸元データ(発電所型式,使用水量,有効落差など)を得る。
  2. 有効落差 [m],使用水量 [m³/s] から次式で与えられる発電所の理論出力 [kW] を算出する。
    理論出力 = 9.8 × 使用水量 × 有効落差
  3. 理論出力と有効落差から型式選定図などを用いて,水車型式を選定する。
  4. 仮水車出力 $P$を算出する。(水車効率は,予想される最高効率を用いる。)
    仮水車出力 $P$ = 9.8 × 使用水量 × 有効落差 × 水車効率
  5. 有効落差 $H$ [m] から水車の比速度の限界を算出する。例えば,フランシス水車の場合,
    比速度 $\le \frac{21000}{H + 25} + 35$
  6. 回転速度 [min-1]の限界を求める。
    回転速度 ≤ 比速度 $\times\frac{H^{5/4}}{P^{1/2}}$
  7. 次式から前述の回転速度の限界以下となる同期の回転速度 [min-1] を選定する。(ここで,$f$:周波数,$p$:発電機極数)
    回転速度 $=\frac{120f}{p}$
  8. 水車の「出力-効率曲線」から水車効率を求め,発電機の「負荷-効率曲線」から発電機効率を求める。
  9. 得られた効率特性から,水車出力,発電機容量などを決定する。
  10. 水車発電機の概略寸法,概略重量を算出し,発電所レイアウトを設計する。
  11. 水車の設置レベルの決定に当たり,キャビテーション防止を考慮した吸出し高さを水頭換算で算出する。
    吸出し高さ = 大気圧(水頭換算値) - 飽和蒸気圧(水頭換算値) - キャビテーション係数 × 落差

参考文献

問4 配電線路における電力損失

準備中

問5 送電線ケーブルを構成する各部の機能

地中送電線には,OF(油入),CV(架橋ポリエチレン絶縁)等のケーブルが使われているが,この中で CV ケーブルは OF ケーブルに比べ施工や保守管理が容易なことから,1960 年代後半以降使用が拡大している。

問6 直列コンデンサによる送電能力の向上

送電線路において直列コンデンサを設置すると,線路のリアクタンス(インピーダンス)を減少させ,等価的に線路長を減少させる効果を持つ。このため,長距離送電線に設置すると効果が大きい。しかし,線路のリアクタンス(インピーダンス)を減少させることは短絡・地絡事故が発生したときの事故電流(故障電流または短絡・地絡電流)の増大につながるため,遮断器容量の問題や直列コンデンサ端子間に過電圧(異常電圧)が発生する問題が生じる。過電圧(異常電圧)については,端子間に放電ギャップや酸化亜鉛素子を設置し,保護する。直列コンデンサ設置送電線の負荷側で変圧器を並列した場合には,変圧器鉄心の飽和現象により分数調波振動(鉄共振現象,共振性過電圧)が発生する場合がある。また,同期機の負制動現象による安定性問題として軸ねじれ現象があるが,この現象は補償度を上げるほど増加する傾向があるので,補償度の上限を決定する要因となる。

参考文献

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