平成20年度 第1種 電力

2022年8月12日更新

目次

  1. タービン発電機の励磁方式
  2. 変圧器の保護装置
  3. 送電線の雷対策
  4. 配電系統構成
  5. 遮断器の遮断性能と操作方式
  6. 電力系統の潮流制御

問1 タービン発電機の励磁方式

励磁装置は,その電源が回転機か静止器かの区分,使用される半導体電力変換装置の種類及び制御方式により,次のように分類される。

a. 直流励磁機方式

励磁装置の電源に直流発電機を用いる方式をいう。この発電機を直流励磁機という。

b. 交流励磁機方式

励磁装置の電源に励磁用同期発電機を用い,半導体電力変換器と組み合わせて構成される方式をいう。この励磁用同期発電機を交流励磁機という。

タービン発電機と同一回転軸上に回転電機子形同期発電機と半導体電力変換器を取り付け,スリップリングを経由せず直接タービン発電機の界磁巻線に電流を供給する方式をブラシレス励磁方式という。

交流励磁機方式は交流励磁機の電源により,さらに他励,分巻に分類される。他励方式は,タービン発電機や交流励磁機と同一軸上に取り付けられた副励磁機の出力又は,励磁用変圧器を通して交流励磁機に励磁電流を供給する方式である。分巻方式とは,交流励磁機の出力を自身の界磁電流の電源として使用する方式である。

c. 静止形励磁方式

励磁装置が励磁用変圧器や励磁用変流器などと半導体電力変換器とで構成される方式をいう。半導体電力変換器にサイリスタを使用して励磁装置が構成される方式をサイリスタ励磁方式という。サイリスタ励磁方式は,バルブデバイスの構成により,さらに均一ブリッジ形と混合ブリッジ形に分類される。

ブラシレス励磁方式

交流励磁方式のうち同期機と同一回転軸上に回転電機子形同期発電機と整流器を設置し,スリップリングを用いず,同期機に界磁電流を供給する方式をブラシレス励磁方式という。交流励磁方式と同様に,交流励磁機の電源により他励方式,自励方式がある。

参考文献

問2 変圧器の保護装置

変圧器保護装置の種類には,電気的保護装置と機械的保護装置がある。

電気的保護装置として主に用いられるものには,過電流リレーや比率差動リレーがある。比率差動リレーは,変圧器一次と二次間の差電流によって事故電流の小さな内部事故も検出できるものであるが,変圧器充電操作に伴う励磁突入電流や各変流器の特性差などによって誤作動しないよう対策が必要である。励磁突入電流には事故電流に比べて高調波が多く含まれることを利用した高調波抑制付きリレーなどの誤動作対策がある。

電気的保護装置では検出できない変圧器内部の断線事故やターン間の絶縁不良事故などを検出するために,機械的保護装置が設置される。これには,絶縁油の分解ガスを検出するガス蓄積形と油流の増大を検出する油流形,この二つを組み合わせたブッフホルツリレー,そして分解ガス発生による圧力の急上昇を検出する衝撃油圧リレーなどがある。ブッフホルツリレーは,地震等の振動による誤作動の心配があることから,耐震性の優れた衝撃油圧リレーが多く採用されている。

参考文献

問3 送電線の雷対策

架空送電線の電気事故の大半は雷に起因している。送電線の雷事故低減対策として,従来から,

  1. 鉄塔部での逆せん絡防止のための塔脚接地抵抗の低減架空地線の多条化
  2. 2 回線同時事故防止のための不平衡絶縁方式

などがあり,効果をあげてきた。しかし,これらはせん絡の抑制対策であり,いったんせん絡が発生してしまうと送電線事故になってしまう。そこで,最近では,送電線の雷事故の防止を図るため,アークホーン間の過電圧を抑制しせん絡を防止する送電線用避雷装置が設置されている。

遮へい失敗事故

雷が電力線を直撃してアークホーンにフラッシオーバーを発生させるものである。

逆フラッシオーバー

架空地線あるいは鉄塔への雷撃によって架空地線あるいは鉄塔の電位が上昇し架空地線と導体間,またはアークホーンにフラッシオーバーが発生するものであり,雷撃からフラッシオーバーまでには,雷遮へい,雷サージ伝搬,鉄塔塔脚設置,鉄塔電位上昇および気中フラッシオーバーなどの諸現象が関与する。

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問4 配電系統構成

一般に配電線路の形態としては,新規需要の発生に応じて幹線と分岐線を延長していくため,現在,樹枝状方式が架空配電系統で最も多い方式である。この方式では,施設費は安価であるがそのままでは信頼度が低いため,通常,幹線は自動区分開閉器によって適当な区間に分割されており,配電線事故が発生した場合には,事故点を含む区間のみが選択的に遮断され,停電区間が限定される。健全区間は連系開閉器を手動操作にて投入し,隣接配電線から供給を受けることが可能となる。現状,樹枝状方式では,この様な多分割多連系で運用されることが多い。

また,最近では,供給信頼度の向上や,系統切換作業の業務効率化のため,これら開閉器類を自動遠隔制御し,負荷融通を行う配電自動化システムも導入されている。

配電自動化は,配電設備の運用管理,需要家の管理の二つに大別される。

配電設備の運用管理

配電設備(機器類)の遠方制御と監視を主として行うものである。具体的には,線路用開閉器・配電線器具・変電所再閉路装置・配電系統保護装置の遠方制御を行うとともに,変電所と一体となった保護および情報監視機能を充実させ,配電線路(系統)全体の運用情報の監視を行う。

需要家の管理

需要家を管理することにより,保守業務の軽減,検針業務の省力化,設備の効率的運用などにより,より高品質で信頼度の高い電気供給を行うものである。

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問5 遮断器の遮断性能と操作方式

変電所の構内など遮断器近傍で発生した地絡及び短絡故障電流を遮断する性能を,端子短絡故障(BTF)遮断性能という。変電所に近い距離の架空送電線で発生した故障電流を遮断する性能を,近距離線路故障(SLF)遮断性能という。また,遮断器は,故障点をはさむ両系統が同期状態をはずれ,両系統の電圧ベクトルが最大 180 度の位相差を生じた状態で,遮断できる性能を持つことが必要である。この遮断性能を脱調遮断性能という。

ガス遮断器用の操作方式は,現在,次の 2 方式が主に採用されている。

油圧操作方式は,動作応答性に優れ,高速・大出力の駆動に適しており,定格電圧 300 [kV] 以上の遮断器に主に適用されている。また,ばね操作方式は,定格電圧 168 [kV] 以下の遮断器に主に適用されており,電動機によりばねを圧縮したり,あるいはねじったりして蓄勢したエネルギーを利用している。

ガス遮断器用の操作方式は,以下のものがある。

電気操作

電磁ソレノイドや電動機を使って可動接触子を駆動するもので,中・低電圧の遮断器に使われる。

空気操作

空気タンクに 0.5 ~ 3 [MPa] の圧縮空気を蓄えておき,操作エネルギー源にする方式をいう。ただし,騒音や空気圧縮機の保守の困難さから,新設の変電所においてはほとんど採用されなくなっている。

油圧操作

アキュームレータに 20 ~ 32 [MPa] の高圧油を保持させて操作エネルギー源とする方式をいう。

ばね操作

電動機によりばねを圧縮したり,あるいはねじったりして蓄勢したエネルギーを利用する方式をいう。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「遮断器

問6 電力系統の潮流制御

ループ系統の運用にあたっては,電力潮流が線路容量を超過しないよう,他の系統からの回り込みも考慮しつつ適切な潮流管理を行う必要がある。リアクタンス成分が支配的である一般的な電力系統においては,系統の地点間の相差角によって有効電力潮流が,そして電圧差によって無効電力潮流が調整できる。ループ潮流を調整する手段として,発電機の出力調整の他に,ループを構成する系統のリアクタンスを調整する SVC(Static Var Compensator)や,相差角を調整する位相調整変圧器が用いられる場合がある。

参考文献

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