平成21年度 第1種 電力

2022年8月14日更新

目次

  1. 水車
  2. 石炭ガス化コンバインドサイクル発電
  3. 高電圧変電所に設置する断路器と接地開閉器
  4. 再閉路方式
  5. 2 郡の負荷をもつ配電系統
  6. 架空送電線に氷雪が付着したときの現象とその対策

問1 水車

ある落差,あるガイドベーン開度において水車を無負荷運転させたとき,水車の速度は無制限には上昇せず一定の速度に落ち着くが,その起こりえる最大のものを最大無拘束速度という。

水車の無拘束速度は,ペルトン水車やフランシス水車では一般に最高落差時に最大となり,カプラン水車ではガイドベーンとランナベーンがオフカム状態でランナベーン角度が約10度付近になったとき最大となる。

また,フランシス水車においては,ポンプ水車は一般にランナ径が水車専用機より大きく,回転速度が高くなると円板摩擦損失が急増する。このため,ポンプ水車の無拘束速度は水車専用機より低くなる。

参考文献

問2 石炭ガス化コンバインドサイクル発電

石炭ガス化コンバインドサイクル発電は,石炭を部分酸化することにより一酸化炭素や水素を主成分とするガス燃料に変換する石炭ガス化炉,その生成ガスから主としてばいじんや硫黄などを除去するガス精製装置,その生成ガスを燃料としたガスタービンコンバインドサイクル発電プラントを組み合わせた発電方式である。

この発電方式は,一般的なコンバインドサイクル発電と同様に,ガスタービンの燃焼温度の高温化により熱効率が向上することから,今後の石炭火力発電の二酸化炭素排出削減方策として期待されている。

石炭ガス化コンバインドサイクル発電(Integrated coal Gasification Combined Cycle : IGCC)とは,石炭をガス化して利用する発電方式である。

参考文献

問3 高電圧変電所に設置する断路器と接地開閉器

断路器は,単に充電された電路を開閉分離するために用いられるほか,下記のような開閉性能を要求される場合がある。

  1. 複母線の変電所で甲母線から乙母線に運転を切り替えるときに流れるループ電流開閉性能
  2. 遮断器を遮断した後,遮断器と断路器間の回路を開放するときの進み小電流の開閉能力

接地開閉器は,無電圧の線路や母線部分などの主回路の接地を主たる用途としているが,それ以外に下記のような用途や性能が要求される。

  1. ガス接地開閉器の接地端子を大地電位から絶縁し,要求される用途に使用可能なこと。
  2. 運転している隣接回線が発生する磁界により流れる電磁誘導電流及び回線間の浮遊容量を通して流れる静電誘導電流の開閉能力を有すること。
  3. 主回路が活線状態で,保守員が誤って接地開閉器を投入するような場合に,短絡投入性能を要求されることがある。
  4. ケーブル送電線用の接地開閉器の場合,ケーブル残留電荷の放電性能を有すること。

接地開閉器の制御は断路器とインタロックし,開放状態で,かつ線路側が無電圧でなければ投入できないようにすることと,接地機構が投入状態のときは断路器の投入操作ができないようにすることが必要である。

参考文献

問4 再閉路方式

送電線事故の大半は雷による 1 線地絡故障である。故障区間をいったん系統から切り離すとアークは自然消滅して,その後に送電を再開すれば,異常なく電力送電を継続できる場合が多い。送電線の再閉路は,この特性を利用して,故障送電線をできる限り速やかに自動復旧させて電力供給の安定性を損なわないようにしたものである。

再閉路方式には,故障相と無関係に三相を遮断し再閉路する三相再閉路,平行 2 回線送電線の故障時に故障相のみを遮断し少なくとも二相が健全の場合に再閉路する多相再閉路がある。

再閉路方式には時間の面から,無電圧時間を 1 秒程度以下とする高速度再閉路方式と 1 分程度の低速度再閉路方式がある。再閉路方式は,遮断器の性能や保護方式の故障検出性能とのシステム的な協調が重要であり,適用する送電系統に応じて最適な方式を選定する必要がある。

表 再閉路方式
再閉路方式 無電圧時間
高速度再閉路 1 秒程度以下
中速度再閉路 1 ~ 15 秒程度
低速度再閉路 1 分程度

無電圧時間を決定する要因として,遮断器の許容再投入時間のほかに消イオン時間,系統安定度がある。

一般に,再閉路する時間は早ければ早いほど系統に及ぼす影響が少なく,系統安定度向上のため有利であるが,あまり早すぎると再閉路により電圧を印加したとき,消イオン時間が短すぎてフラッシオオーバー発生箇所で再発するおそれがあるため,ある一定時間後でなければ投入できない。したがって,この両者の協調をとった適当な値をとらなければならず,高速度再閉路では 0.5 ~ 1 秒後程度の時間を採用している。

参考文献

問5 2 郡の負荷をもつ配電系統

2 郡の負荷を持つ配電系統において,各負荷郡の 1 日の負荷曲線が下図で表される。

負荷曲線
図 負荷曲線

配電系統の最大需要負荷

配電系統の最大需要負荷は A + B の曲線の最大値となり,12 ~ 18 時の 50 [kW] となる。

負荷郡 A と負荷郡 B との間の不等率

不等率は,

(不等率)=(各負荷の最大需要電力の和)÷(各負荷を総合した最大電力)

で求められる。数値を代入すると,

(不等率)=(30 + 40)÷ 50 = 1.4

となる。

負荷の平均電力

負荷の平均電力は負荷曲線の積分値である積算電力量を 24 時間で割ったものである。よって,負荷郡 A の平均電力は 13.8 [kW],負荷郡 B の平均電力は 20 [kW],配電系統の平均電力は 33.8 [kW] である。

配電系統の負荷率

負荷率は,

(負荷率)=(負荷の平均電力)÷(最大需要負荷)× 100

であるので,配電系統の負荷率は,

(負荷率)= 33.75 ÷ 50 × 100 = 67.5 [%]

となる。

参考文献

問6 架空送電線に氷雪が付着したときの現象とその対策

着氷雪した電線が風や着氷雪の落下により振動すると,相間短絡などの電気事故が発生する。この具体的な現象としては,電線に付着した氷雪が羽根状となって風を受けて電線が自励振動するギャロッピングがあり,その対策として,

  • 電線振動時においても電線相互の間隔を確保するため,絶縁性の支持物で機械的に連結する相間スペーサ
  • 多導体の送電線において,電線把持部に回転機構を設けたルーズスペーサ

が用いられる。

また,電線に付着した氷雪が脱落して電線が跳び上がるスリートジャンプがあり,その対策としては,垂直配列 2 回線鉄塔の上中下腕金長の差を大きくするというオフセットを設ける設計手法が用いられる。

スリートジャンプ(sleet jump)

電線に付着した氷雪が脱落したときに生じる電線のはね上がり。

スリートジャンプ
スリートジャンプ

参考文献

inserted by FC2 system