平成23年度 第1種 電力
目次
問1 揚水発電所におけるポンプ水車の入力遮断
揚水運転中の発電電動機が電力系統から遮断されると,ガイドベーンが急閉される。揚水量は回転速度の低下に伴って減少し,流水はガイドベーンが全閉するよりも早く水車方向に逆流し始める。水圧管路内部の水圧は,最初は揚水量の急減により急速に降下するが,ガイドベーン全閉時には水車方向の流水を遮断するので水圧上昇が起こり,運転時の水圧より高くなった後に静水圧になる。これらの現象により,サージタンクがない揚水式発電所では,ポンプ水車の入力遮断時に,水圧管路と導水路の接続部の曲がり部で,水流が急減して水中分離を発生する場合がある。
入力遮断時に万一ガイドベーンが閉鎖しない場合には,揚水量は回転速度の低下によって急減し,流水は数秒後に水車方向に逆流し,回転もポンプ方向から水車方向に転じて,無拘束速度状態に至る。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「水車発電所の調速機」
問2 水素冷却発電機の水素ガスシール装置
水素冷却発電機では,加圧した水素が発電機外に漏出するのを防ぐために,水素ガスシール装置を備える。水素ガスシールは,回転軸とシールケーシング内に取り付けたシーリングの間げきに,機内水素ガスより若干高い圧力の油を供給することにより行われ,このシール油は回転軸とシーリングの間げきを通って水素ガス側と空気側に流出し,水素ガスが機外へ漏出するのを防止する。
シール油の制御方式のうち,複流方式は,シール油の供給回路を空気側と水素側とに分けてシールする方式である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「水素冷却発電機の水素ガス制御方式」
問3 大形の風力発電設備の雷害対策
近年,自然エネルギーの有効利用という観点から風力発電設備が多数設置されている。高い構造物が単独で海岸などに設置されるため,雷害を受けやすい。特に,わが国の風力発電設備の雷害は,多くが日本海沿岸で発生しており,また,冬季におけるものが半分以上を占めている。
風力発電設備の雷害対策において考慮すべき特徴は,下記のようなことが挙げられる。
- 長大なブレードが回転する。
- ナセル内部には高電圧部と制御用の低電圧部が混在する。
- 日本海側の冬季雷は正極性の雷が多く,高構造物から雷雲に向かって放電が進展するため,落雷する確率が他の地域より高い。
風力発電設備の雷害対策としては,下記のようなものがある。
- 風力発電設備には,ナセルに避雷針が設置されているものが多いが,回転するブレードを保護するのは困難であることから,風車が保護角度範囲内に入るように,独立して避雷針を設置することが有効である。
- ブレードの先端に受雷部(レセプタ)を,内部に引き下げ導線を設置すれば,雷撃によるブレード破損の可能性は小さくなる。
- 制御システムの雷害対策としては,接地抵抗の低減や制御ケーブルへの誘導の防護が有効である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「発電用風力設備」
問4 発電設備を配電系統へ連系する際の留意事項
発電設備を系統へ連系すると,系統の短絡容量が増加する。この短絡容量が需要家遮断器の遮断容量を上回る場合には,需要家構内事故時に需要家遮断器が遮断不能となるおそれがあり,また,需要家の引込ケーブルなどの瞬時許容電流を上回る場合には,引込ケーブルなどの損傷を招くおそれがある。
このようなおそれがある場合については,発電設備設置者において短絡電流を制限する装置(限流リアクトル,高インピーダンスの昇圧用変圧器など)を設置し,短絡電流の増加を抑制する必要がある。なお,これにより対策できない場合には,異なる配電用変電所バンク系統への連系,特別高圧電線路との連系又はその他の短絡容量対策を講じる。
系統の短絡容量の計算については,原則として配電線,配電線に連系される発電設備,及び上位電圧の電線路,変圧器などのインピーダンスを基に算出するが,誘導発電機又は二重給電誘導発電機のインピーダンスは拘束リアクタンスを使用し,同期発電機のインピーダンスについては,原則として初期過渡リアクタンスを使用する。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「分散型電源の系統連系」
問5 送電端と受電端における電圧の関係
準備中
問6 変圧器の直流偏磁
変圧器の鉄心は,非常に磁化特性に優れた電磁鋼板(けい素鋼板)で構成されており,また,磁気回路も磁気抵抗が小さくなるような接合で構成されている。したがって,鉄心は直流偏磁の影響を非常に受けやすく,結果的に振動・騒音の増加,励磁電流の増大などを引き起こす。
直流偏磁が発生する要因としては,次のようなものがある。
- 交直変換装置のトリガ(点弧)点のばらつきなどによって発生する電流の正負のふぞろい分が直流成分となり,これが直接接続される変換用変圧器の励磁電流として供給される場合。
- 地磁気誘導電流の直流成分が,直接接地系の系統において中性点を介して電力用変圧器に流れ込む場合。
このような直流偏磁の防止策として,一般的には変圧器の中性点側に小さな値の抵抗を接続することなどで影響を抑制できる場合もあるが,系統条件との整合が必要である。
加えて,直流偏磁の影響を受けやすい自励式変換用変圧器では,直流偏磁を検出して抑制制御する手段が採られ,直流偏磁の検出を容易にし,各変圧器の交流電圧の分担を均一にするため,鉄心にギャップを設けて線形励磁特性としている。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「変圧器の直流偏磁現象」