平成25年度 第1種 電力

2021年11月28日更新

目次

  1. 火力発電所に用いられる非常用交流電源及び直流電源
  2. ガス絶縁変圧器
  3. 架空送電線路に使用される電線
  4. 高圧受電設備の過電流保護
  5. 水車・発電機の非破壊試験
  6. 線路リアクタンスを補償する目的で,線路に直列に挿入される直列コンデンサ

問1 火力発電所に用いられる非常用交流電源及び直流電源

火力発電所の所内回路のうち,主に保安用補機へ供給する配電盤に接続可能な非常用交流電源としてはディーゼル発電機が一般的に多く使用される。送電系統の事故波及や所内回路事故などで所内回路が電源喪失した場合でもプラントを安全に停止するために非常用交流電源側へ自動的に切り換えて供給する。保安用補機としては,タービン油ポンプや密封油ポンプ,ターニングギア,保安用照明などがある。

火力発電所の直流電源としては蓄電池が一般的に使用される。プラントの運用上重要な保護・制御回路などへ常時供給する他に,保安用補機へ供給する配電盤が停電した場合のバックアップ用補機へ供給する。なお,蓄電池の容量は,経年的な容量低下や使用温度,最低電圧などを勘案しながら停電中に供給する負荷電流の変化や停電継続時間を想定して決める。

参考文献

問2 ガス絶縁変圧器

都市部の屋内・地下変電所では,防火対策が簡略化できることから従来の絶縁油に代わり,SF6 ガスにて絶縁し,不燃化を図るガス絶縁変圧器が採用される例が増えている。GIS などのガス絶縁開閉機器との組み合わせも容易であり,コンサベータが不要のため高さ低減もできるなどの利点がある。

ガス絶縁変圧器の絶縁は,SF6 ガスと固体との複合絶縁で構成し,導体絶縁材料にはポリエステル系フィルム(PET)が使用されている。また,冷却は 60 [MV·A] 程度以下の小容量器では,SF6 ガスを循環して冷却する方式が用いられている。SF6 ガスは絶縁油に比べ,比熱が低く,巻線の冷却効率が劣るため,300 [MV·A] 程度の大容量器では,開発当初は,冷却媒体として不燃性で冷却性能の高いパーフルオロカーボンを用いる方式が用いられていたが,最近はSF6 ガスの圧力を高め,冷却性能を高めた方式が主に用いられている。

参考文献

問3 架空送電線路に使用される電線

架空送電線路に広く使用されている鋼心アルミより線は,亜鉛めっき鋼線の外側に硬アルミ線をより合わせた合成より線である。硬アルミ線の導電率は硬銅線の約 60 [%] で鋼心線よりは高く,一般に,鋼心線には電流が流れないものとして抵抗値を計算する。一方,電線のたるみを計算する際に用いられる弾性係数 [Pa] は,硬アルミ線と鋼心線の特性を考慮し,$ \displaystyle \frac{E_a A_a + E_s A_s}{A_a + A_s}$ と計算される。ただし,硬アルミ線と鋼心線の弾性係数 [Pa] をそれぞれ $E_a$,$E_s$ とし,断面積 [mm²] をそれぞれ $A_a$,$A_s$ とする。

電流に流すことのできる電流(許容電流)は,電線の軟化特性を考慮して決定された最高許容温度を超えない電流として算定される。電流が連続的に流れる場合の許容電流(連続許容電流)は,外部環境の影響をうけるため,最高許容温度の状態において抵抗損と日射による熱量の増加と,風と放射による熱量の減少が平衡する電流値として計算される。このとき,電線の抵抗値が電線温度の上昇により増加することや,表皮効果などにより電線の抵抗値が直流の場合に比べて増加することを考慮する必要がある。

参考文献

問4 高圧受電設備の過電流保護

高圧受電設備における過電流保護の目的は,機械器具及び電線を保護し,かつ,過電流による波及事故を防止することである。そのため,構内に設置する主遮断装置は,電気事業者の配電用変電所の過電流保護装置と動作協調を図ることが必要であるとともに,構内の変圧器の励磁突入電流や電動機の始動電流などで動作しないようにしなければならない。

高圧受電設備の保護方式は,主遮断装置として高圧交流遮断器を用い保護リレー装置などと組み合わせて保護を行う方式と,限流ヒューズと高圧負荷開閉器を組み合わせて保護を行う方式に大別される。

参考文献

問5 水車・発電機の非破壊試験

水車の非破壊試験は,主としてランナ,主軸,ケーシング,ガイドベーン等の曲がり部やフランジ付け根部などの形状急変部,又は高応力部,溶接部などについて実施し,磁粉探傷試験,浸透探傷試験,超音波探傷試験などがある。

一方,発電機の電気的非破壊試験の一つとして絶縁特性試験があり,これには直流試験と交流試験とがある。

直流試験には,絶縁抵抗計を用いて日常一般的に行う絶縁抵抗測定のほか,成極指数を指標とする直流電流試験がある。成極指数は,充電電流1 分値と 10 分値の比により絶縁の良否を判定するものである。

交流試験には,誘電正接試験,交流電流試験及び部分放電試験がある。

誘電正接試験は,絶縁劣化すると交流電圧印加時に絶縁物内部の発熱損失が大きくなる特性を利用し,交流電流試験は,一般的に直線的になる絶縁物の電流-電圧特性が,絶縁劣化すると電流の増加率が大きくなることに着目した試験方法である。

部分放電試験は,電圧を印加し,巻線表面または絶縁物内部のボイドで発生する部分放電を測定する試験であり,最大放電電荷量から劣化の程度を推定する。

参考文献

問6 線路リアクタンスを補償する目的で,線路に直列に挿入される直列コンデンサ

直列コンデンサを挿入することによる利点は,電圧変動の改善,長距離送電線の安定度向上,送電損失の低減などが挙げられる。一方,直列コンデンサの容量性リアクタンスは,送電線リアクタンスとの関係において,軸ねじり振動を起こす可能性がある。ここで,送電線 1 に直列コンデンサを挿入した図のような三相 3 線式送電系統の送電損失について考える。なお,送電線 2 と 3 は開閉所を介して接続されている。

送電損失 [W] (送電線 1 ~ 3 の合計)を,図中の記号及び下記のインピーダンス値を用いて表すと,$\displaystyle 3(2|\dot{I_{1}}|^2+4|\dot{I_{2}}|^2)$ となる。また,送電線 2 を流れる電流 $\dot{I_2}$ は,$\dot{I}$ と $X$ を用いて表すと,$\displaystyle \frac{\dot{Z_1}-jX}{(\dot{Z_1}-jX)+(\dot{Z_2}+\dot{Z_3})}=\frac{2+j(4-X)}{6+j(10-X)}\dot{I}$ となる。同様に,送電線 1 の電流 $\dot{I_1}$ を,$\dot{I}$ と $X$ を用いて表し,$|\dot{I_1}|$ と $|\dot{I_2}|$ を $3(2|\dot{I_{1}}|^2+4|\dot{I_{2}}|^2)$ に代入すると,送電損失を $|\dot{I}|$ と $X$ を用いて表すことができる。

この式より,送電損失が最小となるように直列コンデンサのインピーダンスを設定する。そのときの送電損失 [W] を,$|\dot{I}|$ を用いて表すと $4|\dot{I}|^2$ であることが分かる。

三相 3 線式送電系統
三相 3 線式送電系統
  • 送電線 1 , 2 を流れる電流の合計 $\dot{I}$ [A]
  • 送電線 1 , 2 を流れる電流 $\dot{I_1}$ [A],$\dot{I_2}$ [A]
  • 送電線 1 , 2 , 3 の 1 相当たりのインピーダンス
    $\dot{Z_1}=2+j4$ [Ω],$\dot{Z_2}=2+j3$ [Ω],$\dot{Z_3}=2+j3$ [Ω]
  • 直列コンデンサのインピーダンス $-jX$ [Ω] (ただし,0 < $X$ < 4)

参考文献

inserted by FC2 system