令和元年度 第1種 電力

2019年8月31日作成,2022年5月29日更新

目次

  1. 水車発電機
  2. 一軸方式のガスタービンと排熱回収ボイラの制御システム
  3. 電力系統の短絡容量
  4. 地中送配電系統で用いられている CV ケーブル
  5. 遮断器の故障遮断
  6. 交流系統における送電能力の向上

問1 水車発電機

10 MV·A を超える大形の水車発電機(揚水発電機を除く)には,一般的に (1) が用いられる。水車発電機は,その回転子軸の方向により立軸機と横軸機に分類される。立軸機は,同容量で比べた場合,床面積が少なくて済み,かつ,(2) をより有効に利用できる。また,構造上,大形機に適している。

発電機は,固定子と回転子からなり,回転子には (3) ,リムを介して磁極が取り付けられ,磁極から出る磁束が固定子の電機子巻線を横切ることによって電圧が誘起される。また,N 極と S 極を一対とした極対数により,水車発電機の同期速度が定まる。

一般的に発電機の冷却は空気により行う。冷却方式の一つである (4) は,発電機を水冷された空気により冷却し,これを循環させるものである。空気の循環の方法としては,回転子に取り付けられた冷却用通風翼及び回転子の通風効果による自己通風方式が一般的であるが,揚水発電機など大容量のものについては,鉄心長が長くなるので,中心部まで均等な通風冷却を行うために,別置の電動ファンによる強制通風方式や (5) による自然通風方式が用いられる。

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(1)

正解は(ヨ)突極形同期発電機である。

(2)

正解は(ワ)落差である。

(3)

正解は(イ)スパイダである。

(4)

正解は(ハ)閉鎖風洞方式である。

(5)

正解は(ト)リムダクトである。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「水車発電機

問2 一軸方式のガスタービンと排熱回収ボイラの制御システム

ガスタービンの運転で重要な制御はガバナ制御と燃焼温度制御である。

回転数を制御するガバナ制御では (1) を制御するが,蒸気系の出力応答性が遅いためガスタービンの応答を敏感にする必要がある。そのためガスタービンの速度調定率は蒸気系に比べて (2) 設定されることが多い。

ガスタービンの出力上昇過程では,燃焼温度が定格温度を超えて過剰に上昇しないようにガスタービンの出力を制御しなければならない。これが燃焼温度制御であり,具体的にはタービン (3) を一定値以下に保つために排ガス温度を測定し,その値が規定値を超過しないように (4) を制御する。

排熱回収ボイラはガスタービンの排気を熱源とする自然循環ボイラであり,バーナなど助燃設備がない場合はドラム水位制御が主な制御である。ドラム水位制御では,ドラムの水位,蒸気流量,(5) を制御パラメータとする 3 要素制御を行う。

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(1)

正解は(ヨ)燃料流量である。

(2)

正解は(ヘ)小さくである。

(3)

正解は(カ)第 1 段翼入口ガス温度である。

(4)

正解は(ヌ)空気流量である。

(5)

正解は(ト)給水流量である。

参考文献

問3 電力系統の短絡容量

電力系統の短絡容量 $P_\text{S}$ [MV·A] は,単位法における基準容量を $P_\text{B}$ [MV·A],故障点からみた電源側の % インピーダンスを $% Z_\text{S}$ とすると,(1) によって計算され,電力系統に連系する同期発電機の減少に対して短絡容量は (2) という関係にある。

短絡容量が大きくなり,遮断器の遮断容量を上回るようになると,故障電流を遮断できず,機器の損傷や広範囲・長時間の停電を引き起こすおそれがあることから,遮断器容量の増加や短絡容量抑制対策が実施される。

短絡容量抑制対策としては,変圧器の (3) を増加させたり,系統と系統の連系点に (4) を設置したりするといった設備上の対策のほか,電力系統を (5) するという運用上の対策もある。ただし,設備コストの増加や,系統構成によっては同期安定性や電圧安定性の低下に繋がる可能性があることから,これらの点を考慮する必要がある。

(イ)$\displaystyle \frac{\% Z_\text{S}}{100} \times P_\text{B}$
(ヘ)$\displaystyle \frac{100} {\% Z_\text{S}}\times P_\text{B}$
(ル)$\displaystyle \frac{1}{\% Z_\text{S}}\times P_\text{B}$
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(1)

正解は(ヘ)$\displaystyle \frac{100} {\% Z_\text{S}}\times P_\text{B}$である。

(2)

正解は(ニ)小さくなるである。

(3)

正解は(ハ)インピーダンスである。

(4)

正解は(ワ)直流設備である。

(5)

正解は(チ)分割運用である。

単位法とパーセント法

電力系統は,定格の異なった多くの機器,線路が接続されている。これらの電圧,電流,電力などの大きさを表すように,その系統に適した量を基準とし,これに対する割合で表すと無次元の正規化された簡単な数値となり,取扱いがきわめて容易となる。

パーセント法は基準値に対する比をパーセントで表したものである。そこで,インピーダンス $Z$ [Ω] を % インピーダンス,$\% Z$ で表すと次式となる。

\[ \% Z = \frac{Z I_B}{E_B} \times 100 = \frac{Z P_B}{V_B^2} \times 100 \]

ただし,$Z$:インピーダンス [Ω],$I_B$:基準電流($= P_B / \sqrt{3} V_B$)[A],$E_B$:基準相電圧 [V],$V_B$:基準線間電圧 [V],$P_B$:三相基準容量 [VA] である。

短絡容量軽減対策

短絡容量を抑制する対策を列挙すれば次のとおりである。

  1. 次期最高電圧系統導入による従来系統の分割
  2. 発電機,送電線および変圧器の高インピーダンス化
  3. 変電所の母線分離による系統構成の変更
  4. 併用系統の分割運用(系統の放射状運用)
  5. 限流(直列)リアクトルの設置
  6. 交直変換装置(直流連系)の導入による系統の分割

参考文献

問4 地中送配電系統で用いられている CV ケーブル

CV ケーブルは,ポリエチレンを絶縁体としたケーブルにおいて大きな欠点であった (1) を改善した架橋ポリエチレンを絶縁体としたケーブルである。乾式架橋方式は,絶縁性能も良く,OF ケーブルと比較して $\tan{\delta}$(誘電正接)や比誘電率が小さいため誘電体損失や (2) が小さくなる。また,三心一括の CV ケーブルと比較して,(3) 特性の改善のため,22 ~ 77 kV で導体断面積 400 mm² までのケーブルは,3 条をより合わせてトリプレックス形としている。

CV ケーブルの特徴的な現象として,絶縁体の架橋ポリエチレンに水トリーという (4) 現象が生じることがある。水トリーは絶縁体中の (5) とそこに供給される水の相乗作用により,トリー(樹枝)状に (4) が進展する現象である。

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CV ケーブルは,架橋ポリエチレン絶縁ケーブル(cross linked polyethylene insulated vinyl sheathed cable)の略称。

水トリー現象とは,ポリエチレン内に水が含まれると枝状となって進展する現象。

(1)

正解は(リ)耐熱性である。

(2)

正解は(ニ)充電電流である。

(3)

正解は(ル)曲げである。

(4)

正解は(ヨ)絶縁劣化である。

(5)

正解は(カ)ボイドである。

参考文献

問5 遮断器の故障遮断

電力系統に故障が発生すると,保護リレーからの指令により該当する遮断器を開放し,故障点を切り離す。

遮断器が故障電流を遮断する場合,(1) エネルギーが極小となる (2) で遮断が行われる。このとき,遮断器の (3) には回路遮断時の過渡現象により急激な立ち上がりの (4) 電圧がかかるため,遮断成功に至るためにはこの電圧よりも (5) 特性が上回っていなければならない。

遮断する電流や遮断後に遮断器の (3) にかかる電圧は,電力系統や故障点によって異なるため,これらを踏まえた遮断性能を有する必要がある。特に厳しい遮断責務が要求されるのは,以下のケースである。

  • 遮断器の設置箇所付近で故障が発生した場合の遮断で,大きな故障電流を遮断した際に過渡的な高い電圧が発生する (6) 遮断
  • 遮断器から数キロメートル離れた架空送電線で故障が発生した場合の遮断で,遮断器と故障点の間の進行波の往復反射により高い電圧が発生する (7) 遮断
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端子短絡故障遮断は,BTF(Breaker Terminal Fault)ともいう。

近距離線路故障遮断は,SLF(Short Line Fault)ともいう。

(1)

正解は(レ)アークである。

(2)

正解は(カ)電流零点である。

(3)

正解は(ル)極間である。

(4)

正解は(ネ)過渡回復である。

(5)

正解は(リ)絶縁耐力回復である。

(6)

正解は(ヲ)端子短絡故障である。

(7)

正解は(ヘ)近距離線路故障である。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「遮断器

問6 交流系統における送電能力の向上

交流系統における送電能力は,送電端と受電端の (1) と (2) ,送電線のインピーダンスによって決まる。送電能力を大きくすれば,同一の電力を送電するときの (2) が小さくなり,系統に大じょう乱が発生したときの (3) も改善できる。送電能力を大きくするには,送電端と受電端の (1) を大きく,あるいは,送電線のインピーダンスを等価的に (4) する必要がある。超高圧架空送電系統では送電線のインピーダンスは (5) が支配的であるので,(6) の設置が効果的である。

(6) に並列に接続されたリアクトルの電流をサイリスタの点弧角制御により変化させ,送電線の (5) を連続的に補償することができる (7) は,電源と系統の相互作用による (8) を抑制することが可能である。

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(1)

正解は(ル)電圧値である。

(2)

正解は(ロ)電圧位相差である。

(3)

正解は(ホ)過渡安定性である。

(4)

正解は(ツ)小さくである。

(5)

正解は(レ)リアクタンスである。

(6)

正解は(チ)直列コンデンサである。

(7)

正解は(リ)TCSCである。

TCSC(Thyristor controlled series capcitor)は,直列コンデンサに流れる電流の一部をサイリスタが負担し,サイリスタの点弧角制御を行うことにより等価的に線路リアクタンスを連続的に変化させる装置。

出典)「電気事業事典」電気事業講座2008 別巻 ((株)エネルギーフォーラム 発行)

(8)

正解は(ヌ)低周波共振である。

参考文献

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