令和2年度 第1種 電力

2020年9月20日作成,2022年5月29日更新

目次

  1. 水力発電所の設計・建設
  2. 原子力発電所のタービンとタービン発電機の特徴
  3. ケーブルの温度上昇
  4. コンクリート柱
  5. 電力系統の異常電圧対策
  6. 架空送電線に適用される再閉路

問1 水力発電所の設計・建設

水力発電所の設計・建設においては,土木設備を含めた設備全体の経済性を追求し,各機器の仕様検討を進める。

その代表的な事例として,中小水力発電所においては,負荷遮断時の (1) を小さく抑え,土木設備である (2) の肉厚を薄くすることで,発電所の建設コスト低減が見込める場合がある。この場合,電気機械設備では,水車・発電機のはずみ車効果($GD^2$)は (3) 値とし,水車のガイドベーン閉鎖時間を 20 ~ 30 秒程度に長くすることで,負荷遮断時の回転速度を (4) ,又はそれに近い速度まで許容する設計を行う。

これにより水車・発電機の軸受性能など一部機能の向上が求められるが,ガイドベーンの (5) を低減できることなどのメリットもある。

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(1)

正解は(ヌ)水圧変動率である。

(2)

正解は(イ)水圧鉄管である。

(3)

正解は(カ)機器固有のである。

(4)

正解は(ハ)無拘束速度である。

(5)

正解は(ヘ)サーボモータ容量である。

参考文献

問2 原子力発電所のタービンとタービン発電機の特徴

原子力用タービンは,原子炉から取り出す蒸気条件が火力用ボイラとは異なるため,同一出力の火力用タービンに比べて,蒸気消費量が (1) なる。また,(2) を使用するため,タービン翼の侵食防止対策と併せて,高圧タービンと低圧タービンの連絡管の途中に (3) が設けられている。

我が国では商用の原子炉として二つの炉形が使われており,(4) の炉形では発生した蒸気を直接タービンで使用し,もう一方の炉形では蒸気発生器からの蒸気をタービンに使用する。

原子力用タービン発電機は回転速度が 1 500 又は 1 800 rpm の 4 極機を採用しており,同一容量の火力用 2 極機に比べ電機子巻線漏れリアクタンスや界磁巻線漏れリアクタンスが大きくなるため,(5) が増加する。

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(1)

正解は(リ)多くである。

(2)

正解は(ト)飽和蒸気である。

(3)

正解は(ル)湿分分離器である。

(4)

正解は(カ)沸騰水形である。

(5)

正解は(ロ)過渡リアクタンスである。

参考文献

問3 ケーブルの温度上昇

ケーブルの許容電流は,絶縁体の性能を長期にわたり損なわない温度条件から定められ,例えば CV ケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)の最高許容温度(連続使用時)は (1) 程度である。ここにケーブルの温度は,ケーブルから発熱と周囲への熱放散とから定める。

ケーブルからの発熱は,導体での銅損,誘電体損,シース損などによる。誘電体損は,印加電圧の (2) と静電容量,誘電体の $\tan\delta$ などに比例する。一方,シース損は,シース各部への鎖交磁束に起因する (3) と線路の長手方向に誘導されるシース電圧に起因するシース回路損などからなる。単心ケーブルでは,シース内に三相導体が収納されている三心ケーブルに比べ,シース電圧が大きくなる。単心ケーブルでシース回路損及びシース電圧を減少させるには,シース回路に (4) を採用することが有効である。

ケーブルからの熱放射は,周囲温度や土壌等の熱抵抗とともに,ケーブルの条数や布設方法により異なる。例えば図のような管路に,全て同一種類で同一サイズのケーブルを布設し同一の電流を流した場合には,放熱効果は (a),(b),(c) のうち (5) が最も大きい。ここにケーブル電流は許容電流程度であり,地表面からの日射の影響は無視できるとする。

ケーブル管路
図 ケーブル管路
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(1)

正解は(ル)90 °Cである。

(2)

正解は(ホ)2 乗である。

(3)

正解は(ヨ)渦電流損である。

(4)

正解は(イ)クロスボンド方式である。

(5)

正解は(ヲ)(b)である。

参考文献

問4 コンクリート柱

配電線の大容量化などに伴う太線化と多回線化による (1) の増加に加え,木材資源が乏しくなってきたことから,現在,我が国では配電系統の支持物(電柱)としてコンクリート柱が主流となっている。電柱には電線をはじめとした種々の設備が取り付けられるため,以下に示す応力について考慮する必要がある。

応力の計算では,電柱の最大応力を生じる部分において,電柱が分担する最悪条件下の外力による (2) モーメント($M$)より電柱の抵抗モーメント($M_\text{r}$)が大きくなるように設計する必要がある。

外力による (2) モーメント($M$)は,以下の a),b) の和で表される。

a) 電柱全体に加わる風圧による (2) モーメント($M_\text{p}$)
$M_\text{p} = $ (3) [kg·m]

ただし,$w_\text{p}$ : 円形柱体の単位面積当たりの風圧荷重 [kg/m2],$D_0$ : 電柱地際における直径 [cm],$H$ : 電柱の地表上の高さ [m],$K$ : 電柱の直径増加係数。

b) 電線に加わる風圧の (2) モーメント($M_\text{w}$)
$M_\text{w} = $ (4) [kg·m]

ただし,$w_\text{e}$ : 電線の (5) 投影面積当たりの風圧荷重 [kg/m2],$d$ : 電線の直径 [mm],$h$ : 電線の地表上の高さ [m],$S$ : 径間 [m]。

したがって,定められた風圧荷重に対して次式を満足させる必要がある。

\[ M_\text{r} \gt M = M_\text{p}+M_\text{w} \]
(ハ)$\displaystyle w_\text{p}(\frac{D_0^2 H^2}{200}-\frac{KH^4}{3})$
(へ)$\displaystyle S \frac{\Sigma{w_\text{e}dh}}{1000}$
(チ)$\displaystyle S^2 \frac{\Sigma{w_\text{e}dh}}{1000}$
(リ)$\displaystyle w_\text{p}(\frac{D_0 H^2}{200}-\frac{KH^3}{3})$
(ヌ)$\displaystyle S \frac{\Sigma{w_\text{e}d^2 h}}{1000}$
(カ)$\displaystyle w_\text{p}(\frac{D_0 H}{200}-\frac{KH^2}{3})$
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(1)

正解は(ホ)設計荷重である。

(2)

正解は(ロ)曲げである。

(3)

正解は(リ)$\displaystyle w_\text{p}(\frac{D_0 H^2}{200}-\frac{KH^3}{3})$である。

(4)

正解は(へ)$\displaystyle S \frac{\Sigma{w_\text{e}dh}}{1000}$である。

(5)

正解は(ル)垂直である。

参考文献

問5 電力系統の異常電圧対策

電力系統に発生する異常電圧に対して,電力設備では様々な対策がとられている。

架空送電線においては,(1) の軽減策として,架空地線を設置して遮へいしたり,逆フラッシオーバを防止するために接地抵抗を (2) する対策が取られる。

発変電所内においては,異常電圧を抑制するために避雷器を設置している。避雷器は,大きな異常電圧が加わった際に (3) に電流を流して過電圧を抑制して発変電所内の効きを保護する保護機能,及び過電圧を除いた後は電流を抑制して元の状態に復帰する (4) 機能を有している。この過電圧が発生したときに避雷器に流れる電流を放電電流,過電圧が去った後に避雷器に流れる交流電流を (5) ,放電電流が流れているときに避雷器端子間に発生する電圧を (6) ,過電圧に対して避雷器端子に生じる電圧の (7) を保護レベルと呼ぶ。

変圧器などの被保護機器は,サージに対して (8) として作用するため,(9) により高い電圧が発生するおそれがある。避雷器により異常電圧を抑制するためには,避雷器と被保護機器の配置について十分注意する必要がある。

有効接地系統では,一線地絡事故時の健全相の電位上昇が非有効接地系統に比べて低く,これに合わせて変圧器等の絶縁レベルを下げることを特に (10) と呼ぶ。この場合,避雷器の定格電圧も低くできる。

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(1)

正解は(ヨ)雷過電圧である。

(2)

正解は(ワ)小さくである。

(3)

正解は(レ)大地である。

(4)

正解は(リ)自復である。

(5)

正解は(ニ)続流である。

(6)

正解は(ヌ)制限電圧である。

(7)

正解は(タ)最大値である。

(8)

正解は(ロ)静電容量である。

(9)

正解は(ト)直列共振である。

(10)

正解は(カ)低減絶縁である。

参考文献

問6 架空送電線に適用される再閉路

架空送電線は,雷による事故が多いが,保護リレーにより速やかに事故電流を遮断すれば,がいしは損傷を受けないで再使用できることが多い。したがって,一旦,事故電流を遮断してアークイオンを消滅させれば絶縁は回復するため,開放された遮断器の再投入によって再送電する再閉路の成功率は高い。このため適切な (1) 時間後,自動的に再閉路する方式が多く適用されている。超高圧系統に適用されている高速度再閉路方式の (1) 時間は,絶縁回復特性を考慮し,かつ,過渡安定性の向上を目的に (2) 秒程度にしている。

架空送電線に適用される自動再閉路方式には,大別して次の方式がある。以下では,平行二回線送電線の相の定義を 1 号線の a,b,c 相,2 号線の a,b,c 相の六相とする。

  1. 三相再閉路方式:平行二回線送電線の片回線側に事故が発生した場合,事故相に関係なく,事故回線を三相とも (3) の変電所で遮断し,一定時間後再閉路する方式である。健全相からの誘導はなく,(1) 時間を (4) できる利点がある。
  2. 単相再閉路方式:(5) 事故に限って,その事故相を遮断し,一定時間後再閉路する方式である。この場合,健全である相は送電を継続したままである。健全相からの誘導により,(1) 時間は (6) なる可能性がある。
  3. 多相再閉路方式:平行二回線送電線のうち事故相のみを遮断し,一定時間後再閉路する方式であり,両回線同時の多重事故に対しても高速に再閉路しようとするものである。二回線六相のうち,遮断中における両回線の異なる相での (7) の連系を条件としており,系統の過渡安定性向上への効果が非常に大きい。

なお,2.,3. の場合は,遮断器は (8) ごとに独立して開閉操作できることが必要である。

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(1)

正解は(ル)無電圧である。

(2)

正解は(ヌ)0.5 ~ 1.0である。

(3)

正解は(ヘ)送受電端である。

(4)

正解は(ワ)短くである。

(5)

正解は(リ)1 線地絡である。

(6)

正解は(ロ)長くである。

(7)

正解は(ホ)二相以上である。

(8)

正解は(カ)相である。

参考文献

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