令和4年度 第1種 電力

2022年8月20日作成,2023年9月16日更新

令和4年度 第一種電気主任技術者試験一次試験 電力科目の合格基準は,80 点満点換算で 48 点以上,受験者は 963 人,合格者数は 595 人で,合格率は 61.8 % だった。

目次

  1. 揚水発電所の始動方法
  2. 石炭ガス化複合発電
  3. 送電線の誘導障害
  4. 配電線への避雷器設置
  5. 系統保護のための距離リレー
  6. 直流送電

問1 揚水発電所の始動方法

近年の揚水発電所では,一般的にポンプ水車が採用されている。ポンプ水車の発電方向の始動は普通の水車と同様の取り扱いとなるが,揚水方向の指導はポンプ運転時のランナの反抗トルクを減らす目的で水面押し上げが行われた状態で行う。

発電電動機の始動方法としては,サイリスタ始動が広く用いられている。サイリスタ始動とは,停止中の発電電動機の回転子にあらかじめ励磁を与えておき,発電電動機の回転子位置検出器からの信号によりサイリスタ始動装置を制御し,回転子の磁極位置に対応した零(0)から発電電動機の定格周波数まで変化する交流を電機子に供給して始動する方法である。

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(1)

正解は(カ)水面押し上げである。

(2)

正解は(ル)励磁である。

(3)

正解は(ヌ)位置検出器である。

(4)

正解は(ヘ)定格周波数である。

(5)

正解は(ホ)電機子である。

参考文献

問2 石炭ガス化複合発電

石炭ガス複合発電は,積算を部分酸化することにより一酸化炭素や水素を主成分とするガス燃料に変換する石炭ガス化炉,その生成ガスから主としてばいじんや硫黄分などを除去するガス精製装置,その生成ガスを燃料としたガスタービン複合発電を組み合わせた発電方式である。

石炭ガス化複合発電は,LNG 焚き複合発電と比較するとその送電端熱効率は低い

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(1)

正解は(ヲ)部分酸化である。

(2)

正解は(ヨ)一酸化炭素である。

(3)

正解は(ホ)硫黄分である。

(4)

正解は(イ)ガス精製装置である。

(5)

正解は(ヌ)低いである。

参考文献

問3 送電線の誘導障害

送電線と通信線が接近交差している区間が長くなると,通信線に対して静電誘導あるいは電磁誘導などの誘導障害を及ぼすことがある。静電誘導は送電線と通信線の相互の位置によって定まるため,送電線のねん架が不十分のときは常時においても通信線に静電誘導電圧が生じ通信障害となる。

電磁誘導は,送電線に過大な地絡故障電流が流れたときに,通信線に大きな電磁誘導電圧を生じ,通信線の作業員への危害や通信機器を破壊する障害を与える恐れがある。

静電誘導を低減するための対策としては,送電線地上高の増加や,遮へい設備の施設,2 回線垂直配列の送電線では逆相配列の採用が行われる。

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(1)

正解は(ヨ)静電誘導である。

(2)

正解は(チ)相互の位置である。

(3)

正解は(イ)ねん架である。

(4)

正解は(ロ)地絡である。

(5)

正解は(ワ)逆相配列である。

参考文献

問4 配電線への避雷器設置

避雷器は,襲雷時に,配電用機器を保護するために,機器の破壊電圧より低い電圧で放電を開始し,自動的に続流を遮断させるもので,このことにより,配電線路は絶縁を回復し,襲雷前と全く同じ状態で運転が可能となる。

避雷器の保護効果を高めるため,避雷器の接地は,接地抵抗値をできるだけ低くし,かつ配電用機器の接地と連接接地することが望ましい。さらに誘導雷サージの低減効果を高めるため,架空地線の接地とも連接接地する。

また,常時開放の開閉器については,一般にその前後に避雷器を取り付けることが望ましい。

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(1)

正解は(ヌ)破壊電圧である。

(2)

正解は(ヘ)続流である。

(3)

正解は(イ)連接である。

(4)

正解は(ハ)誘導雷である。

(5)

正解は(ホ)前後である。

参考文献

問5 系統保護のための距離リレー

距離リレーは,変圧器や送電線など電力設備の主保護リレー又は後備保護リレーとして,幅広く使用されている。図の場合の線間短絡距離リレー,あるいは 1 線地絡距離リレーが見る測距インピーダンス $\dot{Z}_\text{r}$ は,いずれも次式の形式で表現される。

\[ \dot{Z}_\text{r}=\dot{Z}_\text{1}+\dot{Z}_\text{f} \]

上式右辺第 1 項 $\dot{Z}_\text{1}$ は,リレー設置点から故障点までの正相インピーダンスである。右辺第 2 項の $\dot{Z}_\text{f}$ は,短絡距離リレーの場合は故障点抵抗を $R_\text{f}$ とするとき,この $R_\text{f}$ と図中の電流 $\dot{I}_1$,$\dot{I}_\text{f}$ を用いて $\displaystyle R_\text{f}\times\frac{\dot{I}_\text{f}}{\dot{I}_1}$ で表される。また地絡距離リレーの場合は,故障点抵抗に加え,故障回線及び健全回線の零相電流に関係する変数で構成される。

これらの距離リレーの適用にあたっては,健全相のリレーが見る $\dot{Z}_\text{r}$ の値 $\dot{Z}_\text{r0}$ にも注意を払う必要がある。一部の健全相リレーの $\dot{Z}_\text{r0}$ は,故障点がリレー設置点に近い場合,$\dot{Z}_\text{r0}$ のリアクタンス成分が小さくなる傾向にあり,オーバーリーチとなって不要動作する可能性がある。

測距インピーダンスは,上記の短絡・地絡検出用途の他,脱調分離リレーにおいても用いられる。本リレーは,系統動揺時の電気的中心点近傍における $RX$ 平面上での測距インピーダンスの特徴を利用したものであり,その時間変化はインピーダンスローカスと呼ばれる。

系統保護のための距離リレー
図 系統保護のための距離リレー
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(1)

正解は(ト)$\displaystyle R_\text{f}\times\frac{\dot{I_\text{f}}}{\dot{I_1}}$ である。

(2)

正解は(カ)零相電流である。

(3)

正解は(ヨ)リレー設置点に近いである。

(4)

正解は(二)リアクタンス成分である。

(5)

正解は(へ)オーバーリーチである。

(6)

正解は(ル)脱調分離である。

(7)

正解は(チ)電気的中心点近傍である。

(8)

正解は(タ)インピーダンスローカスである。

参考文献

問6 直流送電

直流送電は,各国で系統連系,長距離大電力送電,洋上風力からの送電などを目的として,導入例が増えている。

直流送電は,長距離大電力送電であっても交流系統のように同期安定性の問題がなく送電容量を送電線の熱容量まで大きくできる。海底ケーブルを用いる場合であっても交流系統と異なり線路の充電電流による送電容量低下がない,送電電力を高速かつ正確に制御するための BTB を実現できることも直流送電の利点である。一方,直流送電には,交直変換器の費用がかさむ,交直変換器に起因する交流側の高調波への対策が必要である,大容量の直流遮断器が技術開発の途上にあるため多端子構成には課題があるなどの短所もある。

直流送電用の変換器としては,これまで他励式変換器が広く用いられてきたが,近年は自励式変換器の採用例も増えている。

① 他励式変換器

サイリスタを用いた変換器であり,位相制御により有効電力制御を行う。有効電力の増大に伴い無効電力の消費も増大するため,変換器容量の 60 % 程度の並列コンデンサなどが必要となる。変換器の制御にあたっては,順変換器側の定電流制御に,逆変換器側における転流失敗を避けるための定余裕角制御を組み合わせるなどの方式が採用される。なお短絡容量の小さい交流系統に接続した場合,変換器の制御が不安定となることがある。

② 自励式変換器

自己消弧素子を用いた変換器であり,有効電力と無効電力を独立して高速に制御することができる。このため,自励式変換器では,基本的には並列コンデンサが不要であるとともに,変換器容量の範囲内で STATCOM(静止形無効電力補償装置)と同様の電圧安定化制御が可能である。

最近は,変換器セルを複数個接続しアームを構成する回路を用いた変換器も現れている。この回路構成の変換器をモジュラーマルチレベル変換器とよぶ。この場合,等価的なスイッチング回数が増えるため交流側の高調波電流を低減できるが,それに伴いスイッチング損失も増えるため,最適なスイッチング周波数を選ぶことが重要である。

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(1)

正解は(ヨ)熱容量である。

(2)

正解は(レ)充電電流である。

(3)

正解は(ヘ)BTB である。

(4)

正解は(二)遮断器である。

(5)

正解は(カ)並列コンデンサである。

(6)

正解は(ネ)転流失敗である。

(7)

正解は(ロ)小さいである。

(8)

正解は(ソ)電圧である。

(9)

正解は(ヌ)モジュラーマルチレベルである。

参考文献

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