平成19年度 第1種 機械

2022年1月2日更新

目次

  1. 誘導発電機
  2. 変圧器の移行電圧
  3. 避雷器
  4. 高周波専用蛍光ランプとその点灯回路
  5. 汎用インバータの制御回路構成
  6. 電気化学システム
  7. 暗号化技術

問1 誘導発電機

三相誘導電動機の固定子を電源に接続して,固定子が作る回転磁界の回転方向と同一方向に,他の原動機を用いて同期速度を超える速度で回転させると,滑りは負の値となる。このとき,回転子巻線は電動機の場合と逆方向に回転磁束を切り,二次巻線の誘導起電力及び二次電流の方向は,電動機の場合と逆になる。したがって,二次電流と回転磁束とによるトルクの方向は,回転子の回転方向と逆になる。固定子電流の方向も電動機の場合と逆になるから,原動機から回転子への機械的入力は,電気的出力となって固定子から電源に送り出されることになる。すなわち,誘導発電機としての動作となる。

このタイプの誘導発電機は以下のような特徴がある。回転磁束を作るための励磁電流は,誘導発電機が接続されている電源から供給を受けなければならない。周波数は,電源の周波数で定まる。誘導発電機の出力を増加するには,原動機の回転速度を増やさなければならない。同期発電機と異なり,始動が簡単で,同期化の必要がない。線路に三相短絡を生じた場合,励磁が失われるので,短絡電流は同期機に比べて小さく,持続時間も短い。

電源に誘導電動機を接続すると同期速度より若干遅い速度で回転する。この電動機の回転軸に外部から動力を加えて同期速度より速い速度で回転させると回転子の導体が回転磁界を追い越すことになる。このときの回転子の二次側誘起電力は電動機と逆方向となる。さらに回転子に加える動力を増加させると固定子巻線の起磁力を打ち消し,電源へ電力が供給される。これが誘導発電機の原理である。

問2 変圧器の移行電圧

変圧器の高圧巻線にサージ電圧が印加すると,高圧巻線と低圧巻線間の静電的及び電磁的結合によって,低圧巻線にも電圧が誘起される。これが移行電圧で,静電的移行電圧と電磁的移行電圧に大別され,条件によっては低圧巻線及びこれに接続している機器の絶縁を脅かすほどの大きさになることもある。

静電的移行電圧は,サージ電圧が急しゅんで時間の短いものであれば,巻線間静電容量と低圧巻線の対地静電容量の比でほぼ決定され,両巻線の巻数比に無関係となる。高圧-低圧巻線間の静電容量を $C_\text{HL}$,低圧巻線の対地静電容量を $C_\text{LE}$ とすると,低圧巻線側に現れる静電的移行電圧は,式 $\displaystyle \frac{C_\text{HL}}{C_\text{HL} + C_\text{LE}}$ に比例した値となる。したがって,低圧巻線の端子と対地間にコンデンサを接続することで,低圧巻線への移行電圧を抑制することができる。

また,この移行電圧は巻線の接地遮へい,すなわち混触防止板を設けることでも抑制が可能である。

電磁的移行電圧は,サージが印加された巻線に準定常分電流により磁束が生じ,それが他の巻線と鎖交した各ターンに電圧を誘導することで発生する。静電的移行電圧と異なり,低圧巻線端子にコンデンサを接続しても,振動周波数が変わるだけで波高値はそれほど低減されない。

実際の運用では,静電的移行分と電磁的移行分が合成された電圧の波形で低圧側に移行し,さらに低圧巻線の固有振動による電圧分も加わって複雑な様相を示す。

移行電圧は,変圧器の一方の巻線に雷インパルス電圧(サージ電圧)が印加されたとき,巻線の電位振動によって他の巻線にも電圧が誘起される現象である。この移行電圧は,静電誘導と電磁誘導によって生じる。前者を静電的移行電圧といい,後者を電磁的移行電圧という。

問3 避雷器

避雷器は,雷又は回路の開閉などに起因する過電圧の波高値がある値を超えたときに,放電により過電圧を制限して電気設備の絶縁を保護し,かつ,続流を短時間のうちに遮断して,現状に自復させる機能を持つ装置である。

近年,優れた非直線抵抗特性を有する ZnO 焼結素子を積層した酸化亜鉛型避雷器が多く用いられている。

避雷器の動作時の制限電圧をできるだけ低くし,常時の系統電圧に持続して耐えるようにすることで,避雷器の高性能化が進められる。このため酸化亜鉛形避雷器では,ZnO 焼結素子の

  1. 小電流領域での課電寿命特性改善
  2. 短時間過電圧耐量と開閉サージ放電耐量の向上
  3. 大電流領域の制限電圧の低減

が重要となる。

また,近年では ZnO 焼結素子の単位長当たりの動作開始電圧を高めた高抵抗・高耐圧化の素子が開発され,素子の直列数の低減により,避雷器の小型化・簡素化が図られている。

問4 高周波専用蛍光ランプ(Hf 蛍光ランプ)とその点灯回路

高周波専用蛍光ランプは,ランプの管径を細くし,20 ~ 70 [kHz] の高周波電圧を印加して点灯させることを特徴とする光源である。基本的な点灯回路は,整流回路,平滑回路,高周波発生回路,高周波安定回路などで構成される。

高周波点灯の利点は,ランプの電極損失や点灯回路の電力損失を抑えることができるので,ランプ効率のみならず,点灯回路を含めた総合効率が高くなることである。

このランプを用いた照明器具は,ランプが細管であり,点灯回路が電子化されているため,従来の蛍光灯照明器具より小形軽量になる。また,使用面では,高周波で点灯するのでフリッカが感じられないこと,電源周波数フリー等の特徴がある。

問5 汎用インバータの制御回路構成

準備中

問6 電気化学システム

電池,電気分解で用いられている電気化学システムは,基本的に二つの電極とイオン伝導体である電解質から構成されている。電解質としては酸あるいはアルカリの水溶液が知られているが,アルカリ乾電池では電解質として水酸化カリウムが用いられている。食塩電解においては食塩が電解質となる。100 [°C] 以上の高温では水溶液は使用できず,イオン性融体である溶融塩が電解プロセスに利用されることがある。アルミニウムを製造するには電解プロセスが欠かせない。このアルミニウム電解製造は 1 000 [°C] ほどの高温で行われるが,ここで主たる電解質として氷晶石が用いられる。

電気化学システムでは,二つの電極は短絡すると電気化学作用を示すことはできない。また,二つの電極系が混じり合うと副反応等が起こり,得られる目的製品が理論通りに得られないことがある。これらを防ぎ,二つの電極系を分離するためにセパレータが用いられることもある。

二つの電極とは,そこで起こる電気化学反応の特性を考えて,アノードとカソードに分けられる。このうち,アノードでは酸化が起こる。電池において,電池反応に直接関与する物質が活物質と呼ばれる。アルカリ乾電池を考えた場合,アノードには亜鉛が活物質として利用されている。

問7 暗号化技術

電気設備の監視制御装置などにインターネットが利用されつつあるが,電気設備のみならず現代のネットワーク社会において,暗号化技術が重要な役割を果たしている。

暗号化には,主に二つの機能があり,情報を「秘匿(守秘)機能」により保護するだけでなく,「認証」機能により情報に本人性や完全性等の信用を与えることで,ネットワーク社会における安全性と信頼性を実現できる。

秘匿(守秘)機能は,平文(データ)を送信者と受信者以外の第 3 者から隠すことであり,送信側で暗号鍵を用いて平文を暗号化し,受信側で復号鍵を用いてその暗号文を元の平文に復号して保護する。この暗号鍵と復号鍵とが同じであるか,あるいは暗号鍵から復号鍵が容易に導けるものを共通鍵暗号方式と呼び,送信者と受信者はともにそれぞれの鍵を秘密に保たなければならない。一方,公開鍵方式は,暗号鍵と復号鍵とが異なり,前者の鍵から後者の鍵を求めるのは難しく,鍵の管理の簡素化や,当事者間の解決に有用であるが,暗号化や復号が複雑となり,処理速度も低くなる。

認証機能は,人間やメッセージあるいは時刻といった対象によって分類される。これらへの偽造行為の対策として,関数値から元の因数の値を求めるのが困難であるような一方向性ハッシュ関数と呼ばれる関数を利用して,メッセージ認証やディジタル署名などが実施される。

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