平成20年度 第1種 機械

2022年1月2日更新

目次

  1. 同期発電機の回転子の軸の両端間に発生する電圧
  2. リラクタンスモータ
  3. 変流器(保護リレー用)の特性
  4. 太陽光発電システム用パワーコンディショナ
  5. 交流回転機の分布係数
  6. 蛍光水銀ランプの照度計算
  7. 潮流計算

問1 同期発電機の回転子の軸の両端間に発生する電圧

同期発電機の回転中に回転子の軸の両端間に電圧が発生する。この発生のメカニズムは,次の二つに大別することができる。

その一つは,構造上の原因から,回転子鉄心の磁気抵抗が円周方向に不同であると,回転子の軸と鎖交する交番磁界が発生し,軸に起電力を誘導することによるものである。この起電力は,通常,数ボルト程度の大きさである。同期発電機の回転中には,回転子の軸は軸受の油膜の上に乗っているので,この電圧では油膜の絶縁が破壊されるようなことはない。しかし,給油不測などにより油膜が切れて軸と軸受面が金属接触すると,軸,軸受,固定子又はベースからなるほとんど短絡状態に近い閉回路ができ,かなり大きな電流が流れる。この電流は軸電流と呼ばれている。この電流が大きくなると,それによって軸受面を損傷し,著しい場合には,軸受の過熱損傷を招いて軸に過大な振動が生じ,事故の発生につながる。これを防止するためには,磁極数に対する鉄心の分割数が最適になるように設計すればよいが,工作上のばらつきは免れないので,軸受メタルの支持部,軸受ブラケットの固定子枠の間,あるいは軸受台とベースの間に絶縁物を入れるなどの対策が採られている。

他の一つは,蒸気タービンに接続された同期発電機に見られる現象で,蒸気の粒子が相互に摩擦したり,あるいはタービンの動翼や軸に高速で衝突又は摩擦したりする際にイオン化し,タービンの軸に静電荷が生じ,それが軸に蓄積されて電位を高めていくことによるものである。この電位が軸受の油膜の耐電圧以上になると,絶縁を破壊して間欠的に放電し,軸受を損傷することにより,軸振動が増大して事故の発生につながる。これを防止するためには,軸にブラシを取り付ける方法が採られている。

問2 リラクタンスモータ

リラクタンスモータは,計算機設計ツールの普及やパワーエレクトロニクス技術の発展などによって,近年実用化が進んでいる。

永久磁石を用いないリアクタンスモータは,構造的にシンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)とスイッチトリラクタンスモータ(SRM)に分けられる。ともに突極性を有し,回転子位置に応じて変化するリラクタンス(磁気抵抗)に基づくトルクによって回転する。

シンクロナスリラクタンスモータの固定子構造は,従来の交流機と同様に固定子のスロットに分布巻コイルが配置され,三相交流の給電によってギャップに正弦波分布した回転磁界を発生する。強磁性体で作られた回転子は,発生した回転磁界に同期してその磁気抵抗が最小になるように回転する。負荷がかかると回転子は回転磁界より負荷角δだけ遅れ,この角度は負荷の大きさに依存する。回転子構造は突極構造を実現するため,種々の形状が提案されている。磁気抵抗の小さい軸を $d$ 軸,大きい軸を $q$ 軸とし,対応するインダクタンスをそれぞれ $d$ 軸リアクタンス $L_d$,$q$ 軸インダクタンス $L_q$ とすれば,両者の比 $\displaystyle \frac{L_d}{L_q}$ を突極比と呼ぶ。トルク対電流の比,力率及び効率の向上のためには,突極比大きいことが望まれる。

一方,スイッチトリラクタンスモータの基本構造は,固定子,回転子とも突極構造をなし,固定子には集中巻コイルが配置される。固定子,回転子の突極数については種々の組み合わせがある。その動作は,固定子突極に対して回転子突極がその磁気抵抗を最小にするように,非対向状態から対向状態にトルクを発生させる。その対向直前で次の相に励磁を切り換え,回転を維持する。

問3 変流器(保護リレー用)の特性

保護リレーと組み合わせて使用される変流器では,系統短絡事故時の過電流で変流比誤差が変化すると,保護リレーの誤・不動作の原因となるため,過電流域でも一次電流と二次電流の比例関係が良好に維持されることが必要である。

変流器の過電流域での特性の一つとして過電流定数がある。過電流定数は,電気学会 電気規格調査会標準規格 JEC-1201-1996 の中で,「定格二次負担(力率 0.8 遅れ電流)のもとで,定格周波数の電流を流して比誤差を試験したとき,その値が -10 [%] になるときの一次電流を定格一次電流で除した値」と決められている。変流器の銘板に記載される過電流定数は,定格二次負担における数値で示される。

短絡電流が大きな回路に,定格一次電流の小さな変流器を用いる場合には,過電流定数の大きな変流器が必要で,定格一次電流での磁束密度を小さくする必要がある。しかしながら,変流器の二次巻線抵抗値が小さければ(過電流定数 × 定格二次負担)の値はほぼ一定となるので,二次回路に接続される電線路や器具類のインピーダンスによって,実用的な過電流定数は変化する。

一般に,主回路の短絡事故電流には減衰する直流分が含まれる。この直流分電流によって変流器鉄心が偏磁や飽和を起こし,事故発生から数サイクルの間正確な変流器二次電流が得られない場合がある。このような短絡事故電流に対して,高速度で確実な保護リレーの動作を得るための変流器として,磁路にギャップを設ける等の対策を施した過渡特性付変流器を使用することもある。

参考文献

問4 太陽光発電システム用パワーコンディショナ

太陽光発電システム用パワーコンディショナ(PCS)は太陽電池で発電した直流電力を交流電力に変換し,交流系統に接続された負荷設備に電力を供給するとともに,余剰電力を系統に供給する装置である。PCS は直交変換だけでなく,様々な機能を有している。

太陽電池モジュールは,特有の電圧電流特性を持つため,電圧と電流の積である発電電力を最大とする動作電圧が存在する。最大電力点追従(MPPT)制御はモジュールから最大限の電力を引き出すための制御であり,PCS の大きな特徴でもある。いかにその制御の一例を示す。

電池の出力電力が $P_0$ で運転されているものとする。電圧を微小に減少させたときの出力電力 $P_1$ を計測してから,電圧を元に戻し,そのときの出力電力 $P_2$ を計測する。$P_0 \lt P_1$,$P_1 \gt P_2$ を条件 1,$P_0 \gt P_1$,$P_1 \lt P_2$ を条件 2 とするとき,条件 1 を満足する場合には,動作電圧を減少させ,条件 2 を満足する場合は動作電圧を増加させる。条件 1,2 ともに満足しない場合は,雲などの影響による日射強度の一時的な変動があったものとして動作電圧を変更しない。この操作を一定時間間隔で行い常に最大電力点で動作するように制御する。

配電系統が停止した場合,発電電力と負荷電力が概ね平衡していると,電圧リレー(OVR,UVR)や周波数リレー(OFR,UFR)では停電を検出できず系統に電力を供給し続けることがある。これを単独運転という。PCS にはこのような運転状態を防止する機能が設けられており,その検出方法には,電圧波形や位相などの変化を捉える受動的方式と,電圧や周波数に変動を与え単独運転移行時にこの変動が顕著となることを利用する能動的方式がある。また,太陽光発電システムが系統から解列された状態で運転することを自立運転といい,PCS は MPPT 制御から出力電圧一定制御に切り替わる。

問5 交流回転機の分布係数

準備中

問6 蛍光水銀ランプの照度計算

準備中

問7 潮流計算

潮流計算は,電力系統やプラントなどの電力システムの計画・運用に必須な計算技術である。一般に潮流計算は,電力方程式を厳密に解いて,電圧,位相角,有効・無効電力潮流を求める交流法を用いることが多い。この電力方程式では,送電線や変圧器をブランチ,発変電所などの母線をノードとして,アドミタンス行列で表現された電気回路に基づいて構成され,電力システムの場合,非零要素が極めて少ないスパース行列となる。一方,この電力方程式の既知量は,そのノードの特性に応じて指定される。一般的には,発電母線に対して有効電力及び電圧を指定するノードを PV 指定ノードと呼び,負荷母線に対して有効電力及び無効電力を指定するノードを PQ 指定ノードと呼び,さらに,電圧位相角の基準となるノードをスラックノードと呼び,系統の有効・無効電力損失分を充当させている。また,この方程式の電圧座標の取り方に応じて,直角座標又は極座標が使用される。

電力方程式は非線形代数方程式であり,これを解くには未知数に適当な初期値を設定して反復計算により正確に収束させる必要がある。その代表例として,ニュートンラフソン法があり,反復計算する係数として,ヤコビアン行列と呼ばれる電力方程式の微分係数を用いて収束計算する方法が著名である。

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