平成23年度 第1種 機械

2022年1月2日作成,2022年1月2日更新

目次

  1. 一定周波数の交流電源によって運転される大形同期電動機の始動
  2. 揚水発電所用可変速発電電動機
  3. 三相ブリッジダイオード整流器の動作
  4. 照度計
  5. 交流フィルタ設備
  6. 一次電池
  7. インターネット上のサーバー機能

問1 一定周波数の交流電源によって運転される大形同期電動機の始動

同期電動機は,回転速度が同期速度で回転しているときにだけトルクを発生するので,始動トルクをもたない。そのため同期電動機の始動には,自己始動法,始動電動機始動法,低周波始動法,同期始動法などが用いられる。

大形同期電動機では自己始動法によって始動すると,始動電流が大きいため電力系統を動揺させる。このため,次のような方式が採用される。

無負荷で始動することが許される場合には,始動電動機始動法が採用できる。この始動法は,小形の始動電動機によって主機である大形同期電動機を同期速度まで加速してから交流電源に接続して同期化させる方式である。始動電動機として誘導機を用いるとき,その極数は主機よりも 1 極対少ないものが使われる。

低周波始動法は,始動用電源として可変周波数の電源を使用し,周波数が定格周波数の 30 [%] くらいのときに同期化してしまい,同期状態を保ったまま周波数を定格周波数まで上げてから主電源に切り換える方式である。低周波では回転部分の運動エネルギーが小さいので,容易に同期化できる。

同期始動法は,可変周波数の始動用電源と同期電動機を静止状態で電気的に接続しておき,同期電動機の界磁巻線に直流電流を流し,始動用電源の周波数を徐々に上げて最初から同期電動機としてのトルクによって始動する方式である。

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(1)

正解は(ヨ)低周波である。

(2)

正解は(ハ)同期である。

(3)

正解は(ル)誘導機である。

(4)

正解は(ホ)1 極対少ないである。

(5)

正解は(チ)30 である。

問2 揚水発電所用可変速発電電動機

揚水発電所は,夜間の余剰電力で揚水し,昼間の電力消費ピーク時に発電することで昼夜間の負荷の平準化に寄与している。負荷追従運転を行わない発電所の比率が増大し,電力消費の少ない夜間において発電電力が負荷に追従できない場合には,系統周波数を維持するために負荷調整する必要がある。この負荷調整方法として,揚水運転時に入力を調整できる可変速揚水発電システムが導入されている。この可変速駆動方式としては,大容量化が可能であること及び同期機としての機能をもっていることなどの要求から,発電電動機の回転子を交流励磁する二次励磁方式が主流になっている。

可変速発電電動機の固定子は従来の発電電動機と同一の構造をもつが,回転子は磁極の代わりに三相分布巻線をもち,スリップリングを介して三相交流電流によって励磁される。回転速度が変化しても他励周波数を固定子周波数と回転速度とのの周波数に制御することで,回転子で発生する磁束を常に系統の周波数に同期させることができるため,同期機としての特性をもった運転を行うことが可能となる。

三相交流電流を回転子に供給する励磁装置には,サイリスタを使用したサイクロコンバータ又はゲートターンオフサイリスタ(GTO)などを用いたインバータが用いられている。

可変速揚水発電システムは,揚水運転時の入力調整機能のほかに,回転子のはずみ車効果によって蓄えられる回転エネルギーも有効電力として入出力が可能である。

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(1)

正解は(ワ)系統周波数である。

(2)

正解は(ヘ)二次励磁方式である。

(3)

正解は(イ)三相分布巻線である。

(4)

正解は(ヲ)差である。

(5)

正解は(ル)はずみ車効果である。

問3 三相ブリッジダイオード整流器の動作

図 1 は三相ブリッジダイオード整流器の回路構成である。負荷と直列に平滑用直流リアクトルを接続している。ダイオードのオン電圧,逆阻止電流(逆漏れ電流)及び逆回復電流(リカバリ電流),並びにリアクトルの抵抗は無視できるものとする。また,三相電源の内部インピーダンスも無視できるものとする。平滑用直流リアクトルのインダクタンスを増加すると,負荷電流のリプルを低減することができる。平滑用直流リアクトルのインダクタンスが十分に大きいとすると,ダイオード整流器の交流入力電流波形は,通電期間が 120 [°] の方形波になる。線間電圧実効値が 200 [V],50 [Hz] の三相電源にダイオード整流器を接続した場合,負荷の直流電圧は約 270 [V] となる。

一方,図 2 のように三相電源とダイオード整流器との間に交流リアクトルを接続した場合には,交流リアクトルがない場合と比べて,各ダイオードが逆阻止状態になる時刻に遅れが生じ,重なり角が発生する。このとき,交流入力電流は台形波状となり,基本波力率は低下するが,高調波ひずみ率は減少する。また,交流リアクトルを接続しない場合と比べて,負荷電圧の電圧変動率は増加する。各相に 1 [mH] の交流リアクトルを接続したとき,負荷電流が 100 [A] 流れたとすると,負荷電圧は約 30 [V] 低下する。

三相ブリッジダイオード整流器の回路構成
図 1 三相ブリッジダイオード整流器の回路構成
三相ブリッジダイオード整流器の回路構成(交流リアクトル接続)
図 2 三相ブリッジダイオード整流器の回路構成(交流リアクトル接続)
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(1)

正解は(ル)120 [°] である。

(2)

正解は(リ)270 である。

(3)

正解は(ヲ)逆阻止である。

(4)

正解は(ワ)重なり角である。

(5)

正解は(ヌ)30 である。

問4 照度計

測光量は,人間の明るさ感覚を加味した量すなわち心理物理量であるため,照度計の分光応答度特性は標準比視感度に一致していなければならない。

照度計では,この特性を満足させるために,一般に光電素子の前面に補正フィルタを置くことによって,目標とする特性に近似させている。しかし,通常このフィルタを目標特性に完全に一致させることが困難であるので,分光分布の異なる光源によっては,計量する照度計に誤差が生じる。この誤差を補正するには,光源ごとに定められる色補正係数を乗じる必要がある。

一方,複数の異なる種類の光源が使用されている場所の照度を測る場合には,色補正係数を一義的に定めることが困難であるので,このような場所での測定誤差を小さくするには,より標準比視感度に近似した特性をもつ JIS C 1609-1(2006) の AA 級以上のクラスの照度計を使用する必要がある。

また,正しく照度を測るには,照度計の斜め入射光特性が余弦法則に合っていること,入射光の量に対する表示値の直線性の良いことなども重要である。

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(1)

正解は(ニ)心理物理量である。

(2)

正解は(ヨ)標準比視感度である。

(3)

正解は(ル)分光分布である。

(4)

正解は(ヘ)色補正係数である。

(5)

正解は(カ)余弦法則である。

参考文献

問5 交流フィルタ設備

図の破線内は,三相 6 600 [V],60 [Hz] の高圧母線から給電されるサイリスタ変換装置用の交流フィルタ設備の例である。変換装置は 12 パルスで,変換装置用変圧器の交流側の容量は 1 000 [kV·A] である。

$X$ で示すリアクトルは限流リアクトルであり,これによって交流系統の短絡容量などの条件が交流フィルタ設備にあまり影響しないようにしている。このリアクトルのリアクタンスは,1 000 [kV·A] を基準として 4 [%] である。その 1 相当たりのインダクタンスは,4.62 [mH] である。

6 パルスサイリスタ変換装置から発生する 5 次及び 7 次の高調波は,12 パルスサイリスタ変換装置からは,理想的には発生しないが,実際には制御角のばらつきなどによってわずかに発生する。短絡容量が変換装置容量の数十倍で,インピーダンスが誘導性の一般的な系統条件では,第 11 分路を接続することによってこれらの高調波の系統への流出が増加するので,これを防止するためにこれらの高調波に対する分路を設け,各分路の設備容量を第 5 分路 : 120 [kvar],第 7 分路 : 80 [kvar] 及び第 11 分路 : 200 [kvar] とした構成としている。

第 11 分路のリアクトルの 1 相当たりのインダクタンス $L_{11}$ は 4.81 [mH] である。

第 11 分路は,12 パルス変換装置から発生する 11 次の高調波電流だけでなく,それ以上の次数の高調波電流も吸収する。

高圧母線から給電されるサイリスタ変換装置用の交流フィルタ設備
図 高圧母線から給電されるサイリスタ変換装置用の交流フィルタ設備
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(1)

正解は(ル)限流リアクトルである。

(2)

正解は(ハ)4.62 である。

(3)

正解は(ロ)7 である。

(4)

正解は(ト)増加である。

(5)

正解は(チ)4.81 である。

問6 一次電池

問6及び問7は選択問題であり,問6又は問7のどちらかを選んで解答すること。

両方解答すると採点されません。

亜鉛,マンガン,酸素,水素の原子量はそれぞれ 65,55,16,1 とし,ファラデー定数は 27 [A·h/mol] とする。

マンガン乾電池は一次電池として最も広く利用されている。その負極活物質は亜鉛であり,正極活物質は二酸化マンガンである。この正極では還元反応が起こり,塩基性酸化マンガンが生成する。ここではマンガン 1 原子当たり 1 電子反応が起こっている。負極では亜鉛が酸化反応を起こす。ここでは亜鉛 1 原子当たり 2 電子反応が起こっている。

いま,この電池が放電して負極の亜鉛 4.1 [g] を消費したとき,得られる電気量は 3.4 [A·h] となる。また,正極の二酸化マンガン 7.1 [g] を消費したとき,得られる電気量は 2.2 [A·h] となる。

このマンガン乾電池の二酸化マンガンの代わりに空気中の酸素の反応を利用する空気電池がある。この電池の放電に際し 6.5 [g] の亜鉛が消費したとき,理論的に消費する酸素の質量は 1.6 [g] となる。

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(1)

正解は(ロ)1 である。

(2)

正解は(ト)2 である。

(3)

正解は(カ)3.4 である。

(4)

正解は(チ)2.2 である。

(5)

正解は(ホ)1.6 である。

参考文献

問7 インターネット上のサーバー機能

問6及び問7は選択問題であり,問6又は問7のどちらかを選んで解答すること。

両方解答すると採点されません。

インターネットは,ネットワークの一部が故障してもさまざまなルートで情報が送れるように構成されている。この技術をもとに,アメリカ国防総省が開発した ARPANET の運用が 1969 年に開始されている。インターネットのサービスや管理を行う装置として次のような代表的なサーバ機能がある。

DNS サーバ

ネットワークに接続されたサーバには,それぞれ固有の IP アドレスが割り当てられている。そのアドレスとドメイン名との変換を行う機能をもつもので,ネームサーバとも呼ばれる。

メールサーバ

コンピュータ間の電子メールの配信や転送を取り扱い管理する機能をもつもので,メール送受信時に,POP サーバは受信に使用されるサーバであり,SMTP サーバは送信に使用されるサーバである。

プロキシサーバ

アクセスを要求するクライアントの代理となってその要求にこたえるアプリケーションゲートウェイ機能や,インターネットサーバへのアクセスがあった場合に以前のアクセス時に蓄積したデータを WWW ブラウザへ送るキャッシング機能をもつ。

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(1)

正解は(ハ)ARPANET である。

(2)

正解は(カ)DNS サーバである。

(3)

正解は(ル)IP アドレスである。

(4)

正解は(ホ)SMTP サーバである。

(5)

正解は(ロ)プロキシサーバである。

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