平成25年度 第1種 機械

2022年1月1日作成,2022年1月2日更新

目次

  1. 同期発電機の無負荷飽和曲線と短絡特性曲線
  2. 電力用の保護機器
  3. 三相 3 レベル変換器
  4. 光源の発光原理及びエネルギー配分
  5. 単巻変圧器
  6. 食塩電解
  7. メカトロニクス分野でのアクチュエータ

問1 同期発電機の無負荷飽和曲線と短絡特性曲線

図は,三相同期発電機の界磁電流 $I_\text{f}$ に対する 1 相分の無負荷誘導起電力 $E_0$ 及び三相短絡電流 $I_\text{S}$ の特性である。無負荷誘導起電力 $E_0$ と界磁電流 $I_\text{f}$ との間の関係は,

\[ E_0 = \frac{\omega M I_\text{f}}{\sqrt{2}} \]

で与えられる。ただし,$\omega$ は電気角速度,$M$ は界磁巻線と電機子巻線 1 相との間の相互インダクタンスである。しかし,実際の無負荷誘導起電力には,図中の $E_0$ のように飽和特性を生じる。これは,相互インダクタンス $M$ の非線形性に起因するもので,界磁電流の増加に伴って透磁率が減少することにより生じる。一般に,定格電圧 $V_\text{n}$ を得るための界磁電流 $I_\text{fn}$ は,飽和特性を考慮しない場合の界磁電流 ${I_\text{fn}}'$ に比べて 5 ~ 15 [%] 程度大きい。

一方,三相短絡電流は界磁電流にほぼ比例し,通常の界磁電流の範囲では,飽和特性の影響は現れない。これは,電機子電流の減磁作用によるものである。同期リアクタンス $X_\text{S}$ 及び巻線抵抗 $r$ を用いると,三相短絡電流は,$\dot{I}_\text{S} =$ $\displaystyle \frac{E_0}{r+\text{j}X_\text{S}}$ である。この式を電機子巻線 1 相の自己インダクタンス $L_0$ 及び漏れインダクタンス $l$ で書き換えると,

\[ \dot{I}_\text{S}=\frac{\frac{\omega M I_\text{f}}{\sqrt{2}}}{r+\text{j}\omega(\frac{3}{2}L_0 + l)} \]

となる。界磁電流による磁束鎖交数は $\displaystyle \frac{MI_\text{f}}{\sqrt{2}}$,短絡電流による磁束鎖交数は $\displaystyle \frac{3}{2}L_0 I_\text{S}$ であるので,界磁及び電機子の漏れインダクタンスと巻線抵抗とを無視すると,

\[ I_\text{S}=\frac{\sqrt{2}}{3}KI_\text{f} \]

となる。ただし,$K$ は界磁巻線の電機子巻線に対する巻数比である。

上式には,$M$ や $L_0$ などの磁気的に非線形な係数を含まないので,界磁電流 $I_\text{f}$ と三相短絡電流 $I_\text{S}$ とは比例関係になる。

図 三相同期発電機の界磁電流に対する 1 相分の無負荷誘導起電力及び三相短絡電流の特性
図 三相同期発電機の界磁電流に対する 1 相分の無負荷誘導起電力及び三相短絡電流の特性
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(1)

正解は(ハ)透磁率である。

(2)

正解は(カ)減磁作用である。

(3)

正解は(ワ)$\displaystyle \frac{E_0}{r+\text{j}X_\text{S}}$ である。

(4)

正解は(ロ)磁束鎖交数である。

(5)

正解は(リ)巻数比である。

問2 電力用の保護機器

避雷器は,雷,開閉サージなどに起因する過電圧の波高値がある値を超えた場合,これに伴う電流を分流することによって過電圧を制限して電力用電気設備の絶縁を保護する。また,分流作用に伴う続流を短時間のうちに遮断して,系統の正常な状態を乱すことなく原状に自復する機能をもつ。その定格電圧は,所定の動作責務が遂行できる商用周波電圧であり,一線地絡時の健全相対地電圧,又は負荷遮断によって電気設備に印加される短時間の電圧に基づいて選択される。また,定格の一つである公称放電電流は雷インパルス電流の波高値で示され,10 000 [A] 及び 5 000 [A] の 2 種類が標準的である。

避雷器,及び日本工業規格(JIS C 5381-1)によって規定された低圧配電システムの保護機器であるサージ保護デバイスには非直線抵抗特性をもつ ZnO 素子が主として使用されている。その電圧 - 電流特性は大まかに小電流領域,中電流領域及び大電流領域の三つの電流領域に区分される。小電流領域である連続使用電圧(動作開始電圧の 90 [%] 以下)における抵抗分電流は,数百マイクロアンペア程度である。

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(1)

正解は(チ)続流である。

(2)

正解は(ワ)健全相対地電圧である。

(3)

正解は(ヨ)雷インパルス電流である。

(4)

正解は(ヲ)非直線である。

(5)

正解は(イ)数百マイクロアンペアである。

参考文献

問3 三相 3 レベル変換器

ブリッジを構成するレグの交流端子と直流の中点 M とを図 1 に示すように双方向スイッチ SW で接続した三相 3 レベル変換器は,例えば U 相のレグ及びスイッチは図 2 に示すように動作し,中点 M に対して $\displaystyle \frac{V_\text{d}}{2}$,0,$\displaystyle -\frac{V_\text{d}}{2}$ の電圧を出力する。同じ IGBT を用いた双方向スイッチがない 2 レベル変換器の出力容量に対してこの変換器の出力容量は,同じである。IGBT Q1 又は Q4 がスイッチングするときに IGBT に加わる電圧の変化量は,2 レベル変換器の場合の $\displaystyle \frac{1}{2}$ 倍になるので,スイッチング損失を小さくできる。線間交流電圧のレベル数は 5 となり,高調波を大幅に低減できる。このため交流リアクトル $L_\text{C}$ による損失も低減でき,効率を高くできる。SW に逆阻止 IGBT を用いたときは,SW は逆阻止 IGBT を逆並列接続しただけでよくなり,通電損失を小さくできて,さらに効率を高くできる。

直流電圧 $V_\text{d}$ が 800 [V] のときに三角波キャリアを用いて正弦波の信号(3 次高調波などを重畳しない)で変調したとき,変調率を 1 として発生できる最大線間交流電圧の実効値は,各部の電圧降下を無視したとき 490 [V] である。

図 1 レグの各相交流端子を双方向スイッチで直流中点に接続した三相変換器
図 2 U 相のレグ及びスイッチの動作
図 2 U 相のレグ及びスイッチの動作
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(1)

正解は(イ)同じである。

(2)

正解は(ヘ)$\displaystyle \frac{1}{2}$ である。

(3)

正解は(ト)5 である。

(4)

正解は(ハ)逆阻止 IGBT である。

(5)

正解は(チ)490 である。

問4 光源の発光原理及びエネルギー配分

光を発生させる方法は,二つに大別される。その一つは熱放射であり,物体がある温度にあるとき,その内部の原子,分子,イオンなどの熱振動によって,温度に応じた放射エネルギーを放出する現象である。もう一つは,ルミネセンスであり,物体が,光,放射,電子,電解などエネルギーを吸収して,原子を構成する電子が励起状態となり,それが元の状態に戻るときに放射エネルギーを放出する現象である。

光源からの放射エネルギーが,単位時間にある面を通過する量を放射束という。そのうち人の目に入って明るさ感覚を生じさせるのは,おおよそ波長範囲 380 ~ 780 [nm] の可視放射である。この可視放射に対する人の目の分光感度特性を国際的に取り決めたものが CIE 標準比視感度であり,それは約 555 [nm] に最大の感度をもつ。光束は,この標準比視感度に基づいて放射束を評価した量であり,単位はルーメン [lm] である。

熱放射を利用した代表的な光源は白熱電球である。一般照明に使用されている白熱電球 100 [W] は,入力に対して可視放射約 10 [%],赤外放射約 72 [%] であり,光源効率は約 16 [lm/W] である。

ルミネセンスを利用した光源には,放電によって発生した紫外放射をフォトルミネセンスで可視放射に変換した蛍光ランプ,エレクトロルミネセンスを利用した発光ダイオード(LED)などがある。

古くから使用されている 40 [W] 一般形白色蛍光ランプは,入力に対する可視放射が約 25 [%],赤外放射が約 30 [%],損失が約 45 [%] であり,光源効率は約 75 [lm/W] である。1990 年代に開発された高周波点灯形(Hf)蛍光ランプは,数十キロヘルツの高周波で点灯して発光効率を高めるとともに,電極損失などを低減し,光源効率を 110 [lm/W] まで改善している。

近年注目されている白色 LED では,電気エネルギーを直接青色光放射に変換し,その青色光放射によって黄色蛍光体を発光させて白色光を得るものが普及している。このタイプは,入力に対する可視放射は 27 ~ 38 [%] であり,光源効率は 70 ~ 110 [lm/W] である。

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(1)

正解は(チ)熱振動である。

(2)

正解は(リ)放射束である。

(3)

正解は(ト)10 である。

(4)

正解は(ホ)フォトルミネセンスである。

(5)

正解は(カ)黄色である。

参考文献

問5 単巻変圧器

図 1 に示すように一次側と二次側とが絶縁されていなくて,巻線の一部が一次と二次に共通に利用されている変圧器を単巻変圧器という。共通部分を分巻巻線,残りの部分を直列巻線という。

図 1 単巻変圧器
図 1 単巻変圧器

高圧側電圧を $V_\text{h}$,低圧側電圧を $V_1$,直列巻線及び分路巻線の電圧をそれぞれ,$V_\text{m}$,$V_\text{n}$ とし,巻線の漏れインピーダンス及び励磁電流を無視すれば,次の関係がある。

\[ V_\text{h}=V_\text{m}+V_\text{n} \] \[ V_1=V_\text{n} \]
・・・・・①
\[ S_\text{S}=V_\text{m}I_\text{h}=(V_\text{h}-V_1)I_\text{h} \]
・・・・・②

単巻変圧器では $S_\text{S}$ を自己容量といい,負荷に供給できる電力 $S_\text{L} = V_\text{h}I_\text{h} = V_1 I_1$ を負荷容量または線路容量という。$S_\text{S}$ は直列巻線と分路巻線を分離して二巻線変圧器として用いた場合の容量で,単巻変圧器の大きさは $S_\text{S}$ で決まる。$\displaystyle \frac{S_\text{S}}{S_\text{L}}$ を $K$ とすると

\[ K=1-\frac{V_1}{V_\text{h}} \]
・・・・・③

となり,原理上,$V_\text{h}$ に対する $V_1$ の比が 1 に近いほど同一自己容量に対して線路容量が大きくなる。

図 2 は単相変圧器 3 台を用いた三相 Δ 結線である。図 3 の電圧ベクトル図から各電圧の関係は次式となる。

\[ {V_1}^2 = {V_\text{h}}^2 - 3V_\text{m}V_\text{n} \]
・・・・・④

次に,図 2 に示す電流 $I_\text{h}$,$I_\text{1}$,$I_\text{m}$,$I_\text{n}$ 及び電圧 $V_\text{h}$,$V_\text{1}$,$V_\text{m}$,$V_\text{n}$ を考える。$V_\text{m}I_\text{m} = V_\text{n}I_\text{n}$ であるから

\[ \frac{I_\text{m}}{V_\text{n}}=\frac{I_\text{n}}{V_\text{m}}=\frac{I_\text{m}+I_\text{n}}{V_\text{m}+V_\text{n}}=\frac{I_\text{1}}{V_\text{h}} \]
・・・・・⑤

となる。$S_\text{S}$ は ⑤ 式から

\[ S_\text{S}=3V_\text{m}I_\text{m}=3\frac{V_\text{m}V_\text{n}I_1}{V_\text{h}} \]
・・・・・⑥

である。④,⑥ 式から $V_\text{h}$,$V_1$ を用いて $K=\frac{S_\text{S}}{S_\text{L}}$ は

\[ K=\frac{{V_\text{h}}^2 - {V_1}^2}{\sqrt{3}V_\text{h}V_1} \]
・・・・・⑦

となる。

図 2 単巻変圧器 3 台を用いた三相 Δ 結線
図 2 単巻変圧器 3 台を用いた三相 Δ 結線
図 3 単巻変圧器 3 台を用いた三相 Δ 結線のベクトル図
図 3 単巻変圧器 3 台を用いた三相 Δ 結線のベクトル図
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(1)

正解は(ヌ)直列巻線である。

(2)

正解は(ヘ)自己容量である。

(3)

正解は(ト)1 である。

(4)

正解は(イ)${V_\text{h}}^2 - 3V_\text{m}V_\text{n}$ である。

(5)

正解は(ホ)$\displaystyle \frac{{V_\text{h}}^2 - {V_1}^2}{\sqrt{3}V_\text{h}V_1}$ である。

問6 食塩電解

問6及び問7は選択問題であり,問6又は問7のどちらかを選んで解答すること。

両方解答すると採点されません。

食塩電解は,水溶液を利用する電解工業として,世界的に最も大きな産業である。最近では水銀法及び隔膜法に代わりイオン交換膜法が用いられており,この技術では我が国が世界をリードしている。この電解では次の反応が利用される。

2NaCl + 2H2O → Cl2 + H2 + 2NaOH

ここでイオン交換膜は,アノード室とカソード室との分離とともにイオンが選択的に移動する機能をもっている。食塩電解においてはイオン交換膜中をナトリウムイオンがアノード室からカソード室に選択的に移動することによって反応が進む。また,アノードでは酸化反応が起こり,生成するものは化学式で書くと Cl2 となる。このアノードで生成する物質 1 分子が生成するのに関与する電子数は 2 電子である。また,両極で気体が生成する。生成する気体の単位電気量当たりに得られる体積を比べると両極で同じになる。

この生産方法のエネルギー原単位は水銀法をしのいでおり,省エネルギー技術としても普及が進んでいる。

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(1)

正解は(ホ)ナトリウムである。

(2)

正解は(ル)酸化である。

(3)

正解は(ニ)Cl2 である。

(4)

正解は(ヨ)2 である。

(5)

正解は(ワ)両極で同じにである。

参考文献

問7 メカトロニクス分野でのアクチュエータ

問6及び問7は選択問題であり,問6又は問7のどちらかを選んで解答すること。

両方解答すると採点されません。

メカトロニクス分野で多用されているアクチュエータの一つであるステッピングモータは,基本的には同期モータである。位置検出回路を用いず,外部からパルスが与えられたとき,そのパルスの数に対応した角度又は距離の制御をオープンループで行うことができる。このためパルスモータとも呼ばれ,磁器回路の要素によって,次のような種類がある。

a. パーマネントマグネット形

回転子に永久磁石,その外側の固定子に鉄心及びコイルを配置したもので,コイルに電流を流すと磁界が発生し,回転子と固定子との間の磁気による吸引力及び反発力によって回転子が回転する。

b. 可変リラクタンス形

パーマネントマグネット形の永久磁石の回転子に代わって,歯車形の高透磁率材料を用いている。固定子の配置角度と回転子の極数が異なるため,固定子の磁界によって,磁気抵抗が小さくなる位置まで回転子が回転する。さらに空隙面に細かな歯を切った構造のものもあり,誘導子形と呼んでいる。

c. ハイブリッド形

上記の a,b の方式を複合した構造であり,回転子の中央に円筒形の永久磁石を配置し,その両端を歯車状の鉄心で挟み込んでいる。上記の両方式の長所を合わせもち,ステップ角を小さくとることができ,また,大きなトルクが得られる。

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(1)

正解は(ロ)ステッピングモータである。

(2)

正解は(ル)オープンである。

(3)

正解は(チ)可変リラクタンス形である。

(4)

正解は(リ)磁気抵抗である。

(5)

正解は(ハ)大きなである。

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