令和3年度 第1種 機械

2021年12月28日作成,2023年9月16日更新

令和3年度 第一種電気主任技術者試験一次試験 機械科目の合格基準は,80 点満点換算で 48 点以上,受験者は 830 人,合格者数は 383 人で,合格率は 46.1 % だった。

目次

  1. 三相同期発電機の試験結果
  2. 変圧器の電源投入時の現象
  3. 単相3レベルインバータ
  4. 三相かご形誘導電動機の始動法
  5. 円板光源
  6. ステッピングモータとその応用装置である XY テーブル
  7. ヒートポンプ

問1 三相同期発電機の試験結果

16 000 kV·A,11 000 V の定格を持つ三相同期発電機(以下,試験機と呼ぶ)の試験結果は以下のとおりであった。また,試験結果をグラフ化すると図のようになった。

(a) 無負荷飽和特性試験
端子電圧(線間電圧) [V] 4 000 8 000 11 000 14 300
界磁電流 [A] 205 410 680 1 400
(b) 三相短絡特性試験(定常短絡試験)
電機子電流 [A] 400 600 840
界磁電流 [A] 435 652 913

一般的に同期機には磁気飽和特性があるため,同期リアクタンスには飽和値と不飽和値が定義される。試験機の同期リアクタンスの飽和値 $X_\text{s}$ [%] は,134 % であり,これを Ω 値で表した毎相の同期リアクタンスの飽和値 $X_\text{s}$ [Ω] は,10.2 Ω である。

試験機の同期リアクタンスの不飽和値 $X_\text{su}$ [%] は,図中の記号を用いて $X_\text{su}$ [%] = $X_\text{s}$ [%] × $\displaystyle \frac{I_\text{f0}}{I_\text{f0g}}$ として求められ,試験機の $X_\text{su}$ [%] は,162 % である。

定格電圧における同期機の磁気飽和の程度を表す飽和率 $\sigma$ は,図中の記号を用いて $\sigma$ = $(I_\text{f0}-I_\text{f0g})$/$I_\text{f0g}$ として求められる。

三相同期発電機の無負荷飽和曲線と三相短絡特性曲線
図 三相同期発電機の無負荷飽和曲線と三相短絡特性曲線
解答と解説を表示

(1)

正解は(イ)134 である。

定格電圧 $V_\text{N}$ [V] のときの電機子電流を $I_\text{S}$ [A] とすると,同期リアクタンスの飽和値 $X_\text{S}$ [Ω] は,次式で求められる。

\[ X_\text{S} = \frac{V_\text{N}}{\sqrt{3}I_\text{S}} \]

同期リアクタンスの飽和値 $X_\text{s}$ [%] は,$X_\text{S}$ [Ω] から百分率インピーダンスへの変換し求める。

\[ X_\text{s}=\frac{P_\text{N}X_\text{S}}{{V_{N}}^2}\times 100 = \frac{P_\text{N}\times \frac{V_\text{N}}{\sqrt{3}I_\text{S}}}{{V_{N}}^2}\times 100 \] \[ X_\text{s}=\frac{P_\text{N}}{\sqrt{3}V_\text{N}I_\text{S}}\times 100 \]

ここで,無負荷飽和特性試験より,定格電圧 $V_\text{N}$ = 11 000 [V] のときの界磁電流 $I_\text{f0}$ = 680 [A] であるから,三相短絡特性試験より,$I_\text{S}$ [A] は,次式で求められる。

\[ I_\text{S} = \frac{600}{652}\times 680 = 625.77 \text{ [A]} \]

これを百分率インピーダンスへ変換する。

\[ X_\text{s}=\frac{P_\text{N}}{\sqrt{3}V_\text{N}I_\text{S}}\times 100 = \frac{16000 \times 10^3}{\sqrt{3}\times 11000 \times 625.77}\times 100 = 134.20 \]

よって,求める試験機の同期リアクタンスの飽和値 $X_\text{s}$ [%] は 134 [%] である。

(2)

正解は(ホ)10.2 である。

試験機の同期リアクタンスの飽和値 $X_\text{s}$ [%] を Ω 値に変換する。

\[ X_\text{s}=\frac{P_\text{N}X_\text{S}}{{V_{N}}^2}\times 100 \]

上式を変形し,与えられた数値を代入する。

\[ X_\text{S}=\frac{X_\text{s}{V_\text{N}}^2}{100 P_\text{N}} = \frac{134.20 \times 11000^2}{100\times 16000 \times 10^3}= 10.149 \]

Ω 値で表した毎相の同期リアクタンスの飽和値 $X_\text{s}$ [Ω] は 10.1 [Ω] である。

(3)

正解は(ヨ)$\displaystyle \frac{I_\text{f0}}{I_\text{f0g}}$ である。

試験機の同期リアクタンスの不飽和値 $X_\text{su}$ [%] は,(1) と同様に考える。

\[ X_\text{su} = \frac{P_\text{N}}{\sqrt{3}V_\text{N}I_\text{Su}}\times 100 \] \[ X_\text{su} = \frac{P_\text{N}}{\sqrt{3}V_\text{N} \frac{I_\text{f0g}}{I_\text{f0}}I_\text{S}}\times 100 \] \[ X_\text{su} = \frac{P_\text{N}}{\sqrt{3}V_\text{N} I_\text{S}}\times 100 \times \frac{I_\text{f0}}{I_\text{f0g}} \] \[ X_\text{su} = X_\text{s}\times\frac{I_\text{f0}}{I_\text{f0g}} \]
三相同期発電機の無負荷飽和曲線と三相短絡特性曲線

(4)

正解は(ト)162 である。

無負荷飽和特性試験より,$I_\text{f0g}$ [A] の大きさは,次式で求められる。

\[ I_\text{f0g}=\frac{11000}{4000} \times 205 = 563.75 \text{ [A]} \]

(3) で求めた式より,$X_\text{su}$ [%] を求める。

\[ X_\text{su} = 134.20 \times \frac{680}{563.75}= 161.87 \]

試験機の $X_\text{su}$ [%] は 162 [%] である。

(5)

正解は(ヲ)$(I_\text{f0}-I_\text{f0g})$ である。

磁気飽和の程度を表す飽和率 $\sigma$ は,$I_\text{f0g}$ [A] を基準としたときの $I_\text{f0}$ [A] の飽和率である。

\[ \sigma = \frac{I_\text{f0}-I_\text{f0g}}{I_\text{f0g}} \]

問2 変圧器の電源投入時の現象

無励磁状態の変圧器を電源に接続する場合,電源投入時の電圧位相や鉄心内の残留磁束の状態によっては磁気飽和現象を原因とする大きな電流が過渡的に流入する場合がある。この電流を励磁突入電流という。

変圧器に電源が投入されると,鉄心内の磁束は,投入前における鉄心内の残留磁束を初期値として,印加電圧の積分値に比例した波形になる。鉄心内の残留磁束が無い状態において,印加電圧 0 の瞬間に投入されると,半周期の間に鉄心内磁束は定常状態の磁束最大値の 2 倍近くまで増加し,鉄心の飽和磁束密度を超えると過渡的に大きな電流が流入する。また,電源投入時に鉄心内に残留磁束がある状態では,それが印加電圧による磁束の変化方向と同一方向に重畳する場合には,鉄心内の磁束が定常状態の磁束最大値の 2 倍を超え,励磁突入電流の波高値はさらに高くなる。

この励磁突入電流を抑制するため,投入前に残留磁束の消去や,投入位相の制御などを行うことがある。

投入後,磁束は徐々に定常状態に戻っていき,それとともに励磁突入電流も減衰して通常の励磁電流に落ち着く。この継続時間は,回路のインダクタンスと抵抗などによって決まり,一般に変圧器容量が大きくなるほど長くなる

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(1)

正解は(カ)磁気飽和である。

(2)

正解は(ニ)積分である。

(3)

正解は(ヌ)同一である。

(4)

正解は(チ)投入位相である。

(5)

正解は(リ)なるほど長くなるである。

参考文献

問3 単相3レベルインバータ

準備中

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(1)

正解は(ヨ)$\displaystyle \frac{E_\text{d}}{2}, 0, -\frac{E_\text{d}}{2}$ である。

(2)

正解は(カ)S2u である。

(3)

正解は(ヘ)D5u である。

(4)

正解は(ロ)5 である。

(5)

正解は(ル)$E_\text{d}$ である。

問4 三相かご形誘導電動機の始動法

三相かご形誘導電動機の全電圧始動では,大きな始動電流が流れ,始動時間が長い場合には巻線を焼損するおそれや,電源系統に電圧変動を招くなどの問題があり,これらを避けるために以下のような始動方法が採用されている。

Y-Δ(スターデルタ)始動は,誘導電動機の固定子巻線の接続を Y(スター)形として始動し,同期速度近くまで加速した後に Δ(デルタ)形に切り替える始動方法である。この方法での始動電流はデルタ結線のままで全電圧始動する場合の $\displaystyle \frac{1}{3}$ に抑えられ,トルクもまた $\displaystyle \frac{1}{3}$ に減少する。巻線接続を切り替えるために,外部に切替器を備えている。

始動補償器始動は,始動補償器と呼ばれる単巻変圧器の二次電圧で定格電圧以下の電圧を加えて電流を抑え始動する方法である。電動機の回転が同期速度に近づいたところで補償器を回路から切り離し全電圧に切り替える。始動補償器の一次電圧と二次電圧の比を $a:1$ とすれば,電動機の電圧は全電圧始動の $\displaystyle \frac{1}{a}$ となり,このときの始動補償器の一次電流は全電圧始動の約 $\displaystyle \frac{1}{a^2}$ 倍となる。

その他の始動法として誘導電動機の一次側に直列に抵抗器又はリアクトルを挿入して印加電圧を下げて始動電流を制限し,加速後に全電圧運転とする方法がある。始動補償器を用いる場合に比べて始動トルクが減少する欠点があるが,装置が簡易で安価であるので,始動トルクを小さくして始動時の衝撃を避ける目的で用いられることがある。

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(1)

正解は(チ)固定子巻線である。

(2)

正解は(ホ)$\displaystyle \frac{1}{3}$ である。

(3)

正解は(ニ)単巻変圧器である。

(4)

正解は(ワ)$\displaystyle \frac{1}{a^2}$である。

(5)

正解は(イ)リアクトルである。

問5 円板光源

準備中

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準備中

問6 ステッピングモータとその応用装置である XY テーブル

問6及び問7は選択問題であり,問6又は問7のどちらかを選んで解答すること。

両方解答すると採点されません。

ステッピングモータは,入力されたパルス数に比例した角度だけ回転するモータで,オープンループ制御が可能であり,システム構成を簡素化できる利点がある。その他の利点として,回転角の精度が高いことや,起動,停止,正逆転,変速が容易で応答性が良いことが挙げられる。また,停止時に保持トルクがあり,ブレーキ機構なしに位置を保てるものがある。このような利点がある一方,動作時の脱調や停止時に振動が減衰するまでのセットリングタイムに留意する必要がある。

ステッピングモータの構造には可変リラクタンス形,永久磁石形があるが,現在はその両方の特徴を持つハイブリッド形が多く用いられる。

角度分解能を上げるには,モータの相数やロータの歯数を増やす方法があるが,物理面や経済性での限界があるため,励磁制御によるハーフステップ駆動やさらに制度を挙げたマイクロステップ駆動なども行われる。

ステッピングモータの回転運動をボールねじなどにより直線運動に変換し,XY 2 軸が直交するよう組み合わせた自動化装置に XY テーブルがある。

ある XY テーブルにおいて,各軸のテーブル分解能 0.01 mm,モータの回転速度を 400 min-1,モータのステップ角度を 0.72° としたときに,XY 2 軸を同時に駆動させたときに合成されるステージの移動速度は,2 830 mm/min である。なお,他に減速機構等は無く,このステップ角度とテーブル分解能は完全に対応するものとして算出せよ。

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(1)

正解は(ハ)パルス数である。

(2)

正解は(レ)保持トルクである。

(3)

正解は(ヲ)セットリングタイムである。

(4)

正解は(ヨ)可変リラクタンス形である。

(5)

正解は(チ)マイクロである。

(6)

正解は(ヌ)ボールねじである。

(7)

正解は(ロ)2 830 である。

問7 ヒートポンプ

問6及び問7は選択問題であり,問6又は問7のどちらかを選んで解答すること。

両方解答すると採点されません。

ヒートポンプは,外部から機械的な仕事を加えることによって低温熱源から熱を吸収し,高温熱源へ放出する熱機関である。冷暖房,冷凍,給湯などの熱源機として広く用いられている。ヒートポンプの熱サイクルにおいて,熱の輸送を担う物質は冷媒と呼ばれ,ハイドロフルオロカーボン,二酸化炭素,アンモニアなどが用いられている。冷媒にはヒートポンプにおける良好な熱輸送特性のほか,環境問題から地球温暖化係数やオゾン破壊係数が小さいことが求められている。

ヒートポンプの熱サイクルの基本サイクルは逆カルノーサイクルと呼ばれる。冷媒は,低温熱源側に設置した蒸発器において,低温熱源から熱を吸収して蒸発する。その後,外部動力によって駆動する圧縮機において高温,高圧となり,高温熱源側に設置した凝縮器に送り込まれる。そこで冷媒は熱を高温熱源に放出する。その後,膨張弁によって低温,低圧となり,再び蒸発器に戻される。

ヒートポンプの性能を示す指標の一つに COP(成績係数)がある。低温熱源の温度を $T_1$ [K],高温熱源の温度を $T_2$ [K],とすると,加熱の場合の COP の理論上の最高値は $\displaystyle \frac{T_2}{T_2 - T_1}$ となる。また,蒸発器で吸収した熱量を $Q_\text{L}$ [J],ヒートポンプを動かすために使った仕事を $W$ [J] として,熱損失などを無視すると加熱の場合の COP は $\displaystyle \frac{Q_\text{L} + W}{W}$ で与えられる。

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(1)

正解は(ソ)二酸化炭素である。

(2)

正解は(タ)オゾン破壊係数である。

(3)

正解は(ロ)逆カルノーサイクルである。

(4)

正解は(ハ)凝縮器である。

(5)

正解は(ヌ)膨張弁である。

(6)

正解は(カ)$\displaystyle \frac{T_2}{T_2 - T_1}$ である。

(7)

正解は(ホ)$\displaystyle \frac{Q_\text{L} + W}{W}$である。

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