平成18年度 第1種 法規

2021年12月27日作成,2022年8月14日更新

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,平成21年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

問1 自家用電気工作物に係る電気主任技術者

電気主任技術者は,自家用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安の監督の業務を誠実に行わなければならない。また,自家用電気工作物の工事,維持又は運用に従事する者は,電気主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。

一方,自家用電気工作物であって,出力 1 000 [kW] 未満の発電所(原子力発電所を除く。)のみに係る事業場や 7 000 [V] 以下で受電する需要設備のみに係る事業場等のうち,当該事業場の保安管理業務を委託する契約を電気管理技術者又は電気保安法人と締結しているものであって,保安上支障がないものとして経済産業大臣(事業場が一の産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は,その所在地を管轄する産業保安監督部長。)の承認を受けたものは,電気主任技術者を選任しないことができる。その際,電気管理技術者及び電気保安法人並びにその保安業務従事者はその職務を誠実に行わなければならない。また,電気保安法人はその保安業務従事者にその職務を誠実に行わせなければならない。他方,保安管理業務を委託しその承認を受けた者は,当該事業場の電気工作物の工事,維持及び運用の保安を確保するに当たり,その承認に係る委託契約の相手方の意見を尊重しなければならない。

問2 保安規程

  1. 事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に係る保安を確保するため,経済産業省令で定めるところにより,保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定め,当該組織における事業用電気工作物の使用(使用前自主検査又は溶接事業者検査を伴うものにあっては,その工事)の開始前に,経済産業大臣に届け出なければならない。
  2. 事業用電気工作物を設置する者及びその従業者は保安規程を守らなければならない。
  3. 保安規程に定めるものとされている事項の一部を示すと次のとおりである。
    1. 事業用電気工作物の工事,維持又は運用に関する業務を管理する者の職務及び組織に関すること。
    2. 事業用電気工作物の工事,維持又は運用に従事する者に対する保安教育に関すること。
    3. 事業用電気工作物の工事,維持又は運用に関する保安のための巡視,点検及び検査に関すること。
    4. 事業用電気工作物の運転又は操作に関すること。
    5. 発電所の運転を相当期間停止する場合における保全の方法に関すること。

問3 特別高圧架空送電線路の供給支障の防止

  1. 使用電圧が 170 000 [V] 以上の特別高圧架空電線と建造物との水平距離は,当該建造物からの火災による当該電線の損壊等によって一般電気事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないよう,3 [m] 以上としなければならない。
  2. 使用電圧が 170 000 [V] 以上の特別高圧架空電線が,建造物,道路,歩道橋その他の工作物の下方に施設されるときの相互の水平離隔距離は,当該工作物の倒壊等による当該電線の損壊によって一般電気事業に係る電気の供給に著しい支障を及ぼすおそれがないよう,3 [m] 以上としなければならない。

問4 電磁誘導電圧の制限値等

  1. 特別高圧架空電線路の弱電流電線路に対する電磁誘導電圧の制限値は,弱電流電線路の管理者と協議のうえ決定することとしている。なお,わが国では,誘導調査特別委員会報告(電気学会・電子情報通信学会 平成5年11月)において次のように報告されている。「屋外作業などにおいて人間の胴体と電柱や通信線の吊線などとの接触部が誘導電流の通電経路にならないような設備上の絶縁対策を実施したうえで,故障電流が 0.06 秒以内に除去されるように維持されている高安定特別高圧架空電線路からの誘導電圧については,650 [V] を制限値とすることが適切である。」
  2. この電磁誘導電圧の計算式は,一般に竹内式あるいは深尾式を用いて計算し,特に必要があるときには,カーソンポラチェック算式を用いることで運用されている。また,この計算において,特別高圧架空電線路と弱電流電線路との水平距離は,架空送電規程(JEAC 6001)によると通常 5 000 [m] までが影響範囲として計算される。

問5 電力系統における周波数調整を受け持つ水力発電所の運用

電力系統の負荷は,時々刻々と変動する。この変動は,時間的に数分程度以下の微小変動,数分から 10 分程度までの短周期変動,10 分程度以上の長周期変動に分けられる。この微小変動に対して,水力発電所では,周波数が上がると発電機出力を減らし,逆に下がると発電機出力を増加させる制御を調速機(ガバナ)の動作により行い,周波数変動を抑制している。

また,調整池式水力発電所及び貯水池式水力発電所は,火力発電所とともに短周期周波数変動に応じて出力調整を行う周波数制御発電所として機能している。

これらの水力発電所に求められる主な機能としては,

  1. 調整のための十分な出力変動幅及び運転継続能力を持つこと
  2. 負荷変動に対する速応度(速応性),追随性(追随能力)が高く,出力の変動範囲で高効率運転ができること
  3. 出力変動により,水利上及び送電上の支障が少ないこと

である。

なお,ピーク供給力としての役割を持つ揚水式水力の技術として,需要の少ない夜間帯の運転において水車の回転数を変化させ,系統全体の周波数維持・改善に寄与する可変速揚水発電がある。

問6 ループ状送電系統の潮流制御

ループ状送電系統内の潮流分布は,発電端や負荷端で流出入する有効電力,無効電力及びループを構成する各送電線のインピーダンスによって決まる。

このことにより,ある送電線に過度の潮流が集中することや各送電線の送電容量に見合った潮流分布にならないことが起こりうる。このようなことは,重潮流による送電損失の増加,系統安定度の低下,事故の波及リスクの増大といった観点からも好ましくない。

ループ状送電系統の潮流を制御する方法(直流設備による方法を除く。)としては,次の方法がある。

  1. 送電線に直列コンデンサを挿入して,各送電線のリアクタンス比を変える方法
  2. 移相変圧器(位相調整器)を用いて,送電端と受電端の電圧の相差角を変える方法
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