平成20年度 第1種 法規

2021年12月27日作成,2022年8月14日更新

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,平成20年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

問1 規定又は命令に違反した者への罰則等

  1. 法 第42条 第2項において,事業用電気工作物を設置する者は,保安規程を変更したときは,遅延なく,変更した事項を経済産業大臣に届け出なければならないと規定し,法 第120条 第1号において,この規定による届出をしなかった者は,30 万円以下の罰金に処すると定めている。
  2. 法 第43条 第1項において,事業用電気工作物を設置する者は,主任技術者を選任しなければならないと規定し,法 第118条 第8号において,この規定に違反して主任技術者を選任しなかった者は,300 万円以下の罰金に処すると定めている。
  3. 法 第44条 第4項において,経済産業大臣は,主任技術者免状の交付を受けている者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したときは,その主任技術者免状の返納を命ずることができると規定し,法 第123条 第2号において,正当な理由がないのにこの規定による命令に違反して主任技術者免状を返納しなかった者は,10 万円以下の過料に処すると定めている。また,法 第44条 第3項ではこの規定により主任技術者免状の返納を命ぜられ,その日から 1 年を経過しない者に対しては,主任技術者免状の交付を行わないことができると定めている。

問2 電気事業者の供給する電気の電圧及び周波数の測定方法

  1. 電圧の測定方法は,次のとおりとする。
    1. 測定は,同一の発電所又は変電所から引出しに係る配電線路により標準電圧で電気を供給する需要家のうちから 1 以上の需要家を任意に抽出し,これらの需要家に対して電気を供給する場所又はこれに近接する場所を選定し,その選定した測定箇所において行うこと。
    2. 測定は,測定箇所ごとに,毎年,供給区域又は供給地点を管轄する経済産業局長(中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局長を含む。沖縄県にあっては,内閣府沖縄総合事務局長。)が指定する期間において 1 回,連続して 24 時間行うこと。
    3. 同一の発電所又は変電所の引出しに係る配電線路に属する測定箇所における測定は,同一の日時において行うこと。
    4. 測定は,記録計器を使用して行うこと。
  2. 周波数の測定方法は,電力系統ごとに,記録計器を使用して常時測定するものとする。

問3 変圧器の電路の絶縁耐力

変圧器の電路の絶縁耐力については,「電気設備技術基準の解釈」第17条 第1項の規定により,巻線の種類に応じた試験電圧及び試験方法で絶縁耐力を試験したときこれに耐えることとされている。また,同条 第2項の規定により,日本電気技術企画委員会規格 JESC E 7001(1998)[電路の絶縁耐力の確認方法]の「3.2 変圧器の電路の絶縁耐力の確認方法」による場合には,前項の規定によらないことができるとされている。

上記の「3.2 変圧器の電路の絶縁耐力の確認方法」は,次のとおりである。

変圧器の電路で,3-2-1表に定める規格の商用周波耐電圧試験による絶縁耐力を有していることを確認したものである場合において,常規対地電圧を電路と大地との間に連続して 10 分間加えて確認したときにこれに耐えること。

3-2-1表
種類 絶縁耐力関係の規格
変圧器 「変圧器」 電気学会 電気規格調査会標準規格 JEC-2200
「配電用 6 kV 油入変圧器」 日本工業規格 JIS C 4304
「配電用 6 kV モールド変圧器」 日本工業規格 JIS C 4306

問4 高圧及び特別高圧の電路の避雷器等の施設

  1. 雷電圧による電路に施設する電気設備の損壊を防止できるよう,当該電路中必要な箇所には,避雷器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。
  2. 高圧及び特別高圧の電路中次の各号に掲げる箇所又はこれに近接する箇所には,避雷器を施設すること。
    1. 発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所の架空電線引込口及び引出口
    2. 架空電線路に接続する特別高圧配電用変圧器の高圧側及び特別高圧側
    3. 高圧架空電線路から供給を受ける受電電力の容量が 500 [kW]以上の需要場所の引込口
    4. 特別高圧架空電線路から供給を受ける需要場所の引込口
  3. 次の各号のいずれかに該当する場合は,上記bの規定によらないことができる。
    1. 上記 b. 各号に掲げる箇所に直接接続する電線が短い場合。
    2. 使用電圧が 60 000 [V] を超える特別高圧電路の場合において,同一の母線に常時接続されている架空電線路の数が回線数が 7 以下の場合にあっては 5 以上,回線数が 8 以上の場合にあっては 4 以上のとき,この場合において,同一支持物に 2 回線以上の架空電線が施設されているときは架空電線路の数は,1 として計算する。

問5 油入変圧器を構成する絶縁紙の劣化診断

  1. 絶縁紙の劣化は,油入変圧器の運転寿命を決める主な要因の一つである。
  2. 絶縁紙は多数のセルロース分子が重合してできた巨大分子を主成分としており,その巨大分子の大きさは平均重合度で表されている。これは絶縁紙の材料特性である引張強さと高い相関性を有していること及び温度,水分,酸素の影響により,重合の鎖が時間の経過と共に切断され,平均重合度が低下し,同時に,引張強さも低下することが知られている。引張強さが過度に低下すると,絶縁紙は変圧器外部での短絡事故時などに発生する電磁機械力に耐えられずに,破損につながることがある。更に,絶縁紙が分解する過程で生成し絶縁油に溶出する物質のうち,(CO2 + CO) 量やフルフラール量などは平均重合度と相関性が高いことも知られており,劣化診断はこれらの物質に着目して行われる。
  3. 運転中の変圧器から絶縁紙を直接採取することは困難なため,絶縁油中の (CO2 + CO) 量やフルフラール量を測定し劣化診断する方法が実用化されているが,前者は気中放散があるので開放型変圧器に適用することは難しい。
  4. 停止中の変圧器から,絶縁に影響の無い部分のプレスボードを採取し,絶縁紙の平均重合度を推定し劣化診断する方法も採用されている。

変圧器に使用されている材料の中で,経年劣化が見られるものは絶縁油および絶縁紙やブレスボードなどの紙材料で,これらが変圧器経年劣化の要因として考えられ,油入変圧器の運転寿命を決める主な要因となる。

問6 電力系統の信頼度

電力供給に関する品質を表す基本的項目としては,一般に電圧変動,周波数変動,停電の三つが用いられるが,この中で社会的影響が最も大きいのが停電,すなわち供給支障であり,この度合を表す尺度は一般的に供給信頼度と呼ばれている。この供給信頼度には,需要家側からみた表し方と供給者側からみた表し方がある。

需要家側からみた供給信頼度の一般的な表し方としては,需要家一軒当たりの年間平均の停電回数と停電時間が用いられる。また,供給者側からみた供給信頼度の一般的な表し方としては,電気の供給力,最大需要電力等を確定論的に取り扱った供給予備力がある。電源の供給力のうち,水力発電については出水変動を統計的に処理した供給力が採用されている。

供給予備力は電力輸送設備の事故等による電源の停止は考慮していない。このため,電力輸送設備の計画及び運用面に当たっては,一般に送電線の 1 回線事故,変電所の 1 バンク事故等の単一事故を規定しても,供給支障事故や電源脱落事故に至らないことを基準としている。また,重要系統については多重事故等により厳しい事故条件を想定して,この場合に供給支障や発電支障の大きさ [kW] や継続時間が許容されるレベルを超えることがないように電力輸送設備の構成を行っている。

inserted by FC2 system