平成23年度 第1種 法規

2022年8月13日更新

問1 送電線路における電線路の変更の工事

  1. 送電線路における電線路の変更の工事のうち,経済産業大臣に対する工事計画の届出が必要なものは,電圧 170 [kV] 未満の電線路の電圧を 170 [kV] 以上とする改造工事の他,電圧 170 [kV] 以上の電線路の以下に示す変更の工事である。
    1. 1 [km] 以上の延長
    2. 電圧の変更(昇圧に限る。)
    3. 電気方式又は回線数の変更
    4. 電線の種類の変更
    5. 電線の 1 回線当たりの条数の変更(電圧 300 [kV] 以上の電線路に係るものに限る。)
    6. 20 [%] 以上の電線の太さの変更(電圧 300 [kV] 以上の電線路に係るものに限る。)
    7. 支持物(上部及び基礎)の種類又は基数の変更(電圧 300 [kV] 以上の電線路に係るものに限る。)
    8. 地中電線路の布設方式の変更
    9. 左右 50 [m] 以上の位置変更
  2. 上記 a. の届出をした者は,経済産業大臣が期間短縮を認める場合を除き,その届出が受理された日から 30 日を経過した後でなければ,その届出に係る工事を開始してはならないとともに,その使用開始前に当該電線路について自主検査を行い,その結果を記録し,これを保存しなければならない。

問2 発電設備等を特別高圧電線路へ連系する場合の事故防止

一般電気事業者及び卸電気事業者以外の者であって,特別高圧で受電するもの(スポットネットワーク受電方式で受電する者を除く。)が,一般電気事業者が運用する電力系統に発電設備等(常用電源の停電時のみに使用する非常用予備電源を除く。)を連系する場合は,再閉路時の事故防止のために,発電設備等を連系する変電所の引出口に線路無電圧確認装置を施設すること。ただし,逆潮流がない場合であって,系統との連系に係る保護継電器,計器用変流器,計器用変圧器,遮断器及び制御用電源配線が二系列化されており,これらが相互予備となっているときは,この限りでない。なお,ただし書き中の二系列目については,次の各号の一以上を用いて簡素化を図ることができる。

  1. 保護継電器の二系列目は,不足電力継電器のみとすることができる。
  2. 計器用変流器は,不足電力継電器と計器用変流器の末端に配置した場合,一系列目と二系列目を兼用できる。
  3. 計器用変圧器は,不足電圧継電器を計器用変圧器の末端に配置した場合,一系列目と二系列目を兼用できる。

問3 特別高圧電線路の臨時電線路の施設

  1. 特別高圧架空電線路の支持物として使用する鉄塔は,使用期間が 6 月以内のものに限り,支線を用いてその強度を分担させることができる。
  2. 上記 a. の場合,その支線として,日本工業規格 JIS G 3525 (2006) に規定するワイヤロープで,公称径が 10 [mm] 以上のものを使用することができる。
  3. 災害後の復旧に用する地上に施設する特別高圧電線路であって,その工事が完了した日から 2 月以内に限り使用する場合は,次の各号により施設することができる。
    1. 電線はケーブルであること。
    2. 電線を施設する場所には,取扱者以外の者が容易に立ち入らないようにさく,へい等を設け,かつ,人が見やすいように適当な間隔で危険である旨の表示をすること。
    3. 電線は,重量物の圧力又は著しい機械的衝撃を受けるおそれがないように施設すること。

問4 太陽光発電設備の系統連系

  1. 低圧配電線に連系された太陽光発電設備の出力が,低圧需要家の消費電力を上回ると,電力は系統側へ流れる。このため,低圧需要家の電圧が上昇し,電気事業法で定められた適正値(例えば,標準電圧 100 [V] に対しては 101 ± 6 [V] 以内)を逸脱するおそれがある場合には,太陽光発電設備の出力抑制や配電線の増強等が必要となる。また,太陽光発電設備が単独運転となった場合には,当該設備を解列することになっている。
  2. 太陽光発電の出力は,天候に大きく左右されるが,この出力変動が,電力系統の負荷変動に加わると,系統周波数がさらに変動することになる。わが国では,標準周波数からの偏差を ± 0.1 ~ 0.3 [Hz] 以内に維持するよう,数分から十数分の周期の変動に対しては,大容量貯水池式水力あるいは大容量火力等による負荷周波数制御を行っているが,太陽光発電設備が大量に系統連系されう場合には,こういった周波数調整力の確保が課題となってくる。

問5 我が国の電気工作物の概要及び電気保安の状況

  1. 平成 20 年度末における全電気事業者の発電設備の合計出力は,約 2.3 億 [kW] であり,平成 20 年度における総需要は約 1.0 兆 [kW·h] であった。
  2. 電気関係報告規則に規定する事故情報を取りまとめた電気保安統計によれば,平成 18 年度から 20 年度において,一般電気事業者では,毎年度約 9 300 ~ 11 000 件の供給支障事故が発生したが,その多くは高圧配電線路で発生した事故が原因となっている。また,この供給支障事故のうち,自家用電気工作物からの波及事故によるものは毎年度約 430 ~ 520 件であった。他方,電気事業者及び自家用電気工作物設置者から報告のあった感電死傷事故件数は毎年度 72~84 件であった。

問6 並列コンデンサにおける高調波対策

送配電系統にはさまざまな高調波発生源が存在しており,系統に並列コンデンサのみを使用すると,高調波発生源に対して電線路のリアクタンスと共振回路を形成することで,高調波電流を増大させることがある。このため電圧波形が悪化したり,並列コンデンサを焼損させるおそれもあることから,この対策としてコンデンサと直列にリアクトルを接続することにより,高調波に対する合成インピーダンスを誘導性にすることが採用されている。

需要設備等で発生する高調波のほとんどは奇数調波であるが,平行な三相系統においては,第 3n 調波(n = 1 , 3 , 5 , 7 , · · ·)は Δ 結線の変圧器巻線で短絡還流するため,電線路に流出しない。したがって,第 5 調波以上の高調波に対して合成インピーダンスを誘導性にすればよく,このための基本波に対する直列リアクトルのリアクタンスを計算すると,コンデンサのリアクタンスの 4 [%] を超える値にすればよい。(JIS C 4902-2 (2010) では 4 [%] から裕度をとり,少し大きな値を推奨している。)

なお,この直列リアクトルは,並列コンデンサ投入時の突入電流の抑制や,開放時の遮断器の再点弧の防止などの効果もあるため,高圧や特別高圧の進相用コンデンサに標準的に用いられている。

JIS C 4902-2 (2010) 「高圧及び特別高圧進相コンデンサ並びに附属機器 - 第 2 部:直列リアクトル」では,"定格容量は,コンデンサの定格容量の 6 % とする。"と記載されている。

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