平成24年度 第1種 法規

2021年12月27日更新

問1 「電気事業法」及び同法関係省令等の規定

  1. 電気事業法では,事業用電気工作物の保安を確保するため,事業用電気工作物設置者の自主保安に重点を置いており,主任技術者制度と保安規程にかかわる制度が,その中核となっている。
  2. 事業用電気工作物の工事,維持又は運用に従事する者は,主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。
  3. 電気主任技術者が監督できる範囲は省令上の規定があり,例えば火力発電所の場合,ボイラー・タービン主任技術者の監督範囲については除かれている。
  4. 自家用電気工作物を設置する者は,経済産業大臣の許可を受けて,主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。
  5. 電気事業法では,自家用電気工作物の設置者が電気主任技術者を選任することを原則としているが,保安管理業務を外部委託する制度がある。この場合,相手方の電気管理技術者又は電気保安法人の保安業務従事者は,電気主任技術者免状の交付を受けていることのほか,一定以上の実務に従事した期間が必要である。

問2 「電気工事士法」及び「電気工事業の業務の適正化に関する法律」

  1. 電気工事士法は,電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め,もって電気工事の欠陥による災害の防止に寄与することを目的とする。
  2. 電気工事士免状の種類は,第一種電気工事士免状及び第二種電気工事士免状とする。
  3. 電気工事士免状は,都道府県知事が交付する。
  4. 第一種電気工事士でなければ,電気事業法に定める自家用電気工作物(発電所,変電所,最大電力 500 キロワット以上の需要設備,送電線路及び保安通信設備を除く。以下同じ。)に係る電気工事(特殊電気工事を除く。)の作業(自家用電気工作物の保安上支障がないと認められる作業であって,経済産業省令で定めるものを除く。)に従事してはならない。
  5. 電気工事業の業務の適正化に関する法律は,電気工事業を営む者の登録等及びその業務の規制を行うことにより,その業務の適正な実施を確保し,もって一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安の確保に資することを目的とする。

問3 電力保安通信用電話設備の施設と電力保安通信線の施設

  1. 発電所,変電所,変電所に準ずる場所であって特別高圧の電気を変成するためのもの,発電制御所,変電制御所,開閉所,給電所及び技術員駐在所と電気設備の保安上,緊急連絡の必要がある気象台,測候所,消防署及び放射線監視計測施設等との間には,電力保安通信用電話設備を施設すること。
  2. 特別高圧架空電線路及びこう長 5 [km] 以上の高圧架空電線路には,架空電線路の適当な箇所で通話できるように携帯用又は移動用の電力保安通信用電話設備を施設すること。
  3. 架空電力保安通信線は次の 1. ,2. 又は 3. のいずれかにより施設すること。
    1. 通信線にケーブルを使用し,次により施設すること。
      • ケーブルをちょう架用線によりちょう架すること。
      • ちょう架用線は,金属線からなるより線であること。ただし,光ファイバケーブルをちょう架する場合は,この限りでない。
      • ちょう架用線は,一定の要件を満たすような弛度により施設すること。
    2. 通信線に,引張強さ 2.30 [kN] 以上のもの又は直径 2.6 [mm] 以上の硬銅線(ケーブルを除く。)を使用すること。
    3. 架空地線を利用して光ファイバケーブルを施設すること。
  4. 電力保安通信線に複合ケーブルを使用し道路に埋設して施設する場合は,次の 1. ,2. 又は 3. のいずれかによること。ただし,通信線を山地等であって人が容易に立ち入るおそれがない場所に施設する場合は,この限りでない。
    1. 複合ケーブルを使用した通信線を暗きょ内に施設すること。
    2. 複合ケーブルを使用した通信線の周囲に取扱者以外の者が立ち入らないように,さく,へい等を施設すること。
    3. 交通の確保その他公共の利益のためやむを得ない場合において,複合ケーブルを使用した通信線が道路を横断するときは,次のいずれかによること。
      • 車両その他の重量物の圧力に耐えるように施設すること。
      • 埋設深さを 1.2 [m] 以上として施設すること。

ちょう架(吊架)とは,電線などを上から吊り下げるようにして架けること

問4 供給予備力を考慮した発電機の出力配分

ある電力系統には,表に示す G1 から G6 の発電機があり,G1 は最大容量の出力で一定運転の制約がある発電機,G2 は最低運転出力から最大容量までの任意の出力で一定運転の制約がある発電機であり,その他の G3 から G6 は最低出力から最大容量までの範囲で調整運転が可能な発電機である。なお,G3 を揚水動力として運転するときは,発電の最大容量と等しい負荷電力で運転するものとする。

単位 : [MW]
発電機 種別 最大容量 最低運転出力
G1 出力一定運転 300
G2 出力一定運転 200 80
G3 揚水式発電 100 10
G4 調整運転 350 35
G5 調整運転 250 25
G6 調整運転 150 15

この電力系統に並列する発電機は,不意にいずれか 1 機が脱落したときでも,残りの運転中の発電機で出力を上げて,脱落前と同じ発電電力を保つことが必要である。したがって,運転中の発電機の総出力は,各発電機の最大容量の合計から調整マージン(上げ余力)を差し引いた出力しか出すことができない。この条件で,次の負荷状況における発電機の運転出力及び供給できる負荷電力は次のとおりである。

  1. 負荷が最大のとき,全発電機を運転し,G1 と G2 を最大出力一定とする場合,調整運転する G3 から G6 の合計出力は,上げ余力を確保して最大 (1) 500 [MW] であり,この系統が供給できる最大電力は (2) 1 000 [MW] である。
  2. 負荷が減少するのに合わせて,G3 を停止し,G1 は最大出力一定,G2 を最低出力とし,その他の発電機は上げ余力を確保しながら台数を調整して運転することとすれば,この系統が供給できる最大電力は (3) 780 [MW],最小電力は (4) 420 [MW] である。
  3. 負荷が最小となるとき,G3 を揚水運転して,G1 は最大出力一定,G2 を最低出力とし,その他の発電機は上げ余力を確保しながら最小限の台数で運転することとすれば,この系統が供給できる最小電力は (5) 305 [MW] である。ただし,G3 は発電に切り替えできないものとする。
(1) 100 + 250 + 150 = 500 [MW]
(2) 300 + 200 + (100 + 250 + 150) = 1 000 [MW]
(3) 300 + 80 + (250 + 150) = 780 [MW]
(4) 300 + 80 + (25 + 15) = 420 [MW]
(5) 300 + 80 - 100 + 25 = 305 [MW]

問5 支持物の倒壊防止

  1. 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は,当該支線に係るものを含む。)は,その支持物が支持する電線等による引張荷重,風速 40 m/秒 の風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される気象の変化,振動,衝撃その他の外部環境の影響を考慮し,倒壊のおそれがないよう,安全なものでなければならない。ただし,人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては,その施設場所を考慮して施設する場合は,風速 40 m/秒 の風圧荷重の 2 分の 1 の風圧荷重を考慮して施設することができる。
  2. 特別高圧架空電線路の支持物は,構造上安全なものとすること等により連鎖的に倒壊のおそれがないように施設しなければならない。
  3. 架空電線路の支持物の基礎の安全率は,鉄塔を使用する場合にあっては,電気設備技術基準の解釈において当該支持物が耐えることと規定された荷重が加わった状態において 2 以上(鉄塔における異常時想定荷重又は異常着雪時想定荷重については,1.33 以上)であること。
  4. 特別高圧架空電線路の支持物に,懸垂がいし装置を使用する鉄塔を連続して使用する部分は,10 基以下ごとに,異常時想定荷重の不平均張力を想定最大張力とした懸垂がいし装置を使用する鉄塔を 1 基施設すること。

問6 電力系統の安定度

電力系統に並列運転する同期発電機は,系統からうけるじょう乱に対して同期運転を維持するための安定条件が必要であり,これを電力系統の安定度と呼んでいる。安定度は,対象とする時間領域や,じょう乱の大きさにより下表の分類で区分されることが多い。

電力系統の安定度
定態安定度 電力系統の平衡運転状態にあって,ごく微小なじょう乱が加わったときに動揺が収まり元の状態に戻るか否かの安定度。
過渡安定度 電力系統に加わるじょう乱が比較的大きい場合で,じょう乱からの経過時間がごく短い領域の現象を対象とした安定度。
動態安定度 過渡安定度の領域に引き続く領域の現象を対称とし,励磁系や調速系などが重要な役割を持つ。
長時間動特性 動態安定度領域よりも電圧安定性や周波数変動といった長時間の領域の動特性を対象とする。

定態安定度の向上対策としては,系統に直列コンデンサを接続する方法があるが,直列コンデンサで補償された送電系統の共振周波数と,発電機の軸ねじり共振周波数とで低周波共振現象が発生する可能性があることからほとんど採用されていない。実際には,送電電圧の昇圧や,諸外国で採用されている HVDC 送電などが効果的である。

過渡安定度や動態安定度の向上対策としては,送電線事故時の遮断時間や再閉路時間を短縮して事故によるじょう乱の影響を少なくする方法や,発電機の慣性定数を大きくすることで不安定に至るまでの時間を延ばす方法なども効果がある。

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