平成26年度 第1種 法規

2021年12月27日更新

問1 「電気事業法」に基づく,工事計画及び土地等の使用に関する記述

  1. 事業用電気工作物の設置又は変更の工事であって,公共の安全の確保上特に重要なものとして主務省令で定めるものをしようとする者は,その工事の計画について主務大臣の認可を受けなければならない。ただし,事業用電気工作物が滅失し,若しくは損壊した場合又は災害その他非常の場合において,やむを得ない一時的な工事としてするときは,この限りでない。
  2. 電気事業者は,次に掲げる目的のため他人の土地又はこれに定着する建物その他の工作物(以下「土地等」という。)を利用することが必要であり,かつ,やむを得ないときは,その土地等の利用を著しく妨げない限度において,これを一時使用することができる。ただし,建物その他の工作物にあっては,電線路を支持するために利用する場合に限る。
    1. 電気事業の用に供する電線路に関する工事の施工のため必要な資材若しくは車両の置場,土石の捨場,作業場,架線のためのやぐら又は索道の設置
    2. 天災,事変その他の非常事態が発生した場合において,緊急に電気を供給するための電線路の設置
    3. 電気事業の用に供する電気工作物の設置のための測標の設置
  3. 自家用電気工作物を設置する者は,植物が電線路に障害を及ぼしている場合において,その障害を放置するときは,火災その他の災害を発生して公共の安全を阻害するおそれがあると認められるときは,経済産業大臣の許可を受けないで,その植物を伐採し,又は移植することができる。

問2 変電所等からの電磁誘導作用による人の健康影響の防止

  1. 変電所等は,通常の使用状態において,当該施設からの電磁誘導作用により人の健康に影響を及ぼすおそれがないよう,当該施設の付近において,人によって占められる空間に相当する空間の磁束密度の平均値が,商用周波数において 200 μT 以下になるように施設しなければならない。ただし,田畑,山林その他の人の往来が少ない場所において,人体に危害を及ぼすおそれがないように施設する場合は,この限りでない。
  2. 地上に施設する変電所等の周囲において空間の磁束密度を測定する場合は,変電所等の一般公衆が立ち入らないように施設したさく,へい等から水平方向に 0.2 m 離れた地点において,地表,路面又は床から 0.5 m ,1 m 及び 1.5 m の高さで測定し,3 点の平均値を測定値とする。
  3. 磁束密度の測定装置は,日本工業規格 JIS C 1910 (2004) に適合する 3 軸のものであること。

問3 架空電線等が他の電線等と接近若しくは交さする場合又は同一支持物に施設する場合の障害の防止

  1. 電線路の電線,電力保安通信線又は電車線等は,他の電線又は弱電流電線等と接近し,若しくは交さする場合又は同一支持物に施設する場合には,他の電線又は弱電流電線等を損傷するおそれがなく,かつ,接触,断線等によって生じる混触による感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。
  2. 特別高圧の架空電線と低圧又は高圧の架空電線又は電車線を同一支持物に施設する場合は,異常時の高電圧の侵入により低圧側又は高圧側の電気設備に障害を与えないよう,接地その他の適切な措置を講じなければならない。
  3. 使用電圧が 35 000 V を超え 100 000 V 未満の特別高圧架空電線と高圧架空電線とを同一の支持物に施設する場合,特別高圧架空電線路は第 2 種特別高圧保安工事により施設するとともに,特別高圧架空電線と高圧架空電線との離隔距離は,特別高圧架空電線がケーブルであって,高圧架空電線が高圧絶縁電線であるときは,1 m 以上とすることとしている。

第 1 種特別高圧保安工事は,使用電圧が 35 kV を超え 300 kV 未満(建造物と接近するときは 170 kV)の特別高圧架空電線が建造物,道路,弱電流電線その他の工作物と第 2 次接近状態に施設される場合に要求される保安工事である。

第 2 種特別高圧保安工事は,35 kV 以下の特別高圧架空電線が建造物その他の工作物と第 2 次接近状態に施設される場合,又は特別高圧架空電線が道路その他の工作物と交さする場合に要求される保安工事である。

第 3 種特別高圧保安工事は,特別高圧架空電線が建造物その他の工作物と第 1 次接近状態に施設される場合の保安工事である。

ここで,第 1 次接近状態は,接近する他の工作物に上方・側方において,水平距離で支持物の高さ以内に接近する状態を,第 2 次接近状態は接近する他の工作物に上方・側方において,水平距離で 3 m 未満に接近する状態を指している。

問4 エックス線発生装置の施設

エックス線発生装置とは,エックス線管,エックス線管用変圧器等の変圧器及びこれらの附属装置並びにエックス線管回路の配線をいい,次の各号により施設する。

  1. 変圧器及び特別高圧の電気で充電するその他の器具(エックス線管を除く。)は,人が容易に触れるおそれがないように,その周囲にさくを設け,又は箱に収める等適当な防護装置を設けること。ただし,取扱者以外の者が出入りできないように措置した場所に施設する場合は,この限りでない。
  2. エックス線管導線には,金属被覆を施したケーブルを使用し,エックス線管及びエックス線回路の配線と完全に接続すること。ただし,エックス線管を人体に 20 cm 居ないに接近して使用する以外の場所において,次により施設するときは,十分な可とう性を有する断面積 1.2 mm² の軟銅より線を使用することができる。
    1. エックス線管の移動等により電線にゆるみを生じることがないように巻取り車等適当な措置を設けること。
    2. エックス線管導線の露出する充電部分に 1 m 以内に接近する金属体には,D 種接地工事を施すこと。
  3. エックス線管を人体に 20 cm 以内に接近して使用する場合は,そのエックス線管に絶縁性被覆を施し,これを金属体で包むこと。
  4. エックス線発生装置の特別高圧電路は,その最大使用電圧の波高値の 1.05 倍の試験電圧をエックス線管の端子間に連続して 1 分間加えたとき,これに耐える性能を有すること。

問5 電力系統の中性点接地方式

  1. 中性点が接地されていない非接地方式は,対地静電容量を無視すると,一線地絡時の健全相対地電圧が√3 倍に上昇し,機器の絶縁を脅かしたり,地絡検出が確実でないなどの欠点がある。
  2. 一線地絡時の健全相対地電圧の上昇が 1.3 倍以下になる接地方式を有効接地というが,中性点を導体で接地する直接接地方式がこれに当たる。しかしながら,他の接地方式より過渡安定度が低下するため,地絡故障継続時間を極力短くする必要がある。
  3. 中性点を抵抗で接地する抵抗接地方式は,非接地方式と直接接地方式の中間に位置付けられ,我が国では,22 kV から 154 kV の電力系統に適用されている。
  4. 消弧リアクトル接地方式は,中性点をリアクトルで接地し,そのインダクタンスと送電線の対地静電容量を並列共振させることにより,零相インピーダンスを無限大にして,一線地絡時の故障点アークを自然消弧させるものである。実際には,地絡電流を誘導性にするため過補償にし,アーク消弧後の電圧回復を緩やかにしている。
  5. 電路の所用絶縁性能は,中性点接地方式により異なる。「電気設備技術基準の解釈」で規定している絶縁耐力試験電圧は,高圧の電路では,最大使用電圧の 1.5 倍であり,直接接地の発変電所の電路では,整流器に接続される以外は,最大使用電圧の 0.64 倍である。

問6 工場の負荷率向上

次の文章は,工場の負荷率向上に関する記述である。

ただし,省エネルギー率とは負荷の消費電力が仮に 50 kW から 45 kW に減少した場合は 10 % とする。また負荷率の上昇分とは,仮に負荷率が 60 % から 65 % に上昇した場合は 5 % とする。

図に示すような負荷曲線を有する,A,B 2群からなる負荷の 24 時間稼働工場がある。A 群の負荷において次の項目の省エネルギーを実施する。

  1. アモルファス変圧器などを導入することにより,ベース負荷部分で 5 % の省エネルギー率を達成。
  2. 発光素子に半導体を用いた LED に切り替えることにより,照明負荷の部分で 60 % の省エネルギー率を達成。
  3. 空調負荷部分は高効率ヒートポンプを導入し,COP(成績係数)を 2.0 から 4.0 に改善。

A 群負荷の空調負荷部分はヒートポンプの補機他の動力を無視して,COP のみの改善により消費電力は 400 kW となる。A 群負荷において上記に示された全ての省エネルギー機器の導入による日負荷率の上昇分は 4.1 % となる。

B 群負荷において,日負荷率を 5 % 上昇させるために蓄電池を設置する。充電時の効率を 80 % とし放電時の効率を 100 % とした場合,必要となる蓄電池の充電時の電力量は,1 300 kW·h となる。なお,充電,放電時間はそれぞれ 12 時間とし,蓄電池の入出力はそれぞれ一定とする。

A,B 群負荷において上記の対策を実施した後の,A,B 群を合計した工場全体の日負荷率は 80.9 % となる。

負荷曲線
負荷曲線

COP は,冷房能力を消費エネルギーで除したものである。冷房能力が変わらず,COP が 2.0 から 4.0 に改善することは,消費電力が 2.0/4.0 倍となることを意味する。つまり消費電力は,800 kW から 400 kW となる。

省エネルギー機器導入前の A 群負荷の日負荷率は,

(1 000 × 8 + 1 600 × 10 + 1 000 × 6) / 24 /1600 × 100 = 78.125 [%]

省エネルギー機器導入後の A 群負荷の日負荷率は,

(730 × 8 + 1 050 × 10 + 730 × 6) / 24 /1050 × 100 = 82.222 [%]

よって,日負荷率は 78.125 [%] から 82.222 [%] へ,約 4.1 % 上昇する。

A 群負荷の対策前後の負荷曲線
A 群負荷の対策前後の負荷曲線

蓄電池導入前の B 群負荷の日負荷率は,

(800 × 12 + 1600 × 12) / 24 /1600 × 100 = 75 [%]

B 群負荷において,日負荷率を 5 % 上昇させるために,必要となる蓄電池の充電時の電力量を X [kW·h] とすると,

{(800 + X/12) × 12 + (1600 - 0.8 × X/12) × 12} / 24 / (1600 - 0.8 × X/12) × 100 = 75 + 5 [%]
X = 1297.29 → 1 300 [kW·h]

対策後の A 群負荷と B 群負荷を合わせた負荷曲線は,下図となる。

対策後の負荷曲線
対策後の負荷曲線

対策後の日負荷率は,

(1 638 × 6 + 2 243 × 2 + 2 563 × 10 + 1 638 × 6) / 24 / 2563 × 100 = 80.914 → 80.9 [%]
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