平成28年度 第1種 法規

2021年12月27日更新

問1 「電気事業法」及び「電気事業法施行規則」に基づく用語の定義

  1. 変電所」とは,構内以外の場所から伝送される電気を変成し,これを構内以外の場所に伝送するため,又は構内以外の場所から伝送される電圧 10 万 ボルト以上の電気を変成するために設置する変圧器その他の電気工作物の総合体をいう。
  2. 送電線路」とは,発電所相互間,変電所相互間又は発電所と変電所との間の電線路(専ら通信の用に供するものを除く。以下同じ。)及びこれに附属する開閉所その他の工作物をいう。
  3. 配電線路」とは,発電所,変電所若しくは送電線路と需要設備との間又は需要設備相互間の電線路及びこれに附属する開閉所その他の電気工作物をいう。
  4. 小出力発電設備」とは,600 ボルト以下の電気の発電用の電気工作物であって,経済産業省令で定めるものをいう。種類としては,太陽電池発電設備,風力発電設備,水力発電設備,内燃力を原動力とする火力発電設備,燃料電池発電設備などがある。

問2 架空電線路の径間の制限

  1. 高圧又は特別高圧の架空電線路の径間は,長径間工事以外の箇所においては,支持物の種類が B 種鉄筋コンクリート柱又は B 種鉄柱の場合は,250 m 以下,また,支持物の種類が鉄塔で使用電圧が 170 000 V 未満の場合は,600 m 以下であること。
  2. 長径間工事箇所の支持物に鉄筋コンクリート柱又は鉄柱を使用する場合は,次によること。
    1. A 種鉄筋コンクリート柱又は A 種鉄柱を使用する場合は,全架渉線につき各架渉線の想定最大張力の 1/3 に等しい不平均張力による水平力に耐える支線を,電線路に平行な方向の両側に設けること。
    2. B 種鉄筋コンクリート柱又は B 種鉄柱を使用する場合は,次のいずれかによること。
      • 耐張型の柱を使用すること。
      • 1. に適合する支線を施設すること。
    3. 土地の状況により,1. 又は 2. により難い場合は,長径間工事箇所から 1 径間又は 2 径間離れた場所に施設する支持物が,それぞれ 1. 又は 2. に適合するものであること。

問3 地絡遮断装置の施設

金属製外箱を有する使用電圧 60 V を超える低圧の機械器具に接続する電路には,電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。

ただし,以下のいずれかに該当する場合はこの限りでない。

  1. 機械器具に簡易接触防護措置(金属製のものであって,防護措置を施す機械器具と電気的に接続するおそれがあるもので防護する方法を除く。)を施す場合
  2. 機械器具を次のいずれかの場所に施設する場合
    1. 発電所又は変電所,開閉所若しくはこれらに準ずる場所
    2. 乾燥した場所
    3. 機械器具の対地電圧が 150 V 以下の場合においては,水気の多い場所以外の場所
  3. 機械器具が,次のいずれかに該当するものである場合
    1. 電気用品安全法の適用を受ける 2 重絶縁構造のもの
    2. ゴム,合成樹脂その他の絶縁物で被覆したもの
    3. 誘導電動機の 2 次側電路に接続されるもの
    4. 試験用変圧器や電気炉など,大地から絶縁できないことがやむを得ないもの
  4. 機械器具に施された C 種接地工事又は D 種接地工事の接地抵抗値が 3 Ω 以下の場合
  5. 電路の系統電源側に絶縁変圧器(機械器具側の線間電圧が 300 V 以下のものに限る。)を施設するとともに,当該絶縁変圧器の機械器具側の電路を非接地とする場合
  6. 機械器具内に電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器を取り付け,かつ,電源引出部が損傷を受けるおそれがないように施設する場合
  7. 機械器具を太陽電池モジュールに接続する直流電路に施設し,かつ,当該電路が次に適合する場合
    1. 直流電路は,非接地であること。
    2. 直流電路に接続する逆変換装置の交流側に絶縁変圧器を施設すること。
    3. 直流電路の対地電圧は,450 V 以下であること。
  8. 電路が,管灯回路である場合

問4 再生可能エネルギーのうちバイオマス発電

バイオマスは,再生可能な,生物由来の有機性資源(化石資源を除く。)であるから,燃焼時は二酸化炭素を発生する。その排出量は,植物起源のバイオマスの場合,植物が成長過程で大気中から吸収した二酸化炭素の量に等しい。このため,植物起源のバイオマスを利用した発電では,環境中の炭素循環からみれば,二酸化炭素の量は増加しないカーボンニュートラルという特性をもっている。

バイオマスは,様々な形態があるが,有機分は固体燃料,気体燃料又は液体燃料に変えることができる。このうち固体燃料として,林地残材などの木質燃料があり,直接燃焼させる発電方式として汽力発電が採られている。また,気体燃料として,固体燃料を熱分解したガスや家畜糞尿を発酵させたメタンガスなどが,液体燃料として,穀物を発酵させたエタノールなどがある。

バイオマス発電は,太陽光発電や風力発電と違い,気象などの自然状況に左右されることが少ない。また,ガスホルダーを有しているバイオマス発電所では出力調整が容易である。

バイオマス発電では誘導発電機が採用されている場合がある。「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」では,誘導発電機の並列時の瞬時電圧低下により系統の電圧が一定の限度を超えて逸脱するおそれのあるときは,誘導発電機に限流リアクトルを設置するなどの必要な対策を行うこととされている。

問5 避雷器等の施設

  1. 高圧及び特別高圧の電路中,次に掲げる箇所又はこれに近接する箇所には,避雷器を施設すること。
    1. 発電所又は変電所若しくはこれに準ずる場所の架空電線の引込口(需要場所の引込口を除く。)及び引出口
    2. 架空電線路に接続し,発電所又は変電所,開閉所若しくはこれらに準ずる場所以外の場所に施設する配電用変圧器の高圧側及び特別高圧側
    3. 高圧架空電線路から電気の供給を受ける受電電力が 500 kW 以上の需要場所の引込口
    4. 特別高圧架空電線路から電気の供給を受ける需要場所の引込口
  2. 次のいずれかに該当する場合は,上記 a. によらないことができる。
    1. 上記 a. に掲げる場所に直接接続する電線が短い場合
    2. 使用電圧が 60 000 V を超える特別高圧電路において,同一の母線に常時接続されている架空電線路の数が,回線数が 7 以下の場合にあっては 5 以上,回線数が 8 以上の場合にあっては 4 以上のとき。これらの場合において,同一支持物に 2 回線以上の架空電線が施設されているときは,架空電線路の数は 1 として計算する。
  3. 高圧及び特別高圧の電路に施設する避雷器には,A 種接地工事を施すこと。ただし,高圧架空電線路に施設する避雷器(上記 a. により施設するものを除く。)の A 種接地工事を日本電気技術規格委員会規格 JESC E 2018 (2008)「高圧架空電線路に施設する避雷器の接地工事」の「2. 技術的規定」により施設する場合,接地抵抗値が 10 Ω 以下という規定によらないことができる。具体的には,避雷器を B 種接地工事が施された変圧器(高圧巻線と低圧巻線との間に金属製の混触防止板を有し,高圧電路と非接地の低圧電路とを結合する変圧器を除く。)と近接しない場所に施設し,接地工事の接地線が当該接地工事専用のものである場合は,接地抵抗値は 30 Ω 以下で良いとされるなど限定的に規定されている。

問6 配電系統における電力用コンデンサ

  1. 有効電力 P ,力率 $\cos\theta_1$ の負荷がある。この負荷の力率を,$\cos\theta_2$ に改善するために必要な並列コンデンサの容量は,コンデンサの設置前後で負荷の有効電力が変化しないとするならば,$P(\tan\theta_1 - \tan\theta_2)$ であり,このとき,負荷に接続している配電線から供給される皮相電力は,$\displaystyle P(\frac{1}{\cos\theta_1} - \frac{1}{\cos\theta_2})$ だけ減少する。
  2. 上記 a. の場合,コンデンサの設置により,配電線の電圧降下は,配電線の抵抗を $R$,リアクタンスを $X$,コンデンサ電流を $I_C$ とすると,配電線両端の電圧相差角が小さいならば,ほぼ $I_C X$ だけ減少する。
  3. 配電系統には高調波源が存在するため,コンデンサの電圧波形ひずみが拡大することがある。これは,コンデンサの設置点からみた配電系統のインダクタンスとコンデンサのキャパシタンスが共振の関係となるためであり,この対策として,コンデンサと直列にリアクトルを接続し,合成リアクタンスを高調波に対して誘導性となるようにする。この条件は,コンデンサの基本波リアクタンスに対するリアクトルの基本波リアクタンスの比を $\alpha$,高調波次数を $n$ とすると,$\displaystyle \alpha \gt \frac{1}{n^2}$ である。通常,この比は第 5 次高調波に対して誘導性となるようにすればよく,JIS では,6 % と規定されている。
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