令和元年度 第1種 法規

2019年8月31日作成,2021年12月27日更新

問1 電気事業法,電気用品安全法,電気工事士法及び電気工事事業の業務の適正化に関する法律の目的

  1. 電気事業法は,電気事業の運営を適正かつ合理的ならしめることによって,電気の使用者の利益を保護し,及び電気事業の健全な発達を図るとともに,電気工作物の工事,維持及び運用を規制することによって,公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ることを目的とする。
  2. 電気用品安全法は,電気用品の製造,販売等を規制するとともに,電気用品の安全性の確保につき民間事業者の自主的な活動を促進することにより,電気用品による危険及び障害の発生を防止することを目的とする。
  3. 電気工事士法は,電気工事の作業に従事する者の資格及び義務を定め,もって電気工事の欠陥による災害の発生の防止に寄与することを目的とする。
  4. 電気工事業の義務の適正化に関する法律は,電気工事業を営む者の登録等及びその業務の規制を行うことにより,その業務の適正な実施を確保し,もって一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安の確保に資することを目的とする。

問2 電気集じん装置等の施設

使用電圧が特別高圧の電気集じん装置,静電塗装装置,電気脱水装置,電気選別装置その他の電気集じん応用装置(特別高圧の電気で充電する部分が装置の外箱の外に出ないものを除く。以下「電気集じん応用装置」という。)及びこれに特別高圧の電気を供給するための電気設備は,次によること。

  1. 電気集じん応用装置に電気を供給するための変圧器の 1 次側電路には,当該変圧器に近い箇所であって,容易に開閉することができる箇所に開閉器を施設すること。
  2. 変圧器から整流器に至る電線及び整流器から電気集じん応用装置に至る電線は,次によること。ただし,取扱者以外の者が立ち入ることができないように措置した場所に施設する場合は,この限りでない。
    1. 電線は,ケーブルであること。
    2. ケーブルは,損傷を受けるおそれがある場所に施設する場合は,適当な防護措置を施すこと。
    3. ケーブルを収める防護装置の金属製部分及び防食ケーブル以外のケーブルの被覆に使用する金属体には,A 種接地工事を施すこと。ただし,接触防護措置(金属製のものであって,防護措置を施す設備と電気的に接続するおそれがあるもので防護する方法を除く。)を施す場合は,D 種接地工事によることができる。
  3. 残留電荷により人に危険を及ぼすおそれがある場合は,変圧器の 2 次側電路に残留電荷を放電するための装置を設けること。

問3 電力系統における電圧・無効電力制御

電力系統の電圧は,需要と供給力の変化に伴い絶えず変動する。電圧が変動すると,需要家の各種電気機器の正常な使用あるいは寿命などに影響を与えるため,電気事業法施行規則で,電気を供給する場所において,標準電圧 100 V の回路では 101 V ± 6 V,200 V の回路では 202 V ± 20 V をそれぞれ超えない値に維持すべきと定められている。

そのため電力供給側においては,系統各所の電圧を,一般的に標準電圧の ± 5 % 以内に保つよう,発電機の自動電圧調整装置や変圧器の負荷時タップ切換装置などを使用し電圧・無効電力制御が行われている。

例えば,発電所においては,同期発電機の励磁を強めて内部誘導起電力を高め,電力系統側の電圧より高くすることにより,電力系統側から同期発電機に進相電流が流れ,電力用コンデンサを投入したことと同等の制御が行われている。

変電所においては,下位の系統の電圧が適正になるよう,変圧器の二次側(負荷側)に目標とする電圧を定め,主要変圧器のタップを手動又は自動で切り換えて電圧調整を行っている。一般的には,重負荷である昼間には二次側の目標とする電圧を高く定めている。

その他,サイリスタの位相制御により,無効電力を連続的に,また高速に制御できる静止形無効電力補償装置を変電所などに設置し,系統電圧を一定範囲に維持している。

問4 水力供給力

  1. 水力発電所は,その発電方式により,流込式,調整池式,貯水池式及び揚水式に区分される。流込式発電所及び調整池式発電所の供給電力量は,平水年可能発電電力量と利用率の積から所内消費電力量を差し引いたものになる。また,ある地点又はある期間の可能発電電力量と平水年可能発電電力量の比は出水率と称されている。
  2. 水力発電所の出力は,取水量により変わるため,次のような分類がある。
    1. 常時出力流込式発電所にあっては,1 年を通じて 355 日以上発生できる出力とし,貯水池式発電所にあっては,原則として 1 年を通じて 365 日発生できる出力をいう。
    2. 常時せん頭(ピーク)出力:1 年を通じて 355 日以上,毎日ピーク負荷時の一定時間(原則として 4 時間以上)連続して発生できる出力をいう。

問5 保安上又は機能上必要な場合における電路の接地

  1. 電路の保護装置の確実な動作の確保,異常電圧の抑制又は対地電圧の低下を図るために必要な場合は,次に掲げる場所に接地を施すことができる。
    1. 電路の中性点(使用電圧が 300 V 以下の電路において中性点に接地を施し難いときは,電路の一端子)
    2. 特別高圧の直流電路
    3. 燃料電池の電路又はこれに接続する直流電路
  2. 変圧器の安定巻線若しくは遊休巻線又は電圧調整器の内蔵巻線を異常電圧から保護するために必要な場合は,その巻線に接地を施すことができる。この場合の接地工事は,A 種接地工事によること。
  3. 需要場所の引込口付近において,地中に埋設されている建物の鉄骨であって,大地との間の電気抵抗値が 3 Ω 以下の値を保っているものがある場合は,これを接地極に使用して,B 種接地工事を施した低圧電線路の中性線又は接地側電線に,接地工事を施すことができる。
  4. 電子機器に接続する使用電圧が 150 V 以下の電路,その他機能上必要な場所において,電路に接地を施すことにより,感電,火災その他の危険を生じることのない場合には,電路に接地を施すことができる。

問6 支持物の倒壊の防止

  1. 架空電線路又は架空電車線路の支持物の材料及び構造(支線を施設する場合は,当該支線に係るものを含む。)は,その支持物が支持する電線等による引張荷重,風速 40 m/s の風圧荷重及び当該設置場所において通常想定される気象の変化,振動,衝撃その他の外部環境の影響を考慮し,倒壊のおそれがないよう,安全なものでなければならない。ただし,人家が多く連なっている場所に施設する架空電線路にあっては,その施設場所を考慮して施設する場合は,風速 40 m/s の風圧荷重の 2 分の 1 の風圧荷重を考慮して施設することができる。
  2. 特別高圧架空電線路の支持物は,構造上安全なものにすること等により連鎖的に倒壊のおそれがないように施設しなければならない。
  3. 異常時想定荷重とは,架渉線の切断を考慮する場合の荷重であって,風圧が電線路に直角の方向に加わる場合と電線路に平行な方向に加わる場合とについて,それぞれ「電気設備技術基準の解釈」に規定された組み合わせの荷重を計算し,各部材について,その部材に大きい応力を生じさせる方の荷重である。
  4. 架空電線路の支持物として使用する,B 種鉄筋コンクリート柱,B 種鉄柱及び鉄塔は,架空電線路の使用電圧及び支持物の種類に応じ,下表に規定する荷重に耐える強度を有するものであること。
    使用電圧の区分 種類 荷重
    低圧 全て 風圧荷重
    高圧 全て 常時想定荷重
    特別高圧 鉄筋コンクリート柱又は鉄柱 常時想定荷重
    鉄塔 常時想定荷重の 1 倍及び異常時想定荷重の $\displaystyle \frac{2}{3}$ 倍(腕金類については 1 倍)の荷重
  5. 臨時電線路の施設においては,架空電線路の支持物として使用する鉄塔であって,使用期間が 6 月以内のものは,支線を用いてその強度を分担させることができる。
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