令和2年度 第1種 法規

2020年9月22日作成,2022年7月30日更新

  1. 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
  2. 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
  3. 問題は,令和2年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。

問1 事業用電気工作物の設置工事に係る,設置者による自己確認

次の文章は,電気事業法及び電気事業法施行規則に基づく,事業用電気工作物の設置工事に係る,設置者による自己確認に関する記述である。

a) 事業用電気工作物であって公共の安全の確保上重要なものとして主務省令で定めるものを設置する者は,その使用を開始しようとするときは,当該事業用電気工作物が主務省令で定める技術基準に適合することについて,主務省令で定めるところにより,自ら確認しなければならない。

b) この自己確認において,事業用電気工作物の工事計画の認可又は届出の対象設備は,自己確認の対象外である。

c) 自己確認の対象となっている事業用電気工作物は,次のものである。

  1. 法令に定める要件に適合する燃料電池発電所であって,出力 500 kW 以上 2 000 kW 未満のもの
  2. 太陽電池発電所であって,出力 500 kW 以上 2 000 kW 未満のもの
  3. 出力 20 kW 未満の発電所であって,次に掲げるもの以外のもの
    • 燃料電池発電所
    • 火力発電所
    • 水力発電所

d) 自己確認の結果については,主務大臣に使用の開始前に届け出なければならない。

問2 遠隔断続監視制御方式の変電所の建設運用計画

次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,使用電圧が 154 kV の変圧器を施設する遠隔断続監視制御方式の変電所の建設運用計画に関する記述である。

当該変電所においては,技術員は常時監視せず,変電所から約 3 km 離れた変電制御所で監視制御する。ただし,技術員は変電制御所には常時駐在せず,変電制御所から 300 m 以内にある技術員駐在所に常時駐在する。したがって,変電所の監視及び機器の操作は,技術員が技術員駐在所から断続的に変電制御所へ出向いて行う。また,次に掲げる場合などに変電制御所及び技術員駐在所へ警報する装置を施設する。

a) 容量 3 000 kV·A を超える特別高圧用変圧器にあっては,その温度が著しく上昇した場合

b) 他冷式(変圧器の巻線及び鉄心を直接冷却するため封入した冷媒を強制循環させる冷却方式をいう。)の特別高圧用変圧器にあっては,その冷却装置が故障した場合

c) ガス絶縁機器(圧力の低下により絶縁破壊等を生じるおそれがないものを除く。)の絶縁ガスの圧力が著しく低下した場合

変電所の監視制御方式の種類については,常時監視制御方式,遠隔常時監視制御方式,遠隔断続監視制御方式,断続監視制御方式及び簡易監視制御方式の 5 種類に分類している。

問3 電線の混触防止と異常電圧による架空電線等への障害の防止

次の文章は,「電気設備技術基準」及び「電気設備技術基準の解釈」に基づく,電線の混触防止と異常電圧による架空電線等への障害の防止に関する記述である。

a) 電線路の電線,電力保安通信線又は電車線等は,他の電線又は弱電流電線等と接近し,若しくは交さする場合又は同一支持物に施設する場合には,他の電線又は弱電流電線等を損傷するおそれがなく,かつ,接触,断線等によって生じる混触による感電又は火災のおそれがないように施設しなければならない。

b) 特別高圧の架空電線と低圧又は高圧の架空電線又は電車線を同一支持物に施設する場合は,異常時の高電圧の侵入により低圧側又は高圧側の電気設備に障害を与えないよう,接地その他の適切な措置を講じなければならない。

c) 使用電圧が 35 000 V を超え 100 000 V 未満の特別高圧架空電線と高圧架空電線とを同一の支持物に施設する場合,特別高圧架空電線路は第 2 種特別高圧保安工事により施設するとともに,特別高圧架空電線と高圧架空電線との離隔距離は,特別高圧架空電線がケーブル以外の場合,2 m 以上であること。

問4 変電所の保守の動向

次の文章は,変電所の保守の動向に関する記述である。

変電所の保守の目的は,変電所の電気工作物が常に法令で定める技術基準に適合するように,その性能を維持し,事故の未然防止を図ることである。そのため,変電所の設置者は,機器の構造や性能を熟知し,巡視・点検などの実施により,機器の性能維持及び回復を図り,不良箇所の早期発見に努めている。

機器の保守は,かつて主に,事故が発生した場合に対応するという事後保全の考え方がとられてきたが,現在は,一定期間ごとに巡視・点検,部品交換,補修などを実施し,突発事故を防ぐ保守・点検(Time Based Maintenance : TBM)が取り入れられ,機器の信頼性維持に寄与してきている。

さらに最近の動向として,

a) 設備量の増加に対し,限られた保守要員で設備保全をするため,保守業務の効率化や省力化が図られ,また,高信頼度で長寿命の機器が採用される傾向にある。

b) 品質管理の向上,技術革新などに伴う設備の高信頼度化及び保守技術の進歩により,事故や故障が減少し,また寿命が長くなっているため,機器の信頼度に即した点検周期の採用,余寿命の評価方法の開発が進められている。

c) 機器の密閉化やブラックボックス化に対応し,センサー技術の進展なども取り入れ,故障個所を早期に発見して除去し,さらに設備の劣化度を診断するための技術向上への取り組みが進められている。

これらにより,機器の状態や将来起こりうる事態を予測し,必要に応じてメンテナンスを実施する保守・点検(Condition Based Maintenance : CBM)が取り入れられるようになってきている。

問5 「電気設備技術基準」に基づく絶縁

次の文章は,「電気設備技術基準」に基づく絶縁に関する記述である。

a) 変成器内の巻線と当該変成器内の他の巻線との間の絶縁性能は,事故時に想定される異常電圧を考慮し,絶縁破壊による危険のおそれがないものでなければならない。

b) 地中電線(地中電線路の電線)には,感電のおそれがないよう,使用電圧に応じた絶縁性能を有するケーブルを使用しなければならない。

c) 電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は,開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに,使用電圧の区分に応じて規定される値以上でなければならない。例えば,使用電圧 300 V 以下の接地式電路において,対地電圧が 150 V を超える場合は,0.2 MΩ 以上でなければならない。また,使用電圧が 300 V を超える場合は,0.4 MΩ 以上でなければならない。

電気使用場所における使用電圧が低圧の電路の電線相互間及び電路と大地との間の絶縁抵抗は,開閉器又は過電流遮断器で区切ることのできる電路ごとに,次の表の左欄に掲げる電路の使用電圧の区分に応じ,それぞれ同表の右欄に掲げる値以上でなければならない。

表 低圧の電路の絶縁性能
電路の使用電圧の区分 絶縁抵抗値
300 V 以下 対地電圧(接地式電路においては電線と大地との間の電圧,非接地式電路においては電線間の電圧をいう。)が 150 V 以下の場合 0.1 MΩ
その他の場合 0.2 MΩ
300 Vを超えるもの 0.4 MΩ

問6 電気自動車等から電気を供給するための設備等の施設

次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,電気自動車等から電気を供給するための設備等の施設に関する記述である。

電気自動車等から供給設備を介して,一般用電気工作物に電気を供給する場合は,次により施設すること。

a) 電気自動車等の出力は,10 kW 未満であるとともに,低圧幹線の許容電流以下であること。

b) 電気自動車等と供給設備とを接続する電路(電気機械器具内の電路を除く。)の対地電圧は,150 V 以下であること。ただし,次により施設する場合はこの限りでない。

  1. 対地電圧が,直流 450 V 以下であること。
  2. 供給設備が,低圧配線と直接接続して施設すること。
  3. 直流電路が,非接地であること。
  4. 直流電路に接続する電力変換装置の交流側に絶縁変圧器を施設すること。
  5. 電気自動車等と供給設備とを接続する電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。
  6. 電気自動車等と供給設備とを接続する電路の電線が切断したときに電気供給を自動的に遮断する装置を施設すること。ただし,電路の電線が切断し,充電部分が露出するおそれのない場合はこの限りでない。

c) 供給用電線と電気自動車等との接続には,次に適合する専用の接続器を用いること。

  1. 電気自動車等と接続されている状態及び接続されていない状態において,充電部分が露出しないものであること。
  2. 屋側又は屋外に施設する場合には,電気自動車等と接続されている状態において,水の飛まつに対して保護されているものであること。

d) 供給設備の筐体等,接続器その他の器具に電線を接続する場合は,簡易接触防護措置を施した端子に電線をねじ止めその他の方法により,堅ろうに,かつ,電気的に完全に接続するとともに,接続点に張力が加わらないようにすること。

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