令和4年度 第1種 法規
注
- 問題文中に「電気設備技術基準」とあるのは,「電気設備に関する技術基準を定める省令」の略である。
- 問題文中に「電気設備技術基準の解釈」とあるのは,「電気設備の技術基準の解釈における第1章~第6章及び第8章」をいう。なお,「第7章 国際規格の取り入れ」の各規定について問う出題にあっては,問題文中にその旨を明示する。
- 問題は,令和2年4月1日現在,効力のある法令(電気設備の技術基準の解釈を含む。)に基づいて作成している。
目次
問1 電気工作物の保安の確保
次の文章は,「電気事業法」及び「電気事業法施行規則」に基づく,電気工作物の保安の確保に関する記述である。
a)
一般用電気工作物以外の電気工作物を事業用電気工作物という。事業用電気工作物を設置する者は,事業用電気工作物の工事,維持及び運用に関する保安を確保するため,保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定めなければならない。
b)
事業用電気工作物を設置する者及びその従業員は,保安規程を守らなければならない。
c)
一般送配電事業,送電事業又は一定の要件に該当する発電事業のように供する事業用電気工作物を設置する者は,保安規程において主任技術者の職務の範囲及びその内容並びに主任技術者が保安の監督を行う上で必要となる権限及び組織上の位置付けに関することを定めるものとする。
(1)
正解は(ハ)事業用電気工作物である。
(2)
正解は(カ)設置である。
(3)
正解は(ト)従業者である。
(4)
正解は(ヌ)監督である。
(5)
正解は(ホ)組織上の位置付けである。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電気事業法に定める保安規程」
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電気主任技術者の選任等」
問2 低圧幹線の施設
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,低圧幹線の施設に関する記述である。
a)
損傷を受けるおそれがない場所に施設すること。
b)
電線の許容電流は,低圧幹線の各部分ごとに,その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計値以上であること。ただし,当該低圧幹線に接続する負荷のうち,電動機又はこれに類する起動電流が大きい電気機械器具(以下「電動機等」という。)の定格電流の合計が,他の電気使用機械器具の定格電流の合計より大きい場合は,他の電気使用機械器具の定格電流の合計に次の値を加えた値以上であること。
- 電動機等の定格電流の合計が 50 A 以下の場合は,その定格電流の合計の 1.25 倍
- 電動機等の定格電流の合計が 50 A を超える場合は,その定格電流の合計の 1.1 倍
c)
b) における電流値は,需要率,力率等が明らかな場合には,これらによって適当に修正した値とすることができる。
(1)
正解は(イ)損傷である。
(2)
正解は(ヲ)許容電流である。
(3)
正解は(リ)起動電流である。
(4)
正解は(ロ)50 である。
(5)
正解は(ホ)需要率である。
問3 電力系統の中性点接地方式
a)
一線地絡時の健全相対地電圧の上昇が 1.3 倍以下になる接地方式を有効接地という。
b)
中性点が接地されていない非接地方式は,一線地絡時の健全相対地電圧が $\sqrt{3}$ 倍に上昇し,機器の絶縁を脅かしたり,保護リレーの事故検出が確実でないなどの欠点がある。
c)
中性点を直接大地に接続する直接接地方式は,地絡電流が大きいので保護リレーの動作が確実となる利点がある一方で,地絡電流による電磁誘導障害が通信線に与える影響は大きく,通信機器などに障害を及ぼすことがある。
d)
中性点に抵抗を接地する抵抗接地方式は,一線地絡電流を抑制するため,110 ~ 154 kV 系統では,高抵抗接地方式が採用されている。高抵抗接地方式は,直接接地方式に比べ一線地絡電流が小さいため,通信線に与える影響は少ないが,健全相の電圧上昇が高いので,絶縁レベルの低減を図ることができない。
e)
消弧リアクトル接地方式は,中性点をリアクトルで接地し,そのインダクタンスと送電線の対地静電容量を並列共振させることにより,一線地絡時の故障点アークを自然消弧させるものである。
(1)
正解は(ル)有効である。
(2)
正解は(ワ)$\sqrt{3}$ である。
(3)
正解は(二)電磁誘導である。
(4)
正解は(イ)絶縁である。
(5)
正解は(カ)並列である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電力系統の中性点接地の目的と方式」
問4 我が国の電力系統における周波数調整
電力系統の周波数は,電気の品質を表す代表的な要素の一つである。周波数を一定に保つことは,需要家側に悪影響を及ぼさないだけでなく,電力の供給側にとっても必要である。周波数の変動は,同期発電機の回転数の変化を意味するが,発電機の連続運転が可能な許容範囲があるため,系統周波数の大幅な低下により,一部の発電機が停止した場合,それによってさらに周波数が低下して他のたくさんの発電機が停止する周波数異常現象を起こし,大停電を起こすこともありうる。
同期発電機で機械的入力エネルギーが電気主力エネルギーを上回ると回転数は上昇し,周波数が上がる。その逆では周波数が下がる。機械的入力エネルギーを一定に保っていても,現実の系統の負荷は時々刻々変化するため,周波数が変動する。長周期変動分の負荷変動は,日負荷曲線からある程度予測できるため,経済負荷配分として発電機出力値をあらかじめ指令しておく。それよりも短周期の変動分については負荷周波数制御で対応する。負荷周波数制御は,時々刻々変化する需要と供給の差を周波数の変化としてとらえ,発電機出力を自動制御するものである。これらよりもさらに短周期の変動分については,ガバナフリー運転と負荷の自己制御性によって吸収する。ガバナフリー運転とは,発電機の調速機によって回転速度を一定に保つよう自動で応動させる運転をいう。また,負荷のうちかなりの部分を占める回転機負荷の場合,周波数が下がると消費電力が下がるが,この特性を負荷の自己制御性と呼んでいる。
(1)
正解は(ヌ)周波数異常現象である。
(2)
正解は(ヲ)経済負荷配分である。
(3)
正解は(ト)負荷周波数制御である。
(4)
正解は(リ)ガバナフリー運転である。
(5)
正解は(ホ)消費電力である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電力系統の周波数」
問5 地絡遮断装置の施設
「電気設備技術基準の解釈」に基づく,地絡遮断装置の施設に関する記述である。
金属製外箱を有する使用電圧が 60 V を超える低圧の機械器具を接続する電路には,電路に地絡を生じたときに自動的に電路を遮断する装置を施設すること。ただし,次のいずれかに該当する場合はこの限りでない。
a)
機械器具に簡易接触防護措置(金属製のものであって,防護措置を施す機械器具と電気的に接続するおそれがあるもので防護する方法を除く。)を施す場合
b)
機械器具を次のいずれかの場所に施設する場合
- 発電所又は変電所,開閉所若しくはこれらに準ずる場所
- 乾燥した場所
- 機械器具の対地電圧が 150 V 以下の場合においては,水気のある場所以外の場所
c)
機械器具が,次のいずれかに該当するものである場合
- 電気用品安全法の適用を受ける 2 重絶縁構造のもの
- ゴム,合成樹脂その他の絶縁物で被覆したもの
- 誘導電動機の 2 次側電路に接続されるもの
- 低圧接触電線,エックス線発生装置等電路の一部を大地から絶縁せずに電気を使用することがやむを得ないもの,又は電気浴器,電気炉等,大地から絶縁することが技術上困難なもの
d)
機械器具に施された C 種接地工事又は D 種接地工事の接地抵抗値が 3 Ω 以下の場合
e)
電路の系統電圧側に絶縁変圧器(機械器具側の線間電圧が 300 V 以下のものに限る。)を施設するとともに,当該絶縁変圧器の機械器具側の電路を非接地とする場合
f)
機械器具内に電気用品安全法の適用を受ける漏電遮断器を取り付け,かつ,電源引出部が損傷を受けるおそれがないように施設する場合
g)
機械器具を太陽電池モジュールに接続する直流電路に施設し,かつ,当該電路が次に適合する場合
- 直流電路は,非接地であること。
- 直流電路に接続する逆変換装置の交流側に絶縁変圧器を施設すること。
- 直流電路の対地電圧は,450 V 以下であること。
h)
電路が,管灯回路である場合
(1)
正解は(ロ)簡易接触である。
(2)
正解は(ネ)乾燥したである。
(3)
正解は(カ)150 である。
(4)
正解は(イ)2 重絶縁構造である。
(5)
正解は(ホ)誘導電動機である。
(6)
正解は(リ)非接地である。
(7)
正解は(ヨ)漏電遮断器である。
(8)
正解は(ツ)450 である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「地絡遮断装置の施設」
問6 特別高圧架空電線と他の工作物との接近又は交差
次の文章は,「電気設備技術基準の解釈」に基づく,特別高圧架空電線と他の工作物との接近又は交差に関する記述である。
a)
使用電圧が 35 000 V を超える特別高圧架空電線(以下,本問において「特別高圧架空電線」という。)が,建造物,道路(車両及び人の往来がまれであるものを除く。),横断歩道橋,鉄道,軌道,索道,架空弱電流電線路等,低圧又は高圧の架空電線路,低圧又は高圧の電車線路及び他の特別高圧架空電線路以外の工作物(以下,本問において「他の工作物」という。)と接近又は交差して施設される場合における,特別高圧架空電線と他の好悪作物との離隔距離は,次の表に規定する値以上であること。ただし,使用電圧が 170 000 V を超える場合は,別に定めるところによること。
特別高圧架空電線の使用電圧の区分 | 上部造営材の上方以外で,電線がケーブルである場合 | その他の場合 |
---|---|---|
35 000 V を超え 60 000 V 以下 | 1 m | 2 m |
60 000 V を超え 170 000 V 以下 | (1 + $c$) m | (2 + $c$) m |
b)
特別高圧架空電線が,他の工作物と第 1 次接近状態に施設される場合において,特別高圧架空電線路の電線の切断,支持物の倒壊等の際に,特別高圧架空電線が他の工作物に接触することにより人に危険を及ぼすおそれがあるときは,特別高圧架空電線路を第 3 種特別高圧保安工事により施設すること。
c)
特別高圧架空電線路が,他の工作物と第 2 次接近状態に施設される場合又は他の工作物の上に交差して施設される場合において,特別高圧架空電線路の電線の切断,支持物の倒壊等の際に,特別高圧架空電線が他の工作物に接触することにより人に危険を及ぼすおそれがあるときは,特別高圧架空電線路第 2 種特別高圧保安工事により施設すること。
d)
特別高圧架空電線が他の工作物の下方に接近して施設される場合は,特別高圧架空電線と他の工作物との水平離隔距離は 3 m 以上であること。ただし,使用電圧が 100 000 V 未満の特別高圧架空電線路の電線がケーブルの場合は,この限りでない。
(1)
正解は(ヨ)上部造営材である。
(2)
正解は(レ)電線がケーブルである。
(3)
正解は(ロ)人に危険である。
(4)
正解は(ト)第 3 種である。
(5)
正解は(ホ)上に交差である。
(6)
正解は(タ)第 2 種である。
(7)
正解は(イ)下方に接近である。
(8)
正解は(ワ)水平離隔距離である。