平成15年度 第2種 電力
目次
問1 汽力発電所の熱効率向上対策
a. 過熱蒸気の採用
過熱蒸気を採用することによりエンタルピーが増大し,熱効率が向上する。
b. 復水器真空度の向上
復水器の真空度が向上すると背圧が下がり,タービンの熱落差が大きくなって出力が増す。復水器の真空度を高めるためには,復水器の冷却水温度を低下させるか,あるいは冷却水循環流量を増加させる必要がある。
c. 再生サイクルの採用
蒸気の膨張過程の途中からその一部を抽出して給水の過熱に利用し,抽気の復水熱を給水に回収させる。抽気段数の増加とともに熱効率は高くなる。
d. 再熱サイクルの採用
高圧タービン内の蒸気の一部を取り出し,これをボイラで再加熱して過熱度を増し,タービンに返すことによって膨張後の蒸気中の湿り度を低下させ熱効率を向上させる。
e. 蒸気温度及び圧力の上昇
蒸気温度を高くすると熱効率が向上する。また,蒸気温度を高くすると同温度におけるエントロピーは減少し,有効な仕事に変わる熱量が増加して熱効率が向上する。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「汽力発電所の熱効率の維持向上対策」
問2 火力発電所における所内変圧器のインピーダンス選定
火力発電所の所内補機動力は所内変圧器から供給される。所内変圧器のインピーダンスの選定に際しては,次のことを配慮する必要がある。
- 補機電動機郡の始動時における所内母線の電圧降下を適切な値に制限する必要があり,これが上限値となる。
- 所内母線の短絡電流を遮断器の遮断電流以下に制限する必要があり,これが下限値となる。
- 変圧器の使用として指定又は補償されたインピーダンスには裕度があり,これを考慮して上限値及び下限値を満足するインピーダンスとする。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「火力発電所の主変圧器と所内変圧器」
問3 配電のスポットネットワーク方式(3 回線の場合)
スポットネットワーク方式は,同一変電所から 22 ~ 33 [kV] の 3 回線の配電線により常時並列に需要家に電力供給を行う方式であり,信頼度が高く,電圧降下,電力損失などが少ない。
需要家の変圧器(ネットワーク変圧器)の一次側は遮断器が省略され,二次側はネットワークプロテクタを経て共通の母線に接続される。この母線に接続されたいくつかの幹線によって負荷に電力供給が行われる。
この方式では,1 回線の配電線又はネットワーク変圧器が事故停止しても,設備容量を供給負荷の 1.5 倍で設計しておけば,健全な設備により無停電で供給を継続できる。
ネットワークプロテクタは遮断器,ヒューズ及び保護リレーから構成され,その自動再閉路及び開閉制御機能は,次のような特性を持っている。
a. 逆電力遮断特性
3 回線の配電線のうち 1 回線が停電したとき,健全な他回線から変圧器及び共通母線を介して回り込み電流が停止回線に逆流するのを防止するため遮断する。
b. 差電圧投入特性
上記 a. の動作によって遮断器が開放状態にあるとき,停止回線が復電されて当該変圧器の二次側が充電された場合,遮断器の極間電圧を検出し,変圧器側から負荷側に向かって電流の流れる条件にあるとき投入する。
c. 無電圧投入特性
配電線の全停時に共通母線が無充電状態にあるとき,配電線の 1 回線が復旧して当該遮断器の変圧器側が充電されると投入する。

参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「配電系統のスポットネットワーク方式」
問4 送電電圧と送電電力
準備中
問5 水車の吸出し管
吸出し管は,反動水車のランナ出口から放水面までの接続管であって,鋼板又はコンクリートで作られており,円すい形とエルボ形のものが多く用いられている。
吸出し管の目的は,ランナと放水面間の落差を有効利用するとともに,ランナから放出された水の持つ運動エネルギーを位置エネルギーとして回収し,排棄損失を少なくすることである。そのため,流水路を徐々に拡大して流速の減少を図っている。しかし,吸出し高さを過度に大きくするとキャビテーションが発生しやすくなる。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「水車のキャビテーションとその対策」
問6 原子力発電の特徴
原子力発電と火力発電を比較して,原子力発電の特徴の一つは,熱源である原子炉圧力容器の容器当たりの熱出力が大きいことで,火力発電ボイラの百倍近くになることがある。
しかし,燃料集合体の許容温度によって制限されるため,蒸気温度を火力発電のように高くはできない。このため,飽和又は飽和に近い蒸気しか得られず,蒸気条件が悪い。したがって,同一出力の火力発電所に比べてタービン,復水器などが著しく大きくなり,熱効率も低くなる。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「軽水形原子炉」
問7 高電圧の送電線に発生する放電現象
空気が絶縁破壊を起こす電位の傾きは,標準気象状態( 20 [°C,1013 [hPa] )では,波高値で約 30 [kV/cm] である。電線表面のごく近い電位の傾きがこの値に達したときコロナ放電が発生し,そのときの電圧をコロナ臨界電圧と呼ぶ。この放電が発生すると,コロナ損のために送電効率が低下する。また,送電線近傍におけるラジオ等に受信障害をもたらすだけでなく,可聴音であるコロナ騒音などの問題も発生する。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「送電線の振動」