平成16年度 第2種 電力

2022年1月10日更新

目次

  1. 落差変動が大きい水力発電所に適用される水車
  2. タービン発電機の不平衡負荷運転
  3. 保護リレー装置の誤作動,誤不動作時の影響
  4. 電力用変圧器に使用される鉄心材料
  5. 水素冷却発電機
  6. 原子炉の主要構成材
  7. 送配電線路に関する用語

問1 落差変動が大きい水力発電所に適用される水車

ダム式発電所や落差の低い発電所では,落差変動が水車の特性に大きな影響を与える。いま,回転速度及び水口開度を一定に保ち,落差変動による効率の変化はないと仮定すると,水車出力は落差の 3/2 乗に比例して増減するはずであるが,実際には落差の変化とともに効率も変化し,出力はこの影響を受ける。一般的には落差が低くなるときの方が,高くなるときよりも効率の低下は著しい

比較的落差が低く落差変動が大きい発電所には,カプラン水車の適用が一般的に有利である。カプラン水車では,落差変動に応じてランナベーン角度を適切に調整すれば効率の低下は少ない。また,カプラン水車と同様な操作機構を持つデリア(斜流)水車は,カプラン水車に比べて高落差まで適用が可能である。

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問2 タービン発電機の不平衡負荷運転

タービン発電機に接続される負荷や電気回路が三相非対称な状態で運転することを不平衡負荷運転という。このとき,電機子電流には逆相電流が含まれ,正相電流による回転磁界と逆方向の回転磁界を生じ,固定子の電機子巻線には奇数周波数,回転子の界磁巻線には偶数周波数の高調波が発生する。これによって電機子巻線の局部過熱や,回転子ではスロットのくさびと保持環に渦電流による過熱が発生する。そこで,回転子に制動巻線を設けたり,くさびに特殊耐熱材を用いる等の対策が行われている。

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問3 保護リレー装置の誤作動,誤不動作時の影響

保護リレー装置の不良は,動作信頼度の面から,誤動作と誤不動作とに分けて考える必要がある。

誤動作は,系統が健全であるにもかかわらず動作したり,保護範囲外の系統事故で動作するなど不要な遮断を起こすものである。

一方,誤不動作は,系統の事故時にこれを保護する保護リレー装置が不動作となるもので,後備保護遮断となって事故除去が遅れるとともに,隣接した電気所でも遮断が行われるため,供給支障が広範囲となり,場合によっては系統の安定性も失われる。

これらの誤動作や誤不動作の確率をシステム的に減少させようとする方策が多重化であり,同一又は類似の機能をもった装置を追加して動作信頼度の向上をねらうものである。

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問4 電力用変圧器に使用される鉄心材料

変圧器の鉄損はヒステリシス損と渦電流損とからなる。ヒステリシス損は交番磁界のもとで鉄心を磁化するとき,磁気ヒステリシスループを一巡するごとに必要とされるエネルギーが熱の形となって放出されるもので,磁気ヒステリシスループに囲まれた面積に比例し,鉄心を形成するけい素鋼板の厚さに無関係である。渦電流損は,磁束変化によって鉄心内に誘導起電力が生じ,これによって流れる渦電流によるジュール損であり,けい素鋼板のような薄板では厚さの 2 乗に比例する。変圧器の鉄心は,厚さ 0.3 ~ 0.35 [mm] 程度のけい素鋼板を互いに絶縁して積層しており,板面を貫く(貫層)方向に渦電流が流れるのを防止している。

電力用変圧器に一般的に用いられる方向性けい素鋼板は,結晶粒が圧延方向に配向しており,無方向性けい素鋼板に比べて鉄損が小さく透磁率が高いので,大容量変圧器の高性能化,小型化に寄与している。

アモルファス磁性材料は,原子配列が無秩序で結晶磁気異方性や結晶粒界がなく,抵抗率が高く保持力が小さい高透磁率材料である。このため,鉄損が小さい。

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問5 水素冷却発電機

大容量タービン発電機の冷却方式には,冷却媒体に水素ガスを用いる水素冷却が多く採用されている。

水素冷却発電機は,空気冷却発電機に対して次の特徴がある。

  1. 風損が減少することで,発電機効率が向上する。
  2. 水素は熱伝導率が大きいので,冷却効果が向上する。
  3. 水素は空気より絶縁物に対して不活性であり,コロナ発生電圧が高いために,絶縁物の劣化が少ない。

一方,水素と空気の混合ガスは引火,爆発の危険があるので,これを防ぐため水素純度を常に高く保つ必要があること,固定子枠を耐爆構造としなければならないこと。軸貫通部の水素漏れを防止するために軸受の内側に密封油制御装置を設ける必要があることなど,取り扱いも慎重にしなければならない。

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問6 原子炉の主要構成材

原子炉には核分裂によりエネルギーを発生する物質が必要であり,これが原子燃料と呼ばれ,発電用原子炉には主にウラン 235 の含有率を 2 ~ 4 [%] とした低濃縮ウランが使用される。

原子燃料の核分裂によって生じた高速中性子を熱中性子にするために使用するのが減速材であり,質量の小さい原子核を多く含む物質の方が中性子のエネルギー損失が大きく,減速材として有効である。

一方,核分裂により発生したエネルギーを取り出すために使用されるのが冷却材であり,比熱及び熱伝導度が大きく中性子の吸収が小さいことが要求される。発電用原子炉では,減速材としても冷却材としても性能が良好であり,高い安全性,信頼性,経済性が得られることから,軽水が広く使用されている。

また,原子炉を安全に運転するためには,中性子の発生と消滅のバランスを変化させて出力制御を行う必要があり,このために使用されるのが制御材である。

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問7 送配電線路に関する用語

  1. 漏れ電流-塩じん-シリコンコンパウンド
  2. スリートジャンプ-氷雪-オフセット
  3. 電圧上昇-進み無効電力-分路リアクトル
  4. コンデンサ焼損-高調波-直列リアクトル
  5. ラジオ雑音-コロナ-多導体

スリートジャンプ(sleet jump)

電線に付着した氷雪が脱落したときに生じる電線のはね上がり。スリートジャンプの対策としては,垂直配列 2 回線鉄塔の上中下腕金長の差を大きくするというオフセットを設ける設計手法が用いられる。

スリートジャンプ
スリートジャンプ

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