平成17年度 第2種 電力

2022年1月10日更新

目次

  1. 水路式発電所
  2. 火力発電におけるボイラの保護・保安装置
  3. 発変電所などに使用される高信頼度の直流電源
  4. 保護リレーの保護範囲
  5. 太陽光発電
  6. 架空送電線路
  7. 電力ケーブルの構造面からみた問題点

問1 水路式発電所

水路式発電所は河川の勾配を利用して落差を得る方法であり,その主な設備としては,取水ダム,沈砂池,導水路,ヘッドタンク,水圧管,水車・発電機,放水路及び放水口からなる。

取水ダムで取水した水は,まず,ヘッドタンクに入る。ダム式と異なり,取水中の土砂は取水口で完全に除くことができないため,ここで,水の流れを緩やかにして,導水路に入る前で土砂を十分に沈殿させる。

導水路には,主に開きょや無圧トンネルが用いられる。無圧トンネルの断面形状は一般的に馬蹄形が採用され,岩盤が堅固なところでは素掘りのままとする場合もあるが,多くはコンクリートなどで内面の巻立てを行う。

ヘッドタンクは,水圧管の手前に設けられ,水路末端の断面積を広げて容積を大きくしたものであり,最終的な土砂の沈殿や落葉などのごみの取り除きを行うほか,発電所負荷の急増時には水の補給を行うなどの役割がある。なお,負荷遮断等の負荷急減時に,水路から流入してくる水を河川に放出するための設備を余水吐けという。

参考文献

問2 火力発電におけるボイラの保護・保安装置

ボイラにおける機器損壊防止や安全確保の観点から,異常状態となったときには,ボイラを直ちに停止させる必要がある。このため,保護インタロックや保安装置等が設置されている。

燃料遮断装置( MFT インタロック)は,ボイラ運転中に,燃料,缶水循環,空気の各系統の異常や燃焼不安定,あるいは火炉圧異常などの異常状態を検知すると,直ちに燃料を遮断してボイラを停止させることで破損を防止する。

パージインタロックは,ボイラ点火時の事故を未然に防止する機能で,火炉に残っている未燃ガスを除去すると同時に,ボイラ各系統が正常であることを確認できなければ点火不可としている。

安全弁は,ボイラの異常状態や負荷の緊急遮断等によって,発生蒸気が最高使用圧力を超える前に自動的に蒸気を大気に放出し,内部圧力を低下させて機器の破損を防止するものである。

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問3 発変電所などに使用される高信頼度の直流電源

直流電源は,系統に事故が発生したときも含めて,開閉器や保護制御装置を動作させる電源であり,蓄電池が多く採用されている。

蓄電池としては,充・放電を繰り返すことができる鉛電池やアルカリ電池が使用されている。蓄電池の容量は,充電された状態から,ある一定の電流で放電されたとき,規定の放電終止電圧になるまで出し得る電気量をいう。蓄電池の容量を決めるときには,放電電流の大きさとそれに対応する放電時間を想定する必要がある。

蓄電池の容量などの決定に当たって考慮すべきこととして,以下のことが挙げられる。

  1. 停電のため蓄電池の充電が不可能になっても,想定した最長の停電時間の間,直流電源として負荷に供給できる十分な容量を持っていること。
  2. 放電終期に瞬間最大放電電流が流れた場合に制御ケーブルによる電圧降下を考えても,蓄電池端子電圧が十分であることを確認しておくこと。
  3. 容量が経年劣化で減少するが,この分として 20 [%] 程度余裕を見込むことが必要であること。

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問4 保護リレーの保護範囲

電力系統のどの箇所に事故が発生しても,その事故区間を明確にし,適切な遮断器により事故区間を系統から分離できるようにするためには,保護リレーの保護範囲を明確に決めておく必要がある。このため,保護範囲は互いに隣接する装置を接続する遮断器を挟んで相互に重複していることが原則である。

主保護は,異常事態に対して高速に事故区間だけを除去することを主目的とした保護であり,これが失敗したときに後備保護装置が作動することになる。その場所により遠方後備保護と自端後備保護に分けられるが,主保護の動作失敗を確認してから実行されるため,リレー間の時限の協調が必要となる。

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問5 太陽光発電

太陽光発電は,半導体界面に太陽光を当てたときに生じる光電効果を利用して電力を発生させる方式である。太陽光発電に用いられる太陽電池で最も多く使われているのは多結晶のシリコン系半導体で太陽電池全体の約 65 [%] を占めており,そのエネルギー変換効率はバルク状の太陽電池セルで 14 から 18 [%] 程度である。太陽電池を接続して必要な電圧が得られるように加工したものが太陽電池モジュールで,設置する場合の最小単位となる。

太陽光発電を配電系統と接続する場合,太陽電池で発電した電力は直流なのでインバータで交流に変換し,連系保護装置を通してから系統に接続する。この発電した電力が系統に送られることを逆潮流という。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「太陽光発電

問6 架空送電線路

架空送電線路は発電所で発生した電力を効率よく,安定に,しかも経済的に需要地域まで輸送する役割を担っている。そのため架空送電線路に使用する電線の電気的性能としては導電率が高いものが望ましく,機械的性能としては引張強さが大きいものが望ましい。

一般に引張強さは不純物の含有量が増加するにしたがって増大する傾向にあるが,導電率は逆に減少する。

架空送電用の電線として,鋼より線の周囲にアルミ線をより合わせた鋼心アルミより線が広く使われている。アルミ線の導電率は銅線の約 60 [%] のため,単位長さ当たりの抵抗値を同じにするには等価的に銅線の約 1.3 倍の直径が必要であるが,単位体積当たりの重量が約 3 分の 1 のため,それだけ太くなっても同等の銅線よりまだ軽く,しかも補強の鋼線による引張強さが大きいので,支持物径間を銅線の場合より長くとれる。

架空送電線路は電線のほか,支持物,がいし,架空地線などで構成されている。がいしは支持物と電線をつなぎ,同時に電線を大地から絶縁する役割をしている。架空地線は架空送電線を直撃雷から守る目的で設置されている。

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問7 電力ケーブルの構造面からみた問題点

電力ケーブルを構造面からみると,コンパクトな外形を実現するため,高い電界の下で長期間安定に使用できる絶縁体が必要である。このため,使用される電圧階級に応じ,各種のケーブルが開発され使用されている。また,電力ケーブルは地中の暗きょ等で使用されるので,架空送電線に比べて熱放散が悪く,電流容量の確保が重要な技術的課題となっている。このため,送電損失を少なくし,熱抵抗を減らす工夫が積極的になされている。大容量送電が必要な場合には強制冷却方式が採用される。また,負荷変動に伴って生じるケーブルの伸縮に対する配慮も重要である。

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