平成19年度 第2種 電力

2022年1月10日更新

目次

  1. コンバインドサイクル発電の熱サイクル
  2. 酸化亜鉛形避雷器の試験
  3. 架空送電線のアークホーン
  4. フリッカ
  5. 燃料電池
  6. 変圧器の保護に用いられる差動保護リレー方式
  7. 電力用 CV ケーブル

問1 コンバインドサイクル発電の熱サイクル

コンバインドサイクル発電は,ガスタービン発電の基本熱サイクルであるブレイトンサイクルと汽力発電の基本熱サイクルであるランキンサイクルを組み合わせることにより,プラント熱効率を飛躍的に高めた発電方式である。

ブレイトンサイクル

断熱圧縮,等圧加熱,断熱膨張,等圧冷却から構成される熱力学サイクルであり,ジュールサイクルとも呼ばれる。

ランキンサイクル

ボイラ(蒸気発生器)と蒸気タービン(蒸気機関)を主たる構成要素とする熱力学サイクルである。

参考文献

問2 酸化亜鉛形避雷器の試験

避雷器の試験には,一般的な構造検査や絶縁抵抗測定試験の他,代表的な次のような試験が挙げられる。

  1. 漏れ電流試験は,定格電圧の 90 [%] 及び連続使用電圧に相当する商用周波電圧を印加して測定する。この場合,全漏れ電流の他,抵抗分漏れ電流も測定する。
  2. 保護特性試験は,急しゅん雷インパルス( 1/2.5 [μs]),雷インパルス( 8/20 [μs])及び開閉インパルス( 60/150 [μs])の三種類の電流波形について,所定の電流値における制限電圧を測定する。
  3. 耐久性については,30 年間の使用期間中の連続運転電圧の課電,雷サージ(公称放電電流) 15 回,開閉サージ(遮断器の正常動作で発生するレベル) 50 回,短時間過電圧 50 回の四つの電気的ストレスを等価模擬した安定性評価試験を行う。
  4. 放圧試験は,避雷器の内部地絡をヒューズ発弧で模擬し,所定の放電電流を通電した場合,放圧装置が確実に動作し,爆発飛散しないことを確認する試験である。

参考文献

問3 架空送電線のアークホーン

架空送電線路では,腕金で電線を支持するために懸垂がいし連や長幹がいしを用いるが,一般に,このがいし連の両端にアークホーンが設置されている。アークホーンを設置する主な目的は,落雷事故などにより絶縁破壊が生じ,交流アーク放電が続いた場合に,放電路ががいしの表面を通らないようにすることである。この他にアークホーンを設置すると以下のような効果が得られる。

  1. 個々のがいしの電圧分担を均等化することができる。
  2. アークホーンの間隔を変えることによって送電線の絶縁を系統全体から見て適切な強度とする。また,コロナ放電の低減効果を併せて期待する場合には,シールドリングを設置することがある。

参考文献

問4 フリッカ

配電線にアーク炉や溶接機などのような変動負荷が接続されると,その負荷電流による電圧降下のために配電線の電圧が変動する。この電圧変動が頻繁に繰り返され,照明の明るさにちらつきを生じる現象をフリッカという。

電圧変動に対し最も敏感にちらつきを生じるのは白熱灯であり,フリッカは,そのちらつきをもって評価される。

日本において,現在,次式により算出される値による評価が推奨されている。

\[ \sqrt{\sum_{n=0}^{\infty} (a_n \Delta V_n)^2} \]

式の $\Delta V_n$ は $n$ 次変動周波数における,電圧の実効値である。また,$a_n$ は各変動周波数におけるちらつき視感度係数であり,その値が最大となる 10 [Hz] のときを 1.0 としたものとなっている。

なおフリッカは,ちらつき評価試験が 50 [%] の人にちらつきがあると認識される 0.45 [V] を限度値とする考え方が一般的である。

フリッカ防止の対策としては,電流変動を補償する方法があり,静止形無効電力補償装置(SVC)等が用いられている。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「フリッカ

問5 燃料電池

燃料電池は反応物(活物質)を外部から連続的に供給する化学電池であり,反応物としては水素と酸素が主として用いられる。燃料電池はその動作条件から低温形( 200 度程度以下)高温形( 500 度程度以上)に大別される。低温形( 200 度程度以下)の代表例としてはアルカリ形,固体高分子形,りん酸形があり,その主な特徴は燃料電池の中で起動時間の短さと取扱の容易さである。また,高温形( 500 度程度以上)の代表例としては溶融炭酸塩形,固体電解質形があり,その主な特徴は高い総合エネルギー効率と反応物に一酸化炭素が利用可能なことである。低温形( 200 度程度以下)のうち,電力用として用いられる設置形として,現在,リン酸形,固体高分子形が実用化されているが,燃料に都市ガス(天然ガス),下水処理場で発生する消化ガス等を用い,燃料改質装置で水素に変換して反応物とする。将来,水素が直接供給されるインフラが整えば燃料改質装置は不要となる。燃料電池の発電システムでは廃熱回収装置を用いることで,エネルギーの高効率化が図られている。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「燃料電池

問6 変圧器の保護に用いられる差動保護リレー方式

変圧器の保護に一般的に用いられる電気式リレー方式として差動リレー方式が挙げられる。差動リレー方式を適用する理由は,事故電流の小さい巻線間短絡を検出できることである。

変圧器の一次,二次の結線が Y-Δ 結線の場合,変圧器一次,二次の電流の位相が異なる。そのため,差動リレー方式を適用する際,内部のソフトウェアで補正しない場合には,変圧器一次側の CT 二次結線には Δ 接続,変圧器二次側の CT 二次結線には Y 接続を用いて電流位相の整合をとらなければならない。CT 二次結線を,変圧器一次側 Y 接続,二次側 Δ 接続とした場合でも電流位相を合わせることができるが,変圧器一次側の中性点が接地してあると,外部地絡事故が発生した場合,変圧器一次側の CT 二次回路にのみ零相電流が流れることで,リレーの誤作動につながる。

また,差動リレー方式のように複数の CT の差電流で事故を検出する場合,CT 間の特性差により誤差電流が発生することが考えられる。このようなことから,差動リレーの誤動作を防ぐために,リレーに入力された電流のスカラー和で抑制量を作り,リレーの感度を調整する比率差動リレーが一般に採用される。

参考文献

問7 電力用 CV ケーブル

電力用 CV ケーブルの充電電流が大きくなると,送電容量に影響を与えることから,設計に際して考慮が必要である。充電電流は単位長当たりのケーブル静電容量,送電電圧及び線路長に比例して大きくなる。ケーブル導体サイズが同じであれば,単位長当たりのケーブル静電容量は,絶縁体の誘電率が大きいほど,また,絶縁体厚さが小さいほど大きい。

CV ケーブルの誘電体損失も送電容量に影響を与える。これは,充電電流にいくらかの有効成分があるために発生する損失であり,送電電圧が同じ場合,誘電正接が大きいものほど発生量が大きい。

また,単心ケーブルを鉄管に入線すると鉄損が大きくなることから,送電容量が低下させることになるので注意が必要である。

参考文献

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