平成26年度 第2種 電力

2021年12月5日更新

目次

  1. 揚水発電所の総合効率
  2. ケーブルの故障点測定
  3. 長距離送電線と変圧器が直列に接続された送電系統の四端子定数
  4. 高電圧電力機器の絶縁材料
  5. 火力発電所で用いられる集じん装置
  6. 開閉過電圧
  7. 配電系統に施設される柱上開閉器

問1 揚水発電所の総合効率

上池,下池の水面標高差が 210 m ,発電時,揚水時の損失水頭がともに 10 m ,発電使用水量,揚水量ともに 50 m3/s ,水車効率,ポンプ効率がともに 88 % ,発電機効率,電動機効率がともに 98 % の同期発電電動機を設置する揚水発電所がある。

ここで,運転による水位変動は標高差に比べ小さく,無視できるものとし,重力加速度を 9.8 m/s2 とすれば,この発電所の発電時の発電機出力は (1) MW である。揚水運転時の全揚程は (2) m である。揚水発電所においては,発電と揚水のモードを変更するときは,(3) により,主回路を切替える。この発電所の揚水運転時の電動機入力は,(4) MW となり,したがって,この揚水発電所の総合効率は,(5) % となる。

問1 解答と解説

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(1) 発電時の発電機出力

正解は(リ)85である。

発電時の発電機出力は次式で求められる。

水力発電所の出力 [kW] = 重力加速度 [m/s2] × 発電使用水量 [m3/s] × 有効落差 [m] × 水車効率 × 発電機効率

上式に与えられた数値を代入して,発電時の発電機出力を求める。

水力発電所の出力 = 9.8 × 50 × (210 - 10) × 0.88 × 0.98 = 84 515 [kW] = 85 [MW]

(2)

正解は(ハ)220である。

(3)

正解は(ワ)相反転断路器である。

(4) 揚水運転時の電動機入力

正解は(ヲ)125である。

揚水運転時の電動機入力は次式で求められる。

揚水運転時の電動機入力 [kW] = 重力加速度 [m/s2] × 揚水量 [m3/s] × 有効落差 [m] ÷ ポンプ効率 ÷ 電動機効率

上式に与えられた数値を代入して,揚水運転時の電動機入力を求める。

揚水運転時の電動機入力 = 9.8 × 50 × (210 + 10) ÷ 0.88 ÷ 0.98 = 125 000 [kW] = 125 [MW]

(5) 揚水発電所の総合効率

正解は(ト)68である。

揚水発電所の総合効率は,発電時の発電機出力を揚水運転時の電動機入力で除して求められる。

揚水発電所の総合効率 = 発電時の発電機出力 ÷ 揚水運転時の電動機入力 × 100

上式に与えられた数値を代入して,揚水発電所の総合効率を求める。

揚水発電所の総合効率 = 85 [MW] ÷ 125 [MW] × 100 = 68 [%]

問2 ケーブルの故障点測定

ケーブルの故障点測定手法にはマーレーループ法,パルス法,静電容量法などがあるが,このうち通常断線故障のみに適用されるのは (1) である。一方,地絡故障に用いられる手法の一つに,一定時間おきにインパルス状の (2) パルスを送り出し,このパルスが故障点で反射して返ってくる性質を利用して,パルスが故障点までの間を往復する時間を測る方法がある。パルスがケーブルの中を伝わる速度を v [m/μs] ,パルスを送り出してから返ってくるまでの時間を t [μs] とすると,図の故障点までの距離 x [m] は (3) で求められる。ケーブルの回路定数は形状,寸法等で異なるが,例えば L = 0.3 mH/km ,C = 0.2 μF/km の場合,ケーブルが無損失と仮定して伝播速度を求めると,約 (4) である。ケーブル導体が故障点において外側遮へい導体と完全短絡して地絡故障が発生している場合には,単一パルスが故障点に到達すると,ケーブルのサージインピーダンスが故障点を除き全長にわたって一様ならば (5) 反射パルスが発生して送信端まで戻ってくる。

ケーブルの故障点測定
ケーブルの故障点測定

問2 解答と解説

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(1)

正解は(ル)静電容量法である。

(2)

正解は(リ)電圧である。

(3)

正解は(ヘ)$vt/2$ である。

(4)

正解は(ヨ)130 m/μs である。

ケーブルの回路定数を L [H/m] ,C [F/m] とおくと,伝播速度 v [m/s] は,次式で求められる。

\[ v = \frac{1}{\sqrt{LC}} \]

(5)

正解は(ロ)逆位相のである。

問3 長距離送電線と変圧器が直列に接続された送電系統の四端子定数

長距離送電線の四端子定数は (1) モデルから求められる。長距離送電線の (2) ZC ,(3) γ ,送電線路の長さを l とし,変圧器は変圧比を 1 : n ,励磁インピーダンスを Z0 ,漏れインピーダンスを Z1 とする。また,Es および IsEm 及び ImEr 及び Ir はそれぞれ端子 s , m , r の相電圧及び電流である。

Es = A1Em + B1Im
Is = C1Em + D1Im
Em = A2Er + B2Ir
Im = C2Er + D2Ir
Es = AEr + BIr
Is = CEr + DIr

長距離送電線の四端子定数のうち A1B1 は次式となる。

A1 = cosh γl
B1 = (4)

次に変圧器の四端子定数のうち B2D2 は次式となる。

B2 = Z1/n
D2 = (5)
長距離送電線と変圧器が直列に接続された送電系統
長距離送電線と変圧器が直列に接続された送電系統
(イ)$\displaystyle \frac{1}{n}(1+\frac{\dot{Z_0}}{\dot{Z_1}})$
(ハ)$-\dot{Z_\text{c}}\cosh{\dot{\gamma l}}$
(ニ)$\displaystyle n(1+\frac{\dot{Z_1}}{\dot{Z_0}})$
(チ)$\dot{Z_\text{c}}\sinh{\dot{\gamma l}}$
(リ)$\displaystyle n(1+\frac{\dot{Z_0}}{\dot{Z_1}})$
(ヌ)$\dot{Z_\text{c}}\cosh{\dot{\gamma l}}$

問3 解答と解説

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(1)

正解は(ロ)分布定数である。

(2)

正解は(ト)特性インピーダンスである。

(3)

正解は(ヘ)伝搬定数である。

(4)

正解は(チ)$\dot{Z_\text{c}}\sinh{\dot{\gamma l}}$ である。

(5)

正解は(ニ)$\displaystyle n(1+\frac{\dot{Z_1}}{\dot{Z_0}})$ である。

問4 高電圧電力機器の絶縁材料

高電圧電力機器の絶縁材料としては,空気,SF6ガスなどの気体,絶縁油などの液体,エポキシ樹脂,高分子固体,フィルムなどの固体及び真空などがあり,それぞれの絶縁耐力は大きく異なる。

交流に対する空気の絶縁耐力(波高値,大気圧)は,一般に (1) 程度である。GIS に用いられている SF6 ガス(大気圧)は,空気の約 (2) の絶縁耐力をもっている。SF6 ガスの絶縁耐力は電界依存性が高く,(3) が存在すると大幅に絶縁耐力が低下するため,製造・組み立て時の品質管理は重要である。

油入変圧器では,絶縁油と絶縁紙の複合絶縁となるが,電圧がほとんど油間隙にかかる。絶縁油(鉱油)と絶縁耐力(波高値)は (4) 程度であるが,気泡,水分,微粒子が存在すると絶縁耐力が低下するので,製造・組み立て時に品質管理をする必要がある。

CV ケーブルで用いられる高分子絶縁材料である架橋ポリエチレン(XLPE)の設計電界(波高値換算)は最近のものでは,500 kV/cm 程度である。他の機器と比較すると絶縁厚さが薄いので,製造時に,絶縁体中に (3) や (5) が存在し絶縁耐力が低下しないように,きめ細かい品質管理をする必要がある。

問4 解答と解説

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(1)

正解は(ホ)30 kV/cmである。

(2)

正解は(イ)3 倍である。

(3)

正解は(カ)金属異物である。

(4)

正解は(ル)200 kV/cmである。

(5)

正解は(ワ)ボイドである。

参考文献

問5 火力発電所で用いられる集じん装置

集じん装置には,(1) ,電気式,ろ過式,(2) がある。

(1) は単純な構造であるが電気式と比較して微粒子の捕集性能は劣る。ろ過式は圧力損失が大きく,(2) は多量の水を必要とすることなどから,近年の火力発電所では,一般的に電気式集じん装置を採用している。

電気式集じん装置では (3) を利用して含じんガス中の粒子に電荷を与え,(4) によって粒子を分離・捕集する。電気式集じん装置は粒径 (5) の微粒子まで捕集が可能である。

問5 解答と解説

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(1)

正解は(ホ)遠心式である。

(2)

正解は(ヘ)湿式である。

(3)

正解は(チ)コロナ放電である。

(4)

正解は(リ)クーロン力である。

(5)

正解は(ハ)0.1 μm 以下である。

参考文献

問6 開閉過電圧

開閉過電圧とは,遮断器や断路器などの開閉操作によって発生する過電圧をいう。送電線の絶縁に影響を与える代表的なものとして,遮断器による送電線投入時の過電圧と,遮断器による (1) 遮断時の過電圧がある。開閉過電圧の波形や波高値は,線路長,系統構成,電源容量,中性点の接地方式など多くの要因に影響されるが,その継続時間は百マイクロ秒程度から (2) 程度である。

遮断器を投入することは,投入前の遮断器の (3) 電圧と同じ大きさで,かつ逆位相の電圧を遮断器 (3) に急激に印加することと等価である。無負荷送電線を充電する場合,又は事故時に高速度再閉路を行う場合にはこの過渡現象によって大きな過電圧が生じる。この過電圧の大きさは,前述の回路条件のほかに,遮断器投入時の (4) によって大きく影響される。さらに,無負荷送電線の充電投入よりも高速度再閉路の方が (5) の影響によって大きくなり,単相投入時よりも三相投入時の方が他相からの誘導を受けるために大きくなる。

問6 解答と解説

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開閉過電圧

遮断器などの開閉操作などによって系統のある地点に発生する過電圧で,一般には波頭長が 20 ~ 5 000 μs のサージ性過電圧を開閉過電圧とよび,こう長が長い送電線を遮断器で投入する場合に最も過酷な過電圧が発生する。開閉過電圧解析では遮断器の投入条件や線路長などに対して将来系統を考慮した上で過酷条件となるよう設定し,多数回の投入シミュレーションを実施して過電圧レベルを決定する。(参考)電気学会技術報告 第1258号,2012年8月,非有効接地系統および UHV 系統の絶縁協調技術協同研究委員会編「非有効接地系統および UHV 系統の試験電圧の考え方-JEC-0102-2010技術解説-」

(1)

正解は(ワ)地絡電流である。

(2)

正解は(ロ)数ミリ秒である。

(3)

正解は(ヘ)極間である。

(4)

正解は(イ)位相速度である。

(5)

正解は(ニ)線路残留電荷である。

参考文献

  • 雷過電圧解析・開閉過電圧解析の概要と解析例「開閉サージ

問7 配電系統に施設される柱上開閉器

柱上開閉器は,主に配電線路の作業時の区分用又は故障時の (1) 用として使用される。柱上開閉器は操作ひもにより開閉操作する手動式と,(2) を組み合わせた自動式に区分される。

以前は油入形が主流だったが,昭和 51 年(1976 年)に「電気設備に関する技術基準を定める省令」において柱上開閉器への絶縁油の使用が禁止されたことから,現在は主に気中形と (3) とが使用されるようになった。最近では,(4) と高絶縁化を図るため SF6 ガスを使用したガス開閉器も使用されている。

柱上気中開閉器の消弧は,可動電極の移動によって (5) を固定電極から細げき消弧室に引き込み冷却したり,消弧ガスの吹き付け効果により消弧する自力細げき消弧方式が主流である。

問7 解答と解説

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(1)

正解は(カ)切り離しである。

(2)

正解は(チ)制御装置である。

(3)

正解は(ヲ)真空形である。

(4)

正解は(ヘ)コンパクト化である。

(5)

正解は(ヌ)アークである。

参考文献

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