平成28年度 第2種 電力

2021年12月4日更新

目次

合格基準は,90 点満点換算で 50 点以上,受験者は 3,779 人,合格者数は 2,267 人で,合格率は 60.0 % だった。

  1. 水力発電所の入口弁と型式と機能
  2. 火力発電所における復水器構造
  3. 電力用変圧器の運転時に発生する損失
  4. 配電系統のスポットネットワーク方式
  5. 電力貯蔵装置としての二次電池
  6. 架空送電線の再閉路
  7. 送電線の振動

問1 水力発電所の入口弁と型式と機能

入口弁は,(1) の入口に設けられ,水車の始動・停止に伴って開閉される止水弁で,主弁と (2) からなる。

水車始動時には,主弁の前後の水圧差を解消する目的で,まず (2) を開いて,主弁前後の水圧を平衡させ,その後,主弁を開いていく。中小水力のうち低落差のものにおいては,主弁操作力の向上から (2) を省略する場合もある。

入口弁の種類としては,スルース弁,ロータリ弁,ちょう形弁などがあるが,最近では,ちょう形弁に代わり,全開時の (3) の少ない複葉弁が使われている。ロータリ弁は (4) の水力発電所に適している。

最近では,落差が 150 m 程度以下で水路の短い発電所では,取水設備に非常用閉鎖装置を有する (5) を設置することで,入口弁を省略することも多い。

問1 解答と解説

解答と解説を表示

(1)

正解は(ロ)ケーシングである。

(2)

正解は(ル)バイパス弁である。

(3)

正解は(ト)圧力損失である。

(4)

正解は(ヘ)高落差である。

(5)

正解は(ヨ)制水門である。

参考文献

問2 火力発電所における復水器構造

大形プラントの復水器では,配置の効率化や,低圧抽気管の配管引回し軽減のため,復水器中間胴部に (1) を内蔵するのが一般的である。また,起動時や非常時に (2) をバイパスさせて蒸気の一部を復水器に回収することがある。この場合は復水器 (3) 保護のため減圧・減温装置を設ける。

復水器の性能は冷却管内の汚れ度合いに大きく左右されるので,プラント運転中は冷却水の水質によって (4) や除貝装置により貝などを取り除いたり,スポンジボールなどによる洗浄を実施したりすることによって冷却管内の洗浄度を高めている。水室は (5) とし,運転中でも検査・手入れができるようにしたものが多い。

問2 解答と解説

解答と解説を表示

(1)

正解は(ヨ)低圧給水加熱器である。

(2)

正解は(ル)タービンである。

(3)

正解は(ロ)冷却管である。

(4)

正解は(チ)逆洗である。

(5)

正解は(ニ)二分割式である。

参考文献

問3 電力用変圧器の運転時に発生する損失

変圧器の損失は無負荷損と負荷損からなる。この内,負荷損は一方の巻線を短絡した状態で他方の巻線へ定格周波数の電圧を加え,定格電流を流したときに生じる損失であるが,その値は巻線の抵抗損(電流の 2 乗 × 直流抵抗)よりも大きくなる。これは,漏れ磁束が巻線やタンクなどへ鎖交して渦電流が流れることによって (1) を生じるためである。この損失は (2) ほど大きくなるため,変圧器の設計に当たり配慮が必要である。

漏れ磁束によって巻線内に発生する損失は,漏れ磁束と (3) の巻線導体幅の 2 乗におおむね比例することから,これを低減するためには導体の細分化が有効である。導体を複数の絶縁素線に分割し,途中で素線の (4) を変える電線を転移電線といい,定格電流が大きい巻線などに適用されている。

また,漏れ磁束によってタンクなどで発生する損失は局部過熱の原因ともなる。タンクへ鎖交する漏れ磁束への対策として,けい素鋼板やアルミニウムなどのシールドを設置することが行われている。この内,アルミニウムなどの良導電性のシールドは,シールドに渦電流が流れタンクへ向かう漏れ磁束を (5) ことで損失・局部過熱を防止するものである。

問3 解答と解説

解答と解説を表示

(1)

正解は(ロ)漂遊負荷損である。

(2)

正解は(ヘ)高インピーダンス器である。

(3)

正解は(リ)直交する方向である。

(4)

正解は(ニ)相互位置である。

(5)

正解は(ト)打ち消すである。

参考文献

問4 配電系統のスポットネットワーク方式

スポットネットワーク方式は,同一変電所から 22 kV ~ 33 kV の 3 回線の配電線により常時並列で需要家に電力供給を行う方式であり,分岐線はいずれも (1) 分岐で引き込んでいる。この方式は,供給信頼度が高く,電圧降下,電力損失が少ないことが特徴として挙げられる。

需要家の変圧器(ネットワーク変圧器)の一次側は遮断器が省略され,二次側は (2) を経て共通の母線に接続される。この母線に接続された幾つかの幹線によって負荷に電力供給が行われる。

この方式では,1 回線の配電線又はネットワーク変圧器が事故停止しても,残りの変圧器の過負荷運転で最大需要電力を供給できるよう変圧器容量を選定しており,変圧器の過負荷耐量は通常,少なくとも定格容量の (3) 倍を見込んでおけば,年間数回の連続 8 時間程度の連続運転により,健全な設備から無停電で供給を継続することができる。

一般的に (2) は遮断器,ヒューズ及び保護リレーからなり,次の三つの特性をもっている。

  • (4) 遮断特性
  • (5) 投入特性
  • 過電圧投入特性(差電圧投入特性)

問4 解答と解説

解答と解説を表示

配電系統のスポットネットワーク方式を下図に示す。

配電系統のスポットネットワーク方式
図 配電系統のスポットネットワーク方式

(1)

正解は(ヲ)Tである。

(2)

正解は(ル)ネットワークプロテクタである。

(3)

正解は(ホ)1.3である。

(4)

正解は(イ)逆電力である。

(5)

正解は(ワ)無電圧である。

参考文献

問5 電力貯蔵装置としての二次電池

電力系統の負荷平準化のため,以前から揚水発電が用いられている。近年では負荷平準化だけでなく,電力品質の向上や自然エネルギー発電の変動吸収などを目的とした電力貯蔵装置として,二次電池が注目されている。

二次電池には,その酸化剤・還元剤や電極材料などの組合せで数多くの種類があり,代表的な二次電池としては,鉛電池,リチウムイオン電池,ニッケル水素電池,レドックスフロー電池,(1) 電池がある。

これらの装置を電力貯蔵装置として選定する際には,上記の設置目的に応じてその性能を表す指標を考慮する必要がある。その指標としては,まず,利用可能なエネルギー量があり,その単位は通常 (2) やアンペア時で表示される。次は入出力時のパワーであり,単位はキロワットである。ただし,電池ではこのパワーを示す量として,(3) が用いられることがある。(3) は,電池の定格容量の 1 時間で放電あるいは充電し終える電流値を基準としてその倍数で表し,これが大きいことは電池の単位容量当たりのパワーが大きいことを意味する。

また,電池への入力エネルギーを分母とし出力エネルギーを分子とした総合効率も重要であり,充放電効率とも言われる。この効率では,日間の需給調整に利用するような比較的長時間の待機状態を含む場合には,その間の損失も重要となる。この損失には,(4) による損失や,(1) 電池での 300 °C 程度の高温を保持するための損失などが含まれる。

また,電力の貯蔵放出過程や周囲環境などによって定まる劣化特性と,寿命も重要である。さらに,貯蔵されているエネルギーの量を表す (5) や残存容量と言われる量を,正確に把握することは,貯蔵装置の運用や制御に当たって重要である。なお,電池によってはこの量の把握が困難なものもあるので注意が必要である。

問5 解答と解説

解答と解説を表示

(1)

正解は(ヲ)ナトリウム硫黄である。

ナトリウム(Na)と硫黄(S)を使った蓄電池で,NAS 電池と略される。東京電力と日本ガイシが系統用蓄電池として,1984 年から開発し,2002 年に実用化した。NAS 電池は当初,夜間の電力を貯蔵し,昼間に放電することで,安価な夜間電力を有効活用し,一日の電力負荷のピークをカットする負荷平準を主な用途として開発された。鉛蓄電池に比べると,体積と重量が 3 分の 1 なので,限られた敷地で大容量の蓄電施設が実現できる。

(2)

正解は(チ)キロワット時である。

(3)

正解は(ト)C レートである。

C(Capacity)レートは,電池容量に対する放電電流値の相対的な比率。これにより,容量の異なる電池の特性を比較することができる。

定電流充放電の場合,電池の理論容量を 1 時間で完全充電(または放電)させる電流の大きさを 1 C と定義する。放電時の C レートは放電レート,充電時の C レートは充電レートである。

(4)

正解は(イ)自己放電である。

(5)

正解は(カ)SOCである。

SOC(State of charge)は,電気容量に対して,充電している電気量を比率で表したもの。満充電状態を 100 %,完全放電状態を 0 % と定義する。

参考文献

問6 架空送電線の再閉路

架空送電線では,雷による逆フラッシオーバやアーキングホーンを介した (1) 事故が多い。(1) 事故は長い時間放置しておけば,がいし損傷などの機器故障に至るが,保護リレーで速やかに事故区間を遮断すればがいしは損傷を受けないで再使用できることが多い。したがって,一旦事故電流を遮断すればアークイオンが消滅し絶縁は回復するため,再閉路の成功率が高い。

架空送電線では,再閉路を高速に行う場合が多い。この高速度再閉路は,電力系統の (2) に対して極めて重要な役割を担っており,消アークイオン時間などを考慮し,一般的に (3) 以下で再閉路する。

高速度再閉路方式のうち,(4) は,2 回線の両回線同時の各 1 線地絡事故においては,事故相だけを遮断後に再閉路を実施し,再閉路が成功する限り系統の連系が維持できる。また,多相再閉路方式は,両回線同時の多重事故に対しても両回線合計で (5) の連系が保たれていれば高速に再閉路しようとする方式である。

問6 解答と解説

解答と解説を表示

(1)

正解は(ワ)気中フラッシオーバである。

(2)

正解は(ト)過渡安定度向上である。

(3)

正解は(ヨ)1 秒である。

わが国の基幹系統では 3 サイクル程度で事故除去し,0.8 ~ 1.0 秒の再閉路が行われている。

(4)

正解は(ヌ)単相再閉路方式である。

(5)

正解は(ル)2 相以上である。

参考文献

問7 送電線の振動

比較的緩やかな一様な風が,電線と直角に当たると電線の背後に (1) ができて鉛直方向の周期的な力が電線に働き,これが (2) 固有振動数と一致すると微風振動が発生する。全振幅は数センチメートル以下と小さいが,電線が長い間繰り返し応力を受けて,電線を構成する素線が切れることがあり,さらに断線に至る可能性がある。微風振動は径間が長い場合や,直径が大きい割に重量の軽い電線の場合,具体的には (3) などの場合に発生しやすい。

電線に氷雪が付着して強風が当たると,付着した氷雪の (4) が原因となって揚力が発生し,自励振動を生じて電線が上下に大きく振動する。これがギャロッピングという。一方,電線の下面に水滴が付くと (5) がさかんに発生する。電線から帯電した水の粒子が射出するためその反作用で電線の振動を誘発する。これを (5) 振動といい無風の場合に発生しやすい。

問7 解答と解説

解答と解説を表示

(1)

正解は(ニ)カルマン渦である。

(2)

正解は(カ)電線の機械的である。

(3)

正解は(ロ)鋼心アルミより線である。

(4)

正解は(ル)非対称性である。

(5)

正解は(チ)コロナである。

参考文献

inserted by FC2 system