平成29年度 第2種 電力

2021年12月4日更新

目次

合格基準は,90 点満点換算で 54 点以上,受験者は 3,952 人,合格者数は 1,488 人で,合格率は 37.7 % だった。

  1. 水力発電所の発電機の耐熱クラスとその特性
  2. 火力発電所における硫黄酸化物対策
  3. 主要変圧器及び母線の電気的保護に用いられるリレー
  4. 配電系統と需要設備の電路の保護及び配電系統の故障区間分離方式
  5. コージェネレーション
  6. 単位法
  7. 電圧安定性と負荷の電圧特性

問1 水力発電所の発電機の耐熱クラスとその特性

近年の水力発電所の発電機には,定格で連続運転したときに許容できる最高温度として,耐熱クラス155((1) )の電気絶縁システムが採用されている。これにより,耐熱クラス130(B)と比べて最高温度が高くできるため,巻線の電流密度を (2) ことができ,(3) を小さくできる。また,直列巻回数を増やして出力係数を大きくすることにより鉄心寸法を小さくできる。

その結果,発電機の小形化・軽量化が可能となり,建屋の小形化と,天井クレーンの吊り上げ荷重の減少化が図れる。また,発電効率は,負荷損の増加により (4) の効率は低下するが,無負荷損の減少で (5) の効率は向上する。

問1 解答と解説

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電気機器の出力は実用上は熱による絶縁劣化によって決定される。JIS C 6147-1992により,電気機器の最高許容温度によって絶縁システムを下表のように区分している。

表 絶縁システムの区分
耐熱クラス 許容最高温度 [°C]
90 (Y)*2 90
105 (A) 105
120 (E) 120
130 (B) 130
155 (F) 155
180 (H) 180
200 200
220 220
250*1 250
*1 250 超は 25 とびで区分して呼称する。
*2 ( )内は従来慣用されてきた種別の表記法を示す。

(1)

正解は(チ)Fである。

(2)

正解は(ハ)上げるである。

(3)

正解は(ト)導体断面積である。

(4)

正解は(ヘ)全負荷時である。

(5)

正解は(ル)部分負荷時である。

参考文献

問2 火力発電所における硫黄酸化物対策

排煙脱硫装置は排ガス中に含まれる硫黄酸化物を除去する装置であり,発電用ボイラにおいては,(1) などアルカリ剤のスラリーを排ガス中に噴霧して,(2) を副生品として回収することができる (3) 法が一般的に用いられている。

(4) 塔で脱硫された排ガスは,水分を多く含み冷却されているため,煙道などを腐食させやすく,そのまま大気に放出されると,拡散能力が低く白煙も発生するため,(5) で再加熱してから煙突より放出される。

問2 解答と解説

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(1)

正解は(ル)石灰石である。

(2)

正解は(ヲ)石こうである。

(3)

正解は(ヌ)湿式である。

(4)

正解は(ト)吸収である。

(5)

正解は(ハ)ガス-ガスヒータである。

参考文献

問3 主要変圧器及び母線の電気的保護に用いられるリレー

主要変圧器の保護には (1) リレーが用いられる。(1) リレーは変圧器内部事故を検出するもので,(2) 事故などの事故電流が負荷電流よりも小さい事故でも検出することが可能である。なお,(3) による誤動作を防止するため,(3) に第二調波成分が多く含有することを利用した誤動作防止機能が吹かされている。

母線の保護には電流差動方式による母線保護リレーが用いられ,外部事故時に変流器が (4) しても誤動作しない高インピーダンス形差動方式による一括保護,又は一括保護と母線切替え時の変流器切替えが容易な (5) 形差動方式による分割保護の組み合わせが適用される。なお,近年のディジタルリレーでは,変流器 (4) 対策を施し一括保護にも (5) 形差動方式を用いる事が多くなっている。

問3 解答と解説

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(1)

正解は(ワ)比率差動である。

(2)

正解は(イ)巻線間短絡である。

(3)

正解は(カ)励磁突入電流である。

(4)

正解は(ヨ)磁気飽和である。

(5)

正解は(ニ)低インピーダンスである。

問4 配電系統と需要設備の電路の保護及び配電系統の故障区間分離方式

電路の保護には一般に (1) 保護,短絡保護,地絡保護がある。

(1) 保護の場合は,導体の (2) に達するまでに電流を遮断することが求められるが,あらゆる条件下で自動遮断することは困難なため,施設場所の危険度に応じて,適切な場所に過電流遮断器を設置する。

短絡保護の場合は,故障点から最も (3) の遮断器で故障点を速やかに切り離すことが基本である。

地絡保護は (4) が不十分であると,末端における故障でも直ちに広範囲の停電となることがある。

配電系統の場合,配電線を適当な区間に区分し,故障時に故障区間の電源側自動区分開閉器を開放して,故障区間以降を切り離す故障区間分離方式がとられている。この方式の制御方法には,自動区分開閉器の (4) による (5) 方式と,制御信号を使用した信号方式とがあるが,前者が一般的に使用されており,配電用変電所の再閉路,再々閉路等における自動開閉器の動作状況により故障区間と健全区間を自動的に切り分けている。

問4 解答と解説

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(1)

正解は(チ)過負荷である。

(2)

正解は(ト)許容温度である。

(3)

正解は(カ)近い電源側である。

(4)

正解は(ニ)時限協調である。

(5)

正解は(ホ)時限順送である。

参考文献

問5 コージェネレーション

コージェネレーションとは,ガス・石油などの燃料により原動機((1) ・ガスエンジン・ガスタービン等が多い)を駆動して発電機を回転させて発電を行うと同時に,原動機の (2) を回収して利用するシステムである。ホテルや病院など比較的熱需要の多い建物において電力需要と熱需要に見合った適切な容量を選定できれば,(3) パーセントの総合エネルギー効率が実現できる。しかし,実際にはコージェネレーションによる発電量や供給熱量が需要家側の消費量と一致しない場合が多いので,設備を導入すれば常に大きなエネルギーコスト低減効果と省エネルギー効果があげられるとは限らない。

なお,最近では燃料電池によるコージェネレーションシステムも多い。固体高分子形燃料電池は,作動温度がおよそ (4) であり,上述の各種原動機を駆動する方式と比べ可動部が少なく (5) である。また,発電時に二酸化炭素排出量が少ないという特徴を有している。

問5 解答と解説

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(1)

正解は(ル)ディーゼルエンジンである。

(2)

正解は(ワ)排熱である。

(3)

正解は(カ)75 ~ 85である。

(4)

正解は(ホ)80 °Cである。

(5)

正解は(リ)低騒音である。

参考文献

問6 単位法

電力系統では定格の異なる多くの機器や線路が接続されている。単位法では,これらの機器などの定数が統一的に記述されるので,取り扱いが容易となる。三相回路の場合には,線間電圧 VB [V] と三相容量 PB [V·A] を基準にとると,基準相電流 IB [A] と基準インピーダンス ZB [Ω] は次式となり,インピーダンス Z [Ω] の単位法での値 ZBpu [p.u.] は①式のように表される。

IB = (1) [A]
ZB = (2) [V]
ZBpu = Z/ZB [p.u.]・・・・・・・・・・①

多くの電力機器の単位法でのインピーダンスは,機器の定格電圧と定格容量を基準として与えられる。この基準でのインピーダンスは,発電機や変圧器では定格容量や定格電圧によらず,ほぼ一定値となるので,定数の入力間違いなどの確認に便利である。たとえば,タービン発電機では,直軸過渡リアクタンスはほぼ (3) p.u. の間になる。

また,変圧器で接続された系統では,2 次側のオーム値で表現されたインピーダンス Z2 [Ω] を 1 次側に換算したインピーダンス Z2(1) [Ω] にするには,変圧比(1次側 n1,2次側 n2)に応じた換算が②式のように必要である。

Z2(1) = (4) Z2[Ω]・・・・・・・・・・②

一方,単位法では,一般に基準電圧として定格電圧が選ばれるので,基準容量が同じであればインピーダンスの換算は必要ではない。ただし,異なった容量を基準とした単位法では,容量に応じた換算が必要であり,容量 PB [V·A] を基準とした単位法でのインピーダンス ZBpu [p.u.] は,容量 PR [V·A] を基準とした単位法でのインピーダンス インピーダンス ZRpu [p.u.] を用いて③式により求められる。

ZBpu = (5) ZRpu [p.u.]・・・・・・・・・・③
(イ)$\displaystyle \frac{{V_\text{B}}^2}{\sqrt{3}P_\text{B}}$
(ロ)$\displaystyle \frac{P_\text{B}}{V_\text{B}}$
(ハ)$\displaystyle \frac{P_\text{B}}{\sqrt{3}V_\text{B}}$
(ホ)$\displaystyle \frac{\sqrt{3}{V_\text{B}}^2}{P_\text{B}}$
(ヘ)$\displaystyle \frac{{V_\text{B}}^2}{P_\text{B}}$
(ト)$\displaystyle (\frac{P_\text{B}}{P_\text{R}})^2$
(チ)$\displaystyle \frac{\sqrt{3}P_\text{B}}{V_\text{B}}$
(リ)$\displaystyle \frac{P_\text{R}}{P_\text{B}}$
(ヌ)$\displaystyle (\frac{n_1}{n_2})^2$
(ル)$\displaystyle \frac{P_\text{B}}{P_\text{R}}$
(カ)$\displaystyle (\frac{n_2}{n_1})^2$
(ヨ)$\displaystyle \frac{n_2}{n_1}$

問6 解答と解説

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(1)

正解は(ハ)$\displaystyle \frac{P_\text{B}}{\sqrt{3}V_\text{B}}$である。

(2)

正解は(ヘ)$\displaystyle \frac{{V_\text{B}}^2}{P_\text{B}}$である。

(3)

正解は(ニ)0.2 ~ 0.4である。

(4)

正解は(ヌ)$\displaystyle (\frac{n_1}{n_2})^2$である。

(5)

正解は(ル)$\displaystyle \frac{P_\text{B}}{P_\text{R}}$である。

問7 電圧安定性と負荷の電圧特性

電圧安定性は負荷の様相に大きく依存する。電圧に対する負荷特性は,定電力特性,定電流特性,定インピーダンス特性の三つに分類され,白熱灯や電熱器の負荷は (1) 特性を示す。電圧安定性は,負荷全体に対する定電力負荷の割合が (2) 場合に厳しくなる。

電圧安定性を表す特性として負荷の有効電力 P と負荷端の電圧 V の関係を表した P-V 曲線が一般に用いられ,その形からノーズカーブともいわれる。下図は,負荷が定電力特性である場合の電圧安定性を示したものであり,安定的な運用点は (3) である。

電力需要が増加していくと電圧安定性が低下するおそれがあるが,負荷端に (4) を投入することで,P-V 曲線の限界点が (5) 方向に移動し,電圧の安定性を維持できる。

P-V曲線
P-V 曲線(ノーズカーブ)

問7 解答と解説

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(1)

正解は(イ)定インピーダンスである。

(2)

正解は(ホ)大きいである。

(3)

正解は(ト)A 点である。

(4)

正解は(ニ)コンデンサである。

(5)

正解は(ハ)右上である。

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