2019年度 第2種 電力

2019年8月31日作成,2021年12月4日更新

目次

合格基準は,90 点満点換算で 53 点以上,受験者は 4,715 人,合格者数は 2,331 人で,合格率は 49.4 % だった。

  1. ペルトン水車
  2. 電力系統に発生する過電圧
  3. 送電容量
  4. 配電線の高低圧混触
  5. ガスタービン発電の熱サイクル
  6. MW 級風力発電装置
  7. 直流送電方式の利点と課題

問1 ペルトン水車

ペルトン水車はノズルから流出するジェットをランナに作用させるものである。ランナはジェットを受ける (1) とその取付部である (2) とからなる。ノズルは水圧管につながり,これによって水の圧力水頭を速度水頭に変え,この水をジェットとして (1)に作用させる。ノズルでは,負荷に応じて使用水量を調整するため,ノズル内に (3) を設け,これを動かしてジェットの断面積を変える。水車の負荷が急激に減少したときは,(4) で (1) にあたるジェットをそらせておいて,徐々に (3) を閉じ,水圧管内の水圧上昇をできるだけ抑える。

水車を停止する場合,回転の逆方向から (1) の背面に少量の噴射水をあててブレーキ作用させる (5) を備えている。

問1 解答と解説

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ペルトン水車は,水流の衝撃を利用した衝動水車,タービンの一種である。

羽根車に対して接線方向から水流を入射し,その衝動を利用して回転する水車である。効率が高く,発電用水車として用いられる。高い水圧を利用した高落差の水力発電に適している。

(1)

正解は(チ)バケットである。

(2)

正解は(イ)ディスクである。

(3)

正解は(ル)ニードル弁である。

(4)

正解は(ワ)デフレクタである。

(5)

正解は(ホ)ジェットブレーキである。

参考文献

問2 電力系統に発生する過電圧

電力系統の過電圧には,雷撃により発生する雷過電圧,遮断器の開閉操作に伴い発生する開閉過電圧,一線地絡電流や (1) により発生する短時間交流過電圧がある。

これら三つの過電圧を比べると,一般的に,過電圧の電圧値の大きさの関係は (2) であり,過電圧の継続時間の長さの関係は (3) である。

過電圧の発生の防止又は過電圧の大きさを抑制するために,以下の対策が行われている。

  • 雷過電圧に対しては,避雷器や (4) を設置する。
  • 開閉過電圧に対しては,遮断器に抵抗投入・抵抗遮断方式を採用する。
  • 短時間交流過電圧に対しては,(5) を設置して対地充電電流を補償する。

問2 解答と解説

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(1)

正解は(チ)負荷遮断である。

(2)

正解は(ヨ)短時間交流過電圧 < 開閉過電圧 < 雷過電圧である。

(3)

正解は(ヌ)雷過電圧 < 開閉過電圧 < 短時間交流過電圧である。

(4)

正解は(ニ)架空地線である。

(5)

正解は(ト)分路リアクトルである。

解説

電力系統に発生する過電圧を次表に示す。

表 電力系統に発生する過電圧
各種過電圧 説明 波頭長 波尾長
雷過電圧 直撃雷,逆フラッシオーバ,誘導雷によって,系統のある地点の相-大地間,あるいは相間に発生する過電圧 0.1 ~ 20 μs 300 μs 未満
開閉過電圧 遮断器の開閉操作によって,系統のある地点の相-大地間,あるいは相間に発生する過電圧
  • 送電線の投入・再投入
  • コンデンサバンクの投入・遮断
  • 事故の遮断
  • 無負荷送電線の遮断
  • 変圧器・リアクトルの遮断
  • 直列コンデンサの保護ギャップの放電
  • 地絡サージ
20 ~ 5,000 μs 20 ms 以下
断路器開閉過電圧 ガス絶縁開閉装置用断路器の開閉時などに,同装置内あるいは外部のある地点の相-大地間,あるいは相間に発生する過電圧 0.1 μs 以下 3 ms 以下(持続時間)
短時間過電圧(交流短時間過電圧) 系統のある地点の相-大地間,あるいは相間に発生する持続時間が比較的長い過電圧(特に商用周波数の交流過電圧)
  • フェランチ効果
  • 負荷遮断時の発電機電圧の上昇
  • 1 線地絡時の健全相電圧上昇
  • 平行他回線からの誘導(電磁的・静電的)
持続時間が比較的長い

参考文献

問3 送電容量

送電線路により送電できる有効電力の最大値(本問題では「送電容量」という)は様々な制約を考慮して定められているが,それぞれの制約によって,送電容量を増加させるための対策は異なる。

電線温度の制約で定まる送電容量を増加させる方法としては,断面積が大きい電線や耐熱性の高い電線を用いることで,電線の (1) を大きくする方法がある。

送電線路に多導体を採用すると,断面積の合計値が同一である単導体の送電線路に比べ,送電線路の (2) が減少することから,過渡安定性,定態安定性(小じょう乱同期安定性),(3) の制約から定まる送電容量も増加する。送電線路の (2) を減少させる方法としては,多導体の採用のほかに,並列して使用する回線数を増やす方法や,(4) の採用も考えられる。

電圧階級を上げると,電線温度の制約によって定まる送電容量は電圧に比例して増加する。また,ある位相差角のときに送電できる有効電力が電圧の (5) にほぼ比例することから,電圧階級を上げることにより,過渡安定性,定態安定性(小じょう乱同期安定性)の制約から定まる送電容量も増加させることができる。

問3 解答と解説

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送電容量(transmission capacity)
送電線が支障なく常時継続して送電できる最大送電電力
過渡安定性(transient stability)
送電系統がある条件化で安定に運転している際に大きなじょう乱(大容量送電線ルート事故など)が発生したとき,再びもとの平衡状態を回復させる能力
定態安定性(steady-state stability)
電力系統においてきわめて小さいじょう乱(負荷変動,線路の開閉操作など)のもとで,継続的に送電系統で送りえる能力

(1)

正解は(ヨ)許容電流である。

(2)

正解は(リ)リアクタンスである。

(3)

正解は(ニ)電圧安定性である。

(4)

正解は(チ)直列コンデンサである。

(5)

正解は(ワ)二乗である。

多導体の利点

多導体の利点を以下に示す。

  • 合計断面積が等しい単導体と比べると,表皮効果が小さいので電流容量が大きくなり,単・中距離の送電容量が増加する。また,電線のインダクタンスが減少し,静電容量が増加するので送電容量を増加できる。
  • 電線表面の電位傾度が低減されるので,コロナ開始電圧が高くなり,コロナ損失,雑音障害などを防止できる。
  • 送電線のインダクタンスが小さくなり,系統安定度が向上する。

参考文献

  • 送電容量(目指せ!電気主任技術者~解説ノート~)

問4 配電線の高低圧混触

一般に低圧電路は,変圧器の (1) や電線等の (2) 故障の際に高圧電路と混触を起こし,高圧側の電圧が低圧側に現れて危険となるおそれがあるため,変圧器には B 種接地工事を施して,発生する電位上昇を抑制している。

図 1 に示すように,線間電圧の大きさが $V$ の三相 3 線式電線路に接続された単相変圧器において,高低圧巻線間に混触が生じた際の低圧側電線の対地電圧 $\dot{V}_\text{R}$ の大きさを $V_1$ 以下にするための接地抵抗 $R$ の最大値 $R_\text{M}$ を以下の用に求める。ただし,$C$ は三相線路の電線 1 条の対地静電容量,$\omega$ は電源の角周波数である。また,変圧器のインピーダンスは無視する。

図 2 に示す高低圧混触時のテブナンの定理による等価回路より,接地抵抗 $R$ に流れる電流 $\dot{I}_\text{R}$ の大きさは (3) で表される。ここで,$\displaystyle R \ll \frac{1}{3\omega C}$ とすると,最大値 $R_\text{M}$ は (4) で表される。なお,柱上変圧器の高圧巻線と低圧巻線の混触は,配電用変電所の (5) で検出され,配電用変電所の遮断器で遮断される。

図 1 配電系統における高低圧混触
図 1 配電系統における高低圧混触
図 2 高低圧混触時のテブナンの定理による等価回路
図 2 高低圧混触時のテブナンの定理による等価回路
(ヌ)$\displaystyle \frac{3\sqrt{3}V_1}{V\omega C}$
(ル)$\displaystyle \frac{3V_1}{V\omega C}$
(ヲ)$\displaystyle |\frac{\frac{V}{\sqrt{3}}}{R+\frac{1}{\text{j}3\omega C}}|$
(ワ)$\displaystyle |\frac{\sqrt{3}V}{R+\frac{1}{\text{j}3\omega C}}|$
(カ)$\displaystyle \frac{V_1}{\sqrt{3}V\omega C}$
(ヨ)$\displaystyle |\frac{V}{R+\frac{1}{\text{j}3\omega C}}|$

問4 解答と解説

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(1)

正解は(ホ)内部故障である。

(2)

正解は(リ)断線である。

(3)

正解は(ヲ)$\displaystyle |\frac{\frac{V}{\sqrt{3}}}{R+\frac{1}{\text{j}3\omega C}}|$である。

題意より,次式を満たす $R$ を求める。

\[ R \times |\frac{\frac{V}{\sqrt{3}}}{R + \frac{1}{j3\omega C}}| \le V_1 \]

(4)

正解は(カ)$\displaystyle \frac{V_1}{\sqrt{3}V\omega C}$である。

$\displaystyle R \ll \frac{1}{3\omega C}$ であり,次式となる。

\[ R \times \frac{\frac{V}{\sqrt{3}}}{\frac{1}{3\omega C}} \le V_1 \]

$R$ で整理する。

\[ R \le \frac{V_1}{\sqrt{3}V \omega C} \]

よって,最大値 $R_\text{M}$ は $\displaystyle \frac{V_1}{\sqrt{3}V \omega C}$ で表される。

(5)

正解は(ニ)地絡保護リレーである。

参考文献

問5 ガスタービン発電の熱サイクル

燃焼器が 1 組だけのガスタービン発電における基本熱サイクルを単純 (1) といい,基本設備は燃焼器のほかに発電機,(2) ,ガスタービンで構成される。図は単純 (1) の熱サイクル線図で,燃焼器に相当する軌跡は (3) である。燃焼器で発生した高温高圧の燃焼ガスをガスタービンで (4) させタービン軸を回し仕事をする。受熱量を $Q_1$,放熱量を $Q_2$,各点の温度を $T_1$,$T_2$,$T_3$,$T_4$ とすれば,理論熱効率 $\eta$ は次式で示される。

\[ \eta = 1 - \frac{Q_2}{Q_1} \]
= 1 - (5)
熱サイクル線図
熱サイクル線図

問5 解答と解説

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ガスタービン発電(gas turbine generation)は,作動流体としてガスを使用し,タービンによって機械仕事を得る熱機関であり,これに発電機を直結して発電する方式。大気から吸引した空気を圧縮機により圧縮し,この圧縮空気を燃焼器で燃料とともに燃焼させると高温高圧の燃焼ガスが発生する。タービン内で膨張しつつ熱エネルギーをタービンの回転エネルギーに換え,大気圧近くの低圧となって大気に放出される。種類はオープンサイクルガスタービン発電,クローズドサイクルガスタービン発電等があり,またガスタービン発電設備はガスタービン,空気圧縮機,燃焼器,発電機,励磁機,起動装置等から構成される。

ガスタービン発電は構造が簡単であり,建設費が安く,運転操作(特に起動停止)が簡単であるが,熱効率が低く良質燃料を必要とする等の特質から,ピーク負荷用,あるいは非常用電源等として用いられている。また近年,ガスタービンの排熱を有効に利用し,総合熱効率を高める方法として,ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた大容量コンバインドサイクル発電の開発が行われ,事業用発電設備として急速に導入が進められている。(出典)電気事業講座 電気事業辞典

(1)

正解は(イ)ブレイトンサイクルである。

ブレイトンサイクル(Brayton cycle)は,断熱圧縮,等圧加熱,断熱膨張,等圧冷却から構成される熱力学サイクルであり,ジュールサイクルとも呼ばれる。

  • 1 → 2 : 圧縮機(断熱圧縮)
  • 2 → 3 : 燃焼器(等圧加熱)
  • 3 → 4 : タービン(断熱膨張)
  • 4 → 1 : 大気中への排気と給気(等圧冷却)

(2)

正解は(リ)空気圧縮機である。

(3)

正解は(ト)2 から 3である。

(4)

正解は(ホ)断熱膨張である。

(5)

正解は(ヨ)$\displaystyle \frac{T_4 - T_1}{T_3 - T_2}$である。

参考文献

問6 MW 級風力発電装置

発電事業用の風力発電には水平軸・3 枚翼の (1) 風車が広く用いられている。

我が国で現在広く用いられている風力発電には,風車の回転数をほぼ一定とするものと,風車の回転数を大きく変化させるものがある。

前者には,設備構成が簡素で,(2) を電力系統に直接連系するタイプがある。後者には,風力発電の発電性能向上などを目的とした,次の二つのタイプがある。

  1. (3) の二次巻線を (4) 方式により励磁するタイプ
  2. メンテナンスの負担が大きい増速機を省略するために,数十の極を有する発電機に (5) を組み合わせるタイプ

問6 解答と解説

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風力エネルギー(wind power generation)は,風力エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。風力エネルギーは風車の受風面積に比例し,風速の 3 倍に比例する。このため,風速が 2 倍になれば風力エネルギーは 8 倍となるため,少しでも風況のよい地点を選定することが重要となってくる。(出典)電気事業講座 電気事業辞典

(1)

正解は(ト)プロペラ形である。

(2)

正解は(ル)かご形誘導発電機である。

(3)

正解は(リ)巻線形誘導発電機である。

(4)

正解は(イ)超同期セルビウス(Super-synchronous Scherbius)である。

風力発電設備の系統連系の増加に伴い,可変速運転できる超同期セルビウス方式二次励磁誘導電動機の導入が進んできている。系統連系規程では,二次励磁発電機は同期機に分類されているが,系統事故時特性,特に系統短絡事故に対する応答特性については十分な解明が行われていない。また,単独運転事故特性も明らかになっていない。

静止セルビウス

静止セルビウスは,一次電機子側の周波数制御を行う方式に比べ,変換装置およびその制御が簡単で安価である反面,速度制御範囲が正のスリップの範囲のみであり,しかも制御運転が行えないため,可変速の速応性を必要としないポンプ負荷や,一定の速度で運転されるものに採用されてきた。

超同期セルビウス

一方,超同期セルビウスは,製紙セルビウスに比べ,以下のメリットがある。

  • 同期速度が上下にわたって運転できる
  • 回生制動運転ができるので可変速の速応性が良い
  • 系統から摂取する無効電力が小さい
  • 変換装置の容量が小さい

(5)

正解は(ワ)BTB 変換装置である。

参考文献

問7 直流送電方式の利点と課題

洋上風力や離島と本土系統を直流送電で連系する場合には,交流送電における海底ケーブルの (1) の制約を受けずに送電電力を高めることができ,誘電体損失も小さいという特徴がある。また,架空送電においては,直流は交流に比べ対地電圧を低くすることができ,一般に鉄塔の高さを低くすることができる。例えば,交流送電と直流送電において,送電電力および送電損失がそれぞれ等しい場合,直流中性点接地 2 線式(双極式)における送電線の対地電圧は,交流三相 3 線式の対地波高値に比べて,(2) 倍となる。ただし,各導体の抵抗の値は同じで,交流の場合,力率は 1 とする。

一方で,交直変換装置を必要とし,交流系統の電圧で転流動作を行う (3) 変換器を用いる場合には,常に (4) を消費する。このため,交流側には (4) を補償する設備が必要である。直流は交流のように電流零点を通過しないため,事故電流を抑制又は遮断するには,交直変換装置の制御により行うか,大容量高電圧の (5) が必要となる。

問7 解答と解説

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直流送電(direct-current power transmission)の特徴は下記のとおりであるが,交直流変換装置がパワーエレクトロニクス技術を駆使したサイリスタ式の採用に伴い,信頼度が大幅に向上したことが直流送電の採用を進めた大きな一因となっている。

(1)

正解は(ホ)充電電流である。

(2)

正解は(カ)$\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}$である。

(3)

正解は(ル)他励式である。

(4)

正解は(ヌ)遅れ無効電力である。

(5)

正解は(リ)直流遮断器である。

電気専門用語集によると,直流遮断器(DC circuit-breaker)とは,直流電路に使用する遮断器である。

直流送電の利点

  • 直流には交流のリアクタンスに相当する定数がないので,交流の安定度による制約がなく電線の熱的許容電流の限度まで送電できる。すなわち,大電力の長距離送電ができる。
  • 海底ケーブルや地中ケーブルによる交流送電による過大な充電容量や誘電体損失の発生がなく送電容量を高めることができる。
  • 直流の絶縁は交流に比べ $1/\sqrt{2}$ に低くできるため鉄塔が小形にでき,送電線路の建設費が安くなる。
  • 非同期連系ができ,周波数の異なる交流系統間の連系が可能となる。
  • 直流による系統連系は短絡容量が増大しないので,交流系統の短絡容量低減対策の必要がなくなる。
  • 直流の電力潮流の送受電制御が迅速,かつ容易に行える。
  • 常時または事故時に大地帰路方式による送電が可能な場合は帰路導体が省略でき,さらに経済的になる。

直流送電の課題

  • 交流系統のなかで使用する場合,送受電端に高価な交直流変換装置が必要で,かつ高調波・高周波の障害防止対策が必要である。
  • 交流系統の電圧で転流動作を行う他励式変換器は交直流変換の際,変換容量の 60 % 程度の無効電力を消費するので,調相設備(電力用コンデンサや同期調相機)の設置が必要である。
  • 直流は交流のように零点を通過しないため大容量高電圧の直流遮断器の開発が困難で,変換装置の制御で通過電流を制御してその役割を兼ねる必要がある。このため多端子の直流送電系統を構成することは困難で系統運用の自由度が低い。
  • 大地帰路方式の場合は電食,海水帰路方式の場合は船舶の磁気コンパスの影響を引き起こすおそれがある。

参考文献

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