令和4年度 第2種 電力
目次
問1 水素冷却発電機
大容量タービン発電機の冷却方式には,冷却媒体に水素ガスを用いる水素冷却が多く採用されている。
水素冷却発電機は,空気冷却発電機に対して次の特徴がある。
- 風損が減少することで,発電機効率が向上する。
- 水素は熱伝導率が大きいので,冷却効果が向上する。
- 水素は空気より絶縁物に対して不活性であり,コロナ発生電圧が高いために,絶縁物の劣化が少ない。
一方,水素と空気の混合ガスは引火,爆発の危険があるので,これを防ぐため水素純度を 90 % 以上に維持すること,固定子枠を耐爆構造としなければならないこと,軸貫通部の水素漏れを防止するために軸受の内側に密封油制御装置を設ける必要があることなど,取り扱いも慎重にしなければならない。
問1 解答と解説
(1)
正解は(ハ)風損である。
(2)
正解は(チ)熱伝導率である。
(3)
正解は(ロ)コロナ発生電圧である。
(4)
正解は(ヌ)90 % である。
(5)
正解は(カ)密封油である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「水素冷却発電機」
問2 太陽光発電
太陽光発電では,シリコンなどの半導体を用いた太陽電池により,太陽からの放射エネルギーを電力に変換する。
太陽電池の出力は日射強度等により変化するため,太陽電池の公称システム出力は基準状態(日射強度:1 kW/m2,モジュール温度:25 °C,分光分布:基準太陽光)に対し規定される。太陽電池の電流電圧特性についても,短絡電流が日射強度にほぼ比例して増加する等,日射強度により変化する。このため日射強度が変動した場合には,電圧・電流を変化させ太陽電池の発電出力を最大化する必要がある。太陽光電池発電には,そのために太陽電池の直流動作電圧を最適化し,発電出力を最大化する最大出力追従制御を備えるのが一般的である。
太陽電池はインバータ,系統連系保護装置等から構成されるパワーコンディショナを介して電力系統に接続することが多い。その際には,電圧,周波数等の保護リレーの設置が義務づけられている。また系統が停電となったときに,低圧・高圧配電線に接続された太陽光発電設備が単独運転により運転を継続すると配電線の保安等の面で支障を来すため,太陽光発電装置を解列させる必要がある。
問2 解答と解説
(1)
正解は(イ)1 kW/m2 である。
(2)
正解は(ヨ)短絡電流である。
(3)
正解は(二)最大出力追従である。
(4)
正解は(ヲ)パワーコンディショナである。
(5)
正解は(ハ)単独運転である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「太陽光発電」
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「太陽光発電システム用パワーコンディショナ」
問3 距離リレー
距離リレーは,自端の電圧・電流入力により事故検出ができることから保護リレー装置としての構成が比較的簡単で信頼性が高く,系統保護における主保護リレー又は後備保護リレーとして広く使用されている。
また,距離リレーは事故区間の選択が比較的確実で,保護区間に応じた各段距離リレーの時限協調により時間協調がとりやすいことから,送電線や変圧器・発電機などの電力機器の後備保護リレーとして,あるいは系統分離リレーとして幅広く使用されている。
距離リレーは入力電圧の入力電流に対する比,すなわち測距インピーダンスに応動し,測距インピーダンスが動作特性範囲内であれば動作する。
問3 解答と解説
(1)
正解は(ル)自端である。
(2)
正解は(ロ)後備保護である。
(3)
正解は(リ)時限遮断である。
(4)
正解は(ワ)入力電流である。
(5)
正解は(チ)測距である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「保護リレーシステム」
問4 柱上変圧器の事故と保護
柱上変圧器の地絡事故は,巻線と変圧器ケース,一次巻線と二次巻線との接触などにより発生する。
変圧器内部の一次巻線の地絡事故は,変電所の地絡リレーによって検出され,変電所内の遮断器によって遮断される。また,一次巻線と二次巻線の混触事故は,二次巻線の B 種接地工事を行った接地を通じて,同様に変電所で検出,遮断される。
このような事故は変圧器の構造からして自然に発生するものではなく,過負荷の繰り返し,雷によるショックなどによって絶縁劣化し発生する。
また,雷によりブッシングが破損し,一次側リード線と変圧器ケースとがフラッシオーバすることで地絡事故は発生する。
問4 解答と解説
(1)
正解は(ト)地絡リレーである。
(2)
正解は(二)過負荷である。
(3)
正解は(リ)絶縁である。
(4)
正解は(ヨ)ブッシングである。
(5)
正解は(ヌ)フラッシオーバである。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「配電線の高低圧混触」
問5 水車発電機の吸出し管
吸出し管は,反動水車のランナ出口から放水路を結ぶ管で,単なる導水管として用いられるだけでなく,管内に充満する水頭を利用して,ランナ出口の圧力を大気圧以下に保ち,また,ランナ出口の水の持つ運動エネルギーをランナ出口から放水面までの落差として回収するためのものである。
ランナの指定位置の標高と放水面の標高差を吸出し高さと言い,これを高くとり過ぎるとキャビテーションが発生しやすくなる。標準大気圧に相当する理論上の水柱の高さは約 10 m であるが,キャビテーションを考慮して,吸出し高さは通常 7 m 以下としている。
問5 解答と解説
(1)
正解は(ヨ)反動水車である。
(2)
正解は(リ)運動エネルギーである。
(3)
正解は(ホ)放水面である。
(4)
正解は(カ)キャビテーションである。
(5)
正解は(ヌ)10 である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「反動水車の吸出し管」
問6 送電系統の損失低減対策
送電系統の電力損失は線路の抵抗損と変圧器の銅損及び鉄損が主なものである。このため,電力損失の低減には,線路電流の減少と電線,変圧器の電気抵抗の低下が有効であり,具体的な電力損失の低減対策としては次の方法がある。
- 送電電圧の昇圧
- 電力用コンデンサの設置
- 電線の太線化,こう長の短縮,回線数の増加
- 需要地近辺に変電所を導入
- 変圧器の鉄心に方向性けい素鋼板,アモルファスなどの材料の採用
- 並列運転している変圧器の台数制御
問6 解答と解説
(1)
正解は(ヨ)減少である。
(2)
正解は(ヌ)昇圧である。
(3)
正解は(イ)電力用コンデンサである。
(4)
正解は(ワ)需要地近辺である。
(5)
正解は(チ)台数である。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「送電線の送電容量」
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「変電所や開閉所に設置される調相設備」
問7 電力系統の過渡安定度の判別法の一つの等面積法
電力系統の過渡安定度の基本的な説明には,図の等面積法が多く用いられる。この図で,地絡等の故障中は発電機の機械入力 $P_\text{m}$ が電気出力 $P_\text{e}$ より大きいため,この発電機の回転数は増大し,相差角 $\delta$ は増大する。
次いで,一定時間後(相差角 $\delta_\text{c}$)で故障が除去されると,以降,電気出力 $P_\text{e}$ が機械入力 $P_\text{m}$ を上回り,発電機の回転数は減少し始める。
この間も $\delta$ は増加するが,図の面積 $V_\text{k} \lt V_\text{p}$ であれば,$\delta$ が $\delta_\text{u}$ に達する前にその最大値に達し,以降,$\delta$ はその最大値から減少する。すなわち,安定と判定される。
一方,$V_\text{k} \gt V_\text{p}$ であれば $\delta$ は $\delta_\text{u}$ を越え,以降,$\delta$ は増大して発散する。この場合は,不安定(脱調)と判定される。

問7 解答と解説
(1)
正解は(ワ)回転数は増大である。
(2)
正解は(二)増大するである。
(3)
正解は(へ)回転数は減少である。
(4)
正解は(チ)から減少するである。
(5)
正解は(ヌ)発散するである。
参考文献
- 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電力系統に生じる電力動揺」