平成16年度 第2種 機械

2022年3月18日更新

目次

  1. 同期電動機のトルク
  2. 真空遮断器
  3. ダイオードブリッジを用いた直流電源
  4. ナトリウムランプの特性
  5. 三相かご形誘導電動機の速度制御
  6. フィードバック制御系の特性
  7. 水の電気分解
  8. データベース

問1 同期電動機のトルク

同期電動機は常に同期速度で運転される。三相同期電動機の 1 相分の出力を $P_2$ [W],同期速度を $n_\text{s}$ [min-1] とすれば,トルク $T$ は, $\displaystyle T=\frac{60}{2\pi n_\text{s}\cdot 3P_2}$ [N·m]となり,トルクを出力によって表すことができる。

無負荷で運転している電動機に負荷をかけると,負荷をかけた直後から,回転子磁極の位相が電機子の回転磁束よりも遅れ,回転子磁極軸と回転磁束軸との間に負荷角と呼ばれる角度 $\delta$ [rad] が生じる。$\delta$ によって,回転磁束と磁極との間に吸引力が生じ,これが回転磁束と同方向の電動機トルクを作り,回転子は $\delta$ を保ったまま同期速度で回転を続ける。

同期電動機では,電機子巻線抵抗 $r_\text{a}$ [Ω] が同期リアクタンス $x_\text{s}$ [Ω] に比べて非常に小さいので,$r_\text{a}$ [Ω] を無視して考えると,星形1相分の供給電圧を $V$ [V],電機子巻線 1 相分の誘導起電力を $E$ [V] とすれば,1 相分の出力 $P_2$ は,$\displaystyle P_2=\frac{VE}{x_\text{s}}\sin{\delta}$ [W] で表される。よって,$\delta$ が零より大きくなるに従って電動機トルクも大きくなり,$\delta$ が $\pi/2$ [rad] のときに最大値 $T_\text{m}$ [N·m] となる。$\delta$ は負荷トルクが大きくなるほど大きくなるが,負荷トルクが $T_\text{m}$ [N·m]を超えると,電動機トルクはかえって減少し,電動機は同期外れを起こして停止する。

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問2 真空遮断器

真空遮断器は,高真空では,大気の数倍,油の 2 倍以上の高い絶縁耐力が得られる性質を利用したものである。これは,高真空中では,残存する気体分子の数が少ないので,期待は絶縁破壊に関係しないからである。真空中で接点を開極して電流遮断を行うと,電極から蒸発した金属上記が電離して,アーク放電が形成される。電流が零近傍になると,このアーク中の荷電粒子の拡散が急速に起こり消弧する。このとき発生する金属蒸気が,真空バルブ内面に付着するのを防止するために,対向する電極の周囲に円筒状の金属シールドが設けられている。遮断部の構造が単純で,遮断動作に必要なストロークが短いので,操作機構に必要とされる駆動力も小さい。

真空遮断器の電流遮断性能は,主として真空バルブ内に配置された電極の構造及び材料で決定される。電極構造は,遮断電流の小さいものでは,単なる突合せ構造であるが,遮断電流が大きいものでは,遮断時の電流によって磁界を発生させ,電磁力を利用して,アークを駆動することによってアークスポットが局部的に集中するのを防ぎ,電極の局部加熱と溶融を防止している。

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  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「遮断器

問3 ダイオードブリッジを用いた直流電源

図はダイオードを用いた単相ブリッジ直流電源回路を示す。コンデンサ $C_\text{d}$ は,直流の脈動を吸収するためのもので,平滑コンデンサと呼ばれている。

一般にコンデンサに印加される電圧と流れる電流の関係式は,図中の記号を用いて $\displaystyle i_\text{c} = C_\text{d}\times \frac{\text{d}v_\text{d}}{\text{d}t}$ のように表される。この式を使って,例えば,図の回路でダイオードが導通して交流電源から電流が流入するときの,コンデンサ電流及びダイオード電流を計算することができる。

直流電源では多くの場合,

(出力電圧の最大値と最小値の差)/(出力電圧平均値)

で定義される電圧の脈動率を小さくするよう設計する。そのためにはコンデンサ $C_\text{d}$ の容量が大きい方が望ましいが,しかし一方では,交流電源から流入するパルス状電流のピーク値が高くなり,入力電圧波形がひずんだり,入力側の高調波電流が多くなるなどの影響が出る。この波形を改善するために,交流電源とダイオードブリッジの間,又はダイオードブリッジと $C_\text{d}$ との間にリアクトルを挿入することがある。これにより,損失をあまり大きくしないで,通流幅を拡大してピークを抑えた電流波形とすることができ,入力側の力率も改善される方向となる。

ダイオードを用いた単相ブリッジ直流電源回路
ダイオードを用いた単相ブリッジ直流電源回路

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問4 ナトリウムランプの特性

ナトリウムランプは,ナトリウム蒸気中の放電を利用したもので,蒸気圧の低い低圧ナトリウムランプでは D 線と呼ばれる波長 589 [nm] の光を放射する。このランプは演色性は悪いが,効率が良く,霧に対する透過率が良いので,トンネルや地下道照明に広く使用されてきた。

ナトリウム蒸気圧を高めると,発光スペクトルの波長域が広がると共に,D 線の自己吸収が起きて発光効率は低下するものの,光色は橙黄(とうこう)色から黄白色となり演色性が良くなる。

発光管にはナトリウム蒸気に対して安定な多結晶アルミナ管が使用されている。発光管内にはナトリウムのほか,電気的特性を所定の値に保つための水銀アマルガム,始動用ガスとしてキセノンガスが封入されている。

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問5 三相かご形誘導電動機の速度制御

三相かご形誘導電動機は,電動機に印加される一次電圧あるいは一次周波数を変化させることによって速度制御を行うことができる。

一次電圧制御は,誘導電動機のトルク速度特性が電圧のほぼ 2 乗に比例して変化する性質を利用したものである。この方式は電圧の変化に対する速度制御の範囲が狭く,また,速度を低くするために一次電圧を下げると,滑りが大きくなって二次回路の損失が増大するので,適用は小容量機に限られる。

一次周波数制御は,周波数に比例して誘導電動機の同期速度が変化することを利用したものであり,現在,インバータ制御方式として広く適用されている。この方式では,通常,誘導電動機のギャップ磁束を一定に保つため,周波数にほぼ比例して一次電圧も変化させている。速度を変化させても同一負荷トルクに対する滑り周波数がほぼ一定になり,巻線形誘導電動機の二次抵抗制御に比べ,速度の変化の割合に対して滑りの変化の割合が小さいので,広い速度範囲にわたって二次損失の増加を抑制した制御ができる。

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問6 フィードバック制御系の特性

フィードバック制御系の周波数特性は,一般に開ループ特性と閉ループ特性とに分けて取り扱われる。開ループ特性からは,ゲイン余裕及び位相余裕が重要な特性量として求められ,制御系の安定性を表す尺度としてよく用いられる。ゲインが 0 [dB] のときの角周波数をゲイン交点(交差)周波数と呼び,速応性を表す目安になり,この周波数において位相余裕が定義される。また,位相が 180 ° 遅れるときの角周波数においてゲイン余裕が定義される。

閉ループ特性では,主としてゲイン特性に注目する。そのピークゲインが制御系の安定性を表す尺度として重要であり,かつ,このときの角周波数は速応性を表す特性量である。

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問7 水の電気分解

水を電気分解して水素と酸素を得る方法は水電解と呼ばれ,クリーンな二次エネルギーとして注目されている水素を得る一つの方法である。この水電解のカソードでは還元反応が起こり,水素が発生する。電解質としては固体高分子イオン交換膜を利用するものも開発されているが,古くからアルカリ水溶液を用いるものが工業的に実施されている。この理論分解電圧は 25 [°C] で約 1.2 [V] であるが,実際には電解槽電圧はこの値より高く設定される。

一般に,電気化学システムでは,反応に関与する物質の量は用いられた電気量と密接な関係がある。水電解において得られる水素の質量は,理論的にはファラデーの法則によって用いられた電気量から計算することができる。水素の生成量は,理論上流れた電気量に比例するが,この理論値よりも実際に用いられる電気量の方が大きい。

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問8 データベース

データベースを論理データモデルで分類すると,階層型データベース,ネットワーク型データベース,リレーショナル型データベースに分類される。前者の二つのベータベースでは,レコードを親子に分け,レコードの親子関係が,それぞれ 1:n,m:n となっており,これらを総称して構造データベースと呼ぶこともある。ネットワーク型データベースは,事務処理プログラム言語を開発するために設立されたデータシステム言語協会の名前にちなんで,CODASYL 型データベースとも呼ばれる。リレーショナル型データベースはデータを 2 次元の表形式で管理し,表の各行がレコード,各列がレコードの項目に対応する。表の中で行をユニークに識別する列のことをキーと呼び,データ冗長性を排除する正規化の際の考慮点となる。

データベースの定義,操作する言語をデータベース言語といい,ネットワーク型データベースには NDL,リレーショナル型データベースには SQL が規定されている。

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