平成19年度 第2種 機械

2022年3月18日更新

目次

  1. 同期電動機の始動
  2. 変流器
  3. 一巡伝達関数のベクトル軌跡
  4. PWM インバータの出力波形制御
  5. 特殊かご形誘導電動機
  6. 測光量と単位
  7. 誘導加熱
  8. RFID

問1 同期電動機の始動

同期電動機のトルクは,回転子が同期速度で回転しているときにのみ発生するもので,通常,自己始動法,始動電動機始動法,低周波始動法,サイリスタ始動法等により,回転子を同期速度まで加速した後,励磁巻線を励磁する必要がある。

これらのうち自己始動法は,制動巻線を用いて,これを誘導電動機の二次巻線として始動トルクを発生する方法である。始動時に定格の三相交流電圧を加えると,大きな始動電流が流れる割には大きなトルクが得られないので,電流値を制御しながら適切な始動トルクを得るため,始動用変圧器,始動補償器,直列リアクトルあるいは変圧器等により低減した電圧を印加する。

また,自己始動法を採用する場合,始動時滑り周波数が大きい場合には,回転磁界によって界磁巻線内に高電圧が誘導され,絶縁破壊するおそれがあるので,界磁巻線を数個に分割して,これを開いておくか又は抵抗を通して閉じておく必要がある。

このようにして自己始動法により始動し,回転子が同期速度に近くなったときに,界磁巻線を励磁すると,引入トルクによって同期速度で回転を始める。その後,電機子電圧を定格の全電圧に切り換えて運転状態にする。

参考文献

問2 変流器

変流器(CT:Current Transformer)は,主回路に流れる交流の大電流を,測定しやすい大きさの電流に変換する場合や主回路と測定回路を絶縁する場合などに使われる変圧器である。変流器の二次側には電流計などが接続されるが,これらの負荷は負担と呼ばれる。

変流器の一次巻線の巻数は 1 ~数回程度で,一次電流が定格電流のとき二次電流が 1 [A] 又は 5 [A] となるように作るのが標準である。等価回路としては通常の変圧器と同じであるから,励磁インピーダンスが十分大きければ,一次電流 $I_1$ と二次電流 $I_2$ の比はほぼ正確に巻数に反比例する。励磁インピーダンスの大きさ及び負担のインピーダンスの大きさと位相角により $I_1$ と $I_2$ の比が変化し,両者の間に位相差が生じる。定格の一次電流及び二次電流を $I_\text{1n}$,$I_\text{2n}$ とするとき

\[ \varepsilon=\frac{\frac{I_{1n}}{I_{2n}}-\frac{I_{1}}{I_{2}}}{\frac{I_{1}}{I_{2}}}\times100 \text{ [%]} \]

誤差といい,変流比に対する誤差を示す。$I_1$ と $I_2$ との間の位相差は,電力測定の場合に誤差の原因となる。変流器の誤差を少なくするには高透磁率の鉄心を使用し,励磁電流を小さくすることである。一次電流の大きさは一次側回路の条件で決まり,一次電流の起磁力を打ち消すように二次電流が流れるので,二次側を開くと一次電流が励磁電流となって,二次端子には極めて高い電圧が発生して危険である。

参考文献

問3 一巡伝達関数のベクトル軌跡

準備中

問4 PWM インバータの出力波形制御

PWM(パルス幅変調:Pulse Width Modulation)は,出力電圧をできるだけ正弦波に近づける制御方式の一つである。目的とする出力波形の基本波成分と搬送波とを比較することにより,パルス幅を変調するのでPWMと呼ばれている。

この方式を電圧形インバータに適用した場合には,

  1. 直流電圧を制御するための主回路デバイスが不要となり,小形化,低コスト化に寄与する。
  2. 低次高調波の除去が容易である。
  3. ベクトル制御のような交流電動機の高速ドライブに不可欠な高速電流制御が可能になる。

等の特長がある。

また,変換器のブリッジを構成する上下アームの短絡を防止するために設けられているデッドタイムが搬送周波数を高周波化するときの障害になることがあり,安全性を確保するために変換器のバルブデバイスにはできるだけ高速スイッチング素子を用いるのがよい。

参考文献

問5 特殊かご形誘導電動機

かご形誘導電動機の始動特性を改良するために考案された特殊かご形誘導電動機は,二次実効抵抗が自動的に始動時には大きくなり,運転時には小さくなるような構造となっている。

二重かご形誘導電動機の回転子は,表面に近い外側導体に高抵抗材料を用い,中心に近い内側導体に低抵抗材料を用いている。始動時の二次周波数が高い間は,漏れリアクタンスは外側のかご形導体に比べて,内側のかご形導体の方がはるかに大きいため,大部分の二次電流は高抵抗の外側導体を流れる。速度が上昇し,二次周波数が低くなると,大部分の二次電流は低抵抗の内側導体を流れるようになる。

深溝かご形誘導電動機の回転子は,スロットの形が半径方向に細長い構造となっている。始動時の二次周波数が高い間は,スロットの底に近い導体部分ほど多くの磁束と鎖交し,漏れリアクタンスが大きくなる。したがって,導体中の電流は外周の近くに集中し,あたかも導体の断面が小さくなったのと同様の作用をして,実効抵抗が増加する。速度が上昇するにしたがって二次周波数は低くなり,電流分布は次第に底部へ広がる。やがて同期速度付近では電流は導体中に一様に分布するようになるので,普通のかご形誘導電動機として動作する。

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問6 測光量と単位

照明の基本的な単位である光束は,波長域 380 [nm] ~ 780 [nm] の光放射に,人間の目の明るさ感覚を代表する「標準比視感度」を乗じたものであり,波長 555 [nm] の 1 [W] の光放射が 683 [lm] となるよう定義されている。光度は,ある方向への光の強度を表わす光の単位で,ある方向の光束の立体角密度で表される。光度の単位は [cd] である。照度は, 1 [m2] 当たりに入射する光束で,単位は [lx] である。輝度は,光源や照らされた面の輝きを表し,人の明るさの感覚と密接に関係する。輝度の単位は [cd/m2] である。

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問7 誘導加熱

誘電体を高周波電界中に配置し,主として誘電体自身の電気分極作用による損失で発熱・昇温させる加熱方式を誘電加熱と呼ぶ。誘電加熱の中で周波数帯が 300 [MHz] ~ 30 [GHz] 範囲を使用するものを,特にマイクロ波加熱と称し区別している。

誘電加熱で発熱に要する単位体積当たりの電力は,印加する電界の強さ E [V/m] の 2 乗及び印加する周波数 f [Hz],被加熱物の比誘電率 ϵr,誘電正接 tanδ に比例する。ϵr·tanδ を誘電損失係数と呼び,誘電加熱の容易さを判断する目安となる。この値が 0.01 程度以下の物質については誘電加熱が困難である。

なお,実際の適用では,通信設備への電波妨害や生体への影響等の考慮が必要で,周波数は電波法で ISM (Industrial Scientific Medical)周波数として,使用できる数値が決められている。

誘電損失係数の差を利用して,例えば木材の接着には接着部分のみの加熱や,包装材が誘電率の小さいものであれば,内部の食品のみの加熱など,加熱部分の選択を行うことができる。

外部からの加熱による昇温のように,被加熱物自体の熱伝導に依存せず被加熱物を内部から加熱するので,急速で均一な加熱を行うことが可能である。

参考文献

  • 目指せ!電気主任技術者~解説ノート~「電気加熱

問8 RFID

重要な電力設備の保全では,定期点検(TBM)から状態監視保全(CBM)への移行が進められている。このような信頼性重視の保全管理に向けて,電力設備の計測情報収集等に RFID (Radio Frequency IDentification)を用いた IC タグ応用システムが重要な役割を果たす。この RFID には,電磁波の伝達方式により 2 種類の方式がある。

電波方式は,タグのコイルとリーダー/ライターのアンテナコイル間との距離が,使用する波長に対して長く,空中を伝搬する電磁波として伝達させる通信方式であり,通信距離を長くとることができ指向性がある。

電磁誘導方式は,タグのコイルとリーダー/ライターのアンテナコイルを磁束結合させて,コイルに起電力を発生させ,ファラデーの法則を応用して通信する方式である。この方式は,電波方式に対して,近傍 RFID あるいは非接触 IC カードとして早くから実用化されている。特にこれらのカードは,電源が不要なパッシブ型 RFID タグに分類され,その特徴は,リーダー/ライターからタグに対して,電力供給のための搬送波を送信しながらデータを送れることである。これにより安価で小型化を達成している。また,そのデータは通常,振幅変調方式である ASK (Amplitude Shift Keying)変調が使用されている。

参考文献

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