平成21年度 第2種 機械

2022年2月27日更新

目次

  1. 三相誘導電動機の不平衡運転
  2. 二巻線変圧器の損失と効率
  3. 避雷器
  4. 2 自由度制御系
  5. 円筒形同期発電機の電機子反作用
  6. 直流チョッパ
  7. 電球形蛍光ランプ
  8. コンピュータシステムの性能

問1 三相誘導電動機の不平衡運転

誘導電動機に接続されている三相電源の供給電圧が不平衡になった場合,対称座標法を用いて正相分と逆相分とに分けて電流を計算し,重ねの理(重ね合わせの理)によって実際の電流を求めることができる。

正相電圧に対して誘導電動機が滑り $s$ で運転しているとき,逆相電圧に対しては滑り $2-s$ で運転している。したがって,誘導電動機の逆相等価回路は,正相等価回路における滑り $s$ を滑り $2-s$ に置き換えたものとなる。

また,電動機トルクについては,正相電流によるトルクに対して逆相電流によるトルクは逆方向であるから,三相電源の供給電圧が平衡である場合のトルクに比して,不平衡である場合にはその大きさは減少する。

通常は三相運転であるが,もし三相電源と誘導電動機を接続する線路の 1 線が断線した異常な場合には,他の 2 線から電圧・電流の供給を受けて,単相誘導電動機として運転を継続する。

参考文献

問2 二巻線変圧器の損失と効率

変圧器の損失には,無負荷損と負荷損とがある。

無負荷損は,一方の巻線を開路し,他方の巻線に定格周波数の電圧を加えたときに消費される有効電力である。無負荷損は,そのほとんどが鉄損である。

負荷損は,一方の巻線を短絡し,他方の巻線に定格周波数の電圧を加えて電流を通じたときに消費される有効電力であり,基準巻線温度における値に補正して表す。

変圧器の効率 $\eta$ は,定格二次電圧及び定格周波数における出力,並びに全損失を用いて次式で求められる値で表す。これを規約効率という。ここで,全損失とは,無負荷損と負荷損との和である。

$\eta$ = (出力 [W]) / (出力 [W] + 全損失 [W]) × 100 [%]

定格容量 $S_\text{n}$ [V·A] の変圧器がある。その定格電圧における無負荷損は $P_\text{i}$ [W],定格電流を通じたときの負荷損は $P_\text{c}$ [W] である。力率が $\cos{\phi}$ の負荷を二次端子に接続し,定格二次電圧及び定格周波数としてこの変圧器を負荷率(負荷の容量の変圧器定格容量に対する比) $m$ [p.u.] で用いたときの効率 $\eta$ は,次式となる。

\[ \eta=\frac{m\cdot S_\text{n}\cos{\phi}}{m\cdot S_\text{n}\cos{\phi}+P_\text{i}+m^2 \cdot P_\text{c}}\times 100 \text{ [%]} \]

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問3 避雷器

高電圧系統の施設・機器の絶縁を過電圧から保護するための避雷器として近年,主に用いられているのは非直線抵抗体に酸化亜鉛素子を用いた避雷器である。

この素子だけで一切のギャップを用いないギャップレス避雷器と,この素子に直列又は並列に何らかのギャップを用いたギャップ付避雷器とがある。

絶縁容器(磁器,ポリマーがい管など)内部を絶縁媒体(気体,液体又は固体)で満たし,この中にこの素子又はこの素子と直列ギャップとを収納した構造のものをその構造からがいし形避雷器と呼ぶ。

この避雷器の保護性能及び復帰性能を表現するために用いる放電電流の規定値を公称放電電流という。また,放電中,この避雷器の両端子間に発生する電圧を制限電圧という。この避雷器が障害を起こすことなく,所定の回数流すことができる所定波形の放電電流波高値の最大限度を放電耐量という。

参考文献

問4 2 自由度制御系

$R(s)$ は目標値,$E(s)$ は偏差,$D(s)$ は外乱,$U(s)$ は操作量,$Y(s)$ は出力を表す。また,$P(s)$ は制御対象,$K(s)$ と $C(s)$ はそれぞれの補償器の伝達関数とする。

図の制御系において,$R(s)=0$ のとき,$D(s)$ から $E(s)$ までの伝達関数は $\displaystyle -\frac{P(s)}{1+K(s)P(s)}$ で与えられ,補償器 $C(s)$ によらない。補償器 $C(s)$ は,フィードフォワード補償器と呼ばれ,目標値追従特性を改善する目的で導入される補償器である。図から,$D(s)=0$ のとき,$R(s)$ から $E(s)$ までの伝達関数は $\displaystyle \frac{1-C(s)P(s)}{1+K(s)P(s)}$ となる。

いま,$\displaystyle P(s)=\frac{1}{s+1}$,$K(s)=K_\text{C}$,$D(s)=0$ のとき,$C(s)=0$ の場合は,単位ステップ関数の目標値 $R(s)$ に対する定常位置偏差は,$\displaystyle \frac{1}{1+K_\text{C}}$ となるが,一方,$C(s)=C_\text{C}$ を導入した場合は,$C_\text{C}$ = 1 と選ぶことによって定常位置偏差を零にできる。

二つの補償器を含む2 自由度制御系
二つの補償器を含む2 自由度制御系

問5 円筒形同期発電機の電機子反作用

準備中

円筒形同期発電機の電機子反作用
円筒形同期発電機の電機子反作用

問6 直流チョッパ

図に示すチョッパは,入出力電圧の関係で分類すると昇圧チョッパである。この図のチョッパに用いられているオンオフ制御バルブデバイス(スイッチングデバイス。以下デバイスと略す。) Q は,その図記号から IGBT である。

デバイス Q は,$T$ の周期で,$T_\text{on}$ の時間はオンし,残りの $T_\text{off}$ の時間はオフする。デバイス Q をオンすると,リアクトル $L$ に流れている電源電流 $i_\text{S}$ は,電源 S → リアクトル $L$ → デバイス Q → 電源 S の経路で流れ,リアクトル $L$ に蓄えられるエネルギーが増加する。

デバイス Q をオフすると,リアクトル $L$ に蓄えられたエネルギーが負荷側に放出され,電源電流 $i_\text{S}$ は,電源 S → リアクトル $L$ → ダイオード D → コンデンサ $C$ ・負荷 → 電源 S の経路を流れる。このとき,電源電流 $i_\text{S}$ のリプルが十分に小さく一定値 $I_\text{S}$ と見なせると仮定すると,ダイオード D に流れる電流 $i_\text{D}$ の平均値 $I_\text{D}$ は,次式となる。

\[ I_\text{D}=I_\text{S}\times \frac{T_\text{off}}{T} \]

チョッパの出力電圧は,コンデンサ $C$ で十分に平滑化されて一定値と見なせるものとし,その値を $V_\text{L}$ とする。チョッパ内での損失がないと仮定すれば,電源 S からチョッパへの入力電圧 $E_\text{S}\times I_\text{S}$ と,チョッパから負荷への出力電力 $V_\text{L}\times I_\text{D}$ とは等しくなり,これと上記の式から出力電圧 $V_\text{L}$ は次式となる。

\[ V_\text{L}=E_\text{S}\times \frac{T}{T_\text{off}} \]

なお,出力電圧制御を行うときは,出力回路にコンデンサがあることからコンデンサの充電電圧を変化させようとしたときの悪影響などを防止するため,マイナループ制御として電流制御を加えて行う。

直流チョッパ
直流チョッパ

問7 電球形蛍光ランプ

近年,白熱電球と同じ口金で,ほぼ同じ形状・寸法をもつ電球形蛍光ランプが開発された。このランプは,U 字形の発光管を複数接合したものやスパイラル形の発光管を点灯回路とともに,一つのコンパクトなグローブ内に収納した光源である。

発光原理は,一般の蛍光ランプと同様であり,約 1 [Pa] の水銀蒸気圧中の放電で発生した紫外放射を発光管内面に塗布した蛍光物質によって可視光に変換する。

一般に,発光管と点灯回路をコンパクトなグローブ内に収納して点灯すると,熱がこもり,水銀蒸気圧が上昇して,発光効率が大きく低下する。そこで,電球形蛍光ランプでは,発光管内の電極近傍に水銀アマルガムを封入し,水銀蒸気圧を適切に制御することによってこの問題を解決し,10 [W] ~ 13 [W] 程度で白熱電球 60 [W] とほぼ同じ光出力を得ている。

参考文献

問8 コンピュータシステムの性能

コンピュータシステムは,その用途に合わせて構成されるので,単純にその処理性能を比較することはできないが,マイクロプロセッサの処理性能を比較するための基準としては,下式で求められる処理時間が用いられる。

処理時間 = クロックサイクルタイム × CPI × 命令数

ここで,マイクロプロセッサは動作クロックと呼ばれるパルス信号に同期して処理を行い,クロックサイクルタイムは 1 クロック当たりの時間である。CPI は 1 命令当たりに使用する平均クロック数である。マイクロプロセッサの処理能力の評価指標としては,1 秒間に実行できる命令数を 100 万単位で表す MIPS や,1 秒間に実行できる浮動小数点演算数で表す FLOPS などがある。

また,コンピュータシステムの処理効率や操作性等を評価する標準的なプログラムをベンチマークプログラムと呼び,整数演算の性能評価として SPECint などの指標が用いられている。

端末機器,ネットワーク,ソフトウェアなども含んだシステム全体としての性能を評価するものとして,トランザクション処理性能評議会が策定した TPC-C が利用されている。さらに,最近では,消費電力効率などの性能評価も重要視されている。

MIPS

100 万命令毎秒,Million Instructions Per Second

FLOPS

1 秒間に浮動小数点演算が何回できるかの指標値,Floating-point Operations Per Second

SPECint

SPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)が策定した整数演算の性能を調べるベンチマーク

SPECfp

SPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)が策定した浮動小数点演算の性能を調べるベンチマーク

TPC-C

TPC(Transaction Processing Performance Council)によるオンライントランザクション処理のベンチマークの方法。処理性能や価格性能比などの指標を示す。

参考文献

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