平成23年度 第2種 機械

2021年2月27日更新

目次

  1. 三相誘導電動機の速度制御
  2. 同期機の損失測定法
  3. 単相変圧器の三相結線
  4. 電気鉄道のき電システム
  5. サイクロコンバータ
  6. 照度制御システム
  7. フィードバック制御系の設計仕様を与える尺度
  8. 論理演算をする論理回路

問1 三相誘導電動機の速度制御

三相誘導電動機の可変速制御方式として,三相電圧形 PWM インバータを用いた $V/f$ 制御が広く用いられている。誘導電動機の回転磁界の回転速度と回転子の回転速度はほぼ等しいので,回転磁界の回転速度を調節することによって,回転子のおおよその回転速度を制御することができる。

$V/f$ 制御では,可変速制御を行う際に,目標とする回転子の回転速度が変化しても,一次電圧と一次周波数との比率を一定に制御する。これによって,回転子の回転速度にかかわらず,回転磁界を発生するための励磁電流の振幅をほぼ一定に保つことができる。このとき,二次巻線に誘導する起電力及び二次漏れリアクタンスは滑り周波数に比例する。その結果,回転磁界の回転速度が変化しても,トルクと滑り周波数との関係はほとんど変わらない。

実際の誘導電動機に $V/f$ 制御を適用する場合,低速領域ではトルクの低下が生じる。これは,誘導電動機の一次巻線抵抗による電圧降下に起因するものであり,この電圧降下の補償制御が必要になる場合もある。

また,高速領域では,インバータの出力電圧が飽和し,$V/f$ 制御の比率を一定に制御できない場合がある。このような場合,一次電圧を一定にして回転子の回転速度を増加させる制御方法がある。一次電圧を一定としたとき,滑り周波数が一定であれば,誘導電動機のトルクは回転子の回転速度に対しておおよそ 2 乗に反比例の関係となる。

参考文献

問2 同期機の損失測定法

同期機の損失測定法には,同期機に結合した駆動電動機を用いて定格回転速度で運転し,駆動電動機の電圧,電流及び入力を測定し,駆動電動機の損失を差し引いた出力によって求める方法がある。

ただし,ここでは同期機の励磁装置は,同期機の回転子軸によって駆動されない方式のものとする。

  1. 同期機を無励磁で定格回転速度で運転する。駆動電動機の入力が一定となった後,駆動電動機の電圧,電流及び入力を測定する。これから駆動電動機の損失を差し引いて,駆動電動機の出力を算出する。その出力が同期機の機械損である。
  2. 同期機の電機子全端子を開放した状態で,定格電圧になるように励磁して運転する。上記 a と同様に駆動電動機の出力を算出する。その出力が同期機の固定損である。これから上記 a の機械損を差し引くと鉄損が得られる。
  3. 同期機の電機子全端子を短絡した状態で定格電流になるように励磁して運転する。上記 a と同様に駆動電動機の出力を算出して同期機の損失を求める。これから上記 a の機械損を差し引くと,電機子抵抗損である直接負荷損と,漂遊負荷損との和が得られる。

参考文献

問3 単相変圧器の三相結線

図 1 は変圧器の Δ-Y 結線の説明図である。U-V と u-o からなる単相変圧器について考える。この変圧器の一次電圧 $V_\text{UV}$ と二次電圧 $V_\text{uo}$ とは同相であるが,無負荷のとき二次の線間電圧 $V_\text{uv}$ の大きさが $V_\text{uo}$ の $\sqrt{3}$ 倍となり,位相は一次線間電圧 $V_\text{UV}$ より 30 [°] 進んでいる。この位相差を無視して,電圧及び電流の大きさを求めるための簡易等価回路は,一次側の Δ 結線を等価な Y 結線に変換し,次の手順で導かれる。

図 1 における各単相変圧器の一次と二次との巻数の比を $a$:1,その一次漏れインピーダンスを $Z_1$ とする。図 2 を図 1 の Δ-Y 結線と等価な Y-Y 結線とすると,一次漏れインピーダンスは $\displaystyle \frac{Z_1}{3}$ となる。励磁電流を無視し,一次と二次との巻数の比を $a'$:1 とすると,図 1 と図 2 の線電流 $I_\text{U}$,$I_\text{u}$ それぞれの大きさを不変とするには,$\displaystyle I_\text{U}=a' I_\text{U} = \frac{a}{\sqrt{3}}I_\text{U}$ が必要である。したがって,二次の漏れインピーダンス $Z_2$ を一次に換算すると,$\displaystyle a^2 \frac{Z_2}{3}$ となる。励磁電流を考慮するには図 1 の各変圧器の励磁アドミタンス $Y_0$ を 3 倍して星形に接続したものを付加すればよい。

変圧器の Δ-Y 結線
図 1 変圧器の Δ-Y 結線
変圧器の Y-Y 結線
図 2 変圧器の Y-Y 結線

参考文献

問4 電気鉄道のき電システム

電気鉄道のき電方式には直流き電方式及び交流き電方式がある。わが国では両方式ともレールを電流の帰路とするため,レールからの漏れ電流が種々の障害を発生させる場合がある。

直流き電方式では,線路に近接して水道管などの地中埋設金属があると,漏れ電流は大地より抵抗の低い金属体を通り,変電所付近で流出してレールに帰るため,地下水が電解液として働き,流出部分が腐食する。このような現象を電食といい,これを防止するために,変電所間隔の短縮,帰線抵抗の低減や,流電陽極や排流器の設置などが行われる。

交流き電方式では,この漏れ電流があるため,架線を流れる電流とレールを流れる電流とが等しくないので,併設された電話線に影響を及ぼす通信誘導障害を発生させる場合がある。

また,漏れ電流以外に電気鉄道周辺に影響を及ぼすものとして,パンタグラフの離線によって生じるアーク放電に起因する電波があり,ラジオ放送,テレビ放送,無線通信などにノイズとして混入する場合がある。

参考文献

問5 サイクロコンバータ

サイクロコンバータは,直接交流変換装置である。出力の各相に正側の出力電流を通電するためのサイリスタ変換器と負側の出力電流を通電するためのサイリスタ変換器とを逆並列接続して構成される。各変換器を三相ブリッジ変換器としたとき,三相出力のサイクロコンバータの全体のアーム数は 36 である。

一般的なサイクロコンバータでは,逆並列接続した 2 台の変換器は,電流の向きを切り替えるときに電流休止期間が必要である。出力周波数の上限は,入力周波数の 1/2 倍程度である。

電流休止期間を設けずに動作させるためには 2 台の変換器の間で循環電流を流す方式を用いる。この方式は,循環電流リアクトルを追加するなどの対策が必要で,複雑化するが,出力周波数の上限をより高くすることができる,入力無効電力をほぼ一定にすることができるなどの特長がある。

サイクロコンバータは,電動機の可変速駆動電源として用いられるほか,可変速揚水発電機の交流励磁装置としても用いられている。可変速揚水発電機の回転速度を ± 10 [%] 可変としたとき,揚水運転時の電力を一定回転速度の場合に対して ± 30 [%] 程度制御できる。

参考文献

問6 照度制御システム

通信システムの急速な普及と拡大に伴って,照明設備の省エネルギーを図ることを目的に,照明制御システムが採用されるようになった。

一般に照明の制御方法には,手動で操作する方法とタイマーやセンサなどを用いて自動的に制御する方法とがある。照明制御システムでは,ランプの調光や点滅を時間的及び空間的にパターン化し,タイムスケジュールに従って自動的に運転する方法及びセンサの検知機能と連動させて運転する方法が採られる。センサとしては,光電池などの光起電効果を応用した光センサ,人体が発する電磁波を集電形赤外線センサなどで検出する人感センサなどがよく用いられる。

一方,照明設備の消費電力量は,照明器具 1 台当たりの消費電力,照明器具数量及び点灯時間の積であるので,照明制御システムはこれら三つの要因を制御することでもある。このうちの照明器具数量は,光束法の照明計算に基づけば五つの要因で決まる。この五つの要因を用いて消費電力量を説明すると,照明制御システムは,ランプ光束を変化させることによって平均照度を制御するもの,及び空間的な作業面の面積を制御するものである。

参考文献

問7 フィードバック制御系の設計仕様を与える尺度

フィードバック制御系の設計仕様には,周波数領域及び時間領域における尺度がある。前者の周波数領域における設計においては,安定性の使用を与える尺度としてゲイン余裕や位相余裕があり,また,速応性の仕様を与える尺度としてゲイン交差角周波数や位相交差角周波数がある。これらは開ループ周波数特性に着目した尺度として利用されている。

例えば,開ループ(一巡)伝達関数が $\displaystyle G(s) = \frac{K}{s(Ts+1)}$ で与えられる場合,ゲイン交差角周波数を 1 [rad/s] に,位相余裕を 45 [°] に設定するには,$K$ = $\sqrt{2}$,$T$ = 1 [s] を選べばよい。

一方,閉ループ周波数特性に着目した場合には,安定性の尺度としてピーク値(共振値),速応性の尺度として帯域幅などが利用されている。

参考文献

問8 論理演算をする論理回路

論理回路を論理的な機能の点から分類すると,現在の入力だけで出力が決まる組合せ回路と,現在の入力及び過去の入力系列で出力が決まる順序回路に大別できる。

前者には,論理和(OR),論理積(AND),否定(NOT)などの基本論理回路や,切換回路(マルチプレクサー)などがある。

後者には,双安定マルチバイブレータとも呼ばれ,二つの安定状態を記憶する順序回路であって,入力が与えられると他の安定状態に遷移できる機能をもつ各種のフリップフロップや,それを使用したレジスタ回路,カウンタ回路などがある。

また,このような論理回路が搭載される集積回路(IC)は,汎用論理 IC と特定用途向け IC に分類される。

汎用論理 IC の一つである MPU(Micro Processor Unit)は,記述されたプログラムをシーケンシャルに命令実行処理を必要とするノイマン形コンピュータに用いられている。

一方,後者の IC として,ある特定用途の論理回路演算を実行処理する複数の回路で構成した集積回路である ASIC(Application Specific Integrated Circuit)は,最近,多くのディジタル電子機器に用いられている。この特定用途向け IC の設計では,複雑な論理式を簡略化する圧縮が重要である。圧縮法としては,計算機による機械的なアルゴリズム処理が容易なクワイン・マクラスキー法が著名であり,複数入力・複数出力のブール関数を簡略化することができる。

参考文献

inserted by FC2 system